風雲の如く   作:楠乃

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 裏じゃないけど、まぁ、裏だよ(?)






東方緋想天 裏 その1 

 

 

 

「ふぅん……? なるほど、『3日置きの百鬼夜行』ねぇ……」

「……あの、なんでまた私の家に? そしてどうして私の新聞を読んでるんですか? しかも大分古い新聞をひっくり返して……最新はこちらですよ?」

「いやさ? そういえば文は私の家に頻繁に来るのに、私から文の家に行った事ってあんまりないよねぇ、って」

「そ、それでわざわざ来たのですか……」

「まぁ、前みたいな事が記事にされてるって聴いたしね。それの確認も兼ねて古い新聞を読む必要があってさ」

「? その、鬼が異変を起こした記事の事ですか?」

「ん~……まぁ、目的はそっちじゃないけど、大体はそんな感じ」

「は、はぁ……?」

「……ま、いっか。そんな情報も得られないみたいだし。萃香がやったのは驚きだけど」

「ちょ、私の新聞を見ておいてその発言!? その情報媒体を作ってる本人の目の前で言うそんな事!?」

「うぬ! そんな事よりも、文の私物とかプライベートな部屋の中身の方が知りたくてね~」

「えっ、いやっ、ちょっ、まってよ!? なんでそんな結論になるの!? 家主を侮辱しといて更に荒らす気!? 出てってよ!」

「断るッ!!」

「断らないでよ!?」

「さて、おっじゃましま~す♪」

「いやっ、まっ……うっ、うわあぁぁぁーっ!?」

 

 

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼

 

 

 

 

 

 

 その頃、私は自宅から出掛けていた。

 空を飛んでいる私だが、天気はいつもの様に異常気象が続いていた。

 

「晴れている……しかし、雪が降っている……」

 

 単純に解説してしまえばそれまでなのだが、詩菜の竜巻と言い、文を中心とした台風のような天気と言い、おかしな天気ばかりである。

 今の所、強い風が吹いたり吹雪が出たりはしていない為にこうやって空を飛ぶ事が出来ているが、果たしてこれが酷くなった時には一体どうなるやらだ。

 

 

 

「お? 彩目(あやめ)じゃないか」

「魔理沙か。おはよう」

「どっちかっていうと、こんにちは、だな」

 

 そうやって飛んでいる内に、箒に乗った少女『霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)』と出逢った。

 ……空を飛んでいる時に出逢うというのは珍しい。こんな出会い方もあるのだな、と思う反面、詩菜はこういう出逢い方も出来ないのだと思うと、少しばかりニヤけてしまった。

 

「? どうしたいきなりにやけて?」

「いや、少しばかり思い出し笑いをしてしまっただけだ」

「出逢っていきなり思い出し笑いとは、何か私が仕出かしたか?」

「いやいや、魔理沙は関係ない話さ」

「ならどうしていきなり私の顔を見て笑うんだよ」

「空で逢う、っていうのが笑えてな」

「??? 何だか余計に分からなくなったぜ」

 

 まぁ、そうだろう。詩菜の事を言わなければ理解出来ないだろうしな。

 

 そんな事を考えていると、不意に冷たい何かを感じる。

 雪ではない。もっと湿っぽい。

 

「雨……か?」

「ここの所ずっとこんな感じだぜ。洗濯物も乾きゃしない」

「……」

 

 恐らく、魔理沙は気付いていないのだろう。最近の異常気象に。

 力のある者達だけに起こる、異常気象。力によって変わる千差万別の天候。

 魔理沙の名字と合うこの雨。平々凡々な天候故に、異常気象として認識されていないのか……。

 

 

 

 ……まぁ、この異常気象の解決方法も分かっていないし、無理にその事を告げる必要もないか。

 

「そういえば、魔理沙は何処へ行く気なんだ?」

「私か? 私は霊夢のとこに行くつもりだぜ」

「霊夢か……」

 

 果たして異変解決の専門家はこの異常気象に対してどう考えているのか。

 まぁ、彼女の神社でも確実に異常気象が起きているだろう。それで動くかどうかは天候と……霊夢自身にやる気があるかどうか、だが。

 

「私も着いてって良いか?」

「お? いや別にそれは構わないが……何か用があって飛んでいたんじゃないのか?」

「いや、とりあえず母親が出掛けて暇だから出てきただけだ」

 

 アイツは文の家に行くとか言っていたが……そういえば私も彼女の家に行く事は滅多にないな……。

 文も文で、何気に来ないで欲しそうな雰囲気があったし、私もそこに触れなかったんだが……毎度の事ながら、いつも詩菜はそういうのをぶち壊していくな。

 

「……母親、居たんだな」

「ん? ああ……そうか、無神経だったな」

「いや、いいんだ。気にするな」

 

 そういえば、魔理沙は実家から勘当された身だったのを思い出した。

 慧音からその事を聴いてもいたし、その実家にも何度かお世話になって当の本人からその事を聴いた事もあったというのに、我ながら無神経すぎたな。

 

「それにしたって、彩目に親が居たというのは初めて聴いたぜ。半妖なんだろ? 生きているのは妖怪なのか?」

「ああ。まぁ、博麗神社に向かいながら話そうか」

「そうだな。早く屋根のある所へ行って雨宿りしたいぜ」

 

 それなら傘とか差せば良かろうに……。

 というか家に居れば良いだろう。雨に濡れたくなければ空も飛ばずに傘を差して行けば良いのに……。

 

「それとこれは話が別だぜ。飛びたいから飛ぶんだ。雨なんてそれには関係ないんだぜ」

「……まるで何処かの親みたいな事を言う」

 

 アイツなら、確実にそう言うだろう。

 変な所でひねくれているのだから。

 

 

 

 ……私の予想通りなら、魔理沙は私と詩菜の関係を知らないだろう。

 まぁ、知らないからこそ、こういう話題になった訳なのだが……。

 

 彼女達が何処まで詩菜・私の母を知っているか。恐らくは八雲一族と契約を結んでいる位しか知らないとは思う。前の入院騒動の時には魔理沙も原因の一つだったという話なのだし。

 

 しかし……この事を話して良い物か……?

