風雲の如く   作:楠乃

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アマツキツネ その弐

 

 

 

「はぁ? 何で私が射命丸とかと勝負しないといけないのよ?」

「いや、お主が倒した上層部の輩が戦う手筈じゃったのじゃ」

「自業自得でしょ?」

 

 ヒトに失礼なあだ名を考える暇があったら、その女の子の事を考えなよ、って思うのは私だけ?

 

 私達が居るのは天魔の部屋だ。アレほどめちゃくちゃになった(した)会議室は下っ端天狗に清掃されているだろう。もしかするともう完璧な状態に戻っているかもしれない。

 天魔の下手とは言え、ここは彼の自宅じゃなくて、現代社会風に言うと社長室って感じの部屋だけれどね。

 

 ……まぁ、そういう事は今はどうでもいい。

 

「いや……まぁ、そうかも知れぬが……」

「それに、私がいないと天魔も何も聞こえないんじゃない?」

「……いや、それをやったのもお主じゃろ?」

 

 ああ言えばこういう奴である。とは言えそんな事になったのは彼の言い分によると私のせいという話なのだが。

 

 

 

 天狗達の会議が私の手によってめちゃくちゃにされてから一日が経った。

 その短い時間の中、天魔は必死に鼓膜の治療に妖力を費やし、他の大天狗達は自宅療養。

 会議にかけられていたらしい、あの天狗の少女も、報告が来るまで自宅待機せよ。という命令が下った。

 

 ……あの天狗がそれで、大人しくなるとは思えないけどねぇ。

 そこまであの子を知ってる訳でもないけどさ。単に交わした会話の内容から察しただけだけど。

 

 天狗達が地位確保の為に、強大な力を持つ部下に強く当たるのも分かる。下克上を恐れるっていうのも何となく分かる。

 が、やはり私としては天魔の意見に賛成である。

 天狗の矜恃はどうした。お前ら特有の仲間意識は何処に行った? と言ってやりたい。

 

 

 

 そこで、私が話を聴いている内に天魔が思い付いたのが、冒頭のシーン。となる。

 

 要約するに、彼女が天狗社会に対して恐れられるような存在ではない、という事を天狗社会に知らしめてやりたい。それが嘘でも本当でも。

 私が彼女と勝負して精神をメッタメタにしてもいいし、逆に彼女が社会から取り残されないように勝負を見せかけてもいい。

 何にせよ、今の上下関係が大いに乱れそうな状況を何とかして欲しい。というのが天魔の依頼。って感じかな?

 

「まぁ、やっても良いけどさぁ……? 私に対してメリットというか、良くなるような事があるの?」

「ぐ……確かにそのような事はあるとは言い切れぬが……」

 

 射命丸の為にはなるかも知れないけど、ねぇ?

 私の労働が増えるだけじゃない? 場合によっては、だけど。

 

 それに彼女をどうするかなんて決めていないけど、私の対応次第だと私がその上下関係に組み込まれて面倒な事になるんじゃあ……。

 

「頼む!!」

「……」

 

 

 

 ……はぁ。

 やれやれ、またもや悪癖が。

 いや、悪癖じゃあないのかな? この場合は。

 

「……利害も何も考えないで、自分の気持ちだけで相手に頼み込む。そういうの、嫌いじゃあないよ? 私はね」

「ふぉ? ……で、では!!」

「良いよ。やってあげる」

「助かるッ!」

 

 親しいと思ってるヒトから頼まれると断れないって奴がね。

 ……それで前は失敗したんだけど、今回はそんな事にはさせない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ちなみに、天狗の里で詩菜の姿はよした方が良いじゃろうな」

「ちなみにさぁ? 私が里に出たらどうなる?」

「恐らく……未婚者のほとんどが群がるのじゃなかろうかの?」

 

 天狗=ロリコンの方程式が完成した!!

