タイトルに意味はありません(
やられたら捻って返す。それが私という作者ですw
これまたとある夏の日。
具体的には、守矢神社で紫と再会してから三日ぐらい経った。
紫からの応答も特になし。なので『彼』の部屋で私は《夜は短し歩けよ乙女》を勝手に借りて読んでいた。
この本の持ち主である『彼』は今……おっと、どうやら昼食から帰ってきた模様である。まる。
「おかえり」
「……ただいま? というか……まぁ、別に読むのは良いんだけどさ……」
「いやはや、久々に読むと面白いねぇ」
「聴いてねぇ……いや、何か……一言とかないか? 普通」
「いやいや、聴いてたよ? 一言言えば良いんでしょ? この本棚、全部読むから」
「しかも決定事項ですかい」
「ホルモー!!」
「違うから。それ全く違うからな?」
と、相変わらずのボケとツッコミをしつつ、私は読書をして『彼』は宿題を片付け始める。
外に出掛けるにもコイツ、つまる所私が居るから、という思考回路を経て到達したのが部屋で出来る勉強……と。
……ま、夏休み始めに宿題を片付けるのは別に良いけどさぁ……。
「……夏休みギリギリまで宿題を残して人に助けを求める。ってのが良くあるパターンじゃない?」
「
「おのれリア充」
「違う意味だから、それ」
な〜にやってるのかなぁ〜?
後ろから覗いてみると、国語の宿題をやっているようだ。
……古文……『かぐや姫』……。
「ぷっ、クックックックッ……」
「……何か間違えたか?」
「いやいや……かぐや姫ね、ふふ。ハイハイ、輝夜ねぇ」
あんなおてんば姫様がさ? こんな美化されて日本最古の物語になってるんだもんね。笑っちゃうよ。
……まぁ、妹紅の事は史実にはない事だとして置いといて。
未来の技術云々。ついさっきまで読んでいた本の内容を彼女と話していたのだから、昔というか未来というか、中々矛盾した状況でつい笑ってしまった。
「……知り合いです。ってオチ……とか?」
「
「……」
「ま、ちょっとした友人さ。今どこに居るのかは知らないけどね」
もうこんな御時世、安全な場所なんて《幻想郷》ぐらいしか思い付かないけどねぇ。
唯でさえ月に行く技術が発展してるんだし、国家を見張るとかは向こうもしてるだろう。私は月に何があるのか何も知らないけど、それでも月の軍勢と退治した事から予想は出来る。
しっかし、翌々考えて見れば永琳も向こう、つまり月の使者で偉い立場だった訳だから、それなりに人を使う事が出来る立場なんだよね。指揮者とか、指導者とか、そんな意味で。
……彼女の頭脳で国家の影で案外活躍していたりして。
うん……それはそれでありそうかも。
そこまで考えた所で、『彼』が冷や汗を流しながらこう呟く。
「……マジありえねぇ」
「フフッ、あんなおてんば姫様がこんな美化されてるんだよ? 笑っちゃうよ」
「あー……本当に逢っていたんだな……」
でもまぁ、竹取物語と結末が違っていたり、月には実際に生物が居たりするんだけどね。
史実にはない事を知っているというのは、中々に優越感というのがあるけど……まぁ、あまり当時の事を思い出したくはない。
「じゃあ古文も全部読めるのか? なら宿題やって欲しいんだけど」
「はい問題、キミの得意科目は?」
「は? 一応……理数系だけど?」
「そんなキミ、というか私に出来るとでも?」
「……いや、お前その当時の時代に生きていたんじゃないのか?」
「妖怪は、書や、手紙など、使わな~い♪」
「うわぁ……卑怯くせぇ」
「数学ならやるよ?」
「いや、それは俺がやるから」
……今も昔も、数学は大好きな訳ね。私は。
結局、宿題は『自力でやるべき』という結論に両者とも到ったので、私は読書に戻る事にした。
ふむ……『こうして出逢ったのも、何かの御縁。』とは良い言葉だ。次の機会とかに私も使ってみる事にしよう。使うチャンスが有るかどうかは置いといて。
さてさて次に《HUNTER×HUNTER》を読むこととしよう。
……これ、初期と後期で大分作風が変わったよねぇ……これを思っているのは私だけかも知れないけど。
……という事を『彼』に話してみると、
「それは俺も思ってる。でも、それも含めて作品を楽しむってのも、読者の
「うわ、何かっこよく決めてんの?」
「すげぇ辛辣なコメント返しだ」
まぁ、確かにそうかもね。
役割……Roleねぇ……。
「わざわざMGS2に引っ掛けなくても」
「何かフッ、と降りてきた」
