モンスターハンター:オリジン   作:食卓の英雄

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新生活に慣れなさすぎて、時間なさすぎて、疲れすぎて書けませんでした。
5分の睡眠で6時間分の効果が得られたらいいのに。


ランポスの群れを討伐せよ!

 

 青く澄み渡った空の下、 まだ活動する生物も少ない早朝に、ざくり、ざくりと土を踏みしめる音が幾度となく繰り返される。

 この柔らかな土を踏み鳴らし、男はある地点で立ち止まると、おもむろにしゃがみこんで足元の土を手で掬う。

 

 男の手はゴツゴツと角ばっており、()()の跡と幾筋かの傷が、ぶ厚くなった皮膚の経験を裏打ちしているようであった。

 

 すぐに土を戻すと、男は側にあった鍬を手に取ると、再びその土を耕し始めた。そこへ、一匹のアイルーが籠を手に近づいてくる。

 

「マサミチ。キノコいっぱい取れたニャ」

「おお、そっちも終わったか。じゃあ、そっちの方に収穫したやつとかは纏めてるから持って行ってくれ。俺も新しい種を植えたら終わりにするからさ」

「了解だにゃ」

 

 ムートが足早に籠を運ぶ様子を見送り、もう一踏ん張りと男―――マサミチは汗を拭って鍬を振るう。

 

 ざくざくという音はそのまま暫くの間続くこととなり、全ての土地に種を植えた頃には、すっかり村が活気づき、子供たちの声が届くようになっていた。

 

 

 つい先日、沼地にてフルフルを討伐した俺たちだが、流石に飛竜種。強敵なだけあり疲れはまだ癒えていない。そんな状況で狩りに出向いても大怪我を負うだけなので、少しの休みを頂いている。……いや、そもそも今の村では狩りをしなければならない、なんて相手は早々にいないんだけど。どうにも始めたばかりの頃に連日狩猟していたからそのあたりの認識がズレている。

 あのときは早急に村の食料と無防備な中でランポス達の脅威があったせいであり…。ともかく、この村の生活圏にモンスターが出た、などの緊急の要件でなければこのままゆっくりと過ごすことだろう。

 

「にしても、よく育つな」

 

 村の開拓に伴って新しく建てられた新居。前にも言ったように木造でしっかりした造りで、あれからもまた改修したり模様替えを試みたりしたけど、一番の変わりようはこの農場だろう。

 土地の開拓や開発で様々なスペースが出来たのもあって余裕が出来、俺の家に隣接する農場を設置することが出来たのだ。村共同のものには及ばないけど、そちらとは違って狩りによく使うアイテムを優先して育てているから十分に役立ってくれている。

 

 俺のこういった体験は小学生の頃にやっていた農場体験くらいだけど、村の人からの指導もあって中々様になってきた。因みに肥料は竜舎として飼っているアプトノス達の糞だ。

 そのままでは逆に植物を枯らしてしまうと耳にしたことがあったので村の外れに肥溜めを建て、完全に発酵させた上で加熱処理したものだけを肥料として用いている。病気や寄生虫は流石に怖い。

 

「マサミチ。次は何をするニャ?」

「うーん…。あんまり調合しても腐らせるだけだからな。飯にしてその後は自由時間だ。鍛錬するにしても疲れを残さない程度にな」

「分かったニャ…」

 

 やや不服そうだが、これでも何だかんだ勝手な行動に出ないあたり、育ちがいいのだろう。そんな尻すぼみなムートの心情を考察しつつ、俺は期限の近いもので何が作れるかを考え始めるのだった。

 

 

――――…

 

 

 更に数日。この上なく何もなく、平和な光景が続いていたフィシ村。フルフルの雷ブレスを受けて以来違和感を覚えていた左手も、ウチケシの実を連日食事に混ぜていたらそれも収まった。

 

 感覚を忘れないためにドスバイトダガー改を素振りしていると、何やら村人の噂話が届く。どうにも、またもやランポスたちが現れ始めたらしい。

 短期間で首領を二度失っておいて、よくもまあそこまで勢力を広げられるものだ。その立ち直りの早さを厄介ぶめばいいのか、それともその生命力の高さに感嘆すればいいのやら、だ。

 

