お正月は「指数えごっこ」でレッツシンキング。
……何と言うか、今通り過ぎた門番さん。
根本的に妖力が少なくて、かつキチンと隠している私は兎も角として……妖怪だと隠す気もない程の妖力を、身に纏ったままのぬこをチラリと見ただけで、静止すらせずに人里に入っていくのを良しとしてよいのだろうか……。
「……大丈夫か、人里」
「?」
何はともあれ、ぬこと共に人里に入ることは出来た。
スキマ経由で人里へと向かっている途中で、首が動かせないのが邪魔になってきたから、ぬこは私の腕の中だけどね。
あと、人里に入ってからは、ぬこに注意して妖力を隠すように言っておいた。
……まぁ、そうでなくとも、元より『
「どうにかならんものかね」
「知らん」
「君はホントそればっかだな」
とか何とか意味のない口論をしつつ、いつも通っている喫茶店の前を通り過ぎる。
流石にねー、猫、もといペットを引き連れたまま飲食店には入らんよ。
ほれ、窓ガラス越しにおっちゃんが引き攣った笑みを見せてくれる。
……アレ多分、腕の中にいるぬこを妖怪だと見切っちゃったからの、引き攣り笑いだと思うけどさ。
まぁまぁ、それでもこうして人里の大通りを彷徨いていても、さっきのおっちゃん以外にぬこの正体がバレた様子はない。というかまぁ、私の方に興味が湧いている、と言った感じの視線を受けている。
何にせよ、実力がある程度ないとぬこが妖怪だとは見切れないと半分証明された訳だから、普通の人間相手なら隠し通せるという事も分かった訳だ。
でも……それこそ見切れるぐらいの実力がある人物っていうのは、それなりに人里を利用しているんだよねぇ。
山の住民や神社関係は言うに及ばず、紅魔館、冥界、永遠亭……後はまぁ、幽香とか、八雲一家とか。
いやぁ、藍とか人里で逢ったらまさしくとんでもない事になりそうだ。
ま、少なくとも、今のこの時間に人里に滞在していると私が知覚できたのは、慧音と彩目と、後はまぁ、鈴仙、魔理沙……ぐらいかな。
魔理沙は兎も角として、鈴仙が居るとは珍しい。永遠亭の薬でも売りに来たのかな。
いや、まぁ、それを言うなら魔理沙だって、人里には来たくなさそうな雰囲気が大分前にもあったような気がするし、彼女も彼女で珍しいのかな?
「どうしよっか?」
「にゃあ」
「そこは猫語なのか」
「そうしろと言ったのは主人だろう」
「まぁね」
「んにゃあ」
「にゃあ」
まぁ、彩目以外に逢っても仕方なし。
のんびり目指そうかね。
……それにしても、二人して問題を何とかしているのかと思ってたけど、案外別々で行動してるのね。
慧音は寺子屋のようだけど、彩目はまた随分と離れた位置で行動しているみたいだ。
▼▼▼▼▼▼
「詩菜!?」
「はろはろ」
彩目の衝撃を追って居場所を特定してみると、やはり寺子屋から随分離れた所の家屋に、彩目と子供達が居た。
何やら最近やけに忙しいのは、もしかしなくともこいつらが原因なのかしら。
ちょっとした一軒家の庭から部屋の中を覗き込んでみれば、一応は授業中という形なのだろうけれど、どう見ても誰もが集中していない、という状況。
授業をしようとしている彩目も、何とかしようとしているようだけれど、どうにも上手く行ってない様子。気もそぞろな生徒だけ集めたのでは、まぁ、そんなものだろう。
そこへ私が声を掛けたせいか、完全に席を立って部屋の外へ出る子供や、私が立っている庭へと動き出す子も居る……っていうか、私の目の前で止まった。
「……誰だお前?」
「ん、知らない? いや、知らないなら知らないで良いんだけど」
観察されるのが気に食わないのか、当然のように突っかかってくる少年A。
その他にも、良く良く見てみれば生意気そうな顔付きの少年少女達。多分、声を掛けてきた少年Aが彼らのリーダーか何かなんだろう。
まぁ、目立ちたがり屋ではないとは言え、八雲の手先として有名になりつつある筈の私の姿を見ても、特に何も思わずに声を掛けてきた辺り、情報収集力はあまり無いんだろう。多分。
で、その他の背丈が同じぐらいの子たちも、『八雲緋菜』を誰も知らずに止めようともしないって所が、アウトロー気取り、と。
