《追記》
タイトルが執筆中のものになっていました。申し訳ありませんでした
「マサミチー!起きてるかー!」
夜の帳もまだ開けない中、ぐっすりと安眠していた俺は、この大声に起こされる事となる。
(馬っっ鹿、お前!大声出す奴があるか!?)
(いやー、すまんすまん。起きてるかどうか不安だったんでな)
(そのくらい、家に入ればいいだろ)
(悪かったって)
両手を合わせてしきりにごめんと言うアランを尻目に、必要な物を用意する。反省している様だし、初めての事に緊張しているだろうからこの位でやめておこう。
「アランはもう準備出来てるのか?」
「ああ、必要なもんは大体外に置いてある」
アランの格好はいつもの布の服の上にもう一枚着ており、それでいて動きやすそうな服だった。木を編んで作ったカゴを背負い、腰にはナイフと手斧をぶら下げている。……多分、俺よりも準備がいい。
俺もカゴといくつか必要な道具を揃え外へ出る。小屋の前にはなんといくつかの水筒や箱を乗せたネコタクの様な台車まで用意されていた。
「…わぉ、マジでいいの?」
「おう、まぜちゃいけない薬草やキノコなんかもあるしな。これなら結構余裕があると思うぜ。……何だその顔、もしかして駄目だったか?」
いや、あまりにも準備が整っていてびっくりしただけだ。正直、あんまり期待してなかっただけに驚きが強い。伊達に調達組のリーダーはやってないってことか。
その後、昨日のうちに作ってもらった2人分+1個のピッケルを台車に乗せ、足早に村を発った。
―――…
未だ薄暗い空の下、いくつもの木々を越えて歩く。時折周囲を見渡しながらせっせと目的地へと進む。勿論その間の採取もかかさず行い、草類やキノコ類はそれなりに集まっている。……まあ、マヒダケやニトロダケ等の食べられないキノコしか残って無かったけど。
「ここらへん、ジャギィとかいなかったっけ?」
「安心しろ。狗竜の群れは最近南に来たばかりだからな。そうそう居を移すことは考えにくい」
牽引する台車を置き休憩しているアランが言う。
確かに俺がモスを狩りに行ったのも北側だった。ってことはあのジャギィは入り組んだ狭い道を見る斥候ってところだったのか。下手したらドスジャギィと出くわしてたと思うとゾッとする。
「お、何だあれ?変な形だな…」
そう言うと、荷台を置いてアランが木陰へと歩を進める。
「おい、あんまり離れるなよ?」
大自然の脅威は十分理解しているとは思うが注意は促す。俺も周囲を見渡し、危険がないかを確認する。今いる木々の隙間から見える少し開けた道にはガーグァの群れ位しか見えない。
そしてそのガーグァも騒いでいない為に周囲に危険度の高いモンスターはいないのだろう。
「おーい、マサミチー!ちょっと来てくれ!」
……大声を出すなと言っているのに。
「どうした?後あんまり大きな声を出すな」
「あ、あぁすまん。……で、あれ何だと思う」
視線を辿ると、細い木の側面に張り付いている楕円状で穴の空いている何かがあり、それから粘性の液体が滴り落ちていた。
「って…ハチミツか」
そう。モンハンでもよく見かけるハチミツ。それが二つの蜂の巣から流れ出ていた。モンハンだと明らかに不自然な所にもあるけど、それはきっとこの世界の蜂が逞しいんだろう。
「知っているのか?変な形だが…」
「いや、あれは蜂の巣でハチミツはあのオレンジの方だ。甘くて栄養価も豊富な食材だな」
「おお!なら取っていこう。甘味は貴重だからな…。おやっさん達も喜ぶだろう」
急いで匣を取りに戻り、落ちてくるハチミツを採取する。滴り落ちているのは伊達じゃないらしく、この世界の蜂は元の世界では考えられない量のハチミツを作れる様だ。
「おぉ、確かに甘い!これがハチミツか…!」
「うん、日本のより甘いな…。やっぱり土地の違いか…?」
この時代、甘味など全く無いに等しい。現にこっちに来てからは甘い物なんて食べていない。
アランもハマったらしく、ちょいちょい掬い取って舐めている。
「よし、そろそろ行くか。二箱もあれば暫くは大丈夫だろ」
