"個性"ゴキブリ 作:ゴッキー
何度直しても違和感ある!諦めた!
ガラス越し区切られたふた部屋に薫とかぶりがいた。薫は無地のスウェット姿で手錠をつけられている。かぶりは楽しげに話しており、薫も楽しそうに話を聞いている。
「でね。A組とB組のバトルに2人も普通科から編入候補が来たんだって。1人は体育祭の時に私を洗脳して来た人。もう1人は普通に強かったって。」
「友達たちも元気なんだね。」
薫はポツリと呟いた。彼女の声はスピーカー越しに聞こえる。他愛のない会話だ。しかし、それでも2人にとってはかけがえのないものだ。
「……そろそろ時間だね。」
壁掛け時計を見てかぶりは立ち上がる。楽しい時間は終わりを告げる。
「…………うん。かぶり、楽しかった。ありがとう。」
「また来るね。」
看守たちに挨拶をして刑務所から出る。公安直属というのは便利なもので面会の約束を取り付けやすい。さらに、あそこでの会話は公的な書類に残らないようになっており、正体バレを気にせず会話が出来る。
(いや、まて、公安ヒーローじゃなければそもそも薫お姉ちゃんとの関係とか気にしなくていいんじゃ……)
公安じゃなければ、正体バレを気にせず沖かぶりとして活動できるのでは?と考えてしまう。
とはいえ、ヒーローの身内に
なんとも難しい問題だ。と、深く考えるのをやめてこの日の仕事に戻る。
今日の仕事はファンを文字通り食い物にしているヒーローの処分だ。エネルギーヒーロー、イーティング。触れた対象のエネルギーを吸収することが出来る"個性"だ。吸収したエネルギーを放出したり、自分の体力に変換したり、傷を治したりと近年活躍しているヒーローである。
しかし、彼は吸収したエネルギーの味に取り憑かれてしまった。取り分け、自分へ親愛を向けている相手のエネルギーを欲するようになった。
「それで、ファンの娘達を騙して近づいて、食べちゃったと。」
魚の干物のような少女達へ心の中で手を合わせた後、かぶりはロープで縛り天井に吊るしたイケメンを見る。このイケメンこそイーティングだ。
ファンのフリして近づいて、部屋に案内された時に襲われたが返り討ちにしたのだ。エネルギー吸収はゴキブリの生命力との相性は悪く、吸収されつつゴリ押して倒した。
今回の作戦の都合上、ヒーローコスチュームでは無くかなりオシャレなワンピースに結構本気なナチュラルメイクをしている。
「くそ!何なんなお前! 僕のファンじゃないのかよ!」
「違うよ。私の推しはミルコだし。ほらこれ見て、こないだ写真撮って貰ったんだ。」
嬉しそうにスマホのホーム画面を見せるかぶりに、イーティングは助かるべく身を捩る。ヒーローとしてこれまで修羅場を超えてきた。だからこそ分かるこの手合いと交渉は無駄。会話なんて意味なんてない。隙を見て逃げるしか無いのだ。
「逃げられないよ。」
グサリとお腹にナイフを刺す。あえて急所を外している。
「ここは君が犯行に及ぶ場所。助けが来ないことは貴方が1番わかってるでしょ?」
キャッキャと笑うかぶり声が部屋に響いた。
◆
「……………は?」
翌日、ホークス事務所でかぶりは引き攣った笑みを浮かべた。昨日は人を殺せて、薫とも久しぶりに話して、とてもリフレッシュできた1日だった。しかし、今日は朝からその全てが吹き飛んだ。
そこにはかつて同じクラスだった常闇がいたのだ。
「BB、彼はツクヨミ、雄英からのヒーローインターン生だ。ホークスは暫くいないから俺たちで面倒を見ることになった。少しばかり鍛えてやってくれないか?」
先輩サイドキックの言葉を聞いて慌てて、ヒーローコスチュームのタートルネックを伸ばしてマスク状にして口を覆った。仕事中以外は降ろしているが、今は別だ。
とはいえ、マスキュラー戦での脱皮により身長体型共に成長している。さらに、葬式で用意された遺体もマスキャラー戦で脱皮したという設定で、姿形を今のものとは異なるものになっていた。
なので、早々に気がつかないだろう。というのりも死人がいるとは誰も思うまい。
「…………分かりました。私はBB、ヨロシクオネガイシマス。」
ぺこらと頭を下げるかぶりに常闇は少し面食らった。
「あ、ああ、ツクヨミです。こちらこそ、お世話になります。…………」
常闇は頭を下げつつもかぶりの顔を見る。かぶりは慌てて視線を逸らしつつ、敢えて聞いた。
「どう、しました?」
「いえ、少し、知人に、似てまして。」
「………………そう。なんだ………」
沈黙が流れる。
(気まずい…………………。というか来ること説明しとけよホークス!)