 

「……もうやだこの里……」

「はっはっはっはっは」

「……笑ってんじゃないよ馬鹿ァ!!」

「グボッ!? ……し、詩菜……金的はァッ、あんまりじゃ、なかろうか……?」

「うるせー、生々しい感触味わっちゃったから御相子よ」

「……どっ、どんな等価交換……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、志鳴徒に変化して勝負する事になった訳で、全くもって面倒な事になってしまった。

 ……もう一回天魔のアレを潰してやるべきか? いや、めんどくさいし気持ち悪いから止めとこう。うむ。

 面倒くさいは全てにおいて優先するぜ。時と場合によってな。

 

 まぁ、そんなどうでもいい矛盾思考は置いといて、

 

「それで? どうすりゃ良いんだ?」

「うむ、双方が得意で、尚且つ簡単な勝負をしてもらう」

 

 山から少し離れた平地に、俺、射命丸、審判役の天狗(詩菜の会議には参加してない奴)、天魔が揃っている。

 

 後は何故か観客がいる。この四人から離れて安全そうな所に陣取っている。むかつく。

 ……オイ、そこの酔いどれ天狗。なに美味そうな酒を呑んでんだ。後で寄越せ。そんな酒に強くはないが。

 

 

 

「……天魔様、その前に結局この妖怪は誰なんですか?」

「あー……」

 

 ……まぁ、確かにいきなり里に現れた妖怪と競えって言われてもなぁ。そりゃ困るか。

 しかもその相手が天魔と随分と親しげにしていれば、余計に疑問を感じるってか。

 それほど志鳴徒の姿はこの里で有名って訳でもないからな。

 

「天魔とはちょっとした友人。昨日は共通の友人の話でここに来た」

「へぇ? その割には随分と乱暴な事をしたようね? 音を全く聴こえなくなるようにするなんて?」

「いや、そもそも向こうが先だし、それにちゃんと能力で手助けしているぞ?」

「何がどうであれ、貴方は天魔様を傷付けた事に変わりはないでしょう?」

「「………………」」

「……あー、ごほん。二人とも、良いかの?」

 

 おっと、勝負の説明の途中だった。いかんいかん。

 睨み合って喧嘩に発展するくらいなら、競争で正々堂々と勝負をつけようじゃねぇか。

 

「勝負は簡単じゃ。単にどちらが速いかを競う」

「……天魔様、それは私にとって有利すぎませんか?」

 

 ……ほほぅ?

 今、なんて言ったかなぁ? 俺に対して? 速度で? 有利過ぎる?

 

「……天魔、ぶっちぎって普通に勝っちゃって良いんだよな?」

「「………………」」

 

「……いや、じゃからそんなに険悪にならなくても……」

「「さっさと勝負を始める!!」」

「は、はぁ、わかったわい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 審判の天狗、俺等がフライングをしていないかの監視役が横につき、天魔はどちらが早くラインを越えるかの確認の為に、ゴールの方へと向かった。

 

 観客席からは射命丸を応援するような女の声が聞こえる。恐らく同年代の女天狗かね? あんまり男の声はしていないが……。

 ……なんだ、話を聴いていると里全体から嫌われているのかと思ったが、そうでもないみたいだな?

 

 まぁ、どうでもいいか。射命丸が返事をするどころか見向きもしないとかなんて。

 

 

 

「あら、空に上がらないの?」

 

 奴からの声で上空に顔をあげてみれば、宙に浮いた彼女がこちらへと顔を向けている。

 ……そういえば、あの天狗装束は昔から天狗達が着ている服だけれども、あれだと空を駆けた時に見えないか? 色々と。

 いや……見ないけどさ。

 

「俺はそういうのは必要ないのさ」

 

 そんな事を考えていたなんておくびに出さずに会話を再開する。

 そもそも俺は空中にあがったら、寧ろ俺は無力と化す。

 足場が無い為に、物理の反動や衝撃も巧く作れなくなるからだ。

 

「……大層な自信ね。その自信も完璧に折ってあげましょうか?」

「折れるのは、お前だよ」

 

 多少厨二っぽく決めてみた。特に意味はない。なんとなく。

 

 

 

 コースはそれほど長くはないし、単に直線のコースだ。

 土質は雑草でしっかりしている。多少は高草などが邪魔になるかも知れないが、まぁ……それは問題にはならないだろ。身長の低い詩菜じゃあるまいし。

 距離は……さほど差が開かないかも知れない。コースの長さが狭すぎて。

 俺は能力は『衝撃』だけ。スキマは使わない。

 スキマは発動までに時間がかかるし、短距離ならば普通に衝撃でぶっ飛んだ方が速いからだ。

 

 さてさて、どーなるかねぇ?

