なお、連載中の「提督はコックだった」の提督や艦娘とは一切関係のない世界の提督と艦娘たちです。
ブラック鎮守府もへったくれもないです。
ゆるーいお話ですので頭をゆるーくしてお読みください。
今日は2月14日。最近は細かいことはいろいろと省かれていたリ、もうめんどくさいから渡さなくてもいいだとか、女の子が女の子にチョコを渡す友チョコなど様式も変わってきている。
そう。2月14日と言えばバレンタイン。古い形で言えば好きな男性に女性がチョコをあげる日である。
「鈴谷~、提督にチョコ渡さなくていいの」
「はぁ?何いきなり?なんで提督にチョコを渡さなきゃならいのさ?」
「嘘ばっかりー。提督喜んでくれるかなってチョコ作ってたじゃない」
「ちょちょちょ、ちょっと待って」
何でそれを知っているの…?と聞こうと思ったが、そこまで言ったら最上の事だ、余計に根掘り葉掘り聞かれる羽目になり、猛烈にややこしいことになる。いや、すでに知られているからこうなっているのだ。
「ほら、この冷蔵庫の生チョコ!鈴谷お手製だよね。ご丁寧に中身、ぜーんぶハートの形にしてさ~。ぷぷぷ、一生懸命がんばったよねー」
「し、知らないしー!そんなの鈴谷作ってないし!!!」
「あっそう。じゃあこれはボクが提督にプレゼントしようかな」
「ダ、ダメ!!!」
「えー?なんで?」
「あーもう!そうです!鈴谷が作りましたー!!!!!!」
どうせもう最上に隠しても無駄だ。なら白状してイジられるほうが早い。最上はとにかくこういうのを…特に鈴谷がこういう時になると目を輝かせてイジってくる。うだうだとしていると地の底まで墓穴を掘りそうなので浅いうちに白状しておこう。
「で、提督にいつ渡すの?ボクもくまりんこも熊野ももう渡しちゃったよ?朝一で。もうお昼すぎて3時のおやつの時間だよ。ボクと鈴谷は今日非番だし。早く渡さないとバレンタインが終わっちゃうよ」
「う、そ、それはそうだけどさぁ…」
この鎮守府の鈴谷は日ごろから提督を少しだけブラウスのボタンを多めに開けてみたり、「何する?」と誘惑をする素振りをするが、その内心はドッキドキで心臓が飛び出るんじゃないかと言うくらいウブである。金剛が提督に猛ダッシュしてハグして頬ずりしてる様を見ては(うわー!うわー!やっば!)と思うくらいである。
その金剛をみては自分も同じことをしてみたいなぁ…と思うものの、そんなことをしたら300%陸であるにも関わらず、轟沈する自信がある。
「よし、いいことを思いついたよ、鈴谷!」
「え?」
また始まった。最上のいいことを思いついたは大体ろくなことがない。夏には三隈が犠牲になった。めちゃくちゃ布面積の少ない水着を誤って購入してしまい、こんな水着ではダメではないでしょうか…と鏡を見ながら悩んでいる三隈をみて…
「いいことを思いついた!大丈夫かどうか提督に見てもらおうよ!」
「ええっ!?ちょ、ちょっとお待ちください!もがみんなら見られてもいいですけれど提督には!ま、まってえええええ!!!」
そうして執務室のドアを破壊しながら「提督!三隈が新しい水着を着てみたんだけどどうかな!?」と三隈を提督の前に差し出した。突然の水着姿に提督は重要な書類を思いきり半分に引き裂く失態をかまし、大本営からA4用紙で数百枚に及ぶ始末書を書かされる羽目になり、三隈はと言うと「もう提督以外のところにお嫁にいけませんわ…」と3日寝込むほどであった。さらに1ヶ月、提督を見るなり猛ダッシュで逃げる三隈に提督は真剣に三隈に嫌われたのではないかと言うのと、三隈の刺激的な姿を思い出し、胃薬が手放せなくなったと言う。
「鈴谷、ボクと勝負しよう!」
「はい?」
「鈴谷が勝ったら、ボクが鈴谷に好きな服を買ったり、ご飯を奢ったりしてあげるよ。ボクが勝ったら…うーん、ちょっと考えよう…」
