さて、魔理沙との戦を終え、人里へ到着。
あ~……疲れた……。
……何であんな事で妖力を消費しないといけんのだ……全く。
つーか魔理沙が何であんな人外じみた攻撃を撃てるのかという事が、いや、弾幕ごっこと指定してないから妖怪退治の火力で攻撃したからか……ブツブツ……。
▼▼▼▼▼▼
あの
因みに、あの妖怪と戦った跡などは在ったものの、血液や肉片は一つもなかった。
野良妖怪が喰ったのか、土へと消えたのか。どちらにせよ、これも自然淘汰の結果だ。多分。
実にどうでもいい。考えるだけ無駄な輪廻の結果。嘆かわしいね。嘘だけど。
まぁ、閑話休題。
一日経って、ようやく人里に戻る事が出来た。
妖夢と一緒に案内してもらった事が、物凄く昔の事に思う……。
あれ……なんだろう……? なんだか涙が止まらない……。
とか、そんな無駄な事を色々と考えてみる。
閑話休題とか言いながら、またしてもどうでもいい事を呟いてしまった。失敗失敗。
とりあえず、人里を一通り回ってから自宅に向かうとするか。
理由は特にない。
ないが、真っ直ぐ家に帰るというのもなんだか気に食わない。
久々に帰る家というのは、中々に帰りづらいモノがある。
……あれ? これも何かだいぶ昔に詩菜が呟いたような気がする……いや、詩菜というか詩菜の姿でと言うか。
と言うことで、適当にブラブラ彷徨いてみる。
こうしてぶらつく事で、誰か知り合いに逢ったりする事もあるのかも知れないけれども、それはそれで旅の醍醐味だとも思うので、少しばかり楽しみにしながら練り歩く。
……やっぱり言い訳じゃないか。
昼食という時間にしてはもう三時間位過ぎ去ってしまったが、近くの喫茶店もどきの店で御団子を頂く。
いつぞや彩目に逢った場所とは違うものの、店内でゆったりとして団子を食べる。
あ〜、上手い。砂糖が脳内に染み渡るぜ……。
「おっちゃん。団子も一つ」
「あいよ兄ちゃん」
団子を食いながら、店内をなんとなく眺め回す。
妖怪と人間が席を共にしながら何かを食べる奴等、とある妖怪を睨む人間、それに気付きながらも料理を食べる妖怪。新聞らしき物を読みながら飲み物を飲む妖怪。
良い世の中に……ん? ……『新聞』?
幻想郷に新聞なんてあったんだなぁ……。
てっきり紙すらも怪しいかと思っていたんだが……。
「なぁ親父、あの新聞って……」
「ん、あれかい? 読みたいなら大量にあるから、兄ちゃんに一部やるよ」
「へ? あ、ああ。ありがと……」
大量にあるって……どういう事だ? 紙の媒体は幻想郷に沢山あるのか?
……まぁ、そんな事を考えつつ、手渡された新聞を見る。
……『
発行者……いや、まぁ、予想はつくけど……。
……『
……。
……。
「……あ~あ」
……何やってんのアイツ……。
「なんだ兄ちゃん。文ちゃんの知り合いか?」
「ん、ん~……まぁ」
「へぇ。兄ちゃんも妖怪みたいだから、結構付き合いも長いのかい?」
なんだこの親父。根掘り葉掘り聞いて来やがって。
そしてよく妖怪だと気付いてくれたな、褒美に団子をもう一回注文してやろう。
……まぁ、丁度良いか。親父をダシに色々聞いてやれ。
「いや、此処んところしばらく山から離れていたから、最近は全く逢ってない。団子一つ」
「あいよ。そうなのかい?」
「俺は最近幻想郷に来たからな」
「ほぉ。じゃあ噂とかは全く知らないのかい?」
「噂?」
「山の上に神社が出来たって話だ。何でも今は天狗と交渉の真っ最中って話だぜ」
……守矢神社だな。こりゃ。
天狗……まぁ、山の方で交渉が上手って言えば天狗だが……案外鬼の方は出なかったんだな。
アイツ等なら単なる武力で勝った方が決めるとかっていう決め方をしそうなんだが……。
なるほど、紫が言っていたのはこれの事か。
山の妖怪と守谷の神々が、今日の夜に交渉が決まって楽しく杯を交わすだろうと。
「それでか知らないが、文ちゃんも週一位で来る筈なんだが……最近は来ないんだよな。ほれ」
そう言って親父が指差す新聞の日付。
……成る程、手元の新聞の日付は半月前だ。
俺が幻想郷に来たのが四日位前。
その二日か三日前に守矢神社が来た筈だから、約一週間前に騒動が起きた事になる。
……その頃なら、まぁ、山にも連絡が入っているだろう。
恐らく紫から『引っ越ししてくる神々が居るわよ』とか何とか。
単なる予想だけど、恐らく連絡をわざと遅らせて慌てる天魔の姿を見て、楽しむ紫の姿を想像してしまった……。
恐らくそれで一気に山が混乱したんだろうな。
だから文の新聞が更新されてない、と……。
「……成る程ねぇ」
「アンタ、文ちゃんの知り合いなんだろ? 山がどうなっているか調べてくれないか?」
「まぁ……出来ない事もないが……」
「本当か!?」
「……外の世界から来たばかりだってのに、山に行けと?」
「いやまぁ……そうなんだが……心配なんだよ」
「……ふぅん?」
ふむ……人間が妖怪を心配しているとは。
紫が望んだ世界が到来したって奴かね。
まぁ、良い事なのかね。
「神社の方は異変として解決されたって話なんだが……俺等の方に情報が来なくてよ……」
「成る程ねぇ……」
「頼む!」
「……ま、引き受けるか」
「おぉ! やってくれるのか!?」
「有料」
「……金とるのか」
「何でも屋でもやろうかねぇ、とかって考えていたんだ。団子一つ分でいいぜ。代金に更にプラスでな」
「……丁度良かったってか……ホラよ」
「毎度あり♪」
はてさて、只で食事が出来た上にお金まで頂いた。
なんとまぁ、こんな美味しい事もあるんだなぁとか思いつつ店を出る。
お団子の値段をもらい、更にそのまま店を出てお金も貰える。素晴らしいね!