 

 

 

 向こうにいる天魔から合図が届き、スタートの審判の手が上がる。

 降り下ろされた時がスタートだ。

 

 射命丸の周りに風が集まるのが分かる。

 ……やはりそういった系統の能力か。風を操ってるのか? ふむ、実に天狗らしい。

 

 変わって俺は、単にクラウチングスタートの格好をする。

 どちらかと言うとベストなのはジャンプをしまくってる状態が……ああ、スタートする? 分かりましたよ。

 

 

 

「用意」

 

 隣の天狗が宣言し、その後ろに居た違う天狗が太鼓を思い切り強く叩く。

 ドンッ!!

 

 その空気を振動させるような音が辺りに響いた瞬間に、全身全霊を込めて地面を蹴る。

 後ろを振り返って見てみれば、大量の砂が弾丸のように後方へと弾き飛ばされているだろうけど。見ないけどな。

 

 射命丸の様子は見ない。見る必要もない。つーか、見る時間も無い。速過ぎて。

 

 

 

 パァンッ!!

 ……という大会で良く聴く発砲音なんて物はないが、スタートから一秒も掛からずに天魔の横を通り過ぎる。

 衝撃を操りブレーキも完璧。ピッタリとゴールのラインを通り過ぎた所で止まる。その際に地面にミシッって罅が入ったりしたけど。

 

「……む、むぅ」

 

 ……天魔が唸ってる。って事は……。

 振り向いて隣のレーンの先を見る。そこには当然のように彼女が居た。

 

「くっ!! あれだけ言う程の実力はあるわけね…!」

「……ありゃ、んだよ。結構競り合ってたのか?」

「すまん……あまりにも速すぎてワシの目では微妙な差が解らぬ」

 

 つまり、コイツ、射命丸、中々に速い。

 

 うーん……能力全開にして勝負してこれか。

 参ったな。あまり乗り気じゃない感じでやっていたけど……。

 

 ……なんか楽しくなってきたな♪

 

「んじゃ、もっと距離を伸ばそう」

「いや、しかし……」

「良いですね。決着を着けましょうよ」

「望むところだ」

「……好きにしてくれ」

 

 溜息を吐いているが、この企画を考えたのは『天魔』よ。貴方である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は海岸の波打ち際から、遠くに見える山の崖までの競争。

 天魔は崖の上で飛んで決着を判断し、どちらが先に崖に到達出来るか。という勝負になった。

 距離は先程の約十倍ほど。土質は不安定な砂。先程のように走るとなると難しいかもしれない。

 

「先程みたいには行かないわよ。絶対に突き放してやるわ」

「オメェこそ。後で泣いたりするんじゃねぇぞ?」

「だっ! 誰が泣くもんですか!?」

 

 さて……面白くなってきたし。

 ちょいと閑話でも繰り広げてみる。

 俺お得意の戦闘前の探りあいもどきである。

 

「なぁ、射命丸とやら。この勝負に命を賭けてるかい?」

「……何かを賭けよう、って事かしら? それとも、負けたら死んで御詫びをするの?」

「いやいや、賭け事じゃなくてだな? 『何が何でも勝つ!』って意志があるかい? そういう確認さ」

「……あるわよ」

「ふぅん?」

「……何よ、その顔は」

 

 いんやぁ、べっつに~?

