風雲の如く   作:楠乃

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 某奇妙な冒険とは関係ありません。似てはいますがw



波紋レーダー

 

 

「え~っと、つまり娘が居ると? しかも私よりも年上と」

「そうだな……既に百歳は行ってるな」

 

 半妖怪化……させたのは志鳴徒になる前の筈だ。

 でもって、次に逢ったのが百年後なんだから、どれだけ放っておいてんだって話だ。

 

 あー、とすると彩目は……大体百二十歳位か? 元々の年齢プラス百十年、って感じだな。

 

「しかし……貴方に配偶者が居るとは……」

「配偶者言うな……そもそも居ねぇよ」

「ゑ?」

「俺、いや詩菜の血? 鎌鼬の特性を受け継いでいるだけで、元は人間だぞ? アイツは」

 

 今は志鳴徒になっているが、彩目に初めて遭ってあんな事をしたのは詩菜の姿しか取れなかった時の話だしな。繰り返し言うようだが。

 

 

 

 まぁ、何はともあれそんな話をしながら、天魔の里近くの家に向かって進行中。

 

「……とすると、貴方が人間を襲って妖怪の血を混ぜたんですか?」

「かなり強引に、な……考えてみたら、よく仲良く出来るな。俺等……」

「……本当に、貴方は……」

「んだよ。常軌を逸しているってか? まぁ、自覚してる」

「……してるんですかねぇ」

 

 だって、俺だもん♪

 

「今の言葉、果てしなくウザかったです」

「うん。俺も言ってて、ないなぁと思った」

 

 俺がした事は、そんな軽々しく言える事でもないのにな。

 彩目と和解したからこういう風に言える……いや、本当はそれでも言っちゃダメなんだろうけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。

 

 高速で飛んで跳び回ったおかげで、異常な速さで自宅に到着。掛かった時間はなんと五時間。

 けれども……どうやら、彩目は居ないようだ。

 

「ありゃ、居ると思ったのにな」

「近くに居るのでは?」

「いや、念話にも応じないから多分近くにも居ないな」

 

 とすると……まだ慧音と全国を放浪してるのか?

 ……わざわざ移動して探すのもめんどくさいなぁ……。

 

 

 

 こういう時の、能力頼み!!

 

「よし……ちょっと離れてくれや」

「? 分かりました」

「もうちょい……ん、それぐらいで良いぞ」

 

 妖力を充填。圧縮。

 

「……何をする気?」

「ちょいとヒト探し」

「……本当に? 巻き込まれたりするのは嫌よ?」

「大丈夫だって」

 

 多分。

 

 

 

「ちょっ!?」

「ほいっちょー!!」

 

 そんな声を華麗に無視(スルー)して、

 圧縮した妖力を思いっきり地面に叩き付ける。

 地面にぶち当たった妖力は、俺の能力によって『地面を伝う衝撃音』となって、円形に広がって響いていく。

 

 衝撃はまず最初に文の足に触れて『反響』した。

 ……うん、ちゃんと返って来てるね。

 うし。術式はどうやら完璧、と。

 

「あとはちゃんと目標に届くか……かな?」

「あややや!? なんですかこの音!?」

 

 キーンと響く綺麗な音。まぁ、嫌いなヒトは嫌だろうなぁ。と思う音。

 そんな文からの反響音はちゃんと俺の所まで届いた。距離があまりにも近すぎたせいで重なって聞こえたように感じたが、自分が出した音と反響して返って来た音の区別くらいは簡単に分かる。

 これで遠くのヒトの反響音も拾えれば『衝撃によるソナー』の完成だ。

 

 お、また一つ返って来た……な。これは……天魔か?

 

 うむ、ぶっつけ本番でやってみた『妖力と能力のソナー探知機』は成功だな。多分。

 衝撃で妖力を飛ばして、俺の知り合いかどうかを判別出来るという妖力の術式を描いて、それを衝撃で吹き飛ばして、該当人物を反射してきた妖力と能力で判断する。

 

 つまり、俺の知り合いに対して反応する、潜水艦ソナーって訳だ。

 

 

 

 地面に耳をつけて、ジッと待つ。

 

「……あの、何をされてるんですか?」

「彩目を探してる」

「……はぁ?」

 

 まぁ、今の時代にソナーなんて理解も出来ないか。

 

 ん……これは、妖精達だな。

 チルノ・大ちゃん・妖精ちゃんの三人。

 次に……幽香だな、これは。場所は妖精達とは正反対からだけど。

 俺の妖力がほとんど打ち消されてるし……。

 

 

 

 お……?

