百花繚乱のもじり。
さまざまの花がいろどり美しく咲き乱れること。
多分読みは「こうかりょうらん」
別タイトル付けるなら、『弾幕一色』とか。こちらは水天一色のもじり。
なお、今回の話の文字数は6205文字です。
ほぼすべて、『弾幕の描写』のみです。(もっと言えば、読まなくてもストーリはゲフゲフン)
それではどうぞ。
「《
「……ハハッ」
あまり私を楽しませないで欲しいなぁ。
「あまり私を楽しませないで欲しいなぁ?」
「たのしい?」
「うん、困るぐらいにね」
あ、いかん。思考が漏れた。
まぁ、どうでもいいか。
上は数十メートル。四方は目測でおおよそ100メートル程。
等間隔で柱が建っていて、それを支える梁も何重にもなって柱と壁と天井を支えている。
さっき墜落した所から炎が出始めているけど、まぁ、気にしない。私の家じゃないし、仕事内容に入ってないし。
ゆらり、ゆらりと、梁の上でたまらず上体が動く。
まぁ、傷の影響もある。気分で動いているのが理由の大半だけど。
それに合わせるかのように、青白い九つの玉が左右上下に動いている。
そして、生きているかのような動きの大玉から、子のような青白い小玉が、特定の法則を持って撃ち出されている。一つにつき四方向、かな? それら大玉が、九つ。
どこを見渡しても、フランの姿は見えない。気配も匂いも
会話はできるから何処かには居るんだろう。もしくは、九つのどれか、か。
まぁ、別に無理やり探すつもりもない。彼女も実は隠れているつもりもないんじゃなかろうか……いや、それはないか。
何にせよ、
常に出しっぱなしだったレーヴァテインとは違って、宣言までした、
テンションが上がらなくっちゃあおかしいってもんでしょ。
あぁあ、いかん。この背筋が震える感覚が止まらん。止まらんし堪らん。
神経に直接衝撃を与えてるような、地肌の奥を生暖かく濡れた手でそっと撫で回しているような、得も言われぬ歯痒い快感。
髪の毛が上擦るようなサラサラ鳴る。
爪が肉に突き刺さる。
お腹の下がキュウッ、となる。
愉しい。
「────ふふ、くふふ」
「んん、そんなに楽しいの?」
「楽しいよ。嬉しいとも言うね……さぁ、やろう? ────鬼っ子、私に追い付けるかな?」
ナイフを梁に突き刺し、私も自分に術を掛ける。
ちょっとしたおまじない兼、姉の方に試した技の改良だ。
「《
宣言したと同時に、全九つの玉が一気に加速して私の方へと飛んで来る。
あまりにも高速に動きすぎて、生み出される小玉たちが分離してそれぞれバラバラになって飛び交っているぐらいだけど、まぁ、それはどうでもいい。
この空間は広い。
けれど、紫と喧嘩したあの広大な神社の参道ほどではない。
それに、私にとっての足場はいくらでもある。
顔の左側に巻かれていた包帯を思い切り破いて、梁を蹴って突進してきた三つの大玉を別の柱へと跳び出すことで避ける。
まだ左目は再生しきってない、が、邪魔だ。
あらかじめ私の着地点を予測して動いたのであろう大玉の一つに、千切れかけて治ってきた右手首を思い切りぶつけ、方向を真上へと変える。
右手が今度こそ蒸発した。まぁ、まだまだ足りん。
自爆のような行動に狼狽える大玉──なんて物は何一つなく、全部が一斉に私を追ってきた。右手首を喰った大玉に至ってはもっと寄越せとばかりに速度を上げてきた。
もしかするとどっかの姉が使うチェーンのように、力を奪うタイプの奴なのかもしれない。それにしては小玉を延々と排出して行動を縛ってくるから────まぁ、つまりは、弾幕ごっこのスペルを元にしただけで、やっている事は弱い者いじめの鬼ごっこ、という訳なのかもしれない。
まぁ、どうでもいいか。
天井まで伸びる柱の一つに右肘をぶつけて急激に方向を変える。
肘をぶつけようとする動作をしただけで動き出す狩人の反応の良さ。どうにか手玉にとれないものか、とか考えつつも、今はこの追いかけっこが楽しくて困る。
ようやくスピードが乗ってきた。
さっきの縦穴での速度なんて、比にならない。
次の梁へと辿り着き、辿り着いた瞬間に次の柱へと辿り着き、辿り着いた瞬間に次の梁へと跳び出す。を繰り返す。
四つの大玉が愚直に私の後を追い掛け、二つが私の方向性を絞るように沿って動き、三つが私の動きを予測して先回りをして動いている。
四つの大玉の内、二つは主に上下左右へ小玉を飛ばし、残りの二つは私を狙うように撃ち出している。まぁ、小玉の方は後から操れないタイプの弾幕なのか、一度発射してしまえば速度は早くても避けるのは簡単だ。簡単な自機狙いって所なのかね?