「無計画すぎじゃん」
「あー、わかった!鈴谷からボクには何もなくていいからさ」
「へ、へえ。なら鈴谷が勝てばいいだけだし。いいよ、その勝負、乗った!!!」
「よーし、じゃあ3本勝負ね。2本勝ったら鈴谷の勝ち、それでいいよね」
「よーし、やってやろうじゃん。で、何して勝負するの?この間鈴谷が圧勝したレースゲーム?ババ抜き?」
この時鈴谷はやめておく、と言っておけばよかった…と全てが終わってから後悔することになるのであった。
………
「よし、じゃあバレンタイン特別企画!鈴谷VSボクの3本勝負、内容はこれさぁ!」
「ほっほう、どれどれ……は?」
鈴谷は目を疑った。それらは最上が一切絡んでいない勝負であって、どういうことかわからない。
「ちょ、ちょっと待ってよ。なにこれ?鈴谷が損?するような内容じゃん!!!」
「まあまあ、こうでもしないとそこの生チョコ、明日には燃えるゴミに出さなきゃいけなくなるんだからさぁ」
「う、うう…こ、この勝負、じ、辞退「ダーメ。こうしないと鈴谷、提督の事好きなのに思いを伝えられなくなるっしょ?」」
「サラッと鈴谷の想いを暴露すんなし!!!!」
『バレンタイン3本勝負』
ルールは簡単。鈴谷が最上が提示した内容を「無理」だとか「ギブアップ」と宣言。もしくは逃げ出したら負け。内容をクリアしたら鈴谷の勝ち。
☆勝負内容☆
1、鈴谷が提督に生チョコを食べさせてあげる。そのあとは提督から生チョコを食べさせてもらう。なお、全て食べ終わるまでに上記の宣言、逃走したら負け。食べきったら勝ち。
2、提督に30秒間ハグしてもらう。30秒耐えきったら勝ち。なお、鈴谷は提督の背中に腕を回すこと。これが離れたら失格とする。
3、提督のおでこにちゅー☆をする。そのあと、提督からもおでこにちゅー☆してもらう。一瞬ではなく1秒ほど唇をくっつけること。提督にされる場合も一瞬でおでこをひいたら失格。
鈴谷、がんばれ!!!☆☆☆
「頑張れじゃないし!!!!!なにこれ!!!!!!」
「素直になれない、いつまでも思いを胸に秘めているだけだとほんとに金剛さんやサラトガさん、イントレピッドさんとか古鷹とか羽黒に提督取られちゃうぞー。いい加減くまりんこも熊野もだし、ボクも提督とくっついちゃえって待ってるんだから」
「最上たちの気持ちなんて知らないよぉ!!!!」
「はいはい、提督に今話通してきたから、執務室に行くよ」
「えええ!?て、提督話を受けたの!?ってか何で引き受けたの!?内容知ってるんでしょ!?」
(これで何で気が付かないかなぁ…提督も鈴谷の事好きだから、ぜひやらせてくれ!!!!ってすっごいやる気出してくれたのに。金剛さんとかをサラッとハグ突進してきてもよけたりしてるの見てると思うんだけど…)
それくらい鈴谷は乙女であり、ウブである。口づけをすると赤ちゃんができると3か月前まで思い込んでいたらしい。最上と三隈が男と女がナニしてナニしたら赤ちゃんができる、と言ったら顔を真っ赤にして「こ、これ、こ、これこれ、鈴谷の…は、はいんの?」とどえらく狼狽えていた。最上達の前でパンツを脱いでみようとするのを全力で止めたものだ。
ちなみに熊野はキャベツ畑から取って来るか、コウノトリが運んでくれると信じていたらしい。同じく、話を聞いたら失神した。ボクの妹はピュアでいいなぁと思っていたら「鈴谷さんもさっさとやることやって甥か姪の顔を見せてほしいですわね。既成事実をさっさと作ってしまえばいいのに」と爆弾発言をサラリと言う次女も心配になった。
………
「失礼しまーす」
「し、しつ、しつれ、しま」
「お、おお最上に鈴谷、いらっしゃい。今日はもう事務も終了して大淀も自由にさせたから、誰も入らないようにしてあるぞ。鈴谷、い、いいのか?この勝負…」