因みに何でも屋とかは完全に口から出任せである。
嘘も方便って奴だ。仕方が無いのだ。
『文々。新聞』を懐に仕舞い、人里の外へ出ようとする。
人里の出口の前から、何やら大勢の人間が移動し始めている。
どうやら人形劇か何かをやっていたようだ。
観てみたいとも思ったが、どうやら劇自体は既に終わってしまったようだし、そんな事をしている場合でもない。
出口の門を、先程人形劇をやっていたらしい金髪の少女と共にくぐる。
くぐると同時に、扉が閉められて
……なんか、感じ悪いな。
まぁ、夜になったら妖怪に襲われるから、人里に移動は封じるよって事なんだろうけど。
先程の少女が空を飛んで魔法の森へと向かったのを見送り、尚且つ俺の周りに誰も居ない事を確認してから、スキマを開く。
ちょっと、さっきの話で確認したい事があった。
「霊夢」
「……誰よアンタ」
……そうでした。詩菜とでしか霊夢には逢ってないんでした。
「……失敬。ちょい待ち」
「いや良いわ。その感じからしてアンタ、『詩菜』でしょ?」
「……まぁ、そうなんだが……」
しかし話しづらいとかもあるだろうから、ここは変化しておこう。
無駄に。
変化、詩菜。
「ホイ」
「……本当に入れ替わるのね」
「まぁね……いや、そういう事を確認しに来たんじゃないんだって」
「何よ?」
確認したい事は、守矢神社との異変の話である。
こんな私の事を話に来たんじゃないのよ。
「守矢神社に行った?」
「何? そんな事を確認したいの?」
「まぁね。私も元は山の住人だし。で、異変を解決したって聞いたから、どんな風に解決したのかなって」
「どんな風に、って……普通に?」
「普通にって言われてもねぇ……」
「いや、それは私が言いたいわよ……」
まぁ、これで確認は出来た。
本当に異変は解決されたんだろうね。この反応の仕方は。
「何なら魔理沙にでも訊いたら? アイツも解決に向かったのよ?」
「へぇ、彼女もなのか……通りであんな馬鹿力を……」
「?」
「いや、何でもない。ありがと」
「……別に礼を言われるような事はしてないわよ」
まぁね。確かにそうなんだけども。
……あ!
「最後に一つ! 『
「そりゃあ分かるわよ。戦った相手よ? あとは『
「うん。良かった」
これで確信出来た。人違いはもう外の世界でもう懲り懲りだ。
全員に出会ったって事は、ちゃんと繋がりが出来てる訳だね。
「……何が良かったかは知らないけど、山に行くなら気を付けなさいよ?」
「私は一応千年生きてるからね? そんな心配はご無用だよ」
「……あっそ。ま、好きにしなさい」
「うぃ、行ってくる~」
「はぁ……行ってらっしゃい」
スキマを閉ざし、妖怪の山に向き直る。
そろそろ日も沈みかけている。
行こう。
丁度良い感じの風が吹いてきた。
「さぁ、て……帰ってきたぜ。妖怪の山」
数百年振りの山だ。
▼▼▼▼▼▼
また再び志鳴徒に戻り、山に侵入。
もう数百年も離れていた山……恐らく、俺の事を知らない奴は襲ってくる筈だ。
……こういう風に。
「待ちなさい。山に入ろうとする者よ」
「……何か?」
位置は俺の真後ろの更に上。
声からして女性。どっちかって言うと女の子?
「何かじゃありません。貴方はこの山が何か分かって入っているのですか?」
「……分かっていても分かっていなくても、どちらにせよ俺を排除する気だろ」
「……ならば、そのままこちらを向き、山から出ていきなさい。人間を入れる訳にはいけません」
「『断る』」
声を発すると同時に衝撃も発して、隙を突く事で相手から逃げ出す。
……そもそも人間じゃねぇってのに。
喫茶店のマスター、人間だって見抜いたってのに……いや、人に良く会う喫茶店の店員だから分かったのか?
