色々とあって遅れました。申し訳ないm(_ _)m
そしてこんな夜分に更新してどうすんねん、と我ながら思う。
いつものように縁側にて日向ぼっこ。
……最近は本格的に暖かくなってきたね。日差しがだんだんと強くなってきている。
つまりは、夏が近付いて来ている訳だ。
まぁ、夏が近付いたからと言って、何かをするつもりでもない。
年中夏休みだぜヒャッホウ!! なんて事を言う気分でもない。
……というか予定がないから、むしろ退屈なのよね。
今は彩目も居ないし、暇じゃないのか文も来ないし。
天魔は滅多に来ないのが普通だし、三馬鹿弟子も出遭ったらその日はずっとべっとりだけど、それ以外だったらほぼ見ないし。
……まぁ、結局は、暇なのである。
何か甘い物を食べる気にもならず、
何か動こうと思う気にもならず、
何か物思いにふけようとも思えず、
ただ、ぼんやりと山の向こうを見ている。
わざわざ屋根に登って、家の入り口とは反対方向を見て、屋根からぶらぶらと脚を振る。
特に何も考えていないので、本当に暇だ。
いや、考え事をしていたら暇じゃなくなるんだから、暇じゃなくて当然とも言うべきなのかもしれないけど。
「……まぁ、暇は潰すもの。って誰かが言ってたねぇ……」
そんな事を、誰に言う訳でもなく言う。
防音結界は張ってないから、聞こえているかどうかは知らない。まぁ、どうでもいい。
まぁ、どちらにせよ微妙に鬱な気分は魔理沙の家から続いている。
それほど行動に支障はないし、周りに見せたりはしてないつもりだけどね。
いや、行動に支障はって言うけど、右腕がないからやっぱり支障はあるかも。義手着けてないし。
そんなどうでもいい事を考える。実にどうでもいい。
さて、何やら誰かが近付いて来ている。
微妙にホバリングしているのか足音は聞き取れないが、風の動きは何となく分かる。
……んー、んん? 何か……回転してる?
「……おやまぁ、厄流しの神様じゃないですか」
「あら………………知ってくれているのね」
名前は何だっけな……そう、確か『
姿は何度か見た事あって覚えているけど、話した事はない。筈。
「鍵山雛さん、だっけ?」
「ええ。あってるわ。そして貴女は最近有名になった詩菜ね」
ま、まぁ……有名になりつつある、か……。
あまり嬉しくないなぁ……そっと影の暗躍者とか、そういう立場で居たい。
「それで、一体ここには何の用で来たの? 今は私しか居ないよ?」
「そう……じゃあ貴女に用があるの」
「……うん?」
用があって来たけど、来てから私に用がある事が分かった?
何それ、どういう状況?
んん? えーと……あ、私に何かしらの原因があると?
……何の?
「貴女、厄が多いわ」
「……は?」
「凄く厄が匂ってきているの。厄いわ。すぐに不幸が襲い掛かるんじゃないかしら」
「……はぁ、なるほどねぇ」
不幸になる、ね。
厄神には、私に取り憑いている厄が視えていて、それでここまで来たと。
むしろ厄が多く集まってきているこの場所にきて、居たのが私だけだから私に取り憑いていると判断した、とかかな。
まぁ、厄が多く取り憑いているって事と、私が最近鬱傾向なのは微妙に関連があったりするのかね?
