3ヶ月ぶりだぞ馬鹿野郎と怒られても仕方ない()
特に事情はないんです……仕事が腹立つくらいに順調で病んでただけなんです……。
詩菜さんの言うとおりには
(一点集中超高火力&高機動型)
「力は借りるだけです。私は決して貴女の言いなりにはならない!」
擬似的な神降ろしにて悪神を使役し、風神の力にて妖魔を祓え!
ショット :バーストショット
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「早苗、まずは風に身を任せてみようか。レッスン1だ」
「っ、ハイッ!!」
「良い返事だ。────弾幕を、攻撃を、避け続けろ。狙い撃とうなんて、考えるな。攻撃するな」
まぁ、『撃つな』とは言わないけど────そう言おうとした所で、本当にお祓い棒を下げて回避に徹しちゃうんだから……まぁ、良いけどさ。
緑の粒弾とレーザーの弾幕を、私の神力によって活性化された、身体能力と強制的な追い風で潜り抜けていく。
いつも以上に飛翔の速度は出ているし、恐らくは初見で慣れないだろう高速移動────私や天狗達の視点で動き続けるのは、多分恐ろしいだろうとは思う。
それでも背後から抱き着いているこの彼女は、一切の悲鳴や嘆きを口から出すことなく耐えて、目前の弾幕に対処し、その速度に適応し始めていく。
まぁ、傍目から見れば私を庇って飛び続けている緑の巫女……という風に見えるんだろうけれど……実際の所、操っているのは私の方な訳で……ああ、いけない、いけない。興奮しちゃう。
そんな悪質な考えをしている私をどう思っているのかは知らないけど、早苗の動きがどんどん慣れた動きへ、適応化された避け方へと精練されていく。
交差するように放たれるレーザーを掻い潜り、風を表現したかのような緑の弾幕壁の隙間を、一気に通り抜ける。急制動をかけて目の前の光線をやり過ごし、その隙間を縫ってまた前進する。
「っちぃ!」
「行けるね、早苗?」
「ハイッ!!」
舌打ちをする一輪の目の前、もう数メートル近付ければ、手を伸ばして引っ掴むことも出来そうな程に近付けた直後に、また新たなレーザー群と緑の弾幕が生み出され、早苗へと迫ってくる。
弾幕として出来た直後では、避ける隙間が全く無いその波に対して、私達は後退せざるを得ない。
ただ、舌打ちした一輪も分かっていることだろうけれど、同じ攻撃をした所で完全に掻い潜られて目前まで来れた早苗への対抗策にはならない。
一度破られた攻撃手段を繰り返すだけでは、今の彼女に対して何の効果もない。
事実、先程よりも更に高い精密さで早苗は弾幕を通り抜けていく。
もちろん、私に当たる弾も一切なく、近付かれている一輪はレーザーを放とうと妖力を纏めている最中で、攻撃をキャンセルすることも出来ずにゆっくりと後退するしか出来ない状態で、
早苗が一輪に手を伸ばして掴もうとして、
────そこで、もう一度雲山が拳を振り上げたのが見えた。
首に回していた腕を、巫女の肘に添えて停止させる。
彼女もそこで気付いたのか、行動を止めて反転し、通り過ぎた筈の弾幕を急いで駆け抜けていく。
彼女を追いかけるように分裂した雲の拳が、通り過ぎた空間を殴っていく。
それと同時に、周囲に遭った弾幕が掻き消えていく。
……まぁ、妖力を込められた雲山の拳をまともに食らってしまえば私でも多少のダメージは出るし、早苗だって一つ間違えれば致命傷となり得るだろう。
そもそも早苗に力を貸す事は約束したけれど、妖怪の力は使わないと宣言したのだから、彼女達の攻撃を防ぐつもりは一切ない。反射や私自身から攻撃する気もない。
あくまでも早苗の補助、支え、導きしかしてあげるつもりはない。
それだけの援護しかしてない早苗では、あの雲山の拳は一溜まりもないだろう。
それだけの威力、速さ、力が込められた拳が、目の前の空気を切り裂いていく。
連打を避け切った私達を見て苦虫を噛み潰した顔をする一輪。多分、彼女の弾幕のみで対処するつもりだったんだろう。それがあっさりと掻い潜られて、雲山の力も借りてしまったのだから。
さっきまで舐めてかかっていた筈の巫女が、急に力を付け、あまつさえ弾幕ごっこ中に手で掴まれるなんていう状況になるなんて、どれほどの驚きを感じるやら。
そうしてようやく一息つけたのか、今更のようにスペルカード宣言を行った。
「《連打『キングクラーケン殴り』》!!」
────ああ……これが『弾幕ごっこ』か。
私は今初めて、他人の肩を借りながらとは言え────『弾幕ごっこ』に参加している。
心が震える、なんて、そんな陳腐な表現はあまり好きではないけれど……どうしてもさっきの早苗への洗脳の影響か、背筋に電気が走っていくような感覚がある。
けれども、今この波に私が飲まれてしまってはいけない。
さぁ、次だ。
腕に伸ばしていた腕を戻し、────今度は早苗の目を塞ぐ。
赤玉が生まれ、そしてそれらが私達へ辿り着く前に、彼女に告げる。
今度は、ちょいと洗脳の後押しもするけどねぇ?