まぁ……どうでもいいか。
どうせ気付かれないんだし!?
相手の言う通りにしてやる気なんて更々ないので、そのまま真っ直ぐ山に突っ込む。
「なっ……!?」
「驚愕している暇があるなら仲間に知らせたらどうだい? ……まぁ、そんな弱い衝撃を打ったつもりでもないがな」
「……」
振り向いて見てみても、跳び出して彼女の姿が見えなくなっても、そのままその哨戒天狗は棒立ちのままだった。
……隙を突けても十秒位だと思っていたが、まだ仲間を呼んだりしない辺り、彼女は感受性が高いように見受けられる。
……まぁ、どうでもいい事だがな。後で天魔に怒られてもし〜らない♪
木々の隙間を走り抜けていく。
目指すは天魔の屋敷。
そのまま木々の幹を蹴りつけて跳んでいると、
「待てッ!!」
「お? ようやく復帰したのかい」
後ろからさっき聞いた声が追い付いてきた。
「待ちなさい!! 今仲間を呼びました! 逃げ場はありませんよ!!」
「だから?」
「ッッ!?」
たかが下っ端天狗に俺を停められるとでも?
大体逃げ場はないって言われてもねぇ……逃げられなかった事なんて妖怪として生きてきて片手で足りる程だし。
更にスピードをあげる。
縦横無尽に駆け巡り、跳び出して進む。
そしてようやく山の中腹。
昔から思っていたが、この山はでかすぎるだろ。
絶対に富士山よりも大きいに違いない。
……いやぁ、幻想郷だからなんでもアリ、っていうのは個人的にどうかと思うんだがなぁ……。
「この……待ちなさいッ、っての!!」
「だから誰が待つかっての」
更にスピードをあげる。
今度は『風』や『衝撃』をも使う。
空気が俺を押し出し、足場に触れた下駄は反発するかのように全身を吹き飛ばしてくれる。
……さて、こんな事をすれば間違いなくアイツは来る筈だ。
確実に誘き寄せる為にも、空間を細かく圧縮する。
『緋色玉』を十数個。即座に造り出し袂にしまう。
遂に風が不自然に動き出す。俺が操れる範囲外で。
その俺に追い付こうとする風が、背後からとんでもないスピードで近付く。
来た来た。いやぁ……楽しいねぇ!
「ッ……先輩!?」
「椛、アイツは……私の獲物よッ!」
……来たか……!
いやぁ、待っていたよ?
更にスピードをあげる。
今度は本気を出し、全速力で山を駆け抜ける。
先程の『椛』とやらが追い付く事が出来ない、神速の領域へ。
あ、いかん。天魔の屋敷通り越しちゃった。
まぁ、いいか。
「志鳴徒、さんッ!!」
「よぉ、文。おひさー」
「ッ……そっちは相変わらずのようですねっ!」
「そりゃあ勿論♪ 俺がそんな簡単に変わると思うか?」
「それを自分で言うんですかッ!?」
因みに俺等は流れ星のように山を駆け抜けている。
幾人かの天狗や妖怪が追い付こうとしているが、誰も追い付けない。辿り着けない。
「帰ってきたんですね?」
「ははっ、ただいまってな!!」
「っ……おかえりなさいッ!」
「ああ!」
そんな会話を交わしながら、木々を蹴りまくる。
樹の間から、チラリと守矢神社が見えた。
……どうやら、ちゃんと山に慣れたらしい。宴会をしている神奈子と早苗が見える。
お、天魔居るじゃん。ラッキーっちゃあラッキー。
「ところで、何処に向かってるんですか!?」
「天魔に殴り込み! 理由は特に無い!! また山に住む事になるだろうからヨロシクぅ!!」
「……貴方らしいですねぇ……行ってらっしゃい!」
……止めない辺り、彼女も何かが変わったように思う。
まぁ、それが良い変化だと良いんだがな。
行ってらっしゃいと言って、文はそのままスピードを落としていった。
私には追い付けなかった。という事にして、責任を逃れるつもりなのだろう。
随分としたたかになったものである。良い事だ、うぬ。
大木の枝を思い切り蹴り、大ジャンプをして、
変化、詩菜。
変態なアイツには、この姿でぶん殴ってやるのがご褒美になる。
あぁ、イヤだイヤだ。変態な天狗の長って奴は。
目標、『守矢神社で宴会に混ざっている天魔』
手加減、必要なし。当たり前である。
結局文に対しては一度も使わなかった『緋色玉』を起動。
空間圧縮が爆発し、とんでもない衝撃で私を弾き飛ばす。
それで一気に加速してやり、宴会のど真ん中に着地する。
久々のストレス解消だ♪
楽しいなっと♪
「吹き飛べ天魔ァァッ!!」
「グッぱアああぁァぁッ!?」