"個性"ゴキブリ    作:ゴッキー

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燃えろ!エンデヴァー

 

 

 

「…………」

 

「………」

 

 

 駅前に2人、大柄な男の小柄な少女がいる。1人は昨日、名実ともにNo. 1となったヒーロー、エンデヴァー 。もう1人はNo.2ヒーローであるホークスのサイドキック、BBである。

 

(気まずい)

 

 BB、かぶりは心の底から思っていた。

 エンデヴァーは不機嫌なのかなんなのか分からない表情で周囲に出来た人だかりと、彼らに楽しそうにファンサービスをしているホークスを見ている。

 

(完全に立ち去るタイミング、無くした)

 

 ヒーロービルボードチャートから1日明け、ホークスはエンデヴァー を地元の街まで連れてきていた。本来であればエンデヴァーの対応はホークス1人で行う手筈だった。そのため、かぶりは今日も今日とて、パトロールを行っていた。

 そんなおり、駅前にエンデヴァーとホークスがいることに気がついた。挨拶くらいはしておこうと近づいた結果、人混みがが生まれホークスのファンサタイムになってしまった。

 ホークスのファンサが始まったタイミングで、「パトロールに戻ります」と言って立ち去ってれば良かったのだが、既に数分過ぎており今から切り出す雰囲気ではなく、切り出す勇気もかぶりには無い。

 

「BB……だったか?」

 

「は、はい!」

 

 短く返事をするかぶりをエンデヴァーは静かに応える。

 

「そんなに改まらなくて良い。……いや、それより……。パトロール中だったのだろう。行かなくていいのか?」

 

「え、あ、はい!」

 

「……引き留めてしまってすまない。ホークスには俺から言っておくから仕事に戻った方がいい。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 エンデヴァーの言葉にかぶりは頭を下げ立ち去った。かぶりは顔は怖いが意外と優しい人なのでは?と思った。だが、それでも怖い。

 とはいえ、パトロールに戻ったが、それからは大きな事件は起きずに午前中は終わった。昼食はファミレスで食べ、午後も頑張ろうと気合を入れた、その時。

 

「……あれは?」

 

 空を飛ぶ黒い影を発見した。

 

(あれは……!)

 

 見間違えるはずがない。

 

 ドキンと心臓が跳ね上がる。

 

 忘れたいトラウマを呼び起こす。

 

 脳無だ。

 USJ事件で遭遇した改造人間。当時、出久達とは異なり近くで見た訳ではないが、忘れるわけがない。A組を襲い、全員に衝撃とトラウマを植え付けた存在だ。

 

(なんで、あれが……)

 

 オールマイトの奮闘により、諸悪の根源は捕まった。平和の象徴の引退という少なくない代償を払い、AFO(オールフォーワン)は捕まえたはずなのだ。

 

 だが、奴は来た。

 

(なんで……。けど、今は!)

 

 呆けていた頭を無理矢理切り替える。ヒーローとして、仕事を真っ当する。

 

「先輩!脳無が出現しました!」

 

『こちらも確認している!避難誘導は警察たち任せて、俺たちでホークスの援護をする。』

 

「了解。」

 

 インカムで事務所へと連絡をする。そして、地面に四つ足をつき、全力で這う。地面を駆け抜け、ビルの間を飛び移り、逃げ惑う人々と反対方向に突き進む。

 

(空気が熱い、気流が乱れてる……)

 

 空気の乱れを感知する。

 きっとエンデヴァーが戦闘を開始したのだ。

 正直にいえば彼女には苦手なフィールドだ。しかし、だからと言って行かない理由は無い。

 腰に装備した包丁の重みに意識を向ける。脳無とは改造された元人間だ。しかし、生け取りが出来る相手では無い。()()()()()()()()()相手だろう。

 しかし、いつものような殺しへの欲求は湧いてこない。その代わりに焦りにも似た感情が心臓を速く動かさせる。

 

「——-すぅ」

 

 USJ事件の時と同じ熱い空気を深く吸う。

 

「行くよ」

 

 

 

 エンデヴァーが脳無に掴まれ、ビルへと押しつけられている。ホークスは居ない。彼のことだ、脳無はエンデヴァーに任せて民間人の避難を行なっているのだ。

 

 「援護します!」

 

 かぶりはビルの壁から飛行する脳無へと飛び移る。

 

(エンデヴァー相手へのこの攻撃。多分、超パワーがメイン攻撃!)