「なあ、話の途中で悪いけどどの辺りでのことなんだ?」

「おおっ、マサミチ。丁度良かった! お前にも伝えようと思ってたんだ!」

 

 マサミチの姿を目にした彼らは、これ幸いと話し出す。

 

「今日の朝だ。エストから頼まれて薬草の補充へ森の西側に採りに行ってたんだけどさ。あっ、もちろんフリーダとアイルーも一緒だぞ。…それで、いたんだよ。村からは近くはないけど、開けた地帯でランポスが狩りをしてたんだ。一緒に行ってたアイルーが一番に気づいて、フリーダに言って切り上げたんだ。やつらは狩ったケルビに夢中でこっちの方には気づいてなかったのが幸いかな。ケガしたのはいないよ。………帰り道で転けたのはいるけど、それは関係ないよな?」

 

 最後のセリフを一拍おき、窺うように話を締める。

 よかった。流石フリーダだ。安易に倒そうとせずにその場を離れたのは他の人員のことを考えたがゆえのことだろう。

 

「前まではランポスはその辺りに?」

「いや。狗竜の勢力が来る前まではその周辺にもランポスはいたから、ただ単に元鞘に戻っただけって感じだと思うが……」

「…それなら問題ないんじゃないのか? そりゃ、村に近かったら警戒しなきゃだけど…」

 

 要するに、今まで追い出されていた棲家を取り戻しただけだけだ。特に異変らしい異変も見当たらないなら、わざわざ出る必要もない。ただの現状報告かと内心胸を撫で下ろす。

 しかし、それを知っているはずの彼が、何とも言い表せない表情で首をひねっている。

 

「ただなぁ。どうにも、数がな…」

「数? そりゃあ、群れの総本山ならたくさんいて当たり前だろ」

「いやそうじゃなくてだな。俺が見かけた場所では、10体以上が纏まって動いてたんだ。確かに、ちょっとばかし規模のでかい集団といえばそれまでなんだが……。ほら、あれだけしぶとかったランポス共だ。少し気になってて」

「なるほど。確かに不安にもなる、か。……分かった。出来るだけ早めに調査にいってみるよ。杞憂ならそれでよし、だ」

「ああ、助かるよ」

 

 「別に急ぎじゃないからなー!」と言い残して、彼は去っていったが、今は特に差し障ってやることもない。フリーダにもこの懸念は伝わっているらしいので、リハビリがてら明日にでも出立しようか…。

 

 そうしてマサミチは途中だった素振りを再開し、一通り汗を流した後、夕食時に他の二人に伝えることにした。

 

 ――そして、翌日。

 

 マサミチは、アランにフリーダ、ジモを連れて森へ繰り出していた。ムートとアミザは他のアイルー達への訓練(これは自分も狩りについていきたいと志願したアイルーが数匹いたそうだ)と、村の防衛戦力として残ってもらっている。……もう少し人手が増えれば、こういった悩みも解消されるんだろうが。

 

 さて、当初は手探りで準備一つとるのにかかっていた時間も今では随分と短縮された。鞣した皮を縫合した袋に、腰や胸元に備え付けられた携帯ポーチ。

 基本的に、すぐ使うような薬系や狩猟に役立つ閃光玉などのアイテムがこちらで、入手した素材なんかを臨時で入れることはあっても、嵩張るものや火急で使わないものは荷車と共に置いている。

 

 とはいえ、今回はあくまでランポス達の調査だ。本格的な狩猟ならいざしらず、そこまで多くのアイテムは持ち込まない。これは、仮に不測の事態が起こってもすぐに撤退出来るようにするため、というのもある。

 

 マサミチの獲物は引き続きドスバイトダガー改。相手はランポス。ならば下手に弱点属性を狙うよりも攻撃力に秀でた武器を選んだ形だ。

 

「…この辺りだ」

 

 周囲を警戒しながら先行していたフリーダが声を上げ、差し出された手に従い息を潜める。

 今までの道中もモンスターの領域ではあるが、相手の存在が確認できているのとそうでないのでは大きな違いがある。

 

 小声で話しつつ、いつ何が現れてもいいように周囲を見張る。特にランポスは青と黒のストライプは一見派手に見えるが、木々の中での隠密性が高い。僅かな見落としが思わぬ被害に繋がる可能性もある。

 

