2024年4月と6月にそれぞれ精神が死んでましたが、まぁ、頑張って完結目指します。
「失礼しまーす……」
「やっほ、詩菜。祟られてるかい?」
「……ぅぁ」
今日も今日とて寝込んでいたら、早苗と諏訪子が来た。
以前よりかは、少しばかり寝返りぐらいは動けるようになったとは言え、挨拶もままならない。
……いや、それよりもまぁ、早苗が来るのはまだいいとして、怒って祟った筈の諏訪子が来るのはどうなんだ。それもかなりフランクに。
【……ご覧の通りだよ。喋る事もままならない】
「まぁ、そりゃあそう呪ったからね」
「……」
なんだコイツ、とか思った。
思っちゃいけない立場ではあるけど。
半目になってるのは私だけじゃなくて、貴女の隣に居る巫女もそうですよ……いや、この事態のきっかけはその巫女本人と私なんだけどさ。
相も変わらず身動きがやっとな気怠さの中。
諏訪子はそのまま寝ている私の横に、自分の家かのように座った。いや、別にいーけども。
「私はお見舞いというより、祟りの進捗を確認しに来ただけさ」
「あの、私は普通にお見舞いですので……」
【早苗は本当に優しいねぇ……傀儡にしようとしたのはこっちなのに】
「本当だよ。妖怪なんだからいっそ退治すりゃあいいんだよ」
いやそれはそれでまた違くない?
とも思いましたが言うのはやめておきました。
早苗も「えぇ……」という顔をしているけど、諏訪子はコレきちんと信仰されてるんだろうか……。
「……ま、視てみた感じ、まだまだ祟りは晴れそうにないね。詩菜は慕われてないねぇ。お見舞いも私達以外に来ていないのかい?」
【ん? どういう事?】
「祟りに方向性を付けたのさ。看病されればされる程、病状はより軽くなっていく」
【……はぁ、なるほど?】
流石の祟り神様というべきなのか。そんな条件付けがされているとは思わなかった。
道理で、こないだの夢を見た辺りから回復してるなとは思った。
……まぁ、妹紅の看病でこの回復量なら、全快まではいつになるやら、という感じではあるけど。
というか、
【それなら教えるのはおかしくない?】
「別におかしくはないだろう? その状態で人を呼べるならともかく、罪を教えるための罰としてはうってつけじゃないか」
【罰……それは、そうだろうけどさ……】
友人の娘を傀儡化しようとして、その償いが呪いで、その呪いの緩和・解除には他人の看病が必須という訳か。
何と言うか、まぁ……いや、私が愚かだったとしか言えないんだけどさ。
「しっかり反省することだね」
【……はい】
そんな諏訪子の言葉には、そう返すしかない。
洗脳しようとした娘の母親から、結果的に呪われたとは言え反省を促されるなんて、どれだけ温情にしてくれているのか、私は考えなくてはいけない。
「果物を先程彩目さんにお渡ししましたから、また食べてみてください」
「私はお見舞いなんて要らないだろうと言ったんだけどねぇ」
【……まぁ、状況だけ見るなら私も同意見】
「えぇ……」
早苗がまた脱力して呆れた顔を向けてきているけど、いやぁ、君、お見舞いの相手は自分を傀儡にしようとした悪神だよ?
その後は君の力を助けたかもしれないけど、ほぼ本気で操ろうとした妖怪だよ?