「……BBは最近サイドキックに?」
常闇の質問にかぶりは遅れて答える。
「そうだね、です。初めは直属というか先輩達とは別枠だったから、本格的にサイドキックになったのは本当に最近なんだ、デス。」
(なんだデス?)
「直属?」
常闇はかぶりの言葉に首を傾げた。その返答にかぶりはなんで答えようかと考えていると先輩サイドキック達が答えてくれた。
「ツクヨミ風に言うならば一番弟子みたいなものだよ。実際、BBはかなり強いよ。すでにファンも多いし」
「いや、一番弟子なんていいもんじゃありませんよ。」
かぶりの言葉は常闇にとって謙遜のようにしか聞こえなかった。常闇が師として仰ぐホークスの一番弟子。その言葉に常闇はかぶりに対抗心のようなものが生まれた。
相手はプロのヒーローだから、勝てるわけが無い。しかし、あのホークスの一番弟子の実力が気になった。
「失礼を承知でお願いします。手合わせ願います。」
「え?」
まっすぐ見る常闇にかぶりは気まずさと、そして、罪悪感を覚えた。まっすぐヒーローを目指すA組と異なり自分はズルしてヒーローになった身だ。そんな自分にその真っ直ぐな瞳には相応しく無い。
「熱いね、ツクヨミ。BB、お願いできないか?」
先輩サイドキック達も一戦をお願いしてきたため、かぶりも折れるしか無かった。
そして、事務所内の訓練室。板張りの体育館のような部屋で数メートル離れた場所で2人は向き合った。常闇は軽いストレッチをしており、かぶりは色々考える。
(私はズルしてヒーローになったけど、)
ズルしてヒーローになった。それでもヒーローとして働いてきたのだ。
だから、負けるのはなかん嫌だ。と、変ななところで負けず嫌いな性格が出た。
かぶりと常闇は向き合う。そして、その間に先輩サイドキックが立つ。そして、右手を挙げて「初め!」と声をかけた。
その途端、かぶりは地面を蹴る。ゴキブリの俊敏性。常闇が"個性"を使う前に相手を倒す。先手必勝。
(取った!)
