風雲の如く   作:楠乃

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 あけましておめでとうございます。本年も私と『風雲の如く』をよろしくお願いいたします。




追い掛けっこ、もとい、鬼ごっこ

 

 

 

 さーてさてさて、『鬼ごっこ』もとい『鬼極固(おにごっこ)』を続けましょう。

 そんな今現在の状況。

 

 私、自宅なう。

 彩目、罠を仕掛けてる?

 文、上空から捜索中?

 

 んで『零時迷子』の如く、真夜中を過ぎて体調が万全に近くなった私。

 怪我の痛みも無くなったし、もしもの為の緋色玉もあるし。

 

 ……なんか『緋色玉』って呼び方自体が久々な気がゲフンゲフン!!

 

 ふむ……それなら私の方から色々と仕掛けてみるかな?

 

 

 

 まず、私が能力を使うとした場合、問題なのは文の存在だ。

 『衝撃』というのは『風』の中に入っている。と私は思っている。

 だから私が能力を使えば文もその能力を使ったって解ると思っているし、実際にさっきは『緋色玉』を造り出したら位置を割り出されてしまった。

 逆に私の能力の特徴からして、そっと彼女達が私に近付こうとしても、何かしらの音『衝撃』は誤魔化せない。

 

 そう、家の反対側から私の方へと近付こうとしている彩目のように……。

 

 

 

「はてさて、そこの娘御はどうやって私を捕まえようというのかね?」

「ッ……!?」

 

 その気になれば、能力でボイスチェンジャーも可能なのである。まる。

 まぁ、しないけどね。向こうには既に視認されてるんだし、声を変えたって意味が無い。

 

 だからと言って、わざわざ接近を許そうとも思わないけどね。

 

「私の周囲には罠。上空には不本意ながら仲間が居て厳しい。だったら後ろから近付けば大丈夫。って所かな?」

「……そうなんだが、近付く前に気付かれるとはな……それに、喋ってたらアイツが来るんじゃないのか?」

 

 まぁ、そこまで文は地獄耳じゃないよ? 多分だけどね。

 紫曰く、風の噂とかは拾えるかも知れないけど。

 

「……ああ、でも二つの声なら気付くかもね」

「なに?」

「フッフッフッ、私がそんな声でバレるようなヘマをするとでも?」

 

 そこら辺はちゃんとしてるのさ!!

 今の私の声は彩目にしか届いていないのだ!!

 

「だから今、彩目は独り言をブツブツ呟いている『痛い娘』に見られている訳さ」

「……おい!!」

「あっ、ちょっ、そんな大声出されたらバレるでしょうが!?」

 

 

 

 ……うし、気付いてない……ね?

 空を見上げ、葉の陰からそっと文を見る。大丈夫、ここから見た感じではおかしな挙動はない。

 

「……全く、何て事をしようとしたんだか……」

「まぁ、こんな事でもしないと私は近付けないからな」

 

 おっと……、

 いつの間にやら、彩目が超至近距離に。

 目測であと7メートルほど。私等にしてみれば至近距離だ。

 

「この距離なら、簡単に捕まえれる」

「……そうかもねぇ。でも、上手く行くかな~?」

 

 近辺に足場となるような樹木は無い。あるとしたら私の家という名の大木だけど、彩目の方が近いから除外。今のところ文は来てないから一度上空に上がってから、緋色玉を爆発させて緊急回避というのもある。

 単に彩目から逃げようとしたら罠の存在もあるし、彼女が刃物を出現させてむやみやたらに投げてきて足止めをした後に、異変に気付いた文に私は捕まってエンド。

 彩目も失敗を繰り返そうとはしないだろうから、罠も私用に改良されてるだろう。刃物が飛んでくる位置を変えてあったりしている筈。

 

 今はまだ私と彩目、膠着状態に陥っているけど、そろそろ文も彩目が動いていない事に疑問を持つ筈だ。

 そうなれば私は二方向から追い込まれる事になって、ジ・エンドだ。

 

 ふむ、これはこれは……困ったもんだ。決して参ったではない。

 

 

 

「……ま、こういう時ほど」

「?」

 

 逆襲は成功する。ってなぁ?

 

 威力は最小限・範囲は最小化させた緋色玉を、親指で弾いて彩目に『撃った』

 

「なっ……ッ!? ガハッ!!」

 

 即座に飛来する弾に反応して、創造した刀で叩き斬ったのはお見事。でもそれはアウトだよん。

 

「いや~、ごめんね?」

「ぐっ、う……」

 

 爆破。爆発。吹き飛ぶ彩目ちゃん。

 まぁ、あんな威力で傷が出来たらむしろ驚くような威力で作った筈だから、恐らくは平気であろう。

 使えるとしたら、相手を吹き飛ばす効果と目眩まし位にしか使えないように作った筈。

 ……まぁ、着地もしっかりと出来て無傷で生還する彩目を見てホッとしている辺り、母親の自覚が出来てきたのかね、と思わなくもない。

 

 さて、そんな事は置いといて。

 そんな小規模とはいえ、爆発なんか起きたらやっぱり文は気付くよねぇ。上空から急速に何かが近付いているような風の動き方。

 

 はて、ここはどうすべきか?