「早苗、レッスン2だよ。
────君は今、風の力を借りている。
君の力が及ぶ範囲の風は全て君に従うだろう。
けれども、君は決して風ではない。そして、それでは、いけない。
あの拳が殺す風の声、吹き散らされる風そのものを、感じ取ること。
ただし、目で読み取るな。肌で触るな。君の感覚器は、それそのものが風だ。
そして、風を風で感じ取らなければならないけれども、風に引き寄せられるな。
あくまでも従者は風だ。」
「だけど……忘れちゃダメだよ、『風祝』。
東風は雨と豊作を運ぶ風でもあるけれど、同時に不吉を呼ぶ風でもあるんだ。
追う時もあれば向かうこともある。手繰ることが出来たと思えば。気付けば手繰られている。
決して対等な関係という訳ではないけれど、それでも契約はあるし、共依存関係だ。
さぁ、目を閉じて。
徐々に加速していく、赤い光弾が目前まで迫ってきた。
未だに早苗の目を覆っている左手の中、目の動きは一切感じられないけれど、────
────唐突に早苗が左の方向へと動き出し、迫ってきていた赤玉を避けた。
避けた先にあった光弾に当たる直前で早苗の動きは止まり、迫ってきている光弾の波をくぐり抜けようと、体を半身にして右前へと動き出す。
斜め右前と、少しの時間差で真正面から来ている二つの光弾を避けきり、真横から何百もの風を手繰り寄せた雲山の拳を、急後退して避けきる。
その勢いに振り落とされそうになって、慌てて早苗の顔から手を離して首に回したのだけど……そんな事は一切気にしていないかのように、また繰り出されていく弾幕を避けていく。
彼女の顔を伺ってみれば、やはりというか当然のように、
本当……人間っていうのは実に恐ろしい。
いや、この場合は『才能ある人間』っていう括りになるんだろうけれど、さ。
私も、妖怪の山、天狗達には特に信仰されている神の一柱ではある。
権能も、幾らか方向性は異なるとはいえ、『風雨と旅路の神』で、風を操る術はそこらの妖怪以上には修めているつもりだ。
それでも、私のベースとして一人一種族の鎌鼬な訳であって、天狗の中でも最上位の天魔や、一応は弟子の筈の文と比べると、私の操る風のレベルは到底及ばない。
具体的に何が負けているかという話になると、単純に妖力の量というのもあるし、更に自身の能力、妖力が及ぶ範囲が百から千倍ぐらい違うというのもある。
まぁ、いつもの遠距離攻撃手段がないという奴だ。いや、ない事はないんだけど調整が効かないってだけで。
そんな天狗達に私が完全に勝っている部分というなら、風を含む探知範囲と術式の構成ぐらいだ。
地上で一輪と雲山が、今の弾幕を私に放ってきていたら、多分私も目を瞑りながら完全に避けきるぐらいは出来ると思う。あくまでも、遮蔽物や足場がある、『地上』なら、ね?