 

「……この反応は……慧音か?」

 

 ……にしては知らない奴が、やけに近くにいるな……?

 いや……この反応は……何処かで……。

 

「……貴方の知り合いはほとんどが女ですよね。私もですが」

「何だよ、その言い方……?」

「いえいえ、別に何も? 男から見たら相当妬ましい状況だなぁと思いまして」

 

 ……ハーレムについてですか?

 むぅ……好意があるかないかは別として、女性の知り合い……。

 

 娘

 娘の友人

 御主人(スキマ)

 弟子(てんぐ)

 友人(どS)

 友人(カエルとヘビ)

 友人(ようせい)

 友人(つきのひめ)

 友人(さくら)

 仕事(ようかいでら)

 

 ……。

 

 ……外道……?

 

「……これは酷い」

「背後から刺されたりしますね」

「……新月の夜に、ってか?」

「おお、怖い怖い♪」

「はぁ………………」

 

 

 

 変化、詩菜。

 

 

 

「あら、変化されるんですか?」

「こうすれば問題なし!!」

「……貴女が男性にもなれるという事を知らなければ、それも通用したかも知れませんがねぇ」

 

 あー、知らないのは多分……友人(ようせい)友人(カエルとヘビ)仕事(ようかいでら)ぐらいかな。

 友人(さくら)は紫から聞いてると思うし、多分知ってるかな? 妖忌は知らなそうだけどね。

 

「意味ないわね」

「あ~あ、もう……やんなっちゃうな!」

 

 

 

 こんな雑談をしながらも、衝撃音はちゃんと拾っている。

 紫の反応が返ってきた。

 スキマの中も探査出来るのか? いや、無理だと思うから……珍しく紫が歩いているのかな?

 

 んで二つの反応。これは幽々子と妖忌かな。

 ……今度、妖忌を詩菜で遊んでみるかな♪

 

 

 

《……貴方は何をしているのかしら?》

 

 とか考えてると、いきなり紫からの念話通信が。

 いや……まぁ、私のソナーに気付いたんだろうなぁ……それにしても一発で気付かれるとはねぇ。

 

《いやぁ、ちょっと彩目が何処に居るか知らないかな?》

《知らないわよ。貴女と彩目ちゃんは念話が出来ないの?》

《ん、距離に制限があるから無理》

《ふぅん?》

 

 そう言って紫との通信が切れた。

 

 ……珍しいなぁ、紫がさっさと話を終わらすなんて。

 なんとなく……嫌な予感がするけど。

 

 

 

「……どうですか?」

「んーまだ……やけに遅いなぁ」

 

 そんな遠くまで一人で移動したのかな?

 

 

 

 ん、これは諏訪子と神奈子の反応だな。神力の雰囲気。

 

 ……。

 ……? ッッ!?

 

「っ呪い返ししないでよ諏訪子ッ!?」

「詩菜!?」

 

 地面から一気に離れて、樹に飛び移る。

 直後、私が地面に伏せていた場所に真っ黒い蛇のようなモノが顕れた。

 

「あっぶな……」

『いやー、避けられちゃったかー』

 

 黒い蛇がケラケラ笑ってる!?

 

「……諏訪子?」

『やっほー♪ 久し振りに連絡を寄越したねぇ? 何してるのさ?』

「……いやまぁ、色々遭ってね」

 

 地面に降り立ち、ミシャグジ?(諏訪子) に近付く。

 

「ていうか、そんな事も出来るんだね」

『やっぱ詩菜も神様としてまだまだだね』

「まぁね。本業は妖怪だし」

『ていうかさぁ……神風の説明は?』

「……また今度に」

『まぁ、私は良いけどさ? ちゃんと説明しないとダメだよ? 特に神奈子にはね? 今も隣で喚いてるし』

「うう……善処します……あと隣のお方はそちらで何とかして下さい……」

『えー? まぁ、良いけどさ』

 

 ……やっぱ、使っちゃダメだ。あの技。

 神奈子様直々に御説教とか、怖すぎる……。

 

 

 

「……えっと……これは?」

「あ……」

 

 ……また文がおいてけぼりに。

 

『誰さん?』

「えーと、相方?」

『へぇー……あれ、彩目は?』

「今その彼女を探してるんですよ」

『ふぅーん……? まぁ、あんな術式だと自分の居場所を晒してるような物なんだし、気を付けなよー?』

「え?」

 

 フッ、と真っ黒な蛇は溶けるように消えていった。

 呪い返しを解いたのか……いや、そもそも知り合いに呪い返しを使わないでよ。

 ……いや、ツッコむ所はそこじゃなくてだな。

 

「早めに此処から移動した方が良いのでは……?」

「……そうだね。さっさとスキマに引っ込んだ方が……いやいや! それじゃあ彩目の居場所が探れないじゃん!」

 

 もともとの目的が達成出来ないのに、放り投げるのは駄目だべ?