絞るような動きをする二つの大玉の内、一つは主に私の行動から予測して方向性を絞っている。恐らくは私の動きを先回りしている三つの大玉の補助的な立ち位置だと思う。小玉もそれに合わせて柱や梁に向けて邪魔になるように撃っている。こちらは邪魔が目的だからか弾速は遅い。もう一つの方は単純に私の動きを直線的にしたいらしく、ぐるぐると私の周りを螺旋状に動いている。小玉の方もそれに合わせて私を囲むようにしている。見た目は竜巻状に動くビットのように見えなくもない。まぁ、敵なんだけど。
最後の三つ、私の先回りをして奇襲を掛けようとしている大玉は、それはもう反応良く私のすべての行動に合わせているかのように行動している。
一つはどうやら私の視線を元に動いている。焼け爛れた左目は兎も角、右目の視界には必ず入ろうと動いている。私の視界には入ろうとしているだけで、入りきれるほど速度が出てないのが現状だけど。
もう一つは私の身体的な反射行動に基づいて動いている。
符術の『神貴極速』を自身に掛けて、──似たような精神コンディションで、もしかすると、
最後の一つはこれがよく分からず、どうやらフランの直感的なもので私の行動を先回りしているらしい。
大玉の動きがこれまた吸血鬼らしくない、というか、中に何か入っているような行動は一切していないにも関わらず、唐突に次の目標地点を悟って先回りしてくる。大体が外れなのがまだ助かっている点ではある。
まぁ、向こうが勘で行動を起こすのなら、私もこれに合わせて直感という奴を働かせるだけだ。
柱を蹴り、方向を反転させて追って来る四つの大玉の丁度中心を切り抜ける。ついでとばかりに衝撃刃を大玉に向けて放ってみたが、スカッと通り過ぎて後ろの柱を切断しただけで終わった。まぁ、空中に足場が一つ出来たと思う事にしよう。
小玉もどうやら切れないみたいだ。まぁ、耐久スペカみたいだし仕方ないだろう。
身体中に弾幕が掠っては服をどんどん燃やしていくが、恥ずかしいよりも楽しいが先に来ている私の感情模様は、羞恥心なんか何処かに置いてきてしまったようだ。
ターンをしたことで追って来る大玉のグループも反転した。
奇襲組が四つ、絞込組が三つ、追掛組が二つ。数は九つ。小玉は部屋の壁にあたって消える奴が出てきているぐらい。
次の柱に到達し上への梁へと飛びつく、右目のフェイントで左上へと奇襲組の一つを呼び出しつつ上へ向かうキックを梁に真横からぶち当て、眼の前へと辿り着いた絞込組の一つを小馬鹿にしながら、真下へと衝撃で落下する。
足場のない空中で何とか身体を捻り、追掛組が出した小玉の群れを掠りつつも躱し切る。角度が甘かったのか、腕を伸ばして指で梁を弾き、何とか落下方向を変えて真後ろへと跳び出す。回りこまれた大玉二つをそれで回避し、柱と梁を同時に蹴ってまた落下する。真後ろから激突しようとした大玉もそれで回避する。誰がまた背中に当たられてやるもんですか。
地面へ着地、したと同時に奥へと跳び出す。ちらりと振り返れば大玉が地面すれすれでカクンと方向を変えて、場違いな『綺麗だな』みたいな感想が出てくる。
まぁ、弾幕は夜空とか、暗い所でやればやるほど栄えるよねぇ、とか考えている辺り、いつもの私なのか、発狂してる私なのか分からなくなってくる。
地面を何度も蹴り、衝撃を同じ方向へと操作することでどんどん加速していく。
柱へと通り過ぎに触れていきなり天井へと弾き飛ぶ。天井から一気に身近な柱へと跳ぼうとして、大玉二つに先回りされる。
