"個性"ゴキブリ 作:ゴッキー
期末試験について。
期末の演習試験ですが、原作で全員一斉スタート、アニメでは順番にスタート(後の人は見学もしくは作戦会議)となっています。
さらに、原作では試験内容の詳細は会場に移動後に試験担当の教師からそれぞれ聞く、という作戦会議もほとんど出来ない内容となっています。
この二次創作では原作のながれを採用しています。
理由は私が書いていて原作の方が書きやすかったからです。
アニメか原作のどちらか一方しか知らない人は混乱するかもしれませんが、今後もこのような原作とアニメでの差異が存在する場合、私の匙加減で原作だったり、アニメだったりとふわふわします。
よろしくお願いします。
ヒーロー科の生徒も当然だが通常の勉強もしなくてはならない。というよりも、普通にレベルの高い進学校顔負けの授業をヒーロー科ならではの授業と並行して行われる。
これでも普通科と比べたら簡単なのだから雄英高校のレベルが伺い知れる。
そのため当然として、入試の時は無理して勉強して詰め込めたが、いざ授業に出てみるとついて行くのがやっと、という生徒は多数存在してしまう。
「ダメだ! 分からない!!」
昼休み、中間試験の成績20人中19位の三奈の悲鳴が教室に響いた。今回の試験で赤点を出した生徒は夏休みに補修地獄で林間合宿に行く事ができないと相澤先生は語った。実は、合理的虚偽なのだが、そんなこと知るよしもなく、いつも以上に必死に勉強をしていた。
「あ、芦戸さん……。諦めれば楽になるよ。」
「んな!殺生なっ!」
中間試験の成績4位のかぶりのとんでもないアドバイス(?)に三奈は叫んだ。かぶりはこの試験を座学に関しては余裕というわけではないが、どうにかなるレベルだ。というのも、かぶりはいつも予習と復習を繰り返している。授業で分からないことがあればその日、遅くても次の日には先生に質問して解決し、忘れないように定期的に復習をしている。無論、授業前には予習もこなしている。
本人はついて行くのがやっと、という認識だが、それは中学の勉強では教科書と(義姉が捨てたのを勝手に拾った)参考書でほとんど解決できていたため、先生に質問する機会が今よりもかなり少なかったからである。そのため、極端に授業で理解できない事が増えた今はヤバいかもしれない、という認識になってしまった。
「けど、分からないところが分からないって、流石に手が負えないというか……。その……」
明らかに授業を聞いていないのでは?という、根本的な疑問は友人だからこそ、かぶりは口に出来なかった。
「というか、芦戸の
響香のその呟きにかぶりはノートを見ると文字にすらなっていない細いウニャウニャした線ばかりだった。同じような線が他の教科のノートに度々登場しているが、理数科目と歴史に極端に多い。
「………寝てた?」
「………………………うん。」
勉強を教えてと頼まれたかぶりだが、ここまで来ると手に負えない。
てっきり授業で習った公式程度は頭に入っていると思っていた。だが、何を習ったかも曖昧では無理だ、
(どうすれば……。このままだと芦戸さん、本格的に……。というか、なんで、1週間切ってるのにこの状態なの?)