ここに来るまででも、私を避けて通る大人達は結構な割合で居たんだけど……まぁ、子供だから知らない、ってのもあるんだろうけど、それでも悪ガキならそれぐらいの情報を掴んでおけ、とも思う。
そう思うのは、多分、私が子供嫌いだからだと思うけど。
「詩菜……身体は、大丈夫なのか?」
「ああ、うん。何とかなったよ」
紅魔館で、文字通り『何とかした』という表現が正しいんだけど、子供の手前、率直に言う訳にもいかず、適当にぼかして伝える。まぁ、念話があるから伝えようと思えば簡単に伝えれるんだけどさ。
元の成長した姿に戻った右手を挙げて、ヒラヒラと振ってあげれば、安心したかのようにふっと一息付いて笑う彩目。
と、ほぼ同時に、
「おい、無視してんじゃねーよ」
と、キレてくる少年A。現代の若者かよ。
いや、仮に現代っ子だとしても、まだ十にもなってなさそうな奴が見た目年上の少女にキレるかね、普通。
別にどうでもいいけどさ。年齢通りに見られないのはいつもの事だし。
彼に扇動されたのか、気が付けば私の周りに少年少女達が集まってきている。
男の子達は、どちらかと言うと私に対して興味があるようで、女の子達の方は、どちらかと言うと私が持っているぬこに興味を惹かれているような気もするけど。
まぁ、ぬこなら別にどうでもいいか。
【どうでもいいとは何だ】
【適当に遊んでやって。妖力は微塵たりとも出しちゃ駄目だよ】
【委細承知】
そんな念話をして、腕の中から飛び出すぬこ。
きちんと女子の面々に突っ込んでいく辺り、空気を読んでるのか読んでないのか。
「ひゃ!?」
「その子、ぬこって言うんだ。遊んであげてよ」
【遊ばれるのか】
【唐突に割り込むな。遊んであげろ】
【承知】
そう言って、器用に女子の身体を駆け上っては、頭から頭に飛び移り身体をすり寄せていく。
君、微妙にその妖怪特有の身体能力と異様な身体の軽さをアピールするんじゃない。子供達の反応が良いから良いけどさ。
そうしてぬこの可愛がりが始まってみれば、男子も男子でぬこの元へと集まっていき────気が付けば私に相対しているのは例の少年Aだけとなっている。
「で……私が誰か、だっけ?」
「……ああ、そうだよ。誰だお前。なんで彩目と親しい?」
「んー、私としちゃあなんで先生のことを呼び捨てなのか、という方が疑問なんだけどなぁ……」
ま、悪ガキだから、という理由で充分なんだろうけど。
ああ、やだやだ。生意気な子供って奴は。
そう思いながら、縁側から下駄を脱いで、教室となっていた一室へと入る。
素通りされた事で更にカチンと来たのか、私の肩を掴もうとした腕を、ひょいと躱し、教壇近くの彩目の元へと行く。
なんかコケたりして喚いてるけど、当然無視。寧ろなんでわざわざ反応しないといけないんだ。
「彩目が最近忙しいのって、こいつらが原因?」
「……『こいつら』呼びは勘弁してくれ。私の担当生徒達だ」
肩を触れれずによろめいて喚く少年Aを見て苦笑いしつつ、そう答える娘。
まぁ、原因には違いないらしく、どうやら本当に問題児ばかりが集まっているのだろう。私が彼の手をスッと避けたのを見たのか、ぬこに群がっていた子供達の内、数名がリーダーの後ろについて私を睨み始めた。
おうおう、典型的なパーティーですな。少年Aが勇者で、今即座に後ろに着いたのが側近で、まだぬこに群がっているのはゲストメンバーかしら。
いやぁ、なんだろうね。蹴散らしたくなる。
まぁ、彩目の手前、しないけどさ。
「彩目、誰だそいつ」
「……初対面の人物にそいつ呼ばわりは感心しないな、サジ? こちらは、私がずっとお世話になっている『ヒト』だ」
「どうも、『詩菜』と申します。以後、よろしくお願いいたします」
正直な所、彩目は自身の事を半妖だと言わずに人里でも過ごしていると思っていた。
だから、こうして私との関係を、こうもあっけらかんと、匂わせるような事を言うとは、本音を言えば、思わなかった。
許したのか、許されたのか、それとも、受け入れたのか、受け入れられたのか。
……今、考えることでもないか。
ま、だからと言って、驚くような真似はしないんだけどさ。