 ふふん。さ〜てさて。

 

「審判、確認があるんだが?」

「はい、なんでしょうか?」

「試合開始の前に、能力で何かしらの『準備』をしてもいいのか?」

「……足元の線を越えてしまうような策略は駄目です」

「ん。つまりこの線を越えない範囲、尚且つ相手に影響を与えてしまうような準備じゃなければ、良いんだな?」

「そう……ですね。ハイ」

 

 つまり、始まってもいないのに線を越えて何かしてはいけないと。

 ふむふむ。オッケー。

 

 ……このレースは、審判役の天狗とゴールで待つ天魔との距離をどれだけ早く駆け抜けれるか。という競争だ。

 だからその分、その二人から離れればそれだけ直線距離は長くなる。という訳でもある。まぁ、そんな事はどうでもいい事でもあるのだが。

 

 

 

「……試合放棄でもするの?」

「んな訳あるかい」

 

 審判から離れ、射命丸からも離れる。大体20mくらいの距離をとる。

 ゴールとスタートの距離が遠すぎて、たかだか20mの距離によって作られた角度なんてそれほど結果に関係ないかもしれないが、まぁ、相手に影響を与えないようにするにはこうするしかあるまい。

 

「……その位置から、始めるのか?」

「ああ、始めてくれ」

「……良いのですね?」

「良いから、さっさと始めな」

 

 射命丸は真っ直ぐに天魔の元に行けば良いのに対して、俺は微妙に斜めになっている為に微妙に距離が開いた。本当に微妙な差なんだが。

 まぁ、俺もアイツも誤差の範囲に入るだろ。これくらいなら何も変わりはしない。

 

 

 

 能力発動。衝撃を司る。

 

 射命丸とやら。

 命張らんと、楽しめねぇぜ?

 場合によってはだけどな!

 

 

 

 柏手(かしわで)を打って空間を圧縮。範囲は1m。

 1mにもなると空間圧縮の爆破範囲は比例して大きくなるから、とても馬鹿には出来ない。

 

「貴方いま何をッ!!」

「おいおい、試合は始まる寸前だぜ。私語は慎みなされ」

「っ……」

 

 空間圧縮で風が急に俺の方に流れたのに気付いたのか? 流石流石、素晴らしいセンスを持っておられるようだ。

 審判役の天狗は何も気付いてないのにな。流石は能力者、ってところか。

 

 俺の周りにいる奴等はどいつもこいつも、才能の塊ばかりか?

 ……まぁ、どうでもいいか。

 

 俺は俺なりに精一杯生きてくだけです。ハイ。

 ま、そんな事より試合試合!!

 

 

 

「用意」

 

 

 

 妖力で身体を覆う。

 更に、神力でも身体を覆う。

 能力では保護をしない。してしまったら意味が無いし、そもそもそんな簡単に防げる訳が無い。

 

 後は太鼓の音がなった瞬間に、後ろに回した右手から放たれる空間圧縮が勝敗を決める。

 

 

 

 ドンッ!!

 圧縮砲、発射!!

 

 

 

 自分ですら風景がどの様に流れたか全く視認出来ずに崖へと叩き付けられ、そこで漸くゴール地点を通り過ぎた事に気付く。

 

「……痛ぁ。いかん……これは、ヤバイかも……」

 

 崖に見事に着地……寧ろ着弾?

 何だか背中がじりじりと痛い。これ背中に皮膚が焼け爛れてるのか?

 崖には見事なデスマスク……いや、人型の跡?

 

 

 

 ……あ、振動で崖にちょっと罅が……。

 

「お、お主……今、何をした……!?」

「……ふ、ぅ……そんな事より、射命丸は?」

 

 単に空間圧縮で自分を弾き飛ばしただけだっての。

 まぁ、服の背中部分が焦げて千切れ飛んだけどな。地味に痛い。泣きそうだ。嘘だけど。

 

 さてさて……おぉ? 射命丸さんはちょうどゴール手前の草むらで腰抜かしてら。

 ……それでもそこまで辿り着いていたんだよな。すげぇなオイ……。

 

 

 

 よたよたと歩いて彼女に近付く。全身が痛い。

 ……うん? なんだか鉄の味が口に広がる。咳で血が出た。あれ? 肋骨が折れた?