 

 まずはそれを封じる。両肩へ、両手の包丁突き刺す。

 暴れる脳無。しかし、ゴキブリの吸着力で両の足裏で貼り付く。そして、両手でグサグサと両肩を何度も突き刺す。

 

「退ケ!」

 

 脳無は空中で身体を捻り、かぶりを吹き飛ばした。その隙にエンデヴァーは脳無から逃れて体勢を整えた。対してかぶりはパンチ等の直撃を喰らった訳でもないのにビルの窓を突き破り、床を何度もバウンドして壁にぶつかり止まる。

 身体のあちこちが痛むが、戦闘には支障は無い。人々の悲鳴が聴こえる。起き上がりあたりを見渡す。

 

「早く逃げて!」

 

 叫んで避難を促すが、そんなことするまでもなく、ホークスの無数の羽が飛んできて人々を外はと引っ張り出していく。それを見てかぶりは思考を切り替えて脳無を見る。

 

(脳無……。)

 

 脳無はエンデヴァーの炎に包まれている。両肩に刺さったままの包丁は既に溶けて無くなっている。普通なら消し炭になりそうなものなのに脳無は炭化したそばから回復している。

 

———-いいね、いいねぇ! 楽しもうか?!

 

 自身を囲む炎と(ヴィラン)達、USJ事件を思い出す。はじめて感じた命の危機、挫折を思い出す。

 

(……怖い?何を今更)

 

 公安ヒーローとして戦ってきた。何人もの命を奪ってきた。たとえそれが(ヴィラン)でもやってはいけない事だ。

 なのに、今更、怖気付くのか?

 

——-た、助けて……。ください。

 

 自分の声が聴こえる

 

——貴女は生きて

 

 女性の言葉を思い出す。

 

『じゃあ、お前はどうするんだ?』

 

 存在しないミルコの声が聞こえる。

 今までさんざん命を奪って来た。さんざん傷つけて傷ついてきた。

 

——私のために戦ってくれる?

 

——ウチは、沖と、ヒーローをやりたいんだ。

 

 大切な人達の事を思い出す。

 

「ミルコみたいなヒーローか。ま、無理かもしれないけど……」

 

 熱い空気を吸う。

 かつて折れた記憶が足をすくめせる。しかし、ここで逃げてはいけない。彼女達とヒーローをするなら、逃げてはいけないのだ。

 逃げたいと、逃げたく無いと、考えて、考えて、ようやく床を蹴り外へ飛び出し、ビルの外壁へ貼り付く。

 

「エンデヴァー !」

 

「………大丈夫か?すごい突っ込んでたが」

 

「はい、ゴキブリはこれくらいじゃ死にません。」

 

「そうか!邪魔だけはするなよ!」

 

 そう叫び、エンデヴァーは両手の全指先から熱線を放った。

 赫灼熱拳ヘルスパイダー。その名の通り、熱線は蜘蛛の巣のように脳無を周囲を囲い、一気に切り刻む。普通相手ならコレで終わりだ。しかし、脳無は熱線に身体を刻まれながら腕を熱線を放つエンデヴァーへと伸ばす。

 

(させない!)

 

 かぶりは外壁を蹴り飛翔する。熱線を掻い潜り、羽を広げて脳無へと滑空した。それと同時に周囲から無数の羽が脳無を襲う。しかし、そのうち1枚の風切羽は脳無ではなくかぶりの両の手へと収まり、刀のような形状へと変化する。

 

(ホークス!さすが!)

