風雲の如く   作:楠乃

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 にれーんとうーうこーう。
 二連投稿。

 -追記-

 『にれーんとうーうこーう。』って何さ。
 『にれーんとーうこーう。』でしょうに。



甘味

 

 

 

「……うぅ……」

 

 ……朝帰り(?)して、自宅で更に二次会は無謀過ぎた……。

 頭痛い……気持ち悪い……二日酔い……。

 博麗神社の時はここまで酷くなかったのに……。

 

 なんとか能力で頭痛の衝撃を抑えて、身体を起こして立ち上がる。

 それでも気持ち悪いのは変わらないので多少ふらつきつつ、辺りを見回す。

 

 卓袱台の向こうに彩目が大きい身体を縮めて、自分を抱くようにして寝ている。

 文は文で、近くの柱に背中を預けて寝ている。多分アレは起きたら肩凝りがヤバいと思う。

 

 東向きの庭に面した縁側から日光が入っていない。

 つまり、既に太陽が真上にあるか越えているかという状態。

 

「……あ~……正午過ぎ……三時って所かな……」

 

 

 

 日光が登って来るのを見ながら彩目と家に帰ってきたんだから……宴会は四時間って所かな。

 

 うヴっ……!

 ……あ、ヤバい……!!

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 リセット。

 なーんにも起きてないよ? ホントだよ?

 

 ただ、川をちょいと汚しちゃった事は、後でにとりに謝っておこう。

 ……あ~……死ぬかと思った……。

 ゴホン。んんっ……喉も痛いなぁ……胃液か……。

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 はてさて、今日から正式に私も幻想郷で生活していく訳なのであるが、

 如何せん、荷物の殆どが既にスキマの中にあるから、盗難の心配とかは寧ろ引っ越しをすると余計に高まるというか、自宅だと盗まれそうというか。

 スキマの中の方がよっぽど安全だと思うんだよねぇ……紫や藍がいるけど。

 

 

 

 まぁ、何はともあれ、人里に色々と生活用品を買いに行こうという話なのさ。

 

「……初耳なんだが?」

「だろうね。思い付いたのは今なんだし」

「……」

「ま、とりあえずここから人里ってどっちにあるの? 一番の近道ってどう行けば良い?」

「いや、道を教えるだけなら案内するが……」

「んー、いや、良いよ。自分の力で行ってみたいしさ」

「……自分の力で、って……」

「まぁ、とりあえず教えてよ」

「……ハァ……分かった、好きにしろ……」

「や、ども」

 

 彩目に人里への道程を教わり、ちょいと買い出しに出発。

 

 財布もスキマを開く事なく取り出せるように、懐にちゃんと入れてある。

 ちょっと曇り空だけど、恐らく雨は降らないだろう。勘だけど。

 まぁ、例え雨が降っても普通に歩いて人里に向かう訳だけど。

 

 あと何気に彩目が二日酔いしていない事が悔しい。

 文はまだ寝てます。でも寝相というか寝方というか、寝顔は苦しそうじゃないから二日酔いではないのだろう。ちくしょう。

 やはり慣れか。慣れの問題なのか?

 

 

 

 

 

 

 人里に到着。

 

 ……ふむ、人里から見てみると我が家は山の裏にあるのかな?

 私がいた時の人里とは、微妙に人里の位置が変わってるね。

 

 

 

 門番に黙礼して、領域内に入る。

 これで人里に入るのは三回目だ。

 

 こうやって里を歩いていると、やはり目立つのは異形のモノ共。妖怪達が目立っている。

 ……まぁ、私が何百年も『外の世界』に棲んでいたからかね。目立って見えるのは。

 

 ま、そんな事はどうでもいい事なので、さっさと生活用品を買いに行こう。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 はてさて、何事もなく買い出しが終わり、何の問題もなくスキマに収納し終わった。

 まだ日没には早いので、どうせならという事で人里を見学して回る事にする。

 

 ……そう言えば、予感通りに晴れたなぁ……。

 ……まぁ、良かったんだけどね。

 

 

 

 紫から聞いた話では、人里は途中で文明の進化が緩やかになっている為に、外の世界とは色々と相違点があるとの話がある。

 まぁ、こうやって眺めているだけでも、服装がほぼ和服だとか、電気という概念が存在していないみたいだとか、地面がコンクリートでないとか、簡単に見付けれる事が出来る。

 