若干方向を変えて、柱に繋がった梁へとノータイムで跳び、梁を掴んでグルリと回転することで回りこんだ大玉の勘を回避する。一回転した所で左右から大玉が来たのでそのまま天井の同じ位置へとまた跳ぶ。
小玉を大股で跳び越え、天井から更に違う方向へと跳び出す。
『ゾクリ』と悪寒を感じた瞬間に予定とは大きく離れたところへ向かって跳び出し、体勢を無理矢理に変えて空中で振り返ってみれば、跳ぶ予定の所に大玉が、左目の負傷で視界外だった所から弾幕が回り込んできていた所だった。
そのまま眺めている訳にもいかない。眺めつつも千切れた右腕を裏拳のように通りすがりの柱へとぶつけて、右斜め下へと身体を跳ばして先回りを回避する。
クルリと空中で回転し、梁を下から蹴って次の梁へと渡る。向こうの大玉も梁を出来る限り回避してくるから、何か障害物でも当てれば何とか大玉も潰せるのかもしれない。
けど、鬼ごっこで一般人が鬼を退治しちゃあ、アカンでしょう?
まぁ、さっき斬ろうとしちゃったけどね。
ギュリっと足の爪を伸ばして梁に突き刺し、無理矢理にでも方向と速度を変えて止まる。衝撃操作じゃないからワンテンポ遅く行動ができるし、ある程度のフェイントになる。
唐突な私の行動に、先回りをしようとした大玉の二つが見当違いの方向へと動き、そのまま私の方向を絞り込むグループへとシフトし、絞り込みをしていた大玉一つが私へと向かう追掛組に入った。
ギリギリまで追っ掛けてきた大玉を引き寄せて、すんでの所で爪を抜いて、手短な柱へと飛んで回避してみて、そのまま柱へ掌底をぶつけて真上へと跳ぶ。
身体を捻って回転し、キチンと脚で柱を駆け上がる。邪魔な梁にぶつかりそうになれば別の梁を経由して更に柱を駆け上がる。後ろをチラリと見れば地面から今居る高さまで小玉で全て埋まっていて、白い光で眩しいほどだ。また鳥肌が立った。凄い興奮してる。
駆け上がるに連れて更にもう一段階スピードを上げる。天井に辿り着く前に梁を蹴って、遂に壁へと辿り着く。この広大な空間の端まで辿り着いてしまった。
が、問題は以前なし、だ。
更にもうコンマ二秒ほど壁を蹴り続け、レンガを剥がしながら今度は梁へと辿り着いて、真下へ落ちる────と見せかけて、次の梁を蹴って反対側の壁を目指すような軌道で跳び出す。
相変わらず勘で動いているらしい大玉の一つだけは追い掛けることが出来たみたいだけど、それ以外はどうもフェイントに見事引っ掛かってくれたらしく、遅れて付いて来ているのが小玉の発射音で分かる。大玉が私を轢き殺すように先回りして角度を合わせ、私へと突っ込んでくる。
大玉が直撃する前に、さっき斬ってしまった柱がちょうどよく私の脚先ギリギリまで落ちており、それを右足の親指で蹴ることで方向を右後ろ下へ変えて、落下していく柱とスピードを合わせて、少しの間だけ隠れ蓑にさせてもらう。
落ちていく柱の動きはとても緩慢で、私が横になった柱を二周し、大玉と小玉が追い付いて密集する瞬間まで、柱が梁の横を通りすぎて、その下の梁の間を通過するよりも遅かった。まぁ、私達が早過ぎるだけというのもある。
反対側の壁に辿り着き、真横へ飛び出した所で今度は壁に辿り着いた線へ重なるように270度方向を変えて跳び出す。追掛組が放つ小玉のど真ん中だったけれども、事前にどういう方向・角度・体勢で突入すれば完全回避できるかは計算済みだ。
上下反転した格好のままで梁に踵をぶつけ、そのままの体勢で上昇しつつ踵をぶつけた所に後頭部をぶつけてフェイントを掛ける。右腕をぐるりと後ろへ回し、梁の縁に触れれば今度は反対側の梁の二つ下へと弾き飛ぶ。