かぶりの常闇の眼前に蹴りを放つ。
しかし、かわせないまでも、常闇は両腕でガードの態勢となる。だが、そんな防御、意味なんてない。ゴキブリの俊敏性を作り出す脚力。その力を"個性"無しで防ぐ事は至難だし、"個性"を発動しても防御は間に合わない。
常闇の"個性"は中距離の攻撃防御には優れているが、ゼロ距離には弱いのだ。
だが、常闇は両腕を
「
ヒーロー仮免許取得のために身につけたかぶりの知らない常闇の必殺技だ。黒影で覆った腕で攻撃を弾き、そこから黒影の拳でカウンターを放った。
(………さすが常闇くん。まともに戦ったら私より強い。)
攻撃を感知しながらかぶりは考える。回避も間に合うだろう。そこから持久戦に持ち込むのありだ。しかし、安定して勝つ方法が思い浮かんだ。
敢えて攻撃を受けた。黒影の攻撃をモロに受けたかぶりは、ゴフッと人体から鳴ってはいけない音と共に数メートル吹き飛び壁へと衝突した。そして、崩れ落ちるように地面に倒れた。その様子に審判役となった先輩サイドキックは小さくため息をついた。
「は?」
対して常闇は言葉を失った。相手はプロヒーローだ。それもホークスのサイドキック。ここの事務所のレベルの高さは以前のインターンで彼も知っている。なのに、一撃で負けてしまった。あっけに取られた常闇は深淵闇躯解除してしまった。
その様子をかぶりは感知する。
うつ伏せに倒れているため見え難いが、彼女の皮膚は黒茶色に染まっている。防御力は上がるがスピードが極端に落ちる為滅多に使わない大技、『全力の外骨格』である。それを解除する。
瞬間、かぶりはその場から消えた。
「はい、死んだ。」
常闇の首筋に包丁を添えられた。倒れた状態から瞬時に身体を動かしたのだ。
「なっ、」
常闇は言葉を失った。首に触れる冷たい包丁の感触に、ドクンと心臓が震える。死んだ。包丁が首のそばにある、間違いなく、彼女が本気なら死んだのだ。
ヒーロー科の授業でも身の危険を感じる授業はあった。だが、それらを大きく越える死の感触に恐怖した。
「勝ったと思った? いい一撃だったけど油断したのがダメだ、でしたね。」
そう言ってかぶりは包丁を腰の鞘へと戻した。
その様子に常闇はようようやくひと息ついた。しかし、首に残る冷たい感触が残り、そこを手でさする。
「常闇くん。卑怯な方法でごめんね。君の"個性"強いから私にはこう言うやり方しか無いんだ。」
「………いえ、負けは負けです。それに、これが
これは常闇の本音だった。
確かにヒーローらしくない卑怯な方法だった。しかし、首筋に触れた冷たい感触。包丁の感覚が未だに残っている。もし、相手が
きっと、それを教えるために敢えて卑怯な方法を取ってくれたのだろうと、常闇は勝手に納得した。
「……に、人気でないから真似しない方がいい、ですよ?」
かぶりの呟やきに常闇は小さく頷いた。
◆
こうして常闇のホークス事務所でのヒーローインターンが始まった。
かぶりは正体がバレないかヒヤヒヤしながら過ごしたが、数日も過ぎれば慣れて来て落ち着きを取り戻し始めていた。
そして、今日はかぶりは常闇を連れてパトロールをしていた。
「BBの戦い方…………ミルコに似ていますね。」
休憩と称してビルの上でオニギリを食べるかぶりに常闇は言った。常闇もかぶりから奢ってもらったオニギリを持っている。
「……………………あ、うん、ミルコリスペクト?だからね。ほら、エンデヴァーがこっち来た時の写真。」
と、かぶりは正体が常闇にバレないかヒヤヒヤしながら写真を見せた。よしんば話題が自分の戦闘方からミルコとのツーショットに移れ!という狙いだ。
対して常闇はその様子に少し笑みを浮かべた。
(似ているな)
世の中、似た"個性"というのは多くいる。さらに親戚全員を知っているわけがない。祖父の妹の孫、みたいな遺伝的に同じ"個性"だが、面識がないなんて事も多くあるだろうし、切島と鉄哲のようなたまたま似てる人もいる。別段不自然ではない。
しかし、"個性"以外の部分が似ていると思った。動きや性格、それらがどうしてもクラスメイトと重なった。だからなのか、つい、口を開いてしまった。
「BB、沖かぶり、という人を知っていますか?」
すでに亡くなり、もういなくなったクラスメイト。もし、BBがかぶりの親戚だったとしても何がどうなる訳ではない。聞いたところで、何かある訳ではない。
けれども常闇は聞かずにはいられなかった。かぶりと特別に仲が良かったわけではない。それでも、常闇は聞いてしまった。