 

「……じゃあここから離れる事は?」

「正確な距離が測れなくなる。今は動いてないから位置も分かるんだし」

 

 参ったなぁ……とすると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あちゃー。

 

「いきなりあんな音波なんて出しちゃって、どうしたのよ?」

「……久し振りだね。幽香」

「ええ、久し振りね」

 

 花妖怪が遅れて到着。

 ……わぁお……。

 

 なんか……物凄い失敗した感じ?

 

「いきなり衝撃なんか出しちゃって、どうしたのかしら? と訊いているのだけれど?」

「いやぁ、ちょいと……ありまして……」

「ふぅん? ……そこの天狗は?」

「……今、ちょうど連れ添ってる相棒的な奴」

 

 随分と失礼な感じがする挨拶だけど、他に説明が出来ない。

 

「へぇ? 天狗を連れ添っているの?」

「まぁね」

「……あの、どなたで?」

 

 ……あれ、噂とかが大好きな天狗でも花妖怪の存在は知らないのかな? いやまぁ、花妖怪の名前を知らないのは聞いていたけど、姿まで知らないとは。

 それとも文自体が天狗の里に居た期間が短かったからかな?

 

「あら、天狗なのに私を知らないのかしら? 結構近くに家があるのだけれど」

「いや、私は天狗と成ってからそれほど年月が経ってないので ……」

「ふぅん……? ま、どうでもいいわ」

 

 さいで。

 ……いや、まぁ、こんなのんびりしている暇も無いけどね!

 

 

 

「で、何をしているのよ? 三度目よ」

「あー、彩目が何処に居るか知らない?」

「知らないわね。娘の位置すら知らない駄目な親なんて」

「いや、そっちじゃないから……」

 

 久々に逢ってそうそうサディスティックモードですか。そうですか。

 はぁ……なんだろう。どんどん行き先に暗雲が広がって行ってるような……?

 

「……それより、いつまで地面に伏せているわけ?」

「あ~……衝撃音を拾ってまして……」

「ああ、それであんな波が来たのね」

 

 御理解が早くて助かりまする。

 

「で、あの子を探すと同時に敵を呼び寄せて無双しようって魂胆なのかしら? そうだとしたら私は一番乗りかしら?」

「……いんや、戦おうってつもりはないんだけど?」

「あら、そう。残念」

 

 バトルジャンキー乙。

 

 

 

「……げげ」

「詩菜さん……『色々と』来てますが……?」

 

 百鬼夜行、千差万別の妖怪と選り取り見取りの大妖小妖。街談巷説、枯れ木も山の賑わいで陽炎、稲妻、水の月。妖妖跋扈の妖怪変化。魑魅魍魎、悪鬼羅刹、異類異形、怨霊怪異、牛頭馬頭、狐狸妖怪、山精木魅、妖異幻怪。

 

 

 

 要するに、明らかに私狙いの妖怪どもに囲まれた。

 

「……やっちゃったぜ……」

「やっちゃったじゃないですよ!? どうするんですか!?」

「お願いします幽香さん!!」

「ヒト任せ!?」

「もう、仕方無いわねぇ……」

 

 ……台詞はツンデレなのになぁ……顔がもう、殺る気満々な顔なんだよなぁ……。

 そんな幽香にちょっと放心気味な文に合掌。手を合わせたりなんかしないけど、心の中で合掌。

 

「さぁ! そこらの雑魚妖怪、かかってきなさい♪」

「「「「「ウオォオオォォォォ!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄いですねぇ。まさに千切っては投げ、千切っては投げ。ですね」

「幽香だもの」

「ふふふふふ……まだよ! もっと、もっと私を楽しませなさい!!」

 

 幽香無双状態。

 時たま吹き飛んでくる妖怪を文が風で吹き飛ばす。

 こっちは平和なものである。

 

「……で、反応はありましたか?」

「うん、なんとか見付かったよ。しばらくすれば来るでしょ」

「……迎えに行かないんですか?」

「いや、幽香がいるじゃん」

 

 実は幽香が無双を始めた辺りに反応が返って来ていたんだよね。

 友人がわざわざ来たのに、放っといて無視は酷いでしょ?