小玉は既にこの空間のほとんどを埋め尽くし掛けている。幸いな事は柱や梁に触れれば爆発もせずに消滅するから、もうこれ以上は増えないだろう、ってことぐらいかな。
誰かさんだったらこのどれもが爆発するとかいう意地悪をしてくるだろうけど、まぁ、今はどうでもいい。
眼の前の柱を通りすがりに強く殴って地面へと落ちる。先回りした大玉と小玉群を途中の柱を蹴ることで着地点をずらし、二つ上の梁へと跳ぶ。方向性を絞ろうとする大玉四つが四方に小玉を撃ち始めるが、それよりも速く四隅の一つへと跳ぶ。
梁の上でこれまた行動を一度止め、振り返って後ろを向く。と同時に焼かれて若干短くなった髪を勢い良く真横にあった柱に叩きつけ、その際の衝撃を無理やり操って真上へと跳ぶ。
無茶な衝撃の操り方をした所為か、髪の毛が何百本かが頭皮からブチブチと抜けたり切れたりする音が聴こえる。痛覚は既に麻痺しているようで……まぁ、後でまた生やしたりしなければならないだろう。
一つ上にあった梁を蹴り、更に加速しつつ先回りされた大玉を避けるために柱をまた蹴る。物理の法則に従えば反対方向に跳ぶはずが、斜め上後ろの梁に引っ張られるように跳び、先ほど強く殴っておいた時に折っておいた柱に乗って、一緒に落下していく。
折れた柱が別の柱にぶつかる際の衝撃を扱い、今度も真下へと跳ぶ。地面へと着地した瞬間に真後ろへと跳び、そのまま柱を蹴って方向を右へ変える。愚直に追って来る大玉が二つが数メートル前まで迫っている。
けど、そんな事も特に気にせず壁を蹴る。壁から柱へ跳び、柱から壁へ跳び、壁から梁へ跳び、梁から柱から壁へ、ある程度ランダムに行動しつつ壁に添って斜め上へと動く。
そのまま右上へと駆け上がっていくと、違う壁に辿り着いてしまった。どうやら空間の四隅にきてしまったらしい。
振り返るまでもなく、上下左右ともに、大玉が迫ってきている。小玉も密集し始めている。
追い詰められた。
────なんて、私が考える訳もなく、
地下へと落下してきた時に作り出した緋色玉が、噛み締めた奥歯と奥歯の間で発動する。
ボンッ、と音がなった時には四隅の反対側の四隅まで私は吹っ飛んでいた。
まぁ、あんまりにも衝撃を加速に変換しすぎてしまったせいで、途中にあった大玉を避けれず、おもいっきり被弾してしまった。
小玉の発射音を数えてみれば大玉の音が一つなくなってるから、多分大玉に当たったんだろう。どの班の奴だったかは分からないけど……位置的には追掛組かな?
右腕が更に短くなった。右足首が折れて変な方向になってる。左頬がない。左耳が聞こえない。視界はかなりぼんやりとしか見えない。髪は更に焼けて短くなってる。着ていた服はよく繋がっているなとすら思う。
少しばかり休憩……と思う余裕すら与えるつもりもないらしく、大玉八つが今までよりも更に高速で追ってきた、らしい。見えないが、
鬼ごっこを終わらせるつもりは、毛頭ないようだ。
緋色玉を作って応戦する程度にしか妖力も残ってない。回復している余裕もない。
そして何より、
「ふふ────まだまだ、遅い、か」
んじゃまぁ、もうちょい頑張りますか!
ぐちゃぐちゃになった右手首と、小指薬指が千切れた左手で柏手を行う。
気持ち良い音は鳴らず、グチャリと濡れた音しか響かなかったけど────まぁ、まぁ……まだまだこれからよね?
どこぞで、『戦闘(弾幕)描写だけで3000字書けるようになりたいです先生』とか言った結果がこちらです。
何やってんだ私。良いぞもっとやr(ry