早苗の実力は、天狗達に比べればまぁ、中堅以上はあると思う。
外の世界での霊力や、彼女が時たま行っている妖怪退治や弾幕ごっこで出す霊力の質から判断した分析だ。
それにも関わらず、私が神力を分け与えているとはいえ、その程度と見切った早苗が、
さっきまでの移動や行動がハイレベルになったとか、そういう話ではなくなってくる。
幾ら私が能力で唆したとはいえ、ここまで完全に把握出来る程の実力はなかった筈。だった。
今の彼女は、直線的に動く弾が出現すると同時に位置を変えて動き、
雲山の拳は振り被りと同時に届くであろう範囲から退き、
追ってくるようならば、そうと動かれた時点で逃げ道のある方向へと動き始める。
そのどれもが、視覚情報に一切頼らずに、把握して行動を決定している。
風を操る術式は天狗に及ばない。
封印術式で言うなら霊夢に及ばず。
霊力の質や量で言えば彩目にも届かず。
戦闘に関しての覚悟は妖夢にも届かない。
そう判断しきった筈の人の子が、たった一度の後押しでこうまで成長する。
壁を壁として認識し、尚それを乗り越えて次のステップへと辿り着く。
人はつくづく面白い。
いつの間にか一輪の宣言したスペルカードの効果時間は過ぎてしまい、その次の挟み込む形で波のような弾幕も避けきり、その次に宣言していた《潰滅『天上天下連続フック』》とやらも、一度の被弾もなく、そして私に当たることもなかった。
彼女は、今この場の風を完全に読み切っていると、証明してみせた。
汗をかき、息を切らす一輪と雲山に対して、早苗は目を閉じたまま、落ち着き払っている。
密着している私には、多少早くなっている心拍数と汗の感触が分かるけれど、遠目の彼らには恐らく分からないだろう。
超人然としたこの様子に……だからこそ、一枚目のスペルカードが終わった辺りから殺意も混ぜて撃って来ているんだろうしね。
妖怪が人間に恐怖しているというような状況。
当然のことが、それこそ当然のように逆転させられている状態。
私の力を貸しているとはいえ、先程負けた相手に対して、ここまでの力の差が出来てしまっている。
まるで、────奇跡のように。
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「くっ……!」
目の前で全ての弾幕を回避しきられてしまい、一輪が非常に悔しそうに呻くのが聞こえる。
まぁ、ついさっき雲山の手で、はたき落とされそうになった筈の巫女だ。
私が風の使い方や神力を貸しているとはいえ、予言やその類の権能を持ってたり借りている訳でもないのに、その飛翔の速度、精度、弾幕ごっこへの見切りが極端なまでに短時間での急成長を遂げたら、そりゃあまぁ、恐ろしい生物にしか見えないのは間違いないだろう。
人間は確かに成長する生き物だろうけれど、ここまで常軌を逸した成長をするのは、それこそ正しく、『おかしい』としか言えない。
しかも、その力を貸している私ですら、彼女のこのボテンシャルは想定していなかったぐらいだ。
私としては、一輪・雲山ペアと良い勝負ぐらいになる程度で、負けるのも仕方ないかぐらいには考えていた程で……まぁ、私の操り人形に堕ちてたら勝たせられてたかな、程度だ。
その筈の、その程度の実力だった巫女が、完全な無傷状態で、目の前に佇んでいる。
攻撃の全てを完全に見切り、弾幕ごっこを攻略した。出来てしまった。
成長と言うには末恐ろしく、奇跡と言ってしまえば納得してしまう程に、完全無欠。
ああ、人間は面白い。
私を狂気に引っ張ってくれたり、そう考えていれば、常識に近付けてくれたりするのも、彼女達だったりする。
彼女がここまで魅せてくれたのだから、私もそれ相応にやらなければいけない、私の力を披露しなければならないと、思ってしまう。
興奮と高揚感はそのままに、狂気は鳴りを潜めて、気分は上々で、行動は止まらない。
さぁ、手を貸すと決めたのは私だし、彼女が望んだものは既に与え終えているとは思うけれども、ここはもう一つ、私も腕をまくらなければならないだろう。
というか、最後に私も一つドデカイのを打ち上げてみたいと言うのが本音。
さっきは攻撃するつもりはないとか言っちゃったけど、気分が変わった。
文字通り、180度ぐらい変わった。
早苗の首に回している腕に力を少し込め、最後の力添えを行う。
洗脳もどきは、今回ばかしは使わない。まぁ、レッスン2も途中からしてなかったしね。
「さぁて……レッスン3だよ。早苗。
……とは言え、私が弾幕ごっこの攻撃面で、早苗に教えることなんてほぼない。
私が使う術は威力の調整が極端に難しくて、今この場で教えられない。
些か『ごっこ』の範疇を超えてしまうからね。殺すつもりじゃないと使えない。
でも、私の使う術の奥義を魅せてあげることは出来る。
特別大サービスだ。
私の、能力の極地とも呼べる技を、君の力で再現してあげる♪」
こういう人間、というか誰かには、どうも力を貸したくなってしまう。
まぁ、いいさ。
早苗のお陰で気分は晴れた。
紫に対する不信感は相変わらずだけど、それよりも人間の成長を見る方がよほど愉快だから。
