蒸し暑い季節がやって来ましたね……。
私の部屋は温度30℃の湿度71%ですよ。pcの発熱で更に上昇するという、ね……。
やれやれです。
それから何日か過ぎていき、私も順調に回復していった。
……仲良くなった鈴仙から聴いてみた所、やっぱり私の回復力は何処か異常なのだという話もあったけれど。
……そんな自覚ないんだけどなぁ……?
ま、そんな事はさておき……。
さてさて、ご対面。
……憂鬱だな……。
「……よう」
「……や、久し振り」
輝夜、永琳立ち会いの元、私達は遂に出逢った。
目の前には、銀の綺麗な長い髪の毛。白のシャツに赤いもんぺのようなズボン、赤と白のリボンで髪を束ねた少女がいる。
昔とは大違い……けれども、間違える筈のない彼女。
「……『
「なんだ? ……目の前にしてビビったか?」
「……どうだろうね。正直に言えば見たくなかった、ってのが本音だよ」
溜め息を吐き、ベッドに座っていた姿勢を少しだけ崩す。
……まだ、大丈夫。
まだ、私は、まだ向き合えてる。
「……本題に入ろう。私が訊きたいのは『志鳴徒かどうか』だけだ」
「っ」
「彩目や慧音から聴いたよ……親なのは、納得した。天狗からも色々と聴いたしな」
「……そっか。それについては、納得した?」
「ああ。彩目の母親が詩菜、お前なのは理解出来た。納得は……あんまりだが」
理解は出来ても、納得は出来ない……か。
……まぁ、でも様子から察するに、彩目とは何かしらの折り合いがついたみたいだ。
それは……良かった。
親としての気分だと……それは素直に嬉しい。
「……お前は……本当に『師匠』なのか……?」
「……」
師匠としては……何だろうね……何と言えばいいか……。
……喉に、何かが詰まっている。
何か言い出そうとしても、胸に何かがつっかえて呼吸も上手くいっていないような気がする。
……それでも、言わないと、いけない。それが私のやらないといけない事だ。
「……そうだよ。私が『志鳴徒』だよ」
「……」
……ふぅ……よし。
「一年間の契約で、藤原と契約」
「契約内容は、一年間の間で妹紅を出来る限り鍛える事」
「お前にオセロを教えたのは私。将棋に負け続けてつい言葉を滑らした」
「契約の約半分、半年が過ぎた時に詩菜に吹っ飛ばされたと言われて記憶を失った」
「でも本当は色々と私自身の事や彩目自身の事がバレて、危なくなりそうだったから」
「その時に、妖力を手に入れた。私が記憶を飛ばすと同時に妖力で飛ばしたから。妹紅自身の才能も手伝って結びついてしまった。」
「一ヶ月後、その師匠が帰ってくる」
「そして契約も切れて、最後の決闘」
「結果は師匠の勝ち。契約も切れたからお前は志鳴徒に告白した」
「師匠は断った。人間なら人間らしく生きろって」
変化、志鳴徒。
「……なのに、どうしてこうなったか……」
「っ」
顔に手を当て、頭上を仰ぎ見る。
何てざまだ……そういう声が、何処からでも聴こえてきそうな気がする。
乾いた笑い声。自分でもそんな声を出していると分かる。
でも、笑うしかない。無様な自分。ハハ……。
「……本当に、師匠……なんだな」
「よう妹紅……お前が昔望んでた師匠はこんなダッサーい奴ですよ?」
昔の事をウダウダと考え続けて、悩んで、もう終わった事だろうと言われ続けて、それでも悩んでて、本人達も死んでいるから悩んでも意味が無いと分かっていても、あの時は本当にどうすれば良かったのかって悩んでて、んで本人がご登場? 何処のお笑いショーだよっていうね。
あ、駄目だ。今なら本当に自殺しそう。
比喩じゃなくて、文字通り死にたくなってきた。
鬱だ。ふふふ。やばい。
「ははは……他に、何か訊きたい事、あるかい?」
「……あの新聞記者との関係性は?」
? 何でまたそれ?