「知らないよ。だれ、その人?」
かぶりの真っ黒い瞳が常闇を見る。感情を察さられない雰囲気に常闇は視線を逸らした。
「そう、ですか。忘れてください。」
顔を落とす常闇にかぶりはどうしたものかと頭を捻る。その時、無線が入る。そして、短く言う。
「……………………ツクヨミ。出番だ! 来て!」
かぶりは迷いなくビルから飛び降りる。その動きの早さに常闇は慌ててついていく。このスピード感に常闇は未だになれないでいた。
「BB!!」
マントでくるんだ黒影で身体を持ち上げて飛行する。黒の堕天使と呼ばれる技だ。後ろを追いかける常闇を感知するとかぶりは言う。
「なんか、"個性"で暴れてる人がいるんだって!解放万歳ってさ!」
「解放万歳?」
「うん!昔の人の自伝が流行って、そこからその思想が広まってるんだ。多分、象徴の不在。不安が伝播してる。」
ビルの谷間を駆けるかぶりとその後に続く常闇。2人は全力で現場へと向かいつつ、情報を共有する。
「
「だが、行かないわけにはいかない。」
「そう言う事。みんな不安がってる。この時点でヒーローの負けだ。だから、1秒でも早く現場につき。少しでも不安を減らせる。勝てなくても
炎を撒き散らせながら、歩いている。街は燃え、人々は逃げ惑う。これだけの規模だ、逃げ遅れた人もいるかもしれない。
「異能!解放せよ!」
人々の不安が広まる。たった1冊の本の思想が、不安を爆発させ
「…………た、助けて!」
「に、逃げろー!」
警察も救急もヒーローも通報した瞬間に出現するわけではない。この都会でも早くても数分、遅ければ数十分以上かかるだろう。その間、人々は助けを求めて逃げ惑うだけだ。彼らを見てかぶりはかつての自分を思い出す。
(助けが来ないのは怖い。あんな思いは誰もして欲しくない。これも、私の本音だ)
「一撃で仕留める!常や、ツクヨミは逃げ遅れた人の避難を!」
常闇の返事を待たずに、かぶりはビルを蹴り加速する。炎によって空気が熱くなる。だが、こんな熱、エンデヴァーと比べたらぬるい。
—-蟲堕蹴《ゴキフォール》・BB版
「よし」
足の裏がメチャクチャ痛いがこの程度なら問題ない。
気絶し炎が消えた
そして、辺りを見ると
しかし、逃げ惑う人々、泣いている子ども、唖然としている大人達、沢山いる。
昔のことを思い出す。
(だからこそ、面白いんだけど。)
先日の仕事を思い出しニヤけそうになる顔を押さえながら小さく息を吸う。
「みなさん!
そう叫び、常闇と共に建物から人々を逃がしていく。移動速度の速い"個性"の都合上、かぶりは早く着いてしまったが、あと数分もすれば救急や他ヒーロー、先輩サイドキック達も駆けつけるだろう。彼らとの連携を高めるべく、かぶりは素早く現状を把握していく。
「ツクヨミは空から被害範囲の確認して。」
思考を回しつつ、避難誘導の進め方を考える。"個性"によるものなのか気絶した瞬間にあたりの炎は消えてしまったが、被害がなくなるわけではない。それでも、火傷を負った人、煙を吸ってしまった人も多くいるだろう。
しかし、かぶりにとってこの手の避難誘導は苦手だ。というよりも経験が足りたい。公安により一通り教えられはしたが、あくまでも机上の話だ。その辺はちゃんと訓練をしているA組の面々の方が避難・救助に関しては優れているだろう。
(どうする?)
「お母さん!お母さーーん」
その時、少女の鳴き声が聴こえた。その方を見ると道の端で背中に大きな火傷を負った女性が少女を抱きしめていた。女性はか細いが息はしているが、今にも気絶しそうだ。
助けが来ない恐怖。かつてだらも来ない心細さを思い出した。そして、自分が助かってしまった悲しさ。だが、目の前の少女の母はまだ生きている。
つい出てしまった言葉にかぶりは自分自身に驚いた。しかし、今はそれよりも救助だと、泣きじゃくる少女へと歩み寄る。女性へと意識を集中する。
心拍、呼吸、それらを読み取りきっと"個性"のある治療を受ければ回復するだろうと予測した。
「大丈夫!君のお母さんは無事だよ!」
医者でもない自分がそんなこと軽々として口にしてはいけない。しかし、1人の少女を安心させたいってだけの
手早く、女性の体位を整え呼吸を楽にさせる。
「安心して、君は………っ!」
少女に声をかける集中を切らしていたことにかぶりは後悔した。
「異能、を解放せよ」
(くそ!私のバカ!)