「ぜ、ぜぜん、だだだだだだだいじょうぶれふ」
本当に大丈夫なのだろうか…と心配になるが、逃げる気はないらしい。提督は提督で鈍いので、そんなに最上から服や食事の奢りがいいのか…とがっくりしていた。
それを見た最上はこっちはこっちで…まあお似合いなカップルなのかもなぁ…とため息を吐いた。ここはボクが頑張ってキューピットにならなきゃ!と謎のやる気を見せた。
「さーて、それじゃあはじめよっかー。まずはこの生チョコの食べさせ合いね。鈴谷は逃げたりギブって言ったら負けね」
「最上、この生チョコは一体…ずいぶん丁寧に作ってるし、全部ハートだし…大丈夫なのか?誰かが作ったやつじゃないのか?」
「あらかじめ用意しておきましたー。味の保証はしないけど」
「大丈夫だし!さっき味見したらおいしかったし!」
「……?減ってないように見えるが…」
「……!?い・い・か・ら!!!!はい、口開けて!!!!」
「鈴谷、ダメだよ。提督、はい、あーん☆って言わなきゃ」
「そこまでやれって言うの!?」
「もっちろんさぁ!」
「ぐっ…ううううう!!!!」
「ああ、鈴谷、嫌ならいいんだぞ…」
「て、提督、鈴谷が食べさせてあげるね。はい、あーん」
生チョコを1つつまみ、提督の口元へ運ぶ。提督は言われるがまま、あーんと口を開け、チョコを放り込もうとする。
「あ、放り込むの禁止ね。あーんするんだからちゃんとね」
最上の注文がやたらとうるさい。提督の口を見てるだけでもバックンバックン心臓が鳴ってるのに…ああああ、提督の息が鈴谷の手にぃ…。
今鈴谷の心臓は、摩耶が対空射撃で機関銃を全力で撃っているかの如く、バックンバックンからドドドドドドと心臓が鼓動していた。
鈴谷の生チョコをつまんだ指先が提督の口に侵入し……んむっ、と口を提督が閉じた。食べた。食べた。そう、鈴谷の指ごと。
「………!!!」
「んむっ…んん…ん、おいしいな、この生チョコ。と言うか、私の好みの甘さだ」
「へー、そうなんだ。作った人は提督を知り尽くしているのかもねー」
「そ、そそ、そうだ、ね」
(おいしいって…言ってくれた…!ああ、で、でも、て、提督の唇の感触がゆ、指に…うわー!うわー!!!提督の唇ってやわらかい…舌もちょっと…じゅ、隼鷹さんが見せてくれたエッチな本では舌と…舌をってうわああああああ!!!!!!)
(あ、鈴谷変な想像して大暴走してるwwww)
「さ、攻守交替ねー。次は提督が鈴谷にあーん☆ってしてあげてね」
「あ、ああ。じゃあ、鈴谷、あ、あーん」
「あ、あーん…」
同じように提督が生チョコをつまみ、口へ持ってくる。ああ、逃げたい…逃げたいけど…提督に食べさせてもらえるなんて…。舌にチョコの甘みとココアパウダーの苦みが広がったので口を閉じたのだが…。
「うおっ!」
「ん?んん!?」
舌を動かしたら提督の指までなめることになってしまった。思わず指を噛みそうになってしまうくらい口にチカラが入ってしまった。ちゅぽん、と指を慌てて引き抜く鈴谷。ぱっと見、提督の指は溶けたチョコと鈴谷の唾液で濡れそぼっている。
心臓は摩耶と秋月型が対空機銃を斉射したかのようにドドドドどころではなく、ドゥルルルルルルと言うくらい動いている。ショック死しそうである。
「おおっ、鈴谷、提督の指まで食べちゃうなんてだいたーん!さ、次、攻守交替いってみよー!!!」
「ま、まだやるのか!?」
「当然じゃん。それがなくなるまでだよ」
「ぐ、ぐぐぐ、最上…覚えときなさいよ…」
「はいはい、時間が押してるんだから早く!!」
生チョコは合計20個。10個ずつ食べさせ合って終了。その間、鈴谷はギブともいわず、逃げ出さずもせずに食べ終えた。
(ううう、口の中に提督の指の感触がずっと残ってるし…提督の指汚しちゃった…鈴谷の指も提督ので…うううううう!!!!!)
