"個性"ゴキブリ 作:ゴッキー
体育祭、開幕
「おはよう、耳郎さん」
「あ、沖、おはよう。」
かぶりが教室に着くと既に耳郎は席についていた。2人の席は近く、最前列のかぶりの左斜め後ろが耳郎の席だ。ちなみに、右斜め後ろが三奈であるため、仲のいい人と席が近く、かなりありがたい。
「……沖、身体は大丈夫なの?」
かぶりが席に着くと響香は机に身を乗り出して聞いた。その問いにスクールバックを置きながらかぶりは答えた。
「もう治ったよ。骨折くらいなら一晩寝れば治るんだ。リカバリーガールもびっくりしてたよ。」
以前、車に轢かれて腕がもげた事があったのだが、その時は1週間で新しい腕が生えてきていた。かぶりも自分自身でドン引きしたが、それくらいの生命力が備わっている。
ともあれ、その生命力もヒーローとしてはかなりの武器になるだろう。
「……それは良かった。あの事件の後、ボロボロだったから、心配だったんだ。」
「あ、ありがとう。でも、なんだか、は、恥ずかしいな。皆んなは大怪我なんてしてないのに、私だけ……。」
出久を除いてA組の全員はかすり傷程度で、大怪我なんて負っていない。唯一大怪我をした出久も"個性"の反動からくるもので
「そんなことないよ。ウチも1人だったらヤバかったし……。1人で切り抜けるのは凄いと思うよ。」
これは耳郎の本音だった。
あの時は八百万や上鳴が活躍したから切り抜けられたが、1人だったらどうなっていたか分からない。
「……。うん、でも、探知能力が無いと何もできないのが分かった。……だから……。こ、こんど、その。自主練に、付き合って、くれない?」
探知が封じられると脆すぎる。おそらく、現時点でかぶり最大の弱点だ。今後のことも考えると早く克服しなければならない。けれども訓練するにしても1人では出来ることが限られてしまう。
「うん、良いよ。」
響香がそう言った時に、予鈴が響いた。それがなると話を一旦切り上げて席についた。すると、学級委員の飯田天哉が「席につけ」と指示を飛ばす。あんな事件があったが、なんだかいつも通りの雰囲気に落ち着いており少し安心してしまった。
すると、本鈴と共にガラリと扉が開き包帯だらけの相澤先生が入ってきた。怪我を負っても休まず授業に出るその様は、ヒーローとしても教師としてもプロと言わざるを得ない。
しかし、彼がズタボロの体を引きずってまでやってきたのには理由がある。ある意味、彼にとって自分の身体
「雄英体育祭が迫っている!」
雄英体育祭。日本ではかつてのオリンピックほど盛り上がるイベントで、テレビ中継もされる。いい意味でも悪い意味でもここでの活躍は将来に大きく影響する。
例えば、ここで活躍すれば一躍有名となりスカウトなどが来る事もある。ここから名を知られ、そのまま人気ヒーローに、と言う話も結構ある。それほどまでに体育祭は生徒たちに大切な事だ。担任が怪我くらいで休める訳がない。
(ここで活躍すれば……)
体育祭は将来へ直結している。ヒーローを目指している人たちの気合が入らない訳がない。
「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね」
と、上鳴と話す響香の声をふと聞いた。確かにそうなる人も多い。
けど、それよりも気になってしまう事がある。
(あの2人あんなに仲良かったけ?)