 でも幻想郷の人里では、外では見られない、幻想的な光景が見られる。

 

 螢のように光っているのに、中に何も入っていない、不思議なガラス瓶。

 LEDよりも綺麗に輝く発光体。

 子供達を乗せて運ぶ狼のような妖怪。

 外よりも摩訶不思議な手品。

 綺麗な工芸品、キラッキラな宝石類の数々。

 

 大通りを歩けば歩く度に、驚きと発見の連続だ。

 まぁ、外の世界で長年生きていたからと、私が元々現代に生きる人間だっていうのが原因なんだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 昨日、人形劇が行われていた広場に到着。

 ……どうやら今日は行われていない様子。

 

 ま、劇をしていた少女は帰る時に魔法の森に向かっていたから妖怪なのかな?

 あんな茸の胞子で瘴気かと思うほど毒々しい森に棲む妖怪ってのも想像出来ないけど……。

 

 まぁ、物好きはどんな世界にもいるって事だ。多分。

 

 

 

 

 

 

 来た道を戻り、再度ぶらぶらと出歩く。

 

 ……あ、そう言えば妖怪の山に関する報告忘れてたや。

 団子屋のおっちゃんに文は無事だっていう報告しないとね。

 広場からなら道も覚えてるし、さっさと要件も済ませちゃおうっと。

 

 

 

「おっちゃん。団子を一つ」

「あいよ嬢ちゃん」

 

 ……志鳴徒が『兄ちゃん』で、詩菜の私が『嬢ちゃん』か……。

 ま、別にどうでもいいけどさ。

 

「おっちゃんさ。この前ある妖怪にさ? 文がここ最近何をしているのか調べてくれって依頼しなかった?」

「……おらぁ、依頼はしたがそんな浮気調査みたいな事を調べてくれとは言ってないぞ」

「ん、言い方が悪かったね。妖怪の山がどうなっているか、だっけ?」

「……確かにそう言ったが……嬢ちゃんは?」

「私は『詩菜』。双子でおっちゃんが依頼したのは兄ちゃんの『志鳴徒』」

「へぇ、双子の妖怪かい。珍しいな」

 

 ……あ~、兄妹の方が良かったかな?

 まぁ……もう遅いけど。

 

「……で、山の方はどうなってたんだ?」

「山の上に神社が出来て、そこで異変が起き、いつもの通り解決されたのは知ってるよね?」

「ああ、巫女から聴いたぜ」

「そう。それから山に元々居た妖怪達とどうするかっていう話し合いがあって、昨日、双方が合意。これからも仲良くしましょうって事で宴会があった。文もその内来るようになるよ」

 

 まぁ、話し合いの過程や内容とかは全く知らないから、ほとんど当てずっぽうなんだけどね。

 

「……そうか。ありがとうな」

「いえいえ、こちらこそ美味しい団子をありがとうございます」

 

 まぁ、嘘は言ってないし、これから山がどうなるかは彼等が決める事だ。

 私は頼まれたら何かをやるだけさ。

 

 

 

「……しっかし、兄ちゃんも嬢ちゃんも甘いものが好きだねぇ」

「そう?」

「ああ……団子だけで一食分にするとこがな」

 

 だって、美味しいんだもの!!

 流石に幽々子ほど喰わないけどさ!!

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 そんな感じでおっちゃんと会話を交わしていると、来客が来たみたいだ。

 いきなり声を張り上げたから吃驚したよ。

 

 

 

「おぉ、先生。珍しいな。いらっしゃい」

「ちょっと休憩しようと……ん?」

「……んん?」

 

 この声は……どっかで聴いた事があるぞ?

 

「……詩菜、か……?」

「って、慧音じゃん。随分と久し振り」

「あ、ああ。久し振りだな」

 

 懐かしい。上白沢(かみしらさわ) 慧音(けいね)が目の前に居る。

 彩目と共に旅をしていた友人で……まぁ、彩目が幻想郷に居るなら居ておかしくはないか。

 

 というか……思い付かなかった方がおかしいかな?

 

 

 

 ……えっと……先生……?