 母親殿は絶対に自分から『訊かれない限り』話そうとはしないだろう。アイツはそういう性格だからな……面白くなりそうと考えているに違いない。

 

 ……まぁ、いいか。自分の母親だ。隠すような事柄でもない。

 そもそも面白そうだからと言って隠すアイツの方がおかしいのだ。

 

「で、私の母親の話だったか。聴きたいんだろう?」

「おう! 彩目は私が言うのもなんだが、幻想郷じゃあ真面目だからな。その性格も親譲りか?」

「……ハハハ。まさか」

 

 まったくの逆だよ。詩菜が私を育てたという訳でもないし、性格を受け継いだ訳でもない。

 けれども、反面教師にしている部分はあるだろうな。フフ。

 

「私の母は、自由奔放で捻くれ者だよ。私とは大違いさ」

「そうなのか?」

「ああ、私が言う事も守って貰えないし、勝手に出掛けては大怪我して帰ってくる」

 

 しかし、ちゃんと結んだ約束は守ろうとするヒトだ。そこだけは尊敬するよ。

 そんな所は魔理沙に言わないけどな。恥ずかしいし。

 ……魔理沙の口から簡単に母親殿に伝わりそうだが。

 

「ふぅん……今初めてそんな事を聴いたが、前から一緒に住んでいたのか? 私が寺子屋に通っていた時から彩目の事は知っているが、初めて聴くぜ?」

「ああ、最近になって帰ってきたよ。外の世界に最近まで住んでいたからな」

「へぇ……随分と力のある妖怪みたいだな。どうやらそこは本当に親譲りなんじゃないのか?」

「ハハ、それは、そうかも知れないな」

 

 いつになっても、アイツは自分の事を弱いと思っているがな。

 

 さてさて……いつになったら詩菜だと気付くやら。

 ……いかんな。これでは詩菜の事を怒れないではないか。

 私も、魔理沙にギリギリまで情報を与えて、いつ気付くのかと面白がっているのだから。

 

「とは言え、当の本人は毎回毎回大怪我して帰ってくる。全く、待っているこっちの身にもなって欲しいものだ」

「……待っている、か。そんないつも大怪我しているのか?」

「この前は白玉楼の主人に喧嘩を売ってきたそうだ。曰く『向こうから売ってきたんだよ?』とか言っていたが……果たして本当やら」

「は、はは……」

 

 それにしても、あの幽々子に勝ってくるとは思わなかった。彼女もアレで幻想郷の一角だ。弾幕ごっこの強さは他とは比べ物にならない筈なのだが……。

 まぁ、運が良かったのか、アイツの策略が上手く行ったのだろう。というか、そうとしか考えられない。

 

 

 

「……ん?」

「どうした?」

「いや……最近来た妖怪で、大怪我しまくっている妖怪って言えば……」

「お、博麗神社が見えてきたな」

「おいちょっと待つんだぜそれは無いだろ……いや、無いだろ」

 

 いや、わざわざ二度見するかのように否定するな。傷付くだろ。色々と。

 

 ……否定は出来ないが。

 

「いっや、そりゃねぇだろ!? 反面教師にも程があるぜ!? 頼む彩目! 色々と私の考えを否定してくれぇぇ!!」

「はっはっはっ」

「笑ってる!? あの彩目が!?」

「残念ながら、親の人格云々はアレだが、関係性までは否定出来ないんだなぁ、これが」

「……オイオイ、マジかよ……似合わなすぎだろ。あんな小さいのに……いや、諏訪子もそうだっていう話を聴いた事があるから、一概に否定は出来ないかもしれんが……何だそれ……?」

 

 等と魔理沙が色々と悩んでいる内に、博麗神社も間近に迫って来た。

 私は私で、さっきからずっとニヤケっぱなしである。いかんいかん。変な顔になってしまっている。

 

 

 

 

 

 

 が、それも博麗神社で誰かと誰かが争っている様子が見えて、そんな考えも消えていった。

 隣を飛ぶ魔理沙もそれに気付いたらしく、箒のスピードを早めて博麗神社へと向かっていく。無論私も飛翔の速度を上げて彼女を追い掛ける。

 

「……霊夢と誰かが争っているのか?」

「みたいだな。どうやらもうすぐそれも終わるみたいだぜ」

 

 

 

 二人同時に博麗神社へと辿り着く。

 魔理沙が箒から降りて、私も石畳へと降り立つ。

 戦闘は辿り着く前に終わってしまい、霊夢は居間へと引っ込んでしまっている。

 

 そして私達二人の眼の前に立つ。紫色の魔女。

 

「お? 珍しい顔だな」

「あなた達こそ、珍しい組み合わせね」

 

 『Patchouli(パチュリー) ()Knowledge(ノーレッジ)』が、そこに居た。

 

 

 


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