……え? それだけでも充分? ああ、そう……。
………………なんで諏訪子がドヤ顔してんのさ。自慢か……いやぁ、自慢だろうねぇ……。
諏訪子と早苗が帰った後、彩目に介護されながら蜜柑を食べた。
まぁ、あの短時間の来訪でも、看病として判定されていたのか、多少身動きは出来るようになった。
やたらと回復してるのは……看病以外にも、諏訪子が呪いを弱めてくれた、というのも、もしかするとあるかもしれない。
そしてその介護の過程で、呪いの解き方についてを話す機会があった訳で……、
「……つまり、看病した人と時間が多いほど、改善に向かうということか?」
【あの言い方だとそんな感じだねぇ】
「……それはもしかして、呪いの原因を諏訪子様は知っているということか?」
【………………あー……】
私が何も考えずに喋ったせいで、呪いを掛けた相手が諏訪子というのがバレてしまった。
しかも『当人が黙っていれば〜』とかも言っていたせいで、私が発狂した時の相手が早苗ということも予想されてしまった。
「……どうしても、どういう状況だったかは言いたくないか?」
【……言いたくない】
発狂していたとは言え、徹頭徹尾、私の自業自得であるという事。
同じく、発狂していたとは言え、ほぼ同じような陵辱を彩目にしたから、彼女は半妖になった、という事。
……だから今回のことは、彩目に無関係なままにしたい。
そうして私が黙ってしまえば、彩目もまた無言で蜜柑を剥き続けている。
剥かれた蜜柑は、これまた無言で私の口に押し当てられるので、介護中の身としては食べ続けるしかない。
【……妹紅の件じゃないけどさ】
「……ん?」
【こうして私達が互いに気遣って、一緒の家に住んでいるってのは、出遭いから考えればありえない話だと思うんだ】
「……まぁ、そうだろうな。襲った相手と襲われた相手で、今も幻想郷では厳罰化されている事をやってくれた訳だからな」
あの頃は力関係や、バランスとかを考えなくて良かったけれど、今の私は立場や家族がいる。
それも含めてを考えてみれば……まぁ、早苗に行おうとしたことは、賢者に実力行使で止められてもおかしくない行為だった。
【この奇跡をキチンと考えていれば、こんな呪いは掛けられなかった……っていうだけだよ】
「……そうか」
今回のことは、結局の所、過去のトラウマに向かい合った所で、変われなかったら意味がない、という事だ。
やだやだ、ほんとう、いやになっちゃうなぁ、コイツ。
▼▼▼▼▼▼
諏訪子と早苗が来てから数日後に、今度は天魔が来た。
「容態はどんなもんじゃ?」
「ま……けほ、ようやく喋れるようになった」
「……文から聞いてはおったが、そんなに深刻じゃったのか……」
ようやく起き上がれるようになり、能力を使った空気の
それでもまだ立ち上がって歩くと、しんどさですぐに動けなくなる状態になってしまう。
実際、今も布団で寝続けている状態だ。
そんな状態を続けていれば、生活の半分はこの家で過ごしている文も看病をしてくれる訳だけれど……この言い方は、天魔に報告してなかったのか?
「初めの数日は寝返りも打てなかったし、指の一本も動かせなかったよ?」
「聞いとらんぞ……それと何故そんなに自慢気に……」
「不幸自慢って楽しいよね……あと報告されてないのは知らない」
文は天魔のこと、微妙に苦手意識があるっぽいしねぇ。
とは言え、昔なら兎も角として、今の天狗社会の上下も分かってる文なら、ちゃんと対応してそうなものだけども。
……ふむ?
「そのまま報告してたら団体で来そうだし、奥様方に来られても困るし、良かったかな」
「やれやれ……儂も心配しとるんじゃが……」
「ん、まぁ、それはありがとう」
素直に感謝の念を伝えると、それはそれで天魔が少し驚いた顔をした。
そんなにこういう言葉を伝えてないかな……伝えてないかもなぁ……。
「ふむ? ……まぁ、心境に変化でもあったかの?」
「そうだね……ない、とは言えない」
早苗と諏訪子から、彩目のことについて……それから、妹紅について。
特に妹紅については……うん、大きく踏み出せたんじゃないかと思う。
────ああ、あとあの賢者も原因の一つか。
「────どうやら、良い物事ばかりがあった訳ではなさそうじゃな?」
「────ふふ、分かっちゃう?」
────この荒れ狂う内は決して外には出さずに、当日まで抑えるつもりだったんだけどなぁ。