そんなことをふと思った。かぶりは仲の良い男子として出久が上げられるが普段は特に話さない。そのせいなのか、男子と女子が話しているだけで恋愛を疑ってしまうお花畑なタイプである。とはいえ、本人に聞く勇気も無いし、今は体育祭だ。
緊張とワクワク感、そして、友人の恋愛事情に対するフワフワした感覚が渦巻いた状態で授業は進んだ。
そして、昼休み、
「なんだかテンション上がるな!!オイ!」
切島の発言はA組全員(緑谷出久を除く)の意見だった。体育祭という舞台に誰もが気合が入り張り切っていた。それは、もう、お茶子のキャラが壊れるほどだ。
「皆!! 私!! 頑張る!!!」
全然、うららかじゃない顔で張り切るお茶子は教室で叫んだ。そして、彼女と同じくキャラが壊れた者がもう1人いた。
「うん! 麗日さん!!体育祭、頑張ろう!! ア
うぉおおお!!っとかぶりは雄叫びを上げる。これまであまり絡みのなかった2人だが、もしかしたら近いものがあるのかもしれない。
とはいえ、全くの別人のように豹変した2人に三奈はどうしようかと頭を抱えた。そして、同じく驚いている響香の肩を揺らした。
「耳郎〜。沖が壊れたぁ。柄でもなくよく分からない親父ギャグ言ってるよぉ〜。」
「ま、まぁ、ギャグは、まぁたまに言ってるけど……」
しかし、話を振られた響香もどうする事も出来ず、自然鎮火するのを待つしか無かった。
「うぉおおおお!」
「うぉおおおお!」
◆
かぶりが落ち着いた後、三奈も交えて3人で昼食を取ることにした。
「……………お恥ずかしい所を、お見せしました。」
素に戻ったかぶりは顔を赤くして、友人2人に謝罪した。しかし、まぁ、驚いたが実害はなかったし、謝られる事ではない。
「それだけ、気合が入ってるってことでしょ?」
「そうそう、気にする事ないよ。」
響香と三奈はそう言うが、かぶりはそれでも恥ずかしかった。黒歴史決定である。
しかし、かぶりがあそこまで気合が入るのは仕方がない事だ。
現在かぶりは行政の奨学金支援により授業は全て賄われている。
その他にも、行政の給付型と貸付型の支援を一つずつ利用しているが、それでも薫にかなりの迷惑をかけているのは事実だ。(大学生が活用できる奨学金制度より貸して貰える金額は低いのである。)*1
少しでも迷惑をかけないためにバイトしているが、家にお金を入れようとしても薫はあまり受け取ってくれないし、家事全般をこなしているがそれでも迷惑をかけていることには変わりない。
これだけお世話になっているのだから将来、有名になってお金を稼いで出来る限りの恩返しをしたいのだ。
だから、
「……………私、絶対に優勝する。少しでも活躍するんだ。だから……。その、ま、負けないよ。」
静かに宣戦布告した。たとえ友人でも手を抜くことはできない。もしかしたら嫌われるかもしれない、なんて、脳裏によぎる。しかし、それとは裏腹に響香と三奈は少し顔を見合わせたあと、口角を上げて答えた。
「ウチこそ負けないよ。」
「うん、アタシも負けないからね。」
かぶりの闘志を真っ直ぐに受け止めてくれた。
勝っても負けても恨みっこ無し。友人として、ライバルとして、全力で戦う。その気持ちが溢れ出ていた。
そして、放課後。
A組へ敵情視察に来た人たちを掻い潜り、かぶりと響香、三奈は体育館に来ていた。雄英高校では体育館や自主練室などを先生に許可を取れば放課後や休日でも使うことができる。
「ふ、2人ともありがとう。付き合ってくれて」
そういうかぶりに2人は気にしていないと首を振った。もともと、体育祭が近いので自主練をしたかったため渡りに船だ。
3人は話し合いの結果、一対一で先に1発入れた方の勝ち。負けた方が入れ替わりってルールで組手を行うことにした。
まずは、響香対かぶりの戦いだ。かぶりは黒いヘアバンドで触角を頭に押さえつけて探知能力をわざと無くしている。
「はじめ!」
三奈の掛け声で、耳郎は右耳のイヤホンジャックでかぶりを狙う。それを寸前のところでかわすが、すぐさま左のイヤホンジャックがかぶりの脇腹を突き刺した。
「っ、瞬殺……。」
かぶりが呟いた通り瞬殺だった。響香の"個性"は、正確さと不意打ちの凶悪コンボが強みだ(出久談)。右のイヤホンジャックで隙を作り、左のイヤホンジャックで不意をつく。探知があれば普通に避けることが出来た簡単な一撃だ。
(だめだ、このままじゃ……)
そして、次は三奈と響香の組手が始まる。どちらも一進一退の戦いだ。自身の弱点を克服するためにかぶりは2人の戦いを必死に見た。
こうして時間は流れ、体育祭当日となった。
会場はかなり大きなスタジアムで数えきれないほどの人が観戦に来ていた。特にA組の面々は
(うわぁ、すごい見られてる。)
さらに、B組や普通科などから冷たい目線を向けられている。
それもそのはずで、まるでA組が主役かのような扱いなのだ。気分がいいはずがない。
「選手宣誓!」
壇上に立ったミッドナイトが力強く叫ぶ。はじめの言葉も挨拶も無い、ある意味雄英らしい始まりだが、校長先生の長い話などを予想していたかぶりには少し意外だった。
(先生が宣誓……。)
くだらない事を考えているかぶりを他所にミッドナイトは代表者を名指しする。
「爆豪勝己!」
(え? 爆豪くん!?)