 とはいえ、張り詰め過ぎもよくない。下手に緊張していると些細なことに気を使いすぎていざという時に十全のパフォーマンスが出来ない。

 要は、その使い分けと配分が大事なのだ。それに限れば、今の状態は理想に近い。ほどほどに余裕を保ちつつ、警戒は欠かさない。草木を出来るだけ静かに掻き分け、道中で役立ちそうなものを採取しながら歩く、歩く、歩く。

 

 そんなことを続けて暫く。もう移動してしまったか、或いはたまたま集まっていただけかと、帰還も視野に入れ始めたその時。鋭敏になった聴覚がその音を捉える。

 

「今の…!」

「…みんな、聞こえたな」

「ああ。そう遠くないぞ」

 

 小声で確認しあい、目的はこの先であることを確信する。先を急ぎ、姿を隠して様子を窺うと、そこに奴らはいた。

 青と黒の狡猾な鳥竜種、ランポス。これまでに何度か相手をしてきているが、やはり実物を目の前にしたのでは警戒心も強まる。

 開けた位置に屯しているが、今視界に見えている限り、その数なんと15頭。平時の3倍近い数が纏まっていることになる。リーダー格のドスランポスがいるわけでもなく、巣でもないのにここまで群れて行動しているのは珍しい。

 それに加えて、ランポス共は妙に周囲を警戒しているようにも見えた。すわ俺達の存在がバレたのかとも思ったが、こちらに目を向ける様子はない。

 

 では何故かと疑っていると、フリーダがある一点を指しこう言った。

 

「昨日はなかった」

 

 それは、半ばからへし折れたと思われる倒木。幹の太さは人の胴体ほどもあり、ランポスの仕業でないことは確かだ。双眼鏡で覗けば、そこには大きな足跡と土が捲れた跡が残されている。

 ここからではあまり見えないが、大きく刻まれているのは椛のような、鳥のような足跡。イャンクックのものだろう。

 フリーダの言う通りならば、これは昨日か今日の内に起こった出来事であり、すぐ近くにより大きな存在がいたことを連想させた。

 

「だからランポスも?」

「分からない。だがまるっきり無関係ってわけじゃなさそうだ」

 

 ジモの尋ねは皆の総意でもあったが、それにしては同じ生息地域に生きる動物としては過剰に反応しすぎな気もする。本来現れない種であったり、余程気が立っていなければここまで警戒するか?というのがマサミチの考えだ。

 

「どうする? 今ならまだ引き返せるが」

 

 フリーダの言うどうする、とは今ここでランポスたちに仕掛けるか、という意味だ。ランポスが原因ではない可能性が浮上した以上、ここで倒したところで根本的な解決にはならないかもしれない。それでも、ランポスを相手取るのか。

 熟考の末、マサミチは胸の内を吐露する。

 

「…………いや、根本的な解決にはならなくても対処にはなるはずだ。この群れが規模を拡大しないと言い切れない以上、ここらで散らしておくのも手だ」

「俺も賛成だ。探索範囲にいる以上、いつか村の仲間が出くわすかもしれない。対抗手段に乏しい中で数が多いってのは避けときたい」

「私も賛成かな…。私が着いてるときにあの数に囲まれたらちょっと対処出来ないし……」

 

 全会一致。こうなっては最早何も言うまい。彼らはみな各々の武器を手にしてランポスへと狙いを定めた。

 

(3…2…1……)

「今っ!」

「かかれ!」

 

 戦端の口火は、ジモの狙撃から始まった。ジモの構えたスポンギアから同時に放たれた3本の矢の内、2本がランポスの肉へと突き刺さる。

 悲鳴と共に驚いたランポスたちに、咄嗟に躍りかかるのはマサミチとフリーダだ。

 盾で頭をかち上げ、作った隙を逃さず剣で斬りつける。突如現れた襲撃者に、後ろへ回り込んだ一匹は、振り返り際に放たれた斬り払いに肉を切り裂かれ、血飛沫をあげて沈黙する。

 フリーダの二刀による守備を捨てた猛速の刃閃は、痛みに怯むランポスを矢継ぎ早に攻め立てていき、怒涛の連撃にランポスもとうとう力尽き倒れ伏す。

 