「……あいつは、弟子と聴いた」
「ああ……まぁ、一部はそんな感じかな? 昔の話だよ。私よりも実力を付ける前の話。今なら速度以外に勝てる事なんて無いに等しいしな」
なるほどね……弟子で、志鳴徒に弟子入りしたと考えるなら……どうして今も置いているかって感じかな?
まぁ、文が天魔の元へ戻る、って言った時にこの関係性はもう無くなっていたと考えてたんだけどなぁ……。
一体誰が言ったのやら……まぁ、どうでもいいか。もう。
……なんかもう、本当に何もかもがどうでも良くなってきた。
いつの間にか志鳴徒の姿なのに詩菜の口調になり始めてるし、そろそろ狂い始める頃合いなのかねぇ?
「……他には?」
「……いや、何も」
「そう……」
変化、詩菜。
「んじゃ……また今度、外で逢った時に殺し合いにならない事を願うよ」
「……ふん」
そう言って、妹紅は部屋を出ていき、私はまたベッドへと身体を倒した。
……もう、いいよ。どうでも……。
▼▼▼▼▼▼
輝夜は妹紅の後を追っていた。
詩菜の事は精神的な事もあるので永琳に任せ、自分は妹紅の所へ行っていたのだ。
「妹紅!!」
「……なんだアイツは。あれが志鳴徒か? あれが師匠か!? 違うだろ!!」
「っ!?」
妹紅が振り向きざまに、怒りの火柱が全身から立ち上がる。
その反応に輝夜もつい言葉を失う。それほどに感情模様が分かるような火柱だった。
だが、すぐさま元の冷静さを取り戻し、そして彼女の心象を推し測る。
「……美化しすぎよ。貴女の師匠は、アレよ」
「私の知っている志鳴徒は、もっと自信があって、何にでも挑戦するような躊躇いの無さがあった……それに今は……」
「貴女達の事でトラウマだものね。彼」
「トラウマ?」
「……『コレ以上恨まれるのは無理』とか『どうして』とか……あの事件から一ヶ月間、一緒に行動していたんだけど……ずっと
約一ヶ月間。藤原が死んでから詩菜が輝夜と永琳と共に行動をしていた時間。
その間、永琳はずっと彼女のトラウマをずっと治そうとしていた。しかし、逃げる途中でしかも材料もろくに確保出来ない状況。
あの時彼女に出来たのは、少しでも魘されるのを止める位しか出来なかった。
既にあれから千年。もう治せない領域にまでソレは行ってしまっている。
「……」
「……もっと、彼と話してくれない?」
「……なんで……なんでお前がアイツに力を貸そうとする?」
「……何ででしょうね」
好きだから? 違う。それは断言出来る。
手を貸してあげたい? それも何処か違うような気がする。
一番近いのは……やはり恩返しか。
地球に飛ばされた時、拾って育てて、無償の愛をくれたおじいさんとおばあさん。あの人達はもう死んでしまっているけど、あの人達に教えて貰った事。
月にいる傲慢で汚れた者共の所に居たのでは、決して学べなかった事。
『助けられたら助け返せ』
……それが、志鳴徒に思っている事、感じている事に一番近い。
「……単なる恩返しよ。助けて貰った、ね……だから、お願い。もっと話し合って欲しいの」
「……」
「千年経った。だからこそ、今なら出来る話もある筈よ」
「……」
そのまま竹林の中へと行こうとする妹紅の腕を掴む。
それを振り切ろうとしても、振り切れない。
力が足りないんじゃない……自分で振り切ろうとしていない。
……それが自分でも分かるくらいには、妹紅も冷静になっていた。
それでも、今またすぐに師匠に逢って、話し合えと言われても、自分は何を言うか分からない。
「……また今度だ。今度……話すよ」
「……本当ね?」
「ああ……本当だ」
彼女も分かってる。
自分がこのままではいけない事を。
仲違いとすら言えない、この関係性が今後どうなるのか。
そろそろ新作でもやろうかと考え中。
これから(というか既に)忙しい時期になるので、どうなるかは分かりませんけどね〜。