「はーい、お疲れ様~。すごいじゃんか鈴谷。この勝負は鈴谷の勝ちだね。うーん、一発目でギブすると思ったけど、計算が甘かったかー」
(提督とのいちゃいちゃが甘すぎてしっぶーいお茶が飲みたい気分)
「さ、さあ、2本目だよね!ちゃ、ちゃっちゃとやって鈴谷、これで勝ち宣言もらうから!!!」
「お、いい気迫だね。よし、じゃあ2本目いこっか!提督との30秒間ハグ!提督はいいけど、鈴谷は提督の背中に腕を回して、手が離れたらそれも負けだかんね」
「……条件ハード過ぎない?」
「はい、始めるよ。よーい、はじめ!」
「人の話を聞け―!!!んむっ!」
「鈴谷、嫌だったらすぐ離れるんだぞ」
「……嫌だったら…最初から受けてないし…」
「そ、そうか…」
ぎゅう…と背中に腕を回す。提督との密着。ちなみに提督は上着を脱いでカッターシャツなので薄い。温もりがダイレクトに鈴谷に伝わって来る。
(うわぁ、提督ってなんかこう…すっごいやせてると思ったら結構…筋肉あるんだなぁ…がっしりしてて安心できるって言うか…提督あったかい…石鹸の匂い…いい匂いだなぁ…はっ!?な、何か鈴谷…お、お腹の辺りが熱いんだけど…なにこれ?)
「鈴谷はちっちゃいなぁ」
「むー、提督の背が高すぎなだけじゃない?」
「まあ190cmあるからな…けど…何かこう抱きやすい大きさだな…。鈴谷はスタイルがいいからか…こういうとセクハラかもしれんが…柔らかくていいな…」
「!?ちょっ!?」
「それに…すごくいいにおいがする…ミルクのような…甘い落ち着くにお「わあああああああああ!!!!!!!!!」
ドゴォ!とドアをせっかく妖精さんが直してくれたのに体当たりして吹き飛んでしまった。そして鈴谷は脱兎のごとく逃げ去ってしまった。
最上は腹を抱えてソファーで笑い転げていた。呆然とする提督。
「……し、しまった、女性の匂いを嗅いでそれを口にするなんて…セクハラじゃないか…しかも、柔らかいって…ちょっと憲兵に自首してくる」
「ちょ、ちょっと待って提督、ぶふっ…」
「笑ってる場合じゃないだろう…」
「だ、大丈夫。いやぁ、いいもの見た。ちょっと鈴谷呼び戻してくるね」
「い、いや、大丈夫なのか?それに…この額にキスと言うのも何かこう…」
「提督は鈴谷の事好きなんだよね?」
「!?」
「バレバレだよー。金剛さんとかイントレピッドさんがハグを求めてきたときはしぶしぶって感じなのに、鈴谷の時は何のためらいもなくいったじゃない?」
「うっ」
「あはははは!素直でいいね!あー、ネタバレするとね、さっきの生チョコはね、すず「言うなあああああああ!!!」オゴォ!?」
叫びと共に最上に飛び蹴りをかまし、盛大に吹き飛ぶ最上。フーフー言いながら顔を真っ赤にして吹き飛んだ最上を涙目で睨む。余談だが、提督には今鈴谷が最上を飛び蹴りする際、かわいいパステルピンクが見えた。見えてしまった。
「す、鈴谷、大丈夫か?」
「だ、大丈夫…だし…くぅ、2、2本目は鈴谷の負けかぁ…さ。さあ提督!3本目、いこっか!!」
「え、まだやるのか?」
「1勝1敗じゃん!まだ勝負はついてないし!」
(ううむ…恥ずかしさを我慢してまで…そんな…うう)
(こ、ここまできたらキスまでやっちゃうかんね!!!!)