「ふざけるな、なんで、俺だけ、俺だけ!!!!」
男の"個性"は嫉妬の炎。自分の嫉妬心を炎へと変換する。男は朦朧とする意識の中、炎を拳へと集め、放った。狙いはかぶり、いや、近くにいる泣いている少女だ。
(間に合わ……)
探知能力を広げる。気がついている人、いない人。こちらを見る常闇、到着した先輩サイドキック。彼らは間に合わない。思考を回す。
ヒーローを目指す義姉、親友を思い出す。慌てているサイドキック、そして、ヒーローが暇になる社会なんて馬鹿げた夢を見る上司が脳裏によぎる。
「いちかばちか!」
炎が少女達へと迫る。かぶりは覚悟を決める迫る炎に対して両手を広げ迫る炎の前に立ち、全身を全力で外骨格で硬化させる。
(熱い!)
炎が直撃し、肌が燃える。彼女の硬化能力はそんなに高くない、切島や鉄哲に比べれば圧倒的に劣る。だが、それでも根性で耐える。
(どうする? このまま突っ込む?だめだ、移動したら2人が炎に包まれる!)
背後にいる少女と女性の悲鳴が聞こえる。いくらかぶりが壁になったとて炎の全てを防ぐことなんて出来ない、早くなんとかしないと助けられない。
(どうする?私のミスだ!くそ!)
「
その時、炎が黒い影で完全に塞がれた。突如、かぶりを焼いていた炎は無くなった。
「と、常闇くん?」
彼の"個性"は
「先輩?!」
「すまん、遅れた!」
炎が無くなり先輩サイドキックを確認すると、かぶりは崩れ落ちるように膝をついた。服の多くが燃え尽き、火傷で真っ赤に腫れた肌が露出している。
「いえ、私が先走っただけです。それより、後ろの2人を」
「あ、ああ。だが、お前も病院な。生命力はあっても耐久力はそこまでなんだから……」
「……はい。」
こうして、かぶりは救助した2人と共に病院へと搬送されていった。とはいえゴキブリの生命力。正確には彼女の"個性"はゴキブリっぽいことがゴキブリ以上に出来る"個性"である。ある意味ではゴキブリ以上の生命力ですぐに回復してしまう。
そのため、翌日には元気になっていた。
「暇だ」
元気になっても退院が出来るわけではない。医者からしても、さすがに翌日では「様子を見ましょう」として退院を許すわけもなかった。やることもなくボーッと天井を見ると、扉がノックされた。返事をすると扉が開いた。
「失礼します。」
常闇だ。彼は会釈をするとおずおずと聞いてきた。
「BB、お身体は?」
「うん、もう元気。………ごめん。私の判断ミスで大変なことになることだった。常や、ツクヨミのおかげで助かった。」
これはかぶりの本音だった。
あの時、ちゃんと気絶さていれば、起き上がったことに早く気がついていればこんな事にはならなかった。ヒーロー失格だ。
「いえ、若輩な自分に言われても何もならないが、あの時、BBあの時、ヒーローでした。俺は咄嗟に動けなかった。思考が追いつかず、反応が遅れてしまった。だから……」
常闇が励まそうとしているのを感じてかぶりは嬉しかった。
「それとホークスからこれを預かって来ました。BBへのファンレターです。」
「ありがとう。」
あけて読んでみると、そこには先日助けた少女からの手紙だった。本当は直接お礼を言いたかったそうだが、入院先が分からなかったため手紙を送ったそうだ。
(私は自分のミスをリカバーしただけだ。)
そう思うと素直に喜ばなかったが、確かにこの手紙は活力になった。
「………ありがとう、ツクヨミ。…………そう言えば、そろそろ雄英に戻るんだっけ?」
「はい。今日これで戻ります。短い間、お世話になりました。」
「うん、私も勉強になった。ありがとう。」
かぶりは懐かしそうにそう言った。