時は満ちた。私の神力も早苗の霊力と十二分に混ざりあっている。
方向性の操作も問題ない。こういう時は『粒子』の性質も役に立つ。
「最終ラウンドだよ、一輪」
「……最後ね……ふん、本気で行くわよ雲山!! 《忿怒『空前絶後大目玉焼き』》!!」
一輪の背後で雲山が分身し、一輪を挟むように現れてこちらを威圧してくる。
その眼前に妖力が集まっていき、無差別にレーザーが放出され始めた。
それ以外に、雲の拳が私達を挟み込むように乱打していく。
早苗は極限まで澄み切った冷静さで、その弾幕と肉弾を早苗は機敏に躱していく。
その縦横無尽に動き回る中で、右手を伸ばして人差し指を立てて、まっすぐ一輪へと向ける。
能力、妖力、神力に早苗の力も混ぜて、更に魔術も含めたリメイク、
「────『術式展開、開始』」
指先から宣言と同時に式が広がっていく。
それに合わせて、更に指先に神力を集中させていく。
まだ一輪を狙う段階ではないけれど、彼女達を指差せば言葉を交わさずとも、早苗が身体の方向、向きを固定化したままに回避を行うようにしてくれる。
決して振り落とされないように左腕のみで早苗の体を強く掴んで、早苗の霊力ごと神力を更に集める。
浮遊と回避を任せている彼女の力も借りているので、間違いなく力が吸われている感覚や虚脱感がある筈なのに、その素振りも一切ない。
いつもなら足と地面を丸ごと結界で固定化するんだけど、今回は空中戦なのでそうもいかない。
更に、今の段階で雲山の放つ弾幕や拳が私の術式に掠るだけでも、この術の制御に障害が生じてしまうと、強制的にストップしてしまう。
今まで地面でしか実行したことないし、動く物体の上で発動させた事はなかった。
幾ら術式上は問題ないと分かっていても、土壇場で実行するのは中々に勇気がいる。
……早苗の霊力との相性が良いのか、力の属性の差でエラーが発生していないのも含めれば、問題なく動き始めているのも、ある意味、奇跡なんじゃなかろうかとは思う。
「────『姿勢確認完了。蒐集定量確認。接続移行、開始』」
一定量まで溜まった神力が溢れ、展開された
流れ込んだ先で、術式通りに神力が複雑な陣を形取り、また新たな術式が自動的に形成されていく。
合計六つの自立術式の展開が完了し、正常に、ゆっくりと私の指先を中心に円を描くように回り始める。
その間も雲山達の弾幕は止まっておらず、早苗は彼女達に対して向き合ったままの角度で全てを避けきっている。一度も方向のズレは起きていない。
素晴らしい。指定しているわけではないけど、オーダー通りだ。
「────『接続移行完了。展開完了。圧縮回転、開始』」
手のひら大の術式は、回転が早くなればなるほど、その直径を大きくしていく。
またその指先に集まっていく神力と霊力は、既に肉眼でも見えるレベルで凝縮されていく。
私の薄い緋色の神力と、早苗の霊力が混ざり合い、オレンジのようなイエローのような、そういった色合いの光を放つ玉へと混ざっていき、それを六つの術式が更に圧縮していく。
後はもう、攻撃を受けて障害が発生したりしない限り、規定範囲内の威力になるまで自動的に空間を圧縮してくれる。
魔術も合わさったことで、威力と属性の変更も上手く出来るようになった。今なら妖夢に、というか弾幕ごっこで使用しても問題のない範囲まで簡単に操作できる。
……まぁ、それは私がその制御だけに集中できる状態。早苗の回避に完全に身を任せているからこその話だけどね。
通常の戦闘中に妖術と魔術を並行使用して、能力を使った高速戦闘とか、演算でまた脳がトロケてしまうに違いない。
その早苗と言えば、術式の回転が始まってからやけに驚愕の衝撃を感じる。
………………ああ。まぁ、そうか。私が好きなら、そりゃ『彼』も好きだわな。
『彼』の幼馴染なら、まぁ、知っていてもおかしくないわな。私も友人にオススメした記憶があるし。
ふふっ、それならそれで、最高のロマンを魅せたげようじゃないか。
六つの術式が早くなればなるほど、圧縮が進み、凝縮された力はその衝撃を撒き散らそうと暴れ狂うが、そんなものは私の術式が完全に抑え込む。
いや、抑え込むはおかしいか。
方向が外へと向かわないよう、決して威力を弱めないように内へ内へと転輪させて行くと言った方が正しいな。
準備、完了。
「────『空間圧縮完了。』」
「────『撃てます。』」
「!! ────行けぇっ!!」
低速移動時の速度は他オプション選択時と変わらない。
低速移動時にのみ最も近い敵の方向へまっすぐ放たれる。ホーミングは一切しない。
また弾速が非常に遅いため、このオプション選択時の高速移動とショットは同じ速度となる。
一見すると単発のショットに見えるが、実際には多重に当たり判定が重なっている状態となっている。
全て命中すれば威力は非常に高いが、放たれた弾が消えるまで次のショットは撃てない。
そのため極端に敵へ近付いて撃てば発射間隔が短くなり、威力が非常に高くなる。
進路先の直線状にある敵、弾幕を全て一掃する。威力は非常に高いが持続時間はないに等しく、また無敵時間もほぼない。