匣に蓋をし、アランに呼びかける。が、返答は無い。見ると、匣を持ったまま地面に落ちたハチミツを眺めていた。
「おい?もういいだろ?」
不審に思い声をかけると、アランは落ちたハチミツの中をよく見つめ、手探りに何かを掴む。
「これは……鱗?」
それはハチミツに塗れ、テカテカと光る鱗だった。その大きさは掌程で、小型鳥竜種の比ではない。
「まさか飛竜の……!」
アランの顔が張り詰める。その顔は先程までのふやけた表情ではなく、色濃い恐怖と焦燥感が覗ける
張り詰めた空気が漂う。
飛竜とは、絶対的な王者であり、生態系の頂点に位置する生物。矮小な人間が相対した時点でその生死は彼らの気分で変わる―少なくとも現時点では―そんな存在だ。
「いや、待て。これは……イャンクックの鱗じゃないか?」
「イヤンクック?飛竜じゃないのか?」
アランが目を点にして聞き返す。モンスターの情報が広まってない中、こんなに大きくて硬質な鱗があれば飛竜だと疑っても仕方のないことだろう。実際、俺もゲームとしての知識が無ければ勘違いしていただろう。ハチミツで本来の色がよく分からなかったことも原因の一つだ。
「特徴的な大きい耳に丸い嘴、ピ…桃色の鱗を持つ鳥竜種だよ」
「ああ、怪鳥の事か。…確かに、遠目に見た色とほぼ同じだな。恐ろしい竜だったが、気性は穏やかだし、虫が好物らしいからな」
あー、安心した。とその場に座り込む。少しして気を取り直すと、イャンクックの鱗を撫でながら
「後どのくらいだ?」
と尋ねる。木に足をかけ、視線を高くして目指す場所を眺める。
「もうそろそろじゃないか?岩壁が近い」
目指すは村からでも見える山岳。モンハン的にも地理的にもそこが一番鉱石の多い場所の筈。この距離なら後10分と掛からないだろう。
気になったのか、アランも登ってきており、目に見えて近づいている事に、張り切っている。
さて、と荷台を押して目的地へと向かう
「もうちょいだ、頑張れよ!」
―――…
名もなき岩山。後世において名付けられる名こそあるが、現時点では誰もその岩山の名など興味は無い。
強いて言えば、これが一種の境界線代わりになっていることを知っている程度だ。故に、誰もこの岩山を詳しく知らないのも当然だろう。
この岩山は鉱山資源がかなり豊富で、いわば絶好の採掘スポットなのである。
そんな岩山を10M程登ったあたりで、二人の男は岩肌へピッケルを叩きつけていた。
「フンッ!」
「ソリャァッッ」
ゴロ…と音を立て様々な大きさの石が転がり落ちる。男達はそれを気にすることもなく一心不乱にピッケルを振るう。
「ヌゥンッ!」
「てぇいっ!」
「えりゃぁっ!」
ガコッ、そんな音とともにピッケルは岩肌に強く突き刺さり、その反動に耐えられなかった持ち主は思わず手を離す。
「痛たっ!?」
「おいおい、大丈夫か?」
それを皮切りにもう一人の男――アランも手を止める。ピッケルを取り落した方――マサミチは汗にこびりついた砂に不快そうな顔をする。
「結構掘ったな…」
見れば、石の山とも言える程の量が積み重なっていた。
「しっかし…鉄ってこんなのなんだなぁ」
鍛冶師でも無い為、製鉄を知らないアランが石ころを手に取り不思議そうに呟く。
「いや、それは多分ただの石ころだと思う。鉄鉱石ってのがあってな…。石の中に鉄があってそれを溶かして使うんだよっ…と」
積み上がる石を掻き分けて鉄鉱石を探す。――あった。
おやっさんに教えてもらったとおり、この世界の鉱石はかなり見分けやすい。だから特徴を知ってさえいれば素人の俺でも分かりやすく、その鉄鉱石は黒光りし、硬質な冷たい輝きを放っていた。
「ほら、色とか輝きが違うだろ?こんな感じのやつを探してくれ」
「おお、結構違うな。これなら俺でも分かりそうだ」
手にした鉄鉱石を指標に、俺達は仕分け作業を始めた。――のだが
「石ころ、石ころ、円盤石、石ころ、石ころ……鉄鉱石、石ころ、鉄鉱石……石ころ石ころ……お、大地の結晶…?」
…それはもう全然でない。鉄鉱石ってこんなに確率低かったのか?それとも掘る場所でも間違えたか?