 

 しっかし……どれだけ彩目は遠くに居るのよ? って話だよ……あんなに時間が掛かるって、日本の端から端までって訳でもあるまいに……。

 

 

 

「それにしても……あれだけ暴れて死んでいる妖怪が居ないのが凄い」

「え!?」

「あれ? 気付いてなかった? 全員瀕死だけど、死ぬような傷はないよ」

 

 紫からの話だけど、花の事以外なら滅多に幽香は殺す程の暴力を奮わないのだとか。

逆 に言えば、花にちょっかいを出したら即死亡という訳だ。恐ろしすぎる。

 

「……瀕死、というのは死に瀕しているという意味なのでは……?」

「まぁまぁ……おっとぉ?」

 

 そう言って悩んでいる所にまた犬っころが此方へ吹き飛んできた。

 至極邪魔なので、叩き返して差し上げる。というか寧ろ真上に蹴り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レシーブ!

 トス!!

 目標確認! 方向良し! アターックッ!!

 

「せいやぁぁぁ!! 吹き飛べ幽香ァァァ!!」

「えぇ!? なんで貴女が攻撃してるんですか!?」

「フフ、真打ち登場? 待ってたわよ!!」

「ええええ!?」

 

 あわれ肉球(そのままの意味)となって飛んできた妖怪を踏みつけ足場にし、一気に私の方にやって来る幽香さん。今日も殺意が眩しい。

 

 幽香の日傘に対抗して私も扇子を取り出して臨戦態勢。使い過ぎた扇子の桜模様は、まるで血桜のようだ」

「何を暢気に解説しているんですか!?」

「文も上空に逃げた方が良いよ? ふふん♪」

「貴女も戦闘狂だったの!?」

 

 

 

 文、脱落!

 よし、まだ雑魚妖怪(かんきゃく)は居るね。

 

 と、いつの間にやら随分と近くに、突進してくる幽香が。

 体感時間が縮まっていく。いつもなら既に傘で吹き飛ばされているだろう時間が経過しても、まだ幽香の腕すら動いていない。

 言葉すらも交わせる。体感時間だけが縮まっている筈なのに、私と彼女の精神以外の時間が遅くなっているような感覚。

 

「余所見なんてしている隙はあるのかしら?」

「よそ見じゃないさー、お客様の御機嫌を取るのも重要な仕事だよ?」

「それもそうね♪」

 

 そのまますれ違い、背中合わせになって、それぞれの武器を構える。

 洋傘と扇子。文化すらも全く違う、武器とすら呼べない筈の二つ。

 

「じゃあその御機嫌とやらをさっさと取りましょうか♪」

「良いわねぇ♪ 派手にやりましょう!!」

 

 幽香は日傘の先に大量の妖力を集めて、

 私は閉じた扇子の先に空間を圧縮して、

 

「喰らいなさい!!」

「いっけぇぇぇ!!」

「『マスタースパーク』!!」

「『ベクターキャノン』!!」

 

 ……うーん、こういうのって同じ技で魅せるのが最高なんだろうけどなぁ……まぁ、いいや。

 

 『空間圧縮』の神髄を思い知れぇぇぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……けどやっぱり、十世紀以上も早い技術は扱いが大変だなぁ。

 幽香と回転しながら砲撃を周りにブッ飛ばしてるんだけど、反動で私も吹き飛ばされそうだ。

 

 てか、何処のロボットアニメだこれ。

 確かにベクターキャノンはジェフティの砲撃だけども! マスパは違うから!!

 

 ……誰に言い訳してんの私!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 掃討完了!!

 

 しかし、ここでも力の使い方が明確な差として出てきた。

 幽香の撃った『マスタースパーク』は木々や草花にダメージを与えず、妖怪だけを弾け飛ばし、私の撃った『ベクターキャノン』は命中したものを全て消し去ってしまった。明らかの技量の差。

 

 うーん、私もまだまだである。

 

 

 

「さて、本日のグランドフィナーレね♪ さっきの砲撃で全力を出し切りました。ってのはないわよね?」

「能力で圧縮しただけだから。大丈夫だよ?」

 

 はてさて、

 

「……さぁ、戦いましょう?」

「もちろん♪ 今度こそ肉弾戦で勝ってみせるよ幽香ァ!!」

「フフ、姉に勝つ妹なんてのは居ないのよ!!」

 

 行くぜゴラァァァ!!!

 

 

 


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