「何か降臨でも為されたんですか」
「四文字のヒトとか」
「おいぃ!? 何とんでもないモノ降ろしちゃってんの!? 世界が滅ぶわ!!」
「閣下とか」
「あの御方が人間の身に降りてくる訳ないでしょうが。金髪の青年姿か車椅子の老人か子供姿で直に下界に顕れるでしょうよ……」
「メカ天使とか」
「眼から《シナイの神火》出す気ですか」
「蠅とか」
「王を着けなさい王を。《死蝿の葬列》が飛んできますよ」
「人修羅とか」
「《地母の晩餐》? それとも《至高の魔弾》?」
「十七代目とか」
「《赤口葛葉》ですか」
「なんで刀の名前を出したし」
「気分的に。というか勉強しなさい」
「お前は俺のお母さんですか」
「年齢的にはアンタの百倍は生きてるわよ」
「……文字通り、桁が違った……しかも百って……」
「五倍でも孫クラスでしょうに……ハイハイ、雑談終わり!」
「ヘイヘイ」
「……始めたの、オマエからじゃ……」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何も」
雑談も終わり、ゴンくんの冒険もひと通り読み終わったので、今度は『空想科学読本』を一巻から読み始めよ。
ふむ……これも久々に読むと、私でも出来そうな技がチラホラと……。
……うし。
何か彫刻でもしてみようかな。北海道名物鮭をくわえたヒグマとか。
いや、いっその事、『ヒグマをくわえた鮭』でも良い気がしてきた。
Hahaha, 中々痛快なジョークである。
「何か木材ないかな?」
「どっかの山から伐ってこい」
「りょーかい」
なら、スキマで裏山の方にでも行って切り落として来るかね。
いやぁ……久々に開くなぁ、スキマ。
「行ってくるぜよ」
「行ってら」
いざ、オープン♪
▼▼▼▼▼▼
スキマに入るのも三百年振りだ。
私は紫に能力を貸して貰っている身だから、八雲一家から逃げ出した後、スキマを使うと位置がバレると思って使わなかったんだけどねぇ……。
紫や藍に逢っちゃったし、戻る事も決まったから普通に使ってやろう。
とか考えていると、その人物が現れる。
『噂をすれば』って奴かしら? それはそれは……誠に『妖怪』らしい。
「あら、詩菜ちゃんじゃないの」
「お、紫さんじゃあらせんか。お久し振りです」
「ええ、三日振りかしらね」
スキマを通り抜けようとすると、卓袱台に肘を付いてお茶を飲む紫さんが現れた。
……待っていたのかしらねぇ?
「どうしたのさ? こんなスキマで」
「守矢神社からの連絡と、貴女の観察……かしらね」
「……ふぅん?」
私の観察……ね。
何処かで、何かのスイッチが入った音が、聴こえた。
「先んじて言っておくよ? 『彼』を幻想郷に引き込むつもりなら、私は何がなんでも反対するよ」
「あらあら、そんな興奮しちゃって」
飄々とした態度でお茶を濁す気だろうけど、そうは問屋が卸さない。
いや、私が卸させない。
「例え私が死んでも、『彼』が幻想に引き込まないと死ぬとしても、『彼』には触れさせない」
「……何が貴女にそうさせるのかしら? もしかして『彼』に惚れたりしたのかしら? フフフ」
「惚れる? ……まぁ、もしかしたらそうかもね」
「あら? そこまで言っても良いのかしら?」
意味もないし、そうする義務も私にはない。
だけども、私は『彼』を、幻想に
惚れた? まぁ、そう思う事で護る事が出来るのなら、そういう事にしようじゃないの。
「惚れた女は強い。紫だって知ってるんじゃない? 敵対するなら、私は誰だろうと手加減はしない」
「恐いわねぇ……でも、貴女に私が倒せるのかしら?」
座布団から立ち上がり、スキマの中で更にスキマを開き、扇子と洋傘を取り出す紫。
私もニヤリと笑い、『彼』の部屋から取ってきた《風神》という文字と《龍》が描かれた扇子を袂から取り出す。
気に入ったから盗もうとした扇子。いやはや、良いねぇこの絵柄。ふふ。
何回目かしら? 紫とガチで戦うのは。
確かに、紫と戦って勝った覚えはあまりない。
「殺るときゃ殺るよ? それが誰でもね」
「『彼』でも?」
「殺すね。そしてそれは勿論私も含む」
「大層な覚悟ね……でも、想いだけでは出来ない事もあるのよ?」
「押し通す。それが妖怪ってもんでしょ?」
「フフフ……成る程ね♪」
「でも、生憎と私は自分の式が反抗したからって、殺しちゃう程酷くはないわ」
「……?」
「だから一つ、ゲームをしましょう。手加減有りの本気のお遊び」