かぶりとて、自分の勉強もあるし、つきっきりで教える事なんて出来ない。かと言ってここで何もせずに見捨てることも可哀想だ。
さて、どうしたものか……。と、頭を悩ませる。
(教科書丸暗記だと、授業で習ったけど教科書にない内容に弱い。中間に普通にあったからなぁ。しかも、配点が高い。だったらノートか……私のノートをコピーして、いや、だったら……)
「満点は取れないけど、赤点だけは防げる方法があるよ。デメリットとしてコピー代がかさむけど」
「え? そんな方法あるの? やるやる!マジで!?教えて!?」
「あ、ウチも興味ある。」
かぶりが思いついた方法に興味あるのか、2人は迫ってきた。その様子にかぶりは、「あまり使いたくない手なんだけど」と、呟いた後に席を立った。
「………ちょっと待ってて、交渉してくる。」
そう言ってどこかへ行ってから数分後、かぶりは全教科分のノートを手に戻ってきた。その表紙には緑谷出久という聴き慣れた名前が書いてある。
「これ、緑谷くんのノート。情報過多なところがあるけど、授業の内容は全て書いてある。はず。このノート、コピーをとって一語一句丸暗記すれば、赤点は無い。計算問題系でも基礎問題ならノート丸暗記でも解けるはずだよ。応用も分かる範囲で途中式書ければ、1点くらい貰えるしね。」
これがかぶりが考案した、勉強法。ノート丸暗記大作戦である。
出久は前々からヒーローについてノートに纏めているため、ノートを作る技術はかなり高い。さらに真面目な性格から抜けも少なく、情報過多な部分もあるが先生のコメントも事細かに書かれている。かぶりは受験の時にかなり彼のノート(雄英受験ver)のお世話になっていたため、その効力は身をもって知っている。
「こ、この量を暗記……。」
「うん、まずはそこからだよ。教科書にない応用問題とかはこれだけじゃあ難しいかもだけどね。」
(
この量のノートの丸暗記はかなり大変である。しかし、今までサボってきたのが悪い。と、かぶりは心を鬼にした。
というよりも、テストまで1週間を切った現状、三奈が取れる作戦はこれくらいである。
対してしっかりとノートを取っている響香は「ウチはいいや」と、断った。
「………よし!林間合宿のためだ! 緑谷!ノート借りるよ!」
そう叫んで三奈はノートを抱えて、コピー機のある場所まで駆けていった。その様子を2人は見送り、ため息を吐いた。
「そういえば、沖、ここの二次関数の応用なんだけどさ……」
「それなら、ここの公式を使うんだ。この辺の数字が分かりにくくしてるけど……。」
と、かくして各々、テストに向けて勉強をし始めた。
そして、時は流れてついに試験当日となった。
A組メンバーは校内移動用のバス停前に集められていた。そこには雄英の講師陣が複数名集まっている。いくら試験とは言え、ここまでの人数が集まることは今までほとんど無く、生徒からすればかなり壮観な光景だ。
「これから
その校長の言葉は先輩からの情報でロボットとの戦闘だと考えていたA組メンバーには衝撃だった。特に上鳴や芦戸と言った人相手に出力が難しいメンバーはショックを受けている様子だ。
「既にペアの組と対戦相手は決定済み、発表していくぞ」
相澤先生のこの言葉にかぶりは唾を飲んだ。
(オールマイト相手だと詰まない?)
しかし、直ぐに、どの教師でも勝ち目がないように思った。いくら2対1だとしてもプロヒーローに勝てるわけがない。職場体験を経て知ったプロと学生の壁だ。
おそらくA組トップの実力を持つ轟でさえプロヒーローには手も足も出ない。
「最後に沖、飯田ペアはパワーローダー先生だ。詳しい概要は各々の担当教師が説明してくれる。既に全員分のステージが用意してある。
その言葉で各々バスに乗った。
かぶりの乗ったバスにいるのは運転手を除いて3人。パワーローダー、飯田、そしてかぶりだけだ。いつもならA組全員が乗っているということもあり、かなり広く感じる。
「沖さん。作戦会議をしておきたい。」
飯田はヘルメットを外しながらそう言った。その言葉にかぶりは同意した。
「う、うん。わ、私もお願い。多分、パワーローダー先生は、天敵だから」
具体的にどのような試験なのかは説明されていない。パワーローダー曰く、ついてから説明するとのことだ。そのため分かっていることは先生と戦うということのみで、フィールドも、勝ち負けの判定も分からないままの作戦会議となる。
決められることは殆どないが、それでも何もしない訳にはいかない。
「……。確かに、俺たちの"個性"は足場が無ければ何も出来ない。地面を崩されてしまえば打つ手は無い。」
「うん私は飛ぶことも出来るけど、あ、あの飛行性能、じゃあ、的になるだけだから」