……とは言え、鬱なのはどうしようもないのでどうでもいいかな。どうでもよくないけど。
「それで、厄を吸いに来たと?」
「嫌かしら? 嫌なら私も無理にとは言わないわ」
「ん、別に構わないよ。吸った方が厄神としても良いんでしょ? それなら互いに利益があるってもんじゃない?」
私が相も変わらず屋根に居て、厄神様は見下されている状況だというにも関わらず、自分から近付こうとはしない。
目に見えるほど溜め込んでいる厄が、相手に影響を与えないって言う優しさがある。
……まぁ、どうやら噂は本当のようで。
随分と優しい神様だ。私とは大違いだね。
「……もっと近付かないの? この位置だと私が見下してる感じになっちゃうけど、もしかしてそういうのが好きなのかな?」
そうなると、何故かイジワルしたくなってくる。
何だかなぁ……とも思いつつも、行動は止まらない止められない。
もしかすると、私の眼は行動と意思に反映されて、暗く緋色に輝いているかもしれない。
「そんな訳ないじゃない……大体貴女、分かってて、そんな事を言っているでしょう?」
「バレたか」
てへぺろー、ってね。
……はぁ。
「……本当に噂通りね。理解不能だわ」
「まま、神様同士仲良くしようじゃない。まぁ、半分以上妖怪混ざってるけど」
「……やれやれ」
そう彼女は溜息を吐いて、ふわりと浮き上がった。
……まぁ、私も最近になって(式神化してようやく)浮く事が出来るようになったけど、そうやっていとも簡単に飛んでいる姿を見ると何だかなぁ、と思う。
いや、思うだけで一切表に出すつもりはないけどさ。
そうして眼の前まで浮き上がった来た所で、彼女はクルクルと回り出した。
彼女をじっと見ている内に、私の周囲から何かが彼女の方に飛んで行くのを感じる。
視えた、ではなく、感じた。
……属性『粒子』っていうのはそこまで感じれる物なのかね?
まぁ、神力通して目を凝らせば、厄も視えない事もないんだけどさ。
「……はい、これで終わりよ」
「や、ありがとう」
まぁ、何となく肩が軽くなったような気がする。何となくだけど。
肩を動かし、腕を回し、首を動かす。
その過程で骨や関節がゴリゴリ鳴っていくのを見て、厄神様が嫌なものを聴いた、といったような顔をする。
……皆そこまで嫌な顔をしなくても良いのに、と思う。
これは鳴らしている人の意見なんだろうけどね。
「あまり鳴らしていると体の調子がおかしくなったり、関節が太くなったりするわよ?」
「おお、初めて注意してくるヒトが居た」
「……貴女の周りにはどんなヒトが集まってきているのよ……」
強い人で言えば花の妖怪ぐらいが言ってきましたが何か。
それも私の心配じゃなくて、眼の前でやるのは目障りだからやめろっていう話だったような気がする。
「まぁ、理解不能の周りには捻くれ者しか集まって来ないって訳よ」
「……その話だと私も捻くれ者になるじゃない」
「おや、いつの間にか私を友達扱いしてくれているの? ありがとう」
「………………調子が狂うわ。貴女」
「はははは」
ハハハハ……はぁ……。
▼▼▼▼▼▼
折角『友人』が来てくれたのに、お茶を出さないというのもアレなので、居間に通す事にする。
初めは「厄が……」なんて事を言ってきたけれども、神力を発して何かの粒子を退けてみせると彼女は呆れたように笑い、「分かったわよ」なんて苦笑しつつお誘いに乗ってくれた。
「やや、粗茶ですが」
「ありがとう」
「ちなみに三番煎じ。今日の朝のもの」
「……本当に粗茶なのね」
そうは言いつつ、ゆっくり味わって飲んでいるのも何だかなぁ、とも思う。
玄関から廊下を渡り、居間にてコタツ机でお茶をすする神様二人。
……まぁ、会話はほとんど無かったりする。
そもそもそれほど気分は良くない状態なのだ。自業自得。
「……」
「……」
そうなってしまうと、結果としては二人して延々とお茶を飲み続けるマシーンと化してしまう訳だ。
一体何やってんだかと思わなくもないけど、まぁ……仕方ないかな。