かぶりの中のイメージとしてこういう代表とか、そういうのに1番向かなそうなのだが、やはり、優秀なことは優秀なのだと痛感した。
しかし、何かやらかしそうで、A組の面々の全員によく分からない緊張感が走った。
「せんせー。俺が一位になる。」
「絶対、やると思った!」
予想通り、爆豪はある意味彼らしい宣誓をした。その大胆過ぎる行為に大ブーイングが巻き起こる。しかし、コレは自信から来るものではなく、自分を追い込むためだ。
さて、そんな騒ぎなんてお構いなしに物事は進んでいく。というよりもこの、なんでも「さっそく」とドンドン進んでいくのは雄英高校の特色の一つともなっている。
「さて運命の第一種目!!……今年はコレ!」
そして、画面に今回の種目である『障害物競走』が映し出された。
コースはスタジアムの外周約4キロ。コースさえ出なければ何をしても構わない、いわばサバイバルレース。そして、予選も兼ねており多くの生徒が脱落するという。
(ライバルは、ここにいる全員。やるよ!)
スタート地点に移動しながら深呼吸をする。そして上着を脱いだ。下に着ているのは背中が大きく開いた黒いTシャツだ。障害物競争ならば羽を使う場面もあるだろうという考えだ。上着は袖を腰に結んでおく、どこかに無くしてしまっては勿体ない。
「スターーート!」
その声により生徒たちは一斉に走り出した。かぶりも遅れないように走る。しかし、人が多すぎて追い抜くことが出来ない。
(スタート地点から狭い)
さらに、競争のスタート地点にあるゲートが問題だ。そこは参加人数に対して狭過ぎる。押し合いへし合いで全然進めておらず、スタートゲートにすら辿り着けていない。
だが、ある意味かぶりにとっては好都合だ。
(コースから出なければ何をしても構わないんでしょ?)
「す、すいません! 通ります!!」
ジャンプして他の参加者の肩に飛び乗り、さらに踏み台にして飛翔する。人を踏み台にするのはあまりやりたくないが、ここで脚を止める訳にはいかない。
(緑谷くん? 悪いけど、先に行かせて貰うよ!)
参加者の上を通り、ゲートに入る。壁に跳び移り、這うように駆ける。ここで、他の人が足止めを受けている間に上位に行きたい。急いでゲートを抜け、飛び出す。
「っ! 轟くん……!」
地面が突然凍りつく、その氷は参加者の足をも巻き込み、足止めさせる。かぶりは寸前の所で飛行して回避する。他にも多くの参加者が氷を回避している。そう簡単には脱落する訳がない。
(とりあえず、今は走る!)
かぶりは凍った地面ではなく塀に貼り付き這うように駆ける。彼女以外にも凍った地面をなんなく突破している人は多いが、ほとんどは滑りながらなんとか走っているか、凍りつき動けなくなっている。
その時、巨大な何かが動き出したのを感知した。それも沢山だ。しかも、その感知には既視感があった。
(この感じ、入試の時の?)
その予想通り、入試の時のロボットが現れ峰田を吹き飛ばした。
そして、続々と0点の仮想
だが、かぶりは別だ。出現よりも先にその存在を感知していた。この差はかなり大きい。
(追いついた!)
先頭に追いつく。目の前には巨大なロボットが複数。入試の時は恐怖した存在だが、今は違う。
USJで襲ってきた
(それに、コレは障害物競走。やることは…………!)
足を止めていた轟を追い抜く。
その瞬間、かぶりは反射的に横に飛びのいた。彼女がいた場所を掠めて氷が出現し、ロボットを凍りつかせた。その攻撃範囲と精度、そして、かぶりが前に出た瞬間に「同時に狙う」という選択を取れる判断力。反応速度。
彼女は轟との間に、大きな溝を感じた。
だが、今は気にすることではない。
凍りついたロボットの隙間を抜ける轟を追おうと加速する。だが、
(ダメだ。崩れる!)