この組み合わせは的確に弱点を突いている。
中・長距離での機動力が強い飯田と、短距離、瞬発力が強いかぶりで得意とすることは違うが、2人とも高速移動を得意としている。しかし、それは足場があってこそだ。
パワーローダーの"個性"は地中を掘り進むことが出来る。それにより地面そのものを崩されては何もすることができない。
かぶりならパワーローダーが掘った穴の中を進むことも出来るが、わざわざ相手のフィールドに飛び込むのは無謀すぎる。
「……先生方の思惑を感じる……。」
他にも響香と口田のペアとプレゼントマイクは完全に2人の持ち味を殺しにきている。
「そ、そうだね。けど、か、勝ち目は、あるはずだと思う。先生が本気出したら私たちなんて瞬殺だから。勝ち筋は残してくれていると思う。そうでないとオールマイト相手の緑谷くん、肉片も残らない。」
オールマイトがジャンプして上空から下に向けて全力パンチで終わりだ。
「……肉片……。オールマイトの例えは大袈裟かもしれないが、確かに、勝ち筋は残して頂いているのかもしれない。先生方があえて残した隙や勝ち筋を見つけられるかどうか……。そういう試験なのか?」
そのような話をしていると直ぐに会場へと着いた、
対戦方式が分からないため、作戦会議としてはあまり良いものでは無かったが、取り敢えず戦い方は決まった。足場を潰される前に速攻を仕掛けるというものだ。パワーローダーとの戦闘は長引けばそれだけ地面を掘られて足場を無くす。そうなれば2人は何も出来なくなってしまう。
「クケケケ、心の準備は良いか? 早速だが試験の詳細を説明する。」
パワーローダーはそう言うと今回の試験の説明をし始めた。
制限時間は30分。
合格条件は『試験官にハンドカフスをつける』もしくは『どちらか1人がフィールドから脱出する』。
そして、試験官は体重の半分の重量の重りを装着している。
ルールは分かりやすいが、その実、判断力が試される試験だ。
実力差のある相手との戦闘では、一度逃げて救援を呼んだ方がいい場合もある。
話を聞いた後、2人は試験の開始地点へと移動した。
「………みごとに相手に有利なフィールドだね」
そのフィールドは工事現場のような場所だった。剥き出しの土の地面に放置されている重機、そして所々に巨大な岩がある。
パワーローダーの"個性"ならば地中を自在に移動できてしまう。
「ああ、クリア条件はあそこのゲートから出ることか……。」
飯田が指差すゲート、試験官から逃げてクリアとなるにはあそこから脱出する必要がある。もし、目の前で陣取られてしまったら逃げるにしても戦わなくてはならないということだ。
制限時間もあるし、なかなか厄介な試験だ。
あーでもない、こーでもない、と、2人で話していると、ふと、飯田はある事に気がついた。
「……沖さん、パワーローダー先生はどこに……」
パワーローダーが居ないのだ。
ここに入った時には確かに案内していた。だが、気がついた時には居なくなっていた。
『今から期末試験を始めるよ。』
その放送に2人はドキリと心臓が激しく響いた。
「沖さん!パワーローダー先生の探知は?!」
「い、今、やってる!」
慌てて当たりを見渡し、さらに全力で探知する。しかし、見つからない。何も引っかからない。
「見つからないよ! た、多分。土の下でじっとしてるんだと思う!」
「っ!やられた!」
戦いは戦う前に決まっている。事実、自分達の作戦会議に集中しすぎた結果、2人は、標的であるパワーローダーを見失ってしまった。
おそらく土の下だろうということは分かるが、だからこそ足元から言い表しようのない威圧感を覚えてしまう。
どこから現れるか分からない。
『レディィイ! ゴォ!!!』
瞬間、かぶりは振動を探知した。
反射的に飯田の腕を引き、場から飛び退いた。その瞬間、さっきまで飯田がいた場所から。土煙とともにパワーローダーが出現した。
「クケケ、よく避けた。だけど、………そこにあまり居ない方が良いぜ」
その言葉と同時に足元が崩れ始めた。
「え? 飯田くん!」
「っ!」
2人は慌てて走り始める。
しかし、崩壊の速度は早い。
「沖さん! 失礼!」
間に合わないと判断した飯田はかぶりを抱え上げ、全力で走った。瞬時に出る速度はかぶりの方が速いがある程度距離があれば飯田の方が速い。そのため、こういう時は飯田の方が有利だ。
地面の崩壊はヒビとして目に見える。ヒビがない無い、崩壊が始まっていない
(レシプロを使うか?)
とっておきを使うという選択肢が脳裏によぎる。アレを使えば瞬く間にパワーローダーから距離を取れる。しかし、それだけで残りの試験は使い物にならなくなってしまう。
(どうする?)