 

 羽の刀を両手で持ち、身体を回転させながら脳無の腕へ刀を叩きつけて、エンデヴァーへ届く前に軌道を逸らす。

 

「っーー!」

 

 脳無の力は強く、逸らしただけで全身が軋むような痛みが放つ。だが、そんなダメージは無視する。脳無の伸びた腕はエンデヴァーの真下を通りビルを破壊する。

 直後、背後から激しい熱を感じ腕を足場に隣のビルへと飛び落ちる。それを確認するとエンデヴァーは炎の逆噴射で加速し、灼熱の拳を脳無へ放ち、ゼロ距離で炎を放出した。赫灼熱拳ジェットバーンだ。それにより、脳無の反応できず頭から下が吹き飛ばした。

 

「熱っ!」

 

「我慢しろ!ゴキブリはこの程度じゃ死なんのだろ」

 

 エンデヴァーとかぶりは今日会ったばかりだ。それでもエンデヴァーは瞬時にかぶりの動き、反応速度を理解し、彼女の動きに合わせて脳無への不意打ちを成功させた。他を寄せ付けない個人主義のようでいてチームプレイにも長けている。 

 これがNo. 1の実力だ。

 だが、それでも脳無にとってはどうってことない。頭だけでも空を飛行しエンデヴァーから一度距離を置く。ダメージを受け、不利な状態になったら距離を置き体勢を立て直す。その動きを見てかぶりとエンデヴァーは理解した。

 

((この脳無、考えている))

 

 かぶりが見たUSJの脳無、エンデヴァーが戦った保須市の脳無。それらには見られなかった動きだ。喋るだけで無く考えて戦っている。

 

「エンデヴァー!加勢する!」

 

 その時、下方から半透明の拳のようなものが脳無へと放たれる。先輩サイドキックたちだ。

 先輩サイドキック達の攻撃に一瞬怯む脳無その隙にエンデヴァーやかぶりは攻撃を仕掛けようとする。

 

が、

 

「ジャ、邪魔ァあ!」

 

 脳無は声を上げると再生した胴体から白い脳無を3体、吐き出した。エンデヴァーとの一騎打ちに邪魔が入らないように妨害に出たのだ。

 

「そんなんあり?」

 

「考えてる余裕はない!俺が黒い脳無を倒す!BB、貴様は白いのを倒せ!」

 

 驚きの声をあげるかぶりにエンデヴァーは指示を飛ばす。その言葉に黒い脳無の強さが分かっているかぶりは不安になった。

 エンデヴァーでも無理かもしれない、オールマイトでないと倒せない(ヴィラン)。平和の象徴なき今、秩序は……。

 マイナスな思考がかぶりの脳内を締める。しかし、聴き慣れた軽薄な声が響く。

 

「周囲の()()()()避難は完了しました。BB、ここはNo. 1に任せるしかない。大丈夫、俺が背中押します。」

 

「……新米ヒーロー。俺を見ていろ!」

 

 トップヒーローの覚悟。

 誰かを救う為にやるべき事をやる。その意思が2人の言葉には宿っていた。

 

「……はい!………白いのと戦うんで見れませんけど!」

 

 かぶりはビルの外壁を蹴り、地上へと降りた白い脳無を追った。その背中をチラリと見た後、エンデヴァーは力強く脳無を見る。

 脳無はエンデヴァー達のやり取りとを見ながら身体を再生させている。

 

「ホークス、貴様の軽口が新人に悪影響を与えてるみたいだな。とっとと直せ」

 

「そうですか?生意気なのも可愛いと思いますけどね。俺みたいに」

 

「イラつくだけだ!!」

 

 そんな軽口を吐きながら2人は攻撃に移った。

 一方、かぶりは3体の脳無の位置を感知する。2体はサイドキック達が抑えている。しかし、明らかに戦力不足、今にもサイドキックは殺されそうだ。

 

(助けたいけど、今は)

 

 問題はフリーとなっているもう一体。その脳無は強靭な腕を振るい建物を壊し、そして、逃げ遅れた市民を見る。

 まず、狙いをつけたのは小学生ほどの女の子を抱えて走るサラリーマン風の男だ。脳無は拳を振り上げる。男は女の子を抱きしめ、迫り来る『死』の恐怖に怯えながら、それでも走り続けている。

 

(———探知しろ!)