地面を蹴り、方向転換する。凍りついたロボットの隙間ではなく迂回する。そこには、ロボットが沢山いるが、通れないものは仕方がない。
「あの隙間通れる!」
誰かが叫んだ。しかし、その直後、轟が凍らせたロボットが傾き倒れた。それにより衝撃と土煙が周囲を襲う。その、風圧で一瞬、感知が使えなくなったため一瞬足を止めてしまうが、仕方がないことだ。
強すぎる衝撃はかぶりの探知を消し去ってしまう。
『攻略と妨害を一度に!!! こいつぁシヴィーー!』
プレゼントマイクのアナウンスが流れる。
確かにその通りだ。この一瞬で轟はどんどん前に進んでしまっている。
(っ、でも、やることは一つだ!)
一気に加速する。コレは障害物競走、戦う必要はない。
USJを切り抜けてかぶりは、弱点の他に自身の得意分野を知る事ができた。それは、逃亡だ。
攻撃をかわし、敵から逃げること、
一見、ヒーローには似合わない行為だが、"個性"の使い方としてしっくりとしたのだ。ある意味、考えてみれば当然である。
彼女の"個性"はゴキブリだ。天敵から逃げることだけで生き残ってきた虫だ。その力が使えるこの"個性"も、かぶりにとっては遺憾ながら、当然、逃げることに特化している。
それが、今回は活きた。
ロボットの攻撃を全てかわし、無視して、地面を這い駆け抜ける。
戦う必要なんてない、脚を止める必要なんてない。最悪、多少攻撃を受けても問題ない。
探知で周囲のロボットを把握し、地面を這い、突き進む。
『1-A爆豪勝己!下がダメなら上かよ!クレバー!!』
プレゼントマイクの実況が響く。当然と言えば当然だが、地面を這い進んでいるかぶりは、観客席や実況席から見づらいし、地味で目立たない。
誰も気に留めない中、2番手で第一関門を突破した。
『落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!!ザ・フォール!』
そのプレゼントマイクの声を聴きながらかぶりは飛ぶ。
彼女の飛行能力は低いと言っても、助走でスピードが乗っていればそれなりの速さは出る(機動性はお察し)。そして、地面に着地し、そのまま助走をつけて飛翔する。
(でも、やっぱり飛ぶの遅いな……。ロープの上走るよりは速いけど!…………。爆豪くん!)
対してかぶりの後方にいた爆豪はどんどんと加速していき、かぶりを追い抜いた。彼の"個性"である爆破は平たく言えば手汗が爆発している。そのため、身体が温まった時の方が威力が増すのである。
(負けてられない……。
『おっと、爆豪勝己2位に躍り出た! って、1-A沖かぶり、いつの間に2位だったんだ?!』
『第一関門、2番目に抜けたからな、あいつ。』
『マジか!?』
そんなプレゼントマイクと相澤先生のコントにも似た実況が流れる。しかし、かぶりはそんなことを聞いている余裕はない。ただ、全力で駆け抜け、第二関門を抜けた。
(負けない!)
第三関門までの普通の道を駆け抜ける。轟は見えるが追いつくにはまだ遠い。だが、勝己との距離はまだ近く、追いつける距離だ。今でも全力で走っているが、更に無理やり脚を動かす。
両手両足の筋肉が悲鳴を上げるが無視する。
「ッ!」
走る勝己と並ぶ。
ギロリと睨まれるが、かぶりは無視をする。今は勝己に食らいつくのがやっとだ。そもそも、すぐ後ろには集団がありいつ誰かに追い抜かれてもおかしくない。
『一面地雷原、怒りのアフガンだ!!!』
一方、轟は第三関門にたどり着いた。
ここは単純に地雷原だ。威力は無いが音と見た目が派手な地雷が所狭しと埋まっている。その都合上、地雷が減る後方ほど優位な仕組みである。地雷の位置はよく見れば分かるが、観察している暇なんて無い。
「俺には関係ねぇえ!」
勝己は"個性"で強烈な爆破を放ち、飛行して一気に加速した。この"個性"ならば空を飛ぶ事ができるため、地雷なんて関係ない。
だから、足元を気にして速度を落とした轟に一気に追いついた。
対してかぶりはここで脚を止めてしまった。
勝己が加速する際の爆風とそれに伴って爆発した地雷。この2つの衝撃はかぶりが脚を止めるのに十分な威力だった。
コレもかぶりの弱点だ。強い衝撃、もっと正確に言えば強すぎる空気の振動を不意に受けると、動きや思考を思わず止めてしまうのだ。ビビってしまうと言っても良い。
(どうする?)