これが文とかならな……まぁ、結局沈黙には変わりないか。
「……そういえば貴女」
「んー?」
「……前に山で嵐を起こした時は、まだ右腕があったと思うのだけど」
「ああ、それ?」
何だ、今訊いちゃうんだ。そのまま無視するかと思ってたけど。
「ちょいとね。喧嘩した」
「喧嘩、って……」
「神様なのに、ってね。怪我したのは冬の頃だから……もうそろそろ半年経つのか」
随分と年月が過ぎるのが早い。
早くて半年で治るって紫に言われてたけど、この調子だと一年でようやく完治って所かな……まぁ、チルノとの戦いもあったし、仕方ないのかもしれないけど。
「……半年も治ってないの?」
「そもそも治る方がおかしい傷なんだけどね。人間基準だと」
「呪い……それも随分と強い……」
茶化したのを無視された。そして勝手に診断が始まった。
いやまぁ、治るのなら治したいけど、わざわざ頑張って治すのもなー、なんて思う。
……ああ、これか。
これが、私が永琳の所に行くのを躊躇っている理由か。
あー……馬鹿馬鹿しい。
「やっぱり呪いか。まぁ、仕方ないね」
「何をやったのよ……どれだけ強い呪詛を受ければこんな事に」
「ん、妹の眼の前で姉を串刺しにした」
まぁ、正直に答える。
言わない理由としては、神様なのにそんな事をしていいのかとか、倫理的にどうなのとか、色々あると思うけど、どうでもいいとすら思ってしまった。
「……貴女……!」
「本人達については既に話がついてるよ。和解もしてある」
「そういう問題じゃないでしょう!?」
「だね。道徳的には完全にダメな奴だ。心臓もぎ取るっていうのもアレだし、それを妹に見られちゃったっていうのもね。お陰で左目と右手が破壊された」
「ッ……!」
手を振り上げられた。
ここから叩かれるのかと思うと、わりと距離は近付いたかなぁ、と思わなくもないけど、まぁ、叩かれるのだから心理的距離は遠くなっているのかなと思わなくもない。
とは言え、そんな攻撃を受ける気もないので、左手で防御。
衝撃は、弾くのではなく全て無効化する。
そのままくるっと手を回して、彼女の手首を掴む。
ま、攻撃する気はないから単なる拘束だ。暴れるなら離すし。
「くっ……!」
「危ないな。お茶が溢れるよ?」
「貴女ねぇ!」
「ははは、分かってくれないかな?
どんな神様でも、少なくても二面性以上の顔を持つ。
私は旅の神。
誰かの行為を補助する事もあれば、誰かの目的を妨害する事もある。
私は風の神。
暑い西風は良い性格かもしれないが、冷たい北風は残忍な性格かもしれない。
わたしゃそんな存在さ。後悔なんていつだってしてるさ」
……アレだな。
珍しい、私だ。こんなにも簡単に内心を語っちゃうなんて。
「皆が私に対して怒るのも分かっている。だけど止まらない。止めれない」
「……そんな事を言っている内は、本人に止める気がないだけよ」
「それもそうだろうね。そこまで分かってて行動してない私はどうしようもない馬鹿なのさ」
そう言い切って、手を離す。
ん〜、どうもまたグラついてるのかしらね。私の精神。
ん、喋りすぎたかな。喉が渇く。
お茶を頂いて水分補給。いやぁ、溢れなくて良かった良かった。
視線を上げてみてみれば、『
「まだ私と話すかい?」
そう自嘲っぽく言ってみる。
……まぁ、ここで引き留めようと演技する辺りが、一番私のクズっぽいところだよなぁ。
「……ふん。『意味不明』と話す覚悟は、貴女に話しかけられた時から既に出来てるわよ」
「そりゃ重畳」
「そこで否定しないのが貴女なのね。よ〜く分かったわ」
どうやら、既に見切られていた様子。むぅ。
溜め息を吐いて雛はゆっくりと座って、そのままお茶をゴクゴクと飲み始める。
その様子はまるでお酒を一気飲みでもしているかのような……んん?
「ぷはぁ……お代わり」
「お、おぅ……分かった」
「お酒持って来なさい」
「……分かりました」
嫌な予感当たっちゃったか─……。