妖怪だとバレたとしても、別に私は危害を加えるつもりはないし、そも幻想郷の賢者の式神として、何か起こすという仕事もないし、別にバレた所で近寄られないって言う利点しかないし。
何はともあれ、紹介されたのだから無駄に丁寧に挨拶しておこう。
そんな事を考えつつ、丁寧に礼をする。思考回路はいつもの如く、ぐっちゃぐちゃ。
足を揃え、腕を指先まで真っ直ぐにした状態で、ゆっくりと腰から上体を前に倒し、無駄に綺麗なお辞儀をする。魅力しちゃうレベルの奴を意識して。
もし天魔が見てたら鼻血出して気絶させてる程度の奴。嘘だけど。
でもまぁ、今日着てきた服は正装でもなくて、普通に紬の普段着なんだけどね。
それでも、見てくれた子供達の誰かが「わぁ……」と息を呑む声が聴こえた辺り、作戦は成功かと思われる。
隣で呆れたような溜め息を吐く彩目の吐息も聴こえたので、作戦は成功である。
ま、例の少年A、サジ君も息を呑んでいるようなので、まぁ……いや、まぁ、どうでもいいか。そこは。
で、まぁ、
「お勉強は良いのかい?」
「ん、んー……まぁ、あまり進んではいないが、こうなるとな……」
彩目が見る先には、相も変わらずぬこに遊んでもらっている子供達が居る。
チラリと流し目で見てくるぬこが居るけど、しばらくは構ってあげて欲しい。ていうか、その群れの中に突っ込んでぬこを回収する勇気は、流石の私にもない。
「手伝ってあげようか?」
「……本当か?」
「ふふん、今やってるの、算術だよね?」
チラリと教本を見れば、今やろうとしていた科目が何かぐらい、誰だって察せる。
今で言う算数なのか、それとも明治時代前で言う数学レベルの算術なのか、まぁ、教本、もとい現代の教科書っぽいもの見れば分かるか。
うん。
……うん! レベルくっそ低い!
うん……うんん?
何だこれ……四則計算レベルじゃないか。繰り上がり計算すら滅多にないじゃん。現代の小学生低学年、いや下手したら一年生レベルだぞ、これ……。
……君らこんな計算すら出来ないのに、これから生きていけるの? いや、幻想郷ならともかく、いやでもこれは流石に幻想郷でも問題あるんじゃあ……。
あ、そういう家柄の子はもっと真面目とか? そもそも寺子屋で学んでる暇なくて実地で覚えているとか? ていうか、ここに居る子ら全員これが出来ないの? 馬鹿なの?
馬鹿なの?
大丈夫か、人里。
「……え、何? これ教えるのに難儀してる訳?」
「……はっはっは」
「うっわ……ええー……」
彩目が乾いた笑みを浮かべてるって、相当やばいんじゃ……。
ああ、うん、これは、問題って言えるレベル。うん。
つい変な生き物を見る目で子供達を見てしまう。
いや個人的な事を言えば、子供なんて変な生き物でしかないけど。
「……なんだよ、その変な顔」
「馬鹿を見る眼」
「ぶっ殺すぞ」
少年A、なかなか現代っ子に近いアグレッシブな精神を持っている模様。
子供にしてはまぁまぁの殺意なんだけど、幻想郷の妖怪相手じゃあ良いスパイス程度にしかならないんじゃなかろうか。
んで、彩目をチラリと見て、殴りかかって来ない辺り、腕っぷしで勝てないと分かっているのに言葉で喧嘩を買ってしまう辺りが、何と言うか……ねぇ……? 小物臭い。
うーん、馬鹿でも良い、っていうか、問題だと認識してない、っていうか。
馬鹿だと認識した上で、それを弱点だと思い込んでない、というか、何というか。
まぁ、それ以外の所で武器となるのがあるなら、それはそれで良いんだけどねぇ……今現在、幻想郷内の子供で、大人相手や妖怪相手に使える手持ちの武器が一切ない状態で、そのお山の大将気取りは非常にマズイんじゃないかなぁ……。
いやまぁ、私個人的には誰が死のうがどうでもいいけど……彩目の担当生徒ならねぇ、むざむざ殺されるのを見捨てる訳にもいかんでしょう。多分。
「……一つ、部屋借りて良い?」
「ん、廊下を挟んでもう一部屋、ここと同じぐらいの大きさの部屋があるが」
「じゃあその部屋を借りようか──ぬこ」
【む、遊ぶのか】
【誘き寄せろ。あと遊ばれてるのに感化されてんじゃないよ。私は遊んであげろって言ったでしょうに】
【いやこれは……承知】
遊びは終わり。お勉強の時間だ。
まあ? 『遊びながら学ぶ』を、『お勉強』とは言わないかもだけどねぇ?