結局、全て仕分けてみれば山の様に積んであった石からはサッカーボール大の鉄鉱石が一個。それに拳大くらいのが十五個、後は細かいのが幾らかだ。
「アランも終わったか?」
「おう、結構あるんだな!」
結構…?疑問に思い見ると、そこには丁度山の3分の1くらいの鉄鉱石の山が……
「嘘だろ!?」
俺の倍なんてものじゃないほど取れている。山の量は然程変わりのない癖に鉄鉱石が桁違いに多い。まさかこれがあのセンサーか…?
あまりの差についついその様な思考が脳を過ぎる。いや、まさか。元々のゲームでもネタで言われてただけなのに、そんな筈ないだろう。
「よ、よし…後もう一山掘ったら帰るぞ。時間的にもこれ以上は少し危ないかもしれん」
「ああ、帰りは荷物も多いからな。せめてもう少し日が長ければいいんだがなぁ」
「そればっかりは冬だからしょうがないな…」
渡された水を一息に飲み干し、ピッケルを手にする。今度は違うポイントへ向かう。
さ、さっきは掘るポイントが悪かったんだろう。だから今度はアランに習って色の違う場所を掘る事にする。
「今度こそ!」
疲労を訴える両手にムチを打ち、その硬い岩盤へ力一杯振り下ろす。するとどうだ、10cmも削れば黒光りする鉱脈が顔を覗かせるではないか。
勢いそのままに掘り進めるとガツッと今までより遥かに硬質な何かにぶち当たる。欠けた隙間から見えるのは綺麗な青色の鉱石。俺の予想が正しければ、恐らくこれはマカライト鉱石だ。鉄よりも硬い鉱石で、強い武具の生産には必須と言っても過言ではない重要な素材。本体はとてもじゃないが硬くて壊せない為、その周辺を崩して入手する。
太陽に翳すと青が際立ち、幻想的な美しさを醸し出す。ゲームをやってなかったらきっと観賞用の宝石か何かだと勘違いしていたことだろう。
太陽の光を浴びて輝くマカライト鉱石に目を奪われていると、突然何かが俺の肩を叩く。
「なあなあ、マサミチ。ちょっとこれ見てみろよ!」
「ぅおぉっ!?…ア、アランか……驚かせるなよ、割とマジで」
何事かと振り返ったら、眼の前にはアランの顔が。下手なホラーよりも怖かった。
しかしその驚きも長くは続かない。両手いっぱいに骨が抱えられ、小ぶりなものからそこそこのサイズのものまで揃っていたからだ。
「すごいだろ?多分これ全部が竜骨だぜ?下の方に落ちてたんだ」
抱える骨を全ておろし、「待ってろ」と下へと飛び降りる。
「おい!?」
命綱や捕まる所も無しに下りたアランに驚き、慌てて下を眺める。するとここから2Mも下りた所が、ちょっとした広場の様になっており、そこにはいくつもの骨の残骸が転がっていた。
どうやら獣竜種か何かの死骸を中心に様々な骨が積み上げられており、殆どは砕けたりしているもののまだ使えそうな強度を保ったままの物も見受けられる。
「どうだ、格好いいだろ?」
こちらを見てそう言うアランは角の生えた草食生物らしい頭骨を被り、先のほうがかなり大きく丸い大腿骨を背負っていた。
あれほど飛竜に反応していたのは何処へやら。実害があると無いとではやはり違うらしい。
「出来るだけこの骨も持っていこう。何でも色々と用途はあるからな」
そそくさと骨塚から使えそうな骨を選別する作業に移るアラン。採掘はどうしたとも思ったがあれで一応切り上げているらしい。
その後も少し採掘を続け、ギリギリまで鉱石を手に入れた俺達は大急ぎで村へと向かうのであった。
因みに、マカライト鉱石の数はアランの方が多かった。……やっぱりあのセンサーが働いている気がしてならない。
設定的にはアルコリス地方の東部、立地的にはメタベット付近くらいの位置と考えて書いております。