その判断は遅かった。
結果的に使った方が良かったのか、使わなくて正解なのかは、分からないが、しかし、判断を下すよりも早く、2人の足下は崩れ落ちた。
「飯田くんッ!」
「——!」
かぶりの叫びで飯田は抱えていた彼女を離した。そして、2人は穴に落ちながら身体を捻り、今度は反対にかぶりが飯田の右手を両手で掴んだ。
「っ!ーーーんがぁ!」
千切れんばかり羽を動かす。
元来、飛行性は低い。しかし、それでも滑空する様に穴の端までたどり着いた。
両手が飯田で塞がっているかぶりは、足の裏でまるで壁に立っているかのように張り付いた。2人は5メートルほど上にある穴の出口を見上げる。
いつ、襲ってくるか分からない現状、早く這い出なければならない。
「い、飯田くん、……登るから、腰に捕まってて。」
「あ、ああ、分かった。失礼」
その言葉に飯田は彼女の腰にしがみついた。女性の腰にしがみつくという行為は飯田としてはあまりやりたくないものだ。屈辱とかそういう男尊女卑みたいな考えでは断じてなく、単に、そういう関係でもない男女がみだりにくっつくのは良くない、というかなり真面目な考えからきている。しかし、今は授業中だし、ここで断るのは明らかにヒーローとして間違っている。
壁をよじ登るとそこは岩山の近くだった。ゲートまでの距離は開始位置よりもかなり離れてしまっている。軽く地面を蹴ってみてもここはしっかりとしているようだ。
「パワーローダー先生は……。」
飯田の呟きにかぶりは集中して探知した。すると、すぐに見つかった。
「地面が揺れてるから多分、下にいるんだと思う。ゲートとここの中間地点あたりを掘ってる。」
さらに集中すると先程這い出てきた大穴からの気流が少しおかしい事に気がついた。そして、一つの疑念が生まれた。それを解消するために石を一つ投げる。
すると、石が落ちた場所の地面が土煙と共に崩れ落ちた。その様子に2人は愕然とした。ゲートに向かうどころかこの場から動くこともままならない。
足場がない。そのたった1つの事でここまで追い詰められるとは思っても見なかった。
「落とし穴、………トラップか。パワーローダー先生は時間切れを狙っているのか……」
「そうみたい。先生、どんどん穴掘ってるよ。このままだと、走れるところが無くなっちゃう。」
万事休す。
始まった瞬間に詰み。プロとの間にある圧倒的な実力差を改めて思い知った。しかし、ここで諦める訳にはいかない。
「沖さん。落とし穴の位置は探知できるかい?」
「……落とし穴の
たまたま、かぶりは飯田と
対して飯田は聞かれたこと以外の必要な情報も的確に伝えてくれるかぶりを少し頼もしく思った。作戦会議なんてほとんどしている時間が無かったこの状況では、敵の状態を探りながら、戦いながら話し合わなくてはならない。だから、こういう必要最小限のやりとりで会話を成立させる能力はかなり大切である。コミニュケーション能力とは、ただ友だちを作る力や面白い話をするだけのことでは無い。
「……なら、それで行こう。どちらにしろ指示を聞きながらだとレシプロの速度は出せ……。」
「飯田くん! 走って!」
言葉を遮るようにかぶりは叫び、彼の背に飛び乗った。その様子に飯田はすぐに攻撃が来たことを察し、ひとまずゲートに向けて走りはじめた。その直後、どうしてか、かぶり達がいた場所が爆ぜた。
パワーローダーはトラップを得意とする、それに合わせた何らかのサポートアイテムを使用したのだろう。
「——45度右折ッ今! 次! 1メートル先、左折!その後、2メートルくらいジャンプして」
作戦を詰める余裕は無かった。だが、かぶりが指示を出して、まだ足場がある場所を飯田が走る。その作戦は上手くいった。幸運にもパワーローダー先生が地中を動いているし、飯田が走るときの振動もある。それらが地面に振動をつたえて空気を揺らす。それにより思ったよりも探知はしやすかった。
しかし、先生も試験とはいえ、いや、試験だからこそ簡単に負けるつもりはなかった。
「———ッ攻撃! 右に3メートル!ジャンプ!」
かぶりの悲鳴にも似た叫び。それに従い、飯田は右にジャンプした。その瞬間、地面が爆ぜた。かろうじて直撃は免れたが爆風により空中でバランスを崩してしまう。しかし、なんとか飯田はかぶりの指示通りの場所にクラウチングスタートのようなポーズで着地した。
どうしてこのポーズなのかは、足だけでの着地は不可能だったので、少しでも走り始めやすいようにした結果だ。
だが、
——クケケケ
パワーローダーの笑い声が聴こえた気がした。
(しまっ!)