ぬこに隣の部屋まで誘導させつつ、私も教科書を一部借りて隣の部屋へと移る。
彩目が何やら奇妙そうな顔をしているので、私の作戦をある程度まで話しておき、ぬこに誘われるがままに部屋に入った子供達の後をついていく。
例の少年A、えーと、ザジだっけ?
彼がすごい勢いで睨んでくるけど、後は彩目に任せた。
全員が部屋に入り、教壇の上にお座りしているぬこに興味津々な所に、
────すぱぁん!
と、大きく音を立てて障子を閉め、全員の意識をこちらへと向ける。
こっそり能力で隣の部屋から、音を遮断しておく。彩目には何か思われるかもだけど。まぁ、危害を加えるつもりは全く無い。
それにしても、単純な音だけで全員がビクッとして硬直している辺り、なかなか驚いてくれたらしい。
能力使わなくても、それなりに驚いてくれるから子供は良い。嫌いだけど。
「さて、────お勉強、しようか?」
パチュリーの所で学んだ魔術に比べたら、それこそ天と地ほどの差がある、お勉強。
実に下らない算数って奴を。
▼▼▼▼▼▼
「……何をしている」
「ん、お勉強」
「……私には遊んでいるようにしか見えないが……?」
「うん、遊びで数字を教えてる、って感じかな」
地面に五個ずつ、横並びで円を描き、縦線を一本挟んで、また五個ワンセットの円を並んで描く。それを庭の端から端までつなぎ、その円の中を子供達が一歩ずつ踏み進んでいく。
もうすぐ冬で非常に寒くなりつつあるというのに、子供達は元気である。うるさい。
対して私は、全部教え終わったので縁側から眺めているだけ。
時折来る質問に答えを返しつつ、ボーッと眺めていたら、後ろから彩目がやってきた。
隣のクラスはもう授業が終わったらしい。教えれたかどうかは、まぁ……言わずもがな。
「あ、彩目だ」
「あやめは3だよね!」
「うん、何の話だ?」
「ちょっとした言葉遊びを教えたの。《彩目》は3。《詩菜》なら2」
「……どういう法則性があるんだ?」
「……う〜ん、一言ではちょっと説明できないかな」
言葉で伝えるのは、ちょっと難しい。
いや、まぁ、ゲームとして見るなら物凄く簡単なんだけどね。
「ちょっとしたお遊びだよ。私が……まぁ、それこそ彼等みたいな十歳にもならないときに思い付いた、下らないおまじない」
「……へぇ」
思い付いた時の年齢をハッキリと覚えてないけど、確か中学校上がる前だったかな……。
元より、片手で出来るように作ったものだし、あんな円とか区切り線とかは必要ないっちゃないんだけどさ。
まぁ、1450年前の児戯だ。寧ろ良く覚えていたと自分を褒めたいぐらいだね。
「……どういう遊びなんだ?」
「ん?」
そう訊きながら、隣に座る彩目。
まぁ、教えても良いっちゃ良いんだけど……。
「んー……そこは彩目、先生なんだから法則性を自分で見付けてみなよ?」
「……意地の悪い先生だな。どれ、問題を訊かせてくれ」
そうニヤニヤしながら返してみれば、良いだろうとばかりに腰を据えた娘がいる。
良いね。なんか……こういうの、久々で。
そんな嬉しさなんかは当然、おくびにも出さず、ニヤつきながら問題でも出すとしよう。
「さっき言った通り、《
「うん」
「じゃあ、《
「ふむ」
「で、そうだなぁ……《
「文が、10? 急に大きくなったな?」
「まぁね。で、《
「……んん?」
「あー、えーと、姓を入れての、《
「……うん、大丈夫。まだ分かる」
……ん、良いなら、良いけど。
つい視線を逸らしてしまえば、まだ飛び跳ねてる子供達の中に居た、ぬこと目が合った。
呼んだ? とばかりに円から円へと飛び移りつつぬこがこちらを見てきていたが、まぁ……遊ぶつもりが遊ばれている奴に用なんか特にないので無視である。うん。
尻尾垂らしてしょげても無意味である。彩目には効くだろうけどさ。
まぁ、まだまだ基礎問題。
片手レベルなら31が最高点だしね。
「で、《
「……まぁ、うん。分かるような、分からないような」
「それじゃあ難易度を上げていこうか。《
「え?」