 それは置いといて、射命丸に話し掛けるとする。

 

「さーてさて、射命丸さんよ。ゴホッ、俺の勝ちで良いよな?」

「……あ、貴方……」

 

 へっへっへっ、まぁ、自分でも飛んでる途中が認識出来ない程のスピードだったしなぁ。

 おかげで突っ込んだ崖の尖った岩が刺さって痛いのなんの。見てみろよ尖った石が何個も腕に刺さってるんだぜ?

 ……あれ? なんやかんやで結構重傷じゃないか俺? ゴホッ。

 

「お、お主!? 背中はどうしたのじゃ!?」

「あぁ、やっぱり酷い? 絶対に何か焼けてるよなコレ」

 

 だと思ってたんだよねぇ。

 風が吹く度に傷口に塩を振り掛けられてる感じ。

 ……衝撃、衝撃だ。これは衝撃の痛みだ。だから薄れてくれ、頼む……!

 

 ……無理か? あ、でも骨折の痛みは退いて来た。何故だ。

 たまーに自分の能力の適用範囲が分からなくなるんだよなぁ……。

 

 

 

「さーて……」

「……とりあえず、来い。今すぐ治療じゃ」

「めんどくさいから嫌」

「そういう問題ではなかろう!」

「はぁ、今ちゃんと修復してるから。天魔の家に向かってる時には完治してるっての」

 

 神力をかなり注ぎ込んでいるから、まぁ……半日あれば治る。怪我も殆どが皮膚や肉を破っただけだし骨はまぁ、いつもの事。神力超万能。

 

 ……というか、知り合いに神力を持ってる妖怪って、あんまり居ないんだよなぁ。

 案外、俺みたいな妖怪ってのは居ないのかね?

 ……居ないんだろうなぁ……。

 

「ほれ、治ってきてるじゃん」

「……」

 

 じうじう音がしている辺り、相当グロイ光景が広がってるだろうなぁ。

 おっと、ならその光景を隠すべく、服も修理しますかね。

 

 

 

 あ……服を脱ごうかと思ったら、射命丸が居たんだった。

 帯を解こうとした手を止め、彼女に近付いて目の前で手を振る。

 

「お~い? 射命丸さ~ん?」

「……」

 

 あ、だめだこりゃ。完全に呆然としてら。

 ……それだけショックが大きかったのかね? ……大きかったんだろうなぁ。

 

 俺も追い抜かれたら、ショックで呆然とするだろうなぁ……これほど魂が抜かれた様な表情はしないと思うが。

 

 しかし、ここでこうしていても仕方がない。

 そろそろスタート地点の天狗も到着しそうだし、今後をどうするか、だな。

 

「で、天魔? この後はどうするんだ?」

「……そうじゃな」

 

 ……だから、治療して大丈夫だっての。

 チラチラ見てんじゃねぇよ。腹立つ。

 

「とりあえず、ワシの屋敷へ向かうとするかの」

「了解。射命丸も連れてくぞ。放って置いたらどうなるか解らん」

 

 この何も見えてない眼。見てくださいよ奥さん。真っ暗ですよ、ええ。びっくりです。

 

 

 

「解った。それよりもお主、本当に大丈夫なのじゃな?」

「だぁーッ!! しつこい!! 強制転移!! 開けスキマ!!」

「のぅ!?」

「……」

 

 天魔と射命丸の足元に同時にスキマをオープン。

 二つ同時に展開したのは初めてだったけど……予想以上に疲れるな……これは。

 

 まぁ、俺も向かうとするかね。

 

「あ、審判! 二人ともちゃんと送り届けるから大丈夫だからな!! 安心して里に戻ってくれ!」

「「は、はぁ……?」」

 

 よし。

 んじゃ、俺も向かうか。

 スキマオープン♪ いざ行かむスキマツアー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと」

 

 スキマというツアーを終えて、見えてきたのは、

 机を押し潰して憮然とした表情の天魔と、

 隅の方に眼を開いたまま横倒しになっている射命丸。

 

 ……これはひどい。

 

「あ~……色々と、失敗……した?」

「……後でお主が加工した机を送れ。早めにな」

「……了解」

 

 ま、まぁ、仕方ないよね? これは……ハァ……。

 

 

 


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