提督と鈴谷、盛大にすれ違っているとは知る由もない。
1本目…〇鈴谷 最上× 提督…食べさせ合いっこ嬉しい
2本目…×鈴谷 最上〇 提督…セクハラ発言は反省…でもよかった
………
「いてて…さあ、最後の勝負だよ。最後はお互いにおでこにちゅーだよ。ルールはすぐおでこから口を離しちゃダメ。ちゃんとちゅーってすることね」
「う、うむ…鈴谷、いいんだな…?」
「だからさっきから言ってんじゃん。嫌だったら最初から受けてないって」
「そ、そうか…」
提督はこれに勝てば最上にいい服やおいしい食事をおごってもらえるから躍起になっているんだ、と思い込んでいる。
鈴谷はもうどうにでもなーれ☆状態である。
「じゃあ、先に鈴谷がしてもらうね。よーい、はじめ!」
「よ、よし、鈴谷、いくぞ」
「うん…」
ギュウっと目を瞑り、ブレザーの胸元を強く握りしめる。最初は頼りない提督だった。色気で誘惑すると「こ、こら、そういうことはやめなさい!」と真っ赤になってうろたえるのが楽しかった。
ある出撃の際、敵の奇襲を受けてあわや轟沈するかもしれないほどの重傷を負った。仲間が何とか守り抜いてくれたものの、あの時だけはもうダメだと思った。提督は鈴谷が大破出これ以上は無理だと言う仲間の無線に血相を変えて今すぐ撤退しろと言った。もうすぐ主力艦隊で、これを倒せば提督は初めての甲種勲章をもらえたと言うのに。
結局、この撤退のせいで彼は甲種勲章を得ることができなかった。甲種勲章を得るということは提督にとっては大変な名誉であり、昇進もありえた。鈴谷が犠牲になることで主力を倒せばそれで提督は名誉を得られたと言うのに。
「大切な仲間を犠牲にして得た名誉など、私は得ても嬉しくもなんともない。勲章はもらえなかったのは事実だけど、鈴谷が無事生きて帰って来てくれて、甲種ではないがちゃんと勲章はもらえた。全員帰還してちゃんと戦果をあげた。私にはそれが嬉しい。鈴谷、君が生きて帰って来てくれ良かった」
そのころからだろうか。提督にむやみにお色気で誘惑しておちょくったりする回数を減らしたのは。ただ、前みたいに気軽に話しかけにくくなった。でも構ってほしい。だから時々誘惑する。相変わらず顔を真っ赤にしてやめなさい!と注意される。それだけでも嬉しかった。
バレンタインと聞いて、誰かが作った既製品のチョコを渡したくなかった。自分の手で作ったものを自分の手から食べてほしいと思った。チョコはできた。でも、私みたいにかるーく誘惑するようなだらしないと思われている子に食べさせてもらっても…と思うと何だか悲しくなった。だから生チョコはそのまま最上達に振る舞って終わりにしようと思った。
で、結局最上に思いを看破され、こうなっているわけで。提督がそっと前髪をあげ、口を近づける。恥ずかしい。逃げたい。でも…嫌じゃないと言ってくれているなら。今この瞬間だけでも、恋人のようなことがしたい。大好きな提督だから!