外面を止めて、我ながら傍目から見れば濁りきっているだろう半目で天魔を見てみれば────彼は予想に反して、穏やかな表情を浮かべていた。
「分かるとも。昔から儂はお前を見ておるからな」
「……ああ、そうだった。変態だった」
「……お主はそういう所だけ、本当に変わらんのぅ……」
まぁ、変態だからこんな狂人を愛し続けようとするし……やべぇ人数と相手を多妻してる訳か。
天魔は……天魔には、なんかもう、諦めて愚痴れば良いかな、なんて気持ちにさせてくるから、この主人公体質は卑怯だ。爺のくせに。
『────もう信じられないんだ。お姉ちゃんと呼んだ間柄だったんだけど』
『でも……幻想郷に来てから、信じられなくなるようなことばっかり』
『一応、合間合間で普通に話したり、笑い合ったりすることもあったけど……』
『それらがまとめて無に帰すぐらいの、負の連鎖、マイナスなことばっかり』
『……私は、私が得た絆は、私自身の物として扱いたい』
『仲介人として動くのは良いさ。仲人・友人同士をつなげるために紹介する。大いに結構だよ』
『ただ、事のついでに場を用意したみたいなのは正直にムカつくし、不愉快に思う』
『当の本人達に任せる、ならまだ良いさ。まだ納得できるよ』
『上手くいくようになっているのが一番腹が立つ……私は物語の登場人物か?』
『ハッ、ああ、そもそもが道具だろうよ。式神っていうね』
『それから、私のことを理解不能なんて言われてるのは、別に良い。むしろ嬉しく思う』
『けれど、踏み込んじゃいけない一線は、何度も言ったつもりだった』
『……つもりだったのがいけなかったのかな。神社で起こした件は、まさにそれの筈なのに』
『縁の否定、勝手な構築、強制的な仲直り……本当、反吐が出る』
『それに────旧名は、それこそ、何なんだろう』
『当てこすり? ……お前のルーツは知ってるし、絆も大事だろう、ってこと?』
『脅迫? 深淵は既に見通した。異物は大人しく従いなさい。ってこと?』
『自慢? 名も正体も看破したから、理解不能じゃないともでも?』
『どれにしたって、悪意があるとしてしか受け取れない』
『結局のところ、何をされたのかって、言葉にするのは簡単かもしれない』
『他人の能力を使って、隠そうとしつつも分かるようにしながら、その過去を精算された』
『でも……その行動で私が受けた拒絶感は、行った本人の彼女には分からないんだろうね』
でも、愚痴だからといって計画が露呈するような事は出来ない。
口から喋れば、心の内はどうしても漏れ出て行ってしまう。
私の能力で聞かれることはないにしても、何処に境界があって聴かれているかも分からないし……そもそも私が精神異常になったことを伝える術式が掛けられている以上、喋ることで漏れ出た内心に侵されてしまう可能性もない訳ではない。
昔、舌を噛み千切った時のように、又は、声を複数扱った時のように、私の声じゃない
文章として入力するに近い感覚で、思いの丈をつらつらと術式に入力し、無機質に術式がそれを朗読していく。
ここまで言葉にしたのは初めてかもしれない。
文章にしたことで少しはスッキリするかと思ったけれど……結局は胸の内のモヤモヤが増しただけだった。
……術式経由でやっぱり良かったかもしれない。
これをそのまま言葉にして喋っていたら、もしかしなくとも怒号に変わっていただろう。
────理解不能だよ賢者。本当に、何がしたい?
────私を怒らせて、そのまま放置して、何に利用する気だ……?
「────天魔は、『
「手伝わんよ」
「……あらま」
「儂をどこまで便利屋扱いする気じゃ……」
内心むっちゃ驚いている私を尻目に、彼は立ち上がって部屋を出ていこうとした。
「儂は、好いた者が本心から行おうとしている事ならば、諸手を挙げて手伝うつもりじゃよ。天狗の里に不利益を齎さないことや、妻達に被害がないのならば、じゃがな」
襖に手を掛けて開く前に振り返って、その
「お主の、『ソレ』は、勝つつもりないじゃろ?」
「……」
「勝ち切って天狗の地位向上、ぐらいは言って貰わなければ、儂は立場上、手伝えんよ」
「……まぁ、それもそうか」
「ふふん────じゃが、それでも手伝おうとしてくれる者が……今のお主には居るじゃろ?」
……本当、
「ほんっとう、そういう所だぞ天魔」
「急に何の話じゃ!?」