「えーと、《ラストワード》は8、あーとーは……あ、《
「……途中で分からなくなった。スペルカードが9?」
「あ、やっぱそこで躓くか」
子供達にもその概念を教えるのが大変だった。
ていうか、その文化が入っているか、っていう事の方が不安だったかな。迂闊に私が教えちゃ不味いだろうから、探り探りだったんだけど……。
まぁ、本の文化はそれなりにあるみたいだし、国語の能力は普通に伸びてるのかしらね。
それじゃあ、
「それじゃあ、中級編行こうか」
「い、いや、待ってくれ。まだ初級だったのか?」
「うん? 物体で数が20超えなけりゃまだ初級」
「はぁ……?」
「さて、都合の良いものは、と……ん、《グー》は4、《チョキ》は6、《パー》は4かな」
「……」
「《グリコ》は5,《チョコレート》は9、《パイナップル》は11」
「……3,6,6でなくてか?」
「このお遊びなら、5,9,11。よってパーが最強」
「……分からん」
「あ、ちなみに、《5》は3で、《9》も3で、《11》は4」
「はあ!?」
流石にこの辺りは口頭で伝えるには難しすぎるので、下駄で土に文字を書きつつ、ヒントを彩目に与えていく。
子供達がニヤニヤしながら彩目を見ていて、彼等はヒントを出そうとしない辺りが実に悪ガキっぽい。
「さて、ここで初級と中級の応用編、行ってみようか」
「……それは上級じゃないのか……?」
「いんや? 上級は下手すりゃ50いくし、超級は歌だから」
「……は?」
目が点になってる彩目って、凄い久々に見る気がする。
ちなみに童謡の『ふるさと』とかは129である。今彩目に言っても分かんないだろうけど。
「応用編、私のスペルカードの《『
霊夢の《
魔理沙の《
レミリアの《
「い、いや、もう既に何がなんだか……」
「そう?」
レミリアのは兎も角として、スペルカードの命名法がある程度法則性のあるものだから、まぁ、法則そのものよりも答えの数字の共通点ぐらいは見付けられそうなものだけど……。
共通点より、単純な計算だという事に気付けば……いや、それでもまだ難しいかなぁ。
「それじゃあようやく上級。《Remilia Scarlet》は17」
「……ん?」
「《Patchouli Knowledge》は21」
土にがりがりとアルファベットを書きながら、彩目にそう教えてやるとスッと瞳が落ち着いたのが分かる。
特徴にようやく気付いたのか、それともフェイクの共通点に気付いたのか……まぁ、どちらでも面白いから良いんだけどさ。
「妖精の《チルノ》は4、彼女の使うスペルカードの《
「んん?」
「なんか面白い奴は……え〜っと、《『
さっき言い掛けた《神槍『スピア・ザ・グングニル』》は40」
あと私が知ってるスペルカードでなにかあったっけかな……。
「あ、《And Then Were There None?》は25。
日本語訳の《そして誰もいなくなるか?》なら18かな。
牡丹の《
私の《『
如何に私のスペルカードは複雑じゃないか、っていう良く分からないアピールになった。
まぁ、そんな事はどうでもいいとして、とばかりに土に文字を書き終えて娘の顔を見てみる。
予想通りというか、何と言うか……彩目は顎に手を添えたまま、知恵熱でも出してるのかと言うほどに真剣な顔をして考え込んでいる。
いやぁ、問題を出している身としては嬉しいけどさ……子供達皆帰り始めてるのに先生、こんなことに集中してて良いの?
「しなー、今度また面白いの教えてねー!」
「んー、気が向いたらねー」
「ぬこもバイバイー!」
「にゃあ」
【ちなみに《にゃあ》は5】
【教わったから知ってる】
【まぁ、ぬこに言ってもね……】
……。
……先生?
先生、皆さん帰られましたよ?
……あの……彩目、先生……?
今年も誠にありがとうございました。
今後とも『風雲の如く』を、作者共々よろしくお願いいたします。
精々悩むんだなフワハハハ(
あ、答え合わせは活動報告か自ブログかTwitterとか、感想欄以外でお願いいたします。