「飯田くん!ごめん!ミスった!」
瞬間、地面が崩壊した。着地地点は落とし穴であったのだ。
かぶりが探知出来なかったのは、単純に知らない振動だったからだ。彼女が探知しているのは空気の振動である。実際に見えている訳ではなく、空気の動きから
さらに、地面の下に空洞があるかどうかという探知は、今までやった事がない。そのため、レシプロでないにしろ、自力では出せない高速の風圧を受けながら、一瞬で判断するというのは無理があるのだ。
「——っ!」
地面が崩れていく。慌てて飯田はレシプロバーストを発動させるが間に合わない。既に走るべき地面は存在しない。
(どうする?)
刹那の思考、刹那の判断。
そんな中、飯田はどうしてかヒーロー殺しとの対峙したときのことを思い出してしまった。
「沖さん!
そう叫びつつ空中で体を捻り、蹴りの準備にはいる。その動きになんとなくやる事を理解したかぶりは飯田の上を移動して足の上に乗る。
仲間を見捨てる。そんな気がしてかぶりは申し訳なく思ったが、
「先生は!ゲート近くにいる!」
その声を聴きつつ飯田はかぶりに全てを託すことにした。
「行っけーー!」
その叫びと共に飯田はかぶりを蹴り飛ばした。それと同時にかぶりはジャンプする。蹴りとジャンプの力が合わさり、まるで弾丸のように穴から飛び出した。
飛んだ先はゲートから少しズレていた。ゲートの前にはパワーローダーがいる。その情報から飯田は咄嗟に目標地点を変更していたのだ。
かぶりが目指す先はゲートから少しズレた場所にある塀であった。
(………ッ、ここなら!)
四つ足でかぶりは
折角、飯田がフィールドを囲う塀、という決して掘られることがない足場まで連れてきてくれたのだ。負けるわけにはいかない。
(飯田くんの犠牲は無駄にはしない!)
攻撃を探知した。
(足場があればっ!)
腰に装着している煙幕を数個落とす。すると、ゲートも含めて周囲が煙に包まれた。5センチ先も見えない中、かぶりに向けて黄色いロボットアームが迫る。
だが、既に探知済みだ。
地面の下は未知の世界だが、自身に向けて何かが迫ってくる。これだけならば間違えようがない。
(ゲートに向けて!)
そして、這うように壁面を走る。しかし、脱皮が近づいているせいで、運動性能は少し下がっている。そのせいなのか、さっきかわしたはずの攻撃が更に迫る。
だが、探知の性能は下がっていない。煙幕なんて関係なくその攻撃は既に気が付いている。というよりも、いかにパワーローダーと言えども煙幕の中を動き回るかぶりを正確に捉えることはできない。
ゴール目前、かぶりの前にパワーローダーが飛び出してきた。彼とて正確な位置は分からないが、大体の位置なら分かる。
強靭な爪による一撃がかぶりに向けて放たれる。
(けどっ!)
ギリギリで回避する。身を屈めてジャンプしてパワーローダーの頭上を飛び越える。その様子をパワーローダーは、煙幕でよく見えなくとも、横目で追っていた。彼とてプロだ。本気を出せばこの状況からたやすくかぶりを捕まえられる。けれども、それでは試験にはならない。
なので、敢えて見逃した。
『飯田、沖チーム、条件達成!』
かぶりはなんとかゲートにたどり着いた。
どうでもいい情報
尾白くんが不在の理由。
主人公の出席番号は尾白と同じで、"個性"の設定から期末はパワーローダーかなって決めていたから。そこから、騎馬戦であんなガチャガチャした戦い、ポイントの移動を表現できるか?ってなりました。(申し訳ないですが作者が逃げました。)
何気に尾白のポジションはかなり書きやすい。教室の席順も出席番号も原作通り。
飯田くんの犠牲
死んでません。
入試の時の話
少し話に描写を追加しました。
話の流れは全く変わっていません。
追加した箇所をまとめます
・かぶりの勉強環境について
→義姉が捨てた参考書を拾ってた云々を追加
・かぶりが得点を稼げてた理由付け
→端的にかぶりの個性と試験内容が相性が良かったから、という説明を追加
・かぶりが0点に挑んだ理由
→いつもの幻聴を聴いてる描写を追加