 

「なんだ。嬢ちゃんは先生とも知り合いかい?」

「……慧音が、先生?」

「なんでそんな驚いた顔をしているんだ……」

「いやぁ、ちょっと……ね」

 

 先生……先生、ねぇ……?

 

「先生は寺子屋で皆に色々と教えて下さってるんだ。って俺も教えて貰ってたんだがな」

「へぇ」

「しっかし、いつここに帰ってきていたんだ? 彩目にもちゃんと逢ったのか?」

「……先生になってるよ」

「あ、すまない……どうも癖でな……」

「まぁ、ちゃんと逢ったよ。当然」

「……ふむ。それなら良いか」

 

 

 

 隣の席に慧音が座り、団子を注文する。

 

 彩目の話が出た辺りで店主のおっちゃんが何か言いたそうな雰囲気だったけども、その辺りは無視してやる。

 ……彩目と親子の関係だなんて、説明し辛いからね。

 先程双子やら兄妹なんて説明しちゃったし。どういう妖怪なんだよと。

 

 

 

「……ま、これからは幻想郷で生活していくって訳」

「そうか……まぁ、色々と引っ掻き回すんだろうな。お前は」

「まぁねぇ」

「……」

 

 隣のヒトがジト目で睨んでくるが、まぁ、気にしない。

 

 団子を喰い終わり、席を立つ。

 夕陽で外も真っ赤になっている。そろそろ帰らないとね。

 

「そうだ。それなら慧音も来る? 我が家に」

「……いや、寺子屋の事もあるしな。今日はすまないが行けない」

「そっか。んじゃおっちゃん。会計お願い」

「あいよ。嬢ちゃんもな。ありがとよ」

「いやいや、それは志鳴徒お兄ちゃんに言ってあげなよ」

「ぶっ!? ごほごほッ!!」

「……先生、どうした? 咳き込んだか?」

 

 ……慧音さん? もし、おっちゃんに話したりしたら……許さないよ?

 

 という意味を込めて睨んでやる。

 睨むというか、意味深な笑顔というか。

 笑顔というのは元々威嚇という意味が以下略。

 

「いっ、いや……何でもない。咳き込んだだけだ」

「……ま、店主もまた何かあったら言ってね。協力出来たら協力するよ」

「おぅ。兄ちゃんにヨロシク言っといてくれ」

 

 

 

 さてさて、家に帰りますかねッ!

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 自宅に到着。

 

 慧音はあんな性格だから、多分私と志鳴徒が同一人物だとは喋らないとは思うけど……。

 ……あぁあ、やっぱ双子って言うのはやり過ぎだったかなぁ……?

 いや、どうせ詩菜と志鳴徒は別人物とか面白そうだし、やろうとしてたけど……。

 

 

 

 玄関を通り、居間にいた彩目に挨拶と報告をする。

 

「ただいまーっと」

「おかえり。どうだった?」

「慧音と逢ったよ。先生をしてたんだね」

「……。……寺子屋まで行ったのか?」

「いんや、団子屋で逢ったの」

 

 生活用品を買うついでに、八百屋とかで買ってきた食材で夕飯をつくる。

 

 ……海は幻想郷に無いって話だけど、(マグロ)なんかどうやって捕ったんだろう……?

 まぁ……良いか。紫が何かしてるんだろう。多分。

 

 

 

「文は?」

「帰ったぞ。休止していた新聞を急いで造らないとってさ」

「あ、それについて追及してやるの忘れてたや」

「なんで追及するんだ……?」

「なんとなく」

「……」

 

 

 

 夕食の完成。

 

「……久々だな。お前の料理なんて」

「まぁね。でも作るのも結構久々だからなぁ……」

 

 ちゃんとした料理を作ろうとしたら、それなりの設備が必要になる。

 戸籍どころか人間ですらない私がそんな設備のある所に行ける訳がないのであって。

 

 まぁ、やらなかった何百年ものブランクがあっても、それなりに出来たから良かったけどね。

 

「うん、美味いじゃないか」

「そりゃ良かった」

 

 

 

 うむ、上出来上出来……♪

 

 





 2014/02/09 午前11時53分
 修正した筈の部分が修正されていなかったのを修正。

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