 

 かぶりは空気の振動を通し、脳無の筋肉の動きを感知し、動きを把握する。逃げるサラリーマンの動き、女の子の震え、それらを感知する。

 脳無は拳をサラリーマンへと放つ。優先すべきは市民の命だ。かぶりは脳無と逃げるサラリーマンの間に割って入り、はホークスの刀で拳の軌道をずらす。

 

「え?」

 

 サラリーマンは突然、割って入ったかぶりに驚いて足を止めて振り返る。その様子を感知しながら、かぶりは脳無は一気に駆け寄り顎を蹴り上げる。脳無はそれにより2、3歩後退りする。

 

「早く逃げて! コイツ、割と強い!」

 

「あ、はい!」

 

 かぶりの叫びにサラリーマンはハッとした様子で逃げて行った。その様子を感知しつつ、かぶりは刀を右手で握りながら両脚と左手を地面につけて這うように構える。

 脳無は拳を構え、かぶりに向けて駆ける。動きを感知する。身体に当たるギリギリのタイミングを測り攻撃を回避し、拳がかぶりの顔の真横を通る。そのままぐるりと身体を回転させ一息に脳無の背後に回りこみ、遠心力を乗せて、脳無の頸へ後ろ回し蹴りを放つ。

 

「……くっ」

 

 普通なら頸椎を砕ける一撃だ。だが、脳無は普通じゃない。脳無は膝を突きつつ背後にいるかぶりへと裏拳を放つ。それを回避して脳天を蹴り飛ばす。それでも大したダメージにはならない。純粋な耐久とパワーだけでも規格外だ。

 

(けど、回復は無いみたい。だったら民間人がいなきゃ問題ない)

 

 脳無の筋肉の動きを感知、先に回避する。脳無は強いが、かつて彼女が相対したマスキュラーに比べれば明らかに劣る。

 拳や蹴りをギリギリのタイミングを狙い回避しカウンターを放つ。如何に耐久が高くても、回復が無ければじわじわとダメージは蓄積される。少しずつ動きが鈍くなり、そして大きな隙が生まれる。

 

「たぁああああ!!」

 

 刀を大きく振り上げ、全身の力を乗せて脳無の首筋を叩きつける。それでようやく、脳無は動きを止めた。

 

「よし、次!」

 

 上空で輝くエンデヴァーをみる。この距離があっても熱を感じる。目で追うことも難しい高速の攻防。それでいて一撃一撃全てが必殺級だ。

 だが、相手は脳無。どんなダメージからも回復していく。そんなことエンデヴァーもホークスも分かっている。

 

(けど、それでも2人は戦っている。)

 

 その2人を見て、自分が任された仕事、残りの白い脳無へと意識を向ける。残りの脳無達は先輩サイドキック達が抑えていことを空気の振動から感知する。

 

「いくよ」

 

 地面を這い、駆けつける。

 

 

 

「……これで!終わり!」

 

 先輩サイドキック達と合流し、残りの脳無らを無力化した。サイドキック達も肩で息をしており、かぶりも疲れを見せている。

 

「さすが、BB……。君が居なかったら……」

 

 先輩サイドキックのこの言葉にかぶりは首を振る。

 

「いえ、先輩達なら私が居なくてもどうにでも……」

 

 そう本心を口にたとき、かぶは空から()が降ってくるのを感知した。

 

「——-っ!!」

 

 慌てて地面に手をつき空を見る。だが、そこは壁なんてなく、代わりに熱風が空から吹き荒れた。発生源は空高く飛ぶエンデヴァーだ。

 赫灼熱拳・プロミネンスバーン。エンデヴァー の持つ最大火力の大技で脳無を焼いているだ。それが大気を瞬時に熱し、()のような突風を引き起こした。

 

「エンデヴァー……」

 

 エンデヴァーの炎は脳無を焼き尽くした。しかし、その熱量はあまりにも異常で、エンデヴァーの命を削っていることは明白だ。

 だが、それでも脳無を倒し、地上で再び立ち上がる姿にかぶりは目を逸らす事が出来なかった。脳無と戦うその姿は力強く、狂気的で、心強かった。釘付けになる程、彼の輝きは確かに強く夢中になるものだった。