この一瞬の停止は大きい。
脚を引っ張りあってるとは言え轟と勝己はみるみるうちに遠ざかっている。
後方から集団が接近しているのを感知した。急がないとここまで頑張ったアドバンテージが消えてしまう。
飛行能力を使って移動しても良いが、それじゃあ追いつけない。どんなに工夫しても普通に走った方が速い。さらに、動いていない
(仕方がない!)
意を決して地雷原を全力で走り抜ける。
ここの地雷は踏みつけて爆発するタイプである。だが、爆発するまでには多少のラグがある。全力で駆け抜け、爆発する前に移動する。
とはいえ、衝撃を完全にかわせる訳では無い。2足で走っていたらバランスを崩しかねないが、かぶりは四つ足だ。そのため、バランスは崩しにくい。
(後方が楽になっちゃうけど、前に追いつけないよりはマシだ。)
地雷の衝撃で探知はもはや機能しておらず、ほとんど状況を把握出来ない。というよりも把握する気は既に無い。かぶりは、ただ、前方を走る2人を目指すのみ。
「だぁぁぁああああああ!ついたぁ!!!」
『おぉ! ここで1ーA沖かぶり、前方2人に追いついたぁ! 何げにすごいな!』
「「っ!」」
轟と勝己が一瞬振り返る。このままでは不味いと、足の引っ張り合いをやめ、一気に加速する体制に入る。
その時、後方で強烈な爆発が起きた。そして、出久がその衝撃を利用して3人を追い抜いた。
まさに、青天の霹靂。
思いもよらない人物が、想像すらしなかった方法で一気に一位まで駆け上がった。
(緑谷くん!ここで!)
「クソがぁ!」
特に勝己は出久に負ける事が我慢できないのか雄叫びを上げ加速する。さらに、轟は後ろに道を作ってしまうが"個性"の氷を用いて加速する。
(この2人、まだ加速するの?)
——追いつけない?
かぶりは全力だった。それでなんとか追いついても、また離された。
勝てる気がしない。もう、打つ手がない。
だが、負けたくなんて無かった。
脳裏に浮かぶのは、USJ事件から脳裏に焼き付き忘れられない首の無い女性。しかし、不快でも怖くもなく、それどころか不思議と力が湧いてくる。
「負けない!」
気合を入れて3人を追う。
その直後、出久は鉄板を地面に叩きつけ、もう一度大爆発を起こした。彼はその衝撃を利用して地雷原を抜けた。それを追って轟と勝己も地雷原を抜ける。そして、かぶりも一瞬遅れて地雷原を抜けた。
(負けたく、ない!)
必死に3人を追う。
しかし、結局追いつけずに障害物競走は幕を閉じた。
結果、沖かぶり 第4位。
「……。負けた。」
このレースと"個性"の相性は悪く無かったのだ。なのに、負けてしまった。もう少し、何かがあれば勝てたかもしれない。しかし、それが分からない。その少しが遠く感じた。
その思いは今は仕舞っておく。
(まだ、終わってない)
◆
「さて、第二種目はコレよ! 騎馬戦!」
ミッドナイトの司会で第二種目が発表された。
それぞれ2人から4人の騎馬を自由に組む。そして、それぞれ障害物競走の順位によって得点が割り振られる。そのポイントの奪い合いだ。
得点は最下位が5ポイントで順位が上がるごとに5ポイントずつ加算される。しかし、一位のみ1000万ポイントだという。
(うそ、どうしよう)
ルールは分かりやすいが、この種目はかぶりにとって1番苦手とするものだった。
なぜなら、彼女が1番嫌いな言葉は「2人組を作ってください」で、2番目が「好きなメンバーでグループを作ってください」、3番目が「沖さんと組んでくれる人はいませんか?」である。
この手の事はトラウマもので苦手なのだ。
だが、今回はその心配は無かった。
「おい、ちょっと、良いか?」
メンバーを探すかぶりに普通科の少年、心操人使が話しかけてきた。
「……。は、はい、なんでしょう。」
そして、当然だがかぶりは何も考えずに応対してしまう。
こうして、彼女の騎馬戦は
おそらくヒロアカssで最高レベルに短い騎馬戦。
かぶりの家庭事情
リアルな現実の制度や組織と照らし合わせると、ツッコミどころは満載。所詮二次創作ですので、許して。
障害物競走の順位の変動、
おそらく、アニメでは勝己は地雷原で轟に追いつくまで、2人の間には集団にいたと思われます。しかし、この話では早めに集団から飛び出ています。