それは本来、女性が男性に、思いを形にして伝える大切な日。
「はぁ.........」
大きくため息をつきながら、あるふぃは自室へと入る。
「ん、お帰りお姉ちゃん。うわぁ......今年も大量だねぇ。」
既に自室にいたみにふぃは、あるふぃの元へ向かい、大量に抱える箱の一部を代わりに受け持った。
テーブルに山のように積み重ねられた大小様々な箱を見て、あるふぃは再び大きなため息をついた。
「みにふぃ....すまないけど今年も....」
「いいよ。さすがにこの量を一人じゃね。それにしても、年々増えていってない?」
「女性アークスの間で私の事がどんどん広まってるらしくてね....気持ちは嬉しいんだけど、ここまで多くなってくると、ちょっと困りものだな。」
「来年も増えるようなら、モミジさんとクレハにも食べてもらう?」
「そうだな。その時はお願いしてみよう。」
大小様々な箱の中には、オラクルでは見た事のない見た目をした箱もあった。
おそらく、地球のものだろう。
定期的にヒツギ達に会いに行っているせいか、ヒツギの通っている学校内でも、あるふぃの事が広まっているらしい。
いくら向こうの世界に合わせた服装とはいえ、一般の女性が定期的に校内にいるとなれば、話題になるのも無理はない。
しかし、このイベントはそもそも...
「...ねぇお姉ちゃん。毎年色んな女の子から貰ってばかりだけど、逆にあげたい人とかっていないの?」
「あげたい人かぁ......友としてあげたい人ならたくさんいるけど、好きな人にってなるといないな....」
2人はテーブルの上に散らばるチョコの入った箱を開け、それをつまみながら会話をする。
「お姉ちゃんが異性を好きになる第一条件って確か...」
「"私より強い人"だな。」
守護輝士がそれを言ってしまったら、世の男性アークスのほとんどが彼女を諦めるしかないだろう...
みにふぃは心の中でそう思った。
だが、唯一、ここ最近になって、その条件を満たすアークスが一人だけ身近にいた。
「じゃあ....ユウくんとかは?」
最近手の空いてる時間が多いからか、あるふぃは、訓練と称してやたらと周りのアークスに勝負を仕掛けている。
もちろん本気の勝負であれば彼女は負け知らずだが、彼女の性格故か、自身にハンデを付けて勝負をすることにこだわっている。
なんでも、ギリギリの勝負に勝ってこそより楽しめる....らしい。
勝負をするアークスの中でも、ウルの守護輝士であるユウという少年は、ここしばらく何度か彼女と勝負をしていく中で、その様子を見た周りのアークスたちから、本気のあるふぃと対等に渡り合えるのでは?という噂が立っていた。
彼の名を聞いたあるふぃの体が一瞬、ビクッと小さく反応したように、みにふぃには見えた。
「.........あの子にはろんがいるだろう?それに、故郷のウルの子たちやろんの周りの子たちも、ユウを好いている。例え今後、そういった気持ちになったとしても、私が入り込む隙間はないよ。それに.....」
「それに.....?」
「なんだろうな....ユウとろんの絡みを見てたり、彼らの親しい仲間たちで楽しんでいるのを見ると、微笑ましいのと同時に、あとは遠くから見守っていればいいかなと.....思ってしまうんだ。」
そう言ったあるふぃの顔は、とても優しく、とても寂しい顔をしていた。
「.....この先、お姉ちゃんがその道を辿ってしまう可能性はあるかもしれない。でも、今のお姉ちゃんは、皆の事が好きなんでしょう?それはきっと、これからも。」
「あぁ......愛ではないけど、親しい友として、今関わっている彼らの事は、とても好きだよ。その気持ちだけは、たとえ何があっても揺るがない。」
「その気持ちがあるなら十分何かをあげる理由になるんじゃない?知ってる?お姉ちゃん。最近のバレンタインってね―――――――」
後日、彼らの部屋には、バレンタインを象徴するピンク色の箱が置かれており、中には、ピンクのハートを抱えるリリーパの人形が入っていた。
リリーパ人形の抱えるハート型の装飾には、本来書いてある文字とは別に、手書きで追加されたような文字があった。
その文字は、こう書かれていた。
今までも、そしてこれからも、親しき友であることを祈って――――