 

 だからこそ、気が付かなかった。

 

 倒れるエンデヴァーに駆けつけたホークス。その2人に近づく、1人の男に、誰も気が付かない。

 かぶりが気がついたのは蒼い炎の壁が2人を囲んだ時だった。何が起きたのか分からない。だが、あの"個性"は知っている。()()林間合宿にいたらしい"個性"だ。

 

「先輩!」

 

 かぶりの言葉に先輩サイドキック達も頷いた。全員、疲れ切っているが、そんなもの動かない理由にはならない。

 

「ああ!救援に向かう! BB!お前は先行け!!だが、無理はするなよ!」

 

 先輩サイドキック達は炎に向けて走り出す。しかし、それでも"個性"の違いでかぶりの方が速い。「了解!」と、返事をしてかぶりは走り出した。

 街を這い、駆け抜ける。その時、かぶりとは別方向から炎の中にとび込む人影があった。

 

「アレは?」

 

 ドクン、と、心臓がなる。

 嫌な思い出が溢れるが、しかし、それ以上に喜びが溢れる。

 間違いない。彼女は……

 

(落ち着け!今は仕事中、2人を助ける!)

 

 思考を切り替え、全力で這う。そして、炎にとび込む。が、熱を一瞬感じただけで炎はなくなった。異常な感覚に探知能力と視覚で周りを探る。

 

(炎が消えてる?)

 

 炎が消えていっている。そして、泥のようなものに包まれる男と、そして、それに蹴りかかるミルコがいた。

 

(アレが(ヴィラン)か!)

 

 即断即決。

 地面に着地した瞬間に推定(ヴィラン)に向けて駆け、蹴りかかる。が、蹴りは当たらず空を切った。

 さっきまでそこに居た男はおらず綺麗に居なくなっている。

 

「転送系の"個性"……?」

 

 かぶりはそう呟いたが、ミルコは「これ神野んときの」と呟いている。居なくなった(ヴィラン)にひとまず一件落着と、ホークスは呟いたが、エンデヴァーは否定した。

 

「こらは、はじまりだ。」

 

 ともあれ、こうして、この日の事件は幕を下ろした。

 エンデヴァーやホークスは病院へ行き、ミルコは不完全燃焼のようだったが2人が病院へ搬送されるまでは付き添ってくれていた。

 

「あ、あの、今日はありがとうございました!」

 

 警察や消防達が後片付けをする中、かぶりはミルコに頭を下げた。その様子にミルコは豪快に笑った。

 

「硬いな! だが、私は何もしていない。被害がここまで少ないのはお前らのおかげだ。BB、そこは間違いなく誇っていい。」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 再度頭を下げるBBにミルコは気まずそうに頭を掻いた。理由はBBとどこかで会ったことがあるような気がしてならなかったからだ。

 

「じゃあ。私はもう行くぞ。」

 

 そう跳びたとうとするミルコにかぶりは咄嗟に「待って!」と、声をかけた。ミルコは不思議そうに振り返える。

 

「……あの!」

 

 

 

 場所は変わり雄英高校の学生寮。

 エンデヴァーと脳無の戦いはA組メンバーにも様々な感情を与えていた。友人の父の大怪我、平和の象徴の不在、そして、新たなNo. 1。規格外な脳無、それらはあまりにも重いもので、寮の共有スペースは静まり返っていた。

 そんな中、ピロン、と、響香のスマホに通知が来た。表示を見るとかぶりからだ。

 あの戦いはホークスの管轄で行われていた。なので、ホークスのサイドキックをしているかぶりが心配で響香はメッセージを送っていたのだ。

 メッセージアプリを開いてみると、かぶりからミルコとのツーショットの自撮り写真が送られて来ていた。背景はどこぞのビルの屋上であり、撮影するために場所を移動したのだろう。

 

「…………アイツ……」

 

 その楽しげな写真に響香はつい悪態をついてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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