提督の吐息がおでこにかかる。それだけでももう心臓を吐き出しそうだ。がまん…がまん…。
ちゅっ
提督の唇がおでこについた瞬間、ビクッとなったが、目を閉じたままその感触を噛み締めるかのように受け入れていた。僅か1秒のキスであった。ああ、もう、何か…止まらないや。提督が好きって気持ちがもう溢れて溢れて…。
「ふう…」
「んー、鈴谷、目を閉じて初々しいねー。摩耶が持ってる少女漫画のヒロインみたいだったよー。さ、次は交代ね。鈴谷、いっちゃえいっちゃえー!」
最上にそう言われ、もう止まらない。気持ちが溢れて止まらない。もう知らない。最上が見ていたって知らない。
「鈴谷…?お、おい、おでこはもっと上だぞ…すずや…?んむっ」
知ってるし。おでこはそこって知ってるし。でも、鈴谷はここにキスがしたかった。これで嫌われたっていいや。でも、もう鈴谷の気持ちをごまかしたくないから。誘惑でもないから。だから鈴谷は…、提督の唇に自分の唇を重ねた。そして…抱きしめた。
「うわっ、うわっ、うわぁ…」
最上が素っ頓狂な声をあげているけど鈴谷には聞こえていない。夢中で提督の唇に集中している。
「すず、すずやっ、むっ、んむっ」
「ちゅっ…ぷはっ」
「す、鈴谷…」
「……好きなの…提督が好きなの…最上にそそのかされてこの勝負を受けたけど…さっきは恥ずかしくて逃げたけど!提督が鈴谷に生きて帰って来てくれてよかった、大切な仲間っていってもらってから、ずっと…ずっともやもやしてたけど…好きになってたの!!!!」
もう全部言ってしまえ。もう止まんない。
「ううん、違う。最初から一目ぼれだった。だから誘惑して恥ずかしがってる提督をみて楽しんで、構ってほしかったの!提督が鈴谷が大破して帰って来てから言ってくれた言葉…あれでもっと提督が好きになって…誘惑するのも何だかとっても恥ずかしくなって…でも…おしゃべりする機会がないから…またおなじことしかできなくて…」
「た、ただ単に…最上におごってもらえるから…と思ってたんだけど…」
「はあ!?鈴谷をそんなふうに見てたの!?鈴谷さっきから言ってたじゃん!!!嫌いな人とこんなことしないって!!何それ!それじゃ鈴谷…ほんとにただのび、び、びっちじゃん!!!!」
「す、すまん鈴谷!!!!!い、いや…私もだな、その…鈴谷のことが好きだったんだが…ああやってイジられて…馬鹿にされて…笑いものにして遊んでるのかなって…」
「は?ちょっと待って、も、もう一回言ってくれる?」
「だから、その…イジって笑いものに…」
「違う違う!その前!」
「す、鈴谷が好きだった?」
「……い、いつから?」
「え、あ。その…初めて着任した時から…」
「え、あ、え…う、うそ…」
「わ、私だって、鈴谷じゃなきゃこんな話最上から受けないぞ…鈴谷と接近できるなって、そう思ったから…」
「じゃ、じゃあ鈴谷達…1年以上前から…」
「好き同士…だったわけか…はは」
「う、うう…」
「鈴谷…?」
「うわああああああああああん!!!!!!!!」
「鈴谷!?」
「わああああああん!!!!」
「鈴谷!?おい、どうした!?も、最上!て、手を貸して…あ、あれいねえ!?」
「うわあああああん!!!!」
「どうしたんだ鈴谷!?どこか痛いのか!?」
「ぢがうのおおおお!!!うれじいのおおおお!!!」
「わ、私だって嬉しいぞ!!!鈴谷と両想いだったなんて!」
「びゃああああああ!!!!!!!」
「す、鈴谷ーーーーーー!!!!!」
執務室が騒がしいので大淀達が行こうとしたが「あーダメダメ、邪魔しちゃだめだから立ち入り禁止!!」と最上が制してくれていた。
………
「落ち着いたか…?」
「ぐすっ…」
鈴谷を抱きしめ、頭をよしよししながら泣き止ませていた。まだ涙目で目も腫れているから、提督の胸に顔を埋め、絶対に見ないで、と釘をさされている。