 これにて奇襲は成功。ランポス達が冷静になる前に、既に全体の3分の1を減らしたのは大きいだろう。 

 しかし、相手も野性に生きるモンスター。厳しい生存競争に生きる彼らは、金切り声を上げながら勇ましく敵対者へと迫る。他の同族を相手にしている一匹へと躍りかかると、自慢の爪牙でもって食い破らんとし、視界が反転する。

 

「そう簡単にやらせるかよ」

 

 飛びかかったランポスを撃ち落としたのは巨大な骨の鎚を携えた一人。モンスターの骨を基本とし、様々な改良を加えて威力を増したサイクロプスハンマーの一撃に、脳を揺らされたランポスは立つことすらままならない。

 そうして藻掻く間にも、各々の武器を用いて彼らはランポスを相手取る。

 内側に侵入しようとする個体は手の早い二人が対応し、勢いのままに襲いかかる者は、勢いすら抑え込む一撃にて纏めて薙ぎ払われる。臆して距離をとれば、待っているのは正確無比な矢の一撃だ。すっかりペースを崩され、仲間を次々と失っていくランポス達に、最早逆転の目は残されていなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「どりゃっっ!!」

『ギャァ――』

 

 アランの一撃で、またもランポスがふき飛ばされていく。これで斃れたランポスは11。残りは4体だ。これにはランポスも勝ち目がないと悟ったのか、消極的に、やや遠巻きに威嚇を繰り返すだけだ。

 

「これでどっか行ってくれると助かるんだがな…」

 

 アランは額に滲んだ汗を拭いながらも、決して姿勢は崩さない。今武器を下げると、隙を見せたと判断され余計な戦いが生じる可能性もある。

 積極的に襲いかかるつもりはないが、臨戦態勢を維持することでランポスの気を削ぐこの行動は上手く機能したらしく、既に戦意は感じられない。

 このまま睨み合いを続けていれば、やがて去るだろう。そう考えたとき。

 ふと、ランポスたち首をキョロキョロと明後日の方向へと向け始める。先程までの警戒をふいにしたような仕草に、この場の誰もが頭に疑問符を浮かべた。その、直後。

 

『クァァアアアアアア――――――ッッ!!』

「っ、避けろ!」

「ぬあっ!?」

「ぐっ」

「うわ!?」

 

 破砕音と共に木がへし折れ、弾丸のように飛んできたそれを身を投げ出して回避する。

 土煙を立てながら、立ち上がったそれは、よく見慣れた桃色の鱗。森丘の大怪鳥こと、イャンクックだ。

 しかし、その姿からは悲惨さが伝わってくる。

 自慢の耳はボロボロで、青い飛膜はズタズタだ。赤い甲殻にもところどころ傷がつけられており痛々しい。

 

 今の墜落でついた傷ではないだろう。余程の高空でもなければ、ここまでズタボロになるとは考えられない。それに、この傷跡は爪か棘か、鋭利なもので削られたような痕跡を残している。

 

 ならば、相手は少なくともイャンクックよりも上位の―――!

 

 その考えを肯定するかのように、俺達の上空を新たな影が通過する。まるでこちらなど眼中にないかのような飛行を見せたそれは、瞬く間に倒れたイャンクックへと追撃を加えると、その体を踏みつけにした。

 

「もう一体…? だが…」

 

 それは、全体のシルエットを見ればイャンクックに酷似した姿をしていた。だが、体格は一回り以上大きく、体を覆う甲殻もより刺々しく、毒々しいまでの紫。

 フリーダが漏らした声に、イャンクックよりも線の細い耳がこちらを捉える。

 ゆっくりと振り返ったその顔は、イャンクックのどこか間の抜けた様な顔つきではなく、目に入るもの全てを襲いかからんとするほどの凶貌。

 

 そして何より、相対したプレッシャーが桁違いだ。これは、イャンクックではない。この場では、俺だけがそいつを知っていた。

 

「―――イャンガルルガだとっ!!?」

 

『ギィャヲォォォ――――――ンッッ!!!』

 

 黒狼鳥イャンガルルガ。

 後に規定される鳥竜種という分類の中でも、類希な危険度を誇る一匹狼が、4人のハンター達へと牙を剥いた。




やっと出したいやつ出せた―――!
あと久しぶりに感想、評価お待ちしております
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