「あの…こういう時になんだが…」
「なに…」
「私と…お付き合い…してください」
「じゅるっ!涙と鼻水でぐちゃぐちゃのときに言う…それ」
「すまん…」
「………」
「無言は困るんだが…」
「なりまず…提督の彼女に…なります」
「そ、そうか、鈴谷!」
「わあ!?ちょ、マジ見ないでって!酷い顔してんだから!!!マジ恥ずかしいし!!!むうううう!!!」
無理矢理口をふさがれてしまった。
「ぷはっ!ばかっ!提督のばかっ、無神経!あほ!!」
「ふふ、酷いな」
「知らない!!!!今日はこのまんましばらくぎゅーってしてもらうんだからね!!!」
「わかったよ…」
再び顔を提督の胸に埋めて動かなくなる鈴谷であった。
………
「あの生チョコは鈴谷が作ってくれたのか?」
日も傾きかけるころまでずーっとしがみついていた鈴谷。まだしがみついているが。無言で提督の質問に首を縦にふる。まだ顔は見せてくれないらしい。
「そうか。私好みの甘さだった。ありがとう。とてもおいしかったよ」
その言葉にも無言で首を縦に振る鈴谷。
「鈴谷」
「………」
鈴谷は答えない。
「これからも、改めてよろしくな」
やっぱり首を縦に振って頷く。と思ったら腕を掴まれて掌を自分の頭に置いてまたしがみつく。つまり、頭を撫でろと言うことらしい。
「はいはい。鈴谷の髪はきれいだな。いい匂いがするし」
ぺちん。背中を叩かれた。余計なことを言わずに撫でろと言うことらしい。苦笑しながら鈴谷は夕飯と呼ばれるまでしがみつき、頭を撫でさせ続けたのであった。
鈴谷VS最上 3本勝負
1本目 〇鈴谷 最上× チョコ完食により鈴谷の勝利
2本目 ×鈴谷 最上〇 提督の言葉で逃亡。最上の勝利
3本目 ◎鈴谷 最上× 額どころか口づけ+愛の告白で文句の付け所なし。鈴谷の勝利!!
ここにバレンタイン勝負は鈴谷の勝利で幕を閉じたのであった。
/
「提督、こっちこっち!ほら、この服どうかな!」
「派手すぎないか?鈴谷はスタイルがいいから…谷間が丸見えにならないか?」
「あー提督ったらえっちなんだー」
「そ、そりゃあ見れたら嬉しいけどさ…私以外にはそう言うのは…うーん、でも何かあって変な男とかが寄って来ても私が守ればいいか」
「えっ、も、もう…提督ったら…た、頼りにしてるかんね!じゃあこれ、買っちゃう?」
「うん、鈴谷によく似合うかわいいのだからね。さっきのオフショルダー?だっけか。あの服もいいけどこれもいい」
「やたー!最上!これも買いまーす!」
「とほほ…お金の上限決めてなかったからボクのお給料の貯金が…」
「む、このスカート、今のと似合わないか?」
「えー?ここはこのパンツのがよくない?」
「ふむ、パンツスタイルの鈴谷もいいな。よし、それにしよう」
「よーし、最上ー!」
「君たちいい加減にしろー!!!!いちゃいちゃ見せつけられて出費はボクで…なんでこうなるんだー!!!!」
「提督、今度この服きてデートしようね♡」
「ああ。またどこへ行こうか相談だな」
「うん♪提督とデートデート♪」
その後、昼ご飯まで奢らされる最上であったが、食べさせ合いっこをするバカップルを目の前にして、どの食べ物も砂糖を山盛り盛られたかのような甘い味しかしなかったと言う。
「提督、だーいすき♪」
まあ、鈴谷が幸せそうならいいか…と思う最上であった。
「はい、ごちそうさまのキス♪」
「いい加減にしろ」
書いている最中、渋めのお茶を飲みながら書いていましたが誰かこれ、砂糖入れましたかね?
個人的にですが鈴谷はこう言う奥手で恋に悩む少女漫画のヒロインみたいな「あー、もどかしい!」くらいの感じが好きです。それを電波を傍受して書きました。
鈴谷はかわいいですね。恋人になったら楽しそうです。最上がえらいことになってますが、最上大好き提督さんは最上と鈴谷を入れ替えて読んでみるのもいいかもしれません。
それでは、また。