 今の状況、さっきの文との追いかけっこと同じ状況なんだよね。

 でもまぁ、さっきと同じ事をしたら面白くない。詰まらない。

 

 

 

「さっさと捕まりなさい!!」

「やなこった!! 喰らいなァ!!」

 

 スピードは落ちるけど、致し方無し。

 面白ければ良い。まぁ、他人も巻き込めれれば最高。

 

 渡り跳んでいた木々を、思いっきり『蹴り砕く』

 つまり、足場となった樹木は衝撃に耐え兼ねて、『皮や枝を撒き散らして倒壊する』

 飛び散った破片は、私が跳んでいった後ろに広がり、私には全く影響を与えず文の妨害の為の『弾幕』と化す。

 

「ッッ!? 邪魔ッ!!」

「おおぅ、文から意外な言葉が飛び出したなぁ」

 

 

 とか何とか言いながら、木々を蹴り砕いて彼女の進路を遮りながら跳んでいく。

 はい。これまた逃げ切った~。ぱちぱちぱちぱち。

 

 

 

 感覚からしてもうすぐ三時だ。

 となると残り三時間強。どうやって逃げるかな……?

 

 とかまぁ、そんな事を考えては居るんだけれど……うーん。

 さっきから彼女達の間柄をどうしようか。それも考えては居るものの、結論が出ていない。これは不味い。

 もう二人が仲良くするとかどうでもいい感じになってるもんねぇ。

 

 そうだなぁ、後は陽が昇るまで待って……。

 

 待って……どうしよ?

 

 やっべ、何も考えてなかった。バッカで~。

 このまま陽が昇って朝飯の時間になって、私と彩目と文とのご飯の時間は絶対嫌な感じになるじゃん!

 根本的な解決になってないがな!!

 

 あ~……ほんと、どないしよ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何故こんな事になったのだろうか?

 

 とりあえず改良型の罠をあちらこちらに仕掛けつつ、考えてみよう。

 無駄かもしれないが、思考の停止は良くない事の筈だ。

 

 別に私はあの天狗が詩菜の近くに居るから妬ましい。等とは一切考えてはいない。

 それならば、何故あんな雰囲気になったのか。

 私が無愛想なのもあるとは思うが、そもそも詩菜のやり方が駄目なのではないか?

 いきなり双方を『弟子』『娘』として紹介して、仲良くしろと言われても、それは流石に無理があるだろ……。

 

 そしていつの間にやら仲が悪いと決め付けられて、決め付けられた当人達は何となく居心地が悪くなってしまった。

 

 無茶苦茶し過ぎやしないか……?

 

 

 

 そんな風に考えつつも罠を設置完了し、母親殿を探し始める。

 理想でのこの隠れんぼの終わり方は、私が詩菜を見付けて追い掛け、うまく罠が大量設置してある地帯へと誘導して捕獲。である。

 ……まぁ、あの詩菜だ。そうそう上手くはいかないだろう。というか絶対にいかないだろう。

 

 そう予想はしていても、手を休めることなく辺りを警戒しつつ探る。

 十分ぐらい経過した後に、その警戒網に引っ掛かる何者かが居た。

 

 ……まぁ、頭上からゆっくりと飛んで降りてくるために、詩菜ではないのだが。

 

「……彩目さん、彩目さん」

「どうした?」

 

 とはいえ……驚いた。

 まさか向こうから話し掛けてくるとはな。

 正直な所、こちらからは到底話し掛けれないと思っていた。

 

 射命丸が、上空から降りてきた。

 罠にも気付いているのか、ちゃんと邪魔にならないように降りてきている。

 

 ……案外、バレる物だな。これ。

 まだまだ師匠には追い付けない、か。

 

 罠の修正案を考えつつ、彼女を迎える。無論周囲の警戒は怠らずに。

 

「私が思うにですね」

「うん」

「あの方の勘違いは時たま酷いものがあると思うのです」

 

 ………………。

 

「……ああ。それには大賛成だ」

「ですよね!」

 

 

 

 何だろう、結構仲良くいけるような気がしてきた。

 主に愚痴の話で。

 

「それで、詩菜さんの現在位置って分かりますか?」

「……そうだな」

 

 まぁ、追い込むためにもちゃんと考えてはある。

 

 さっきはたまたま自宅の方面の罠を改良型にしようと思って来てみたら、たまたま詩菜が居て接近する事が出来た。

 その前も、たまたま視界の先に詩菜が現れたから、不意を突いて攻撃する事が出来た。

 

 そしてこの山の中。

 中腹から上には天狗の里があるからアイツも行かないと考えるべきだ。

 山から離れる事は、アイツに限ってはないだろう。変な所で律儀だからな。

 

「恐らく、自宅を中心に行動しているんじゃないか? 勘だが」

「……あの家を中心に。ですか?」

「ああ、あの移動方法(スキマ)がどういう仕組みかは解らないが、アイツも滅多には使わないだろう」

 

 滅多に使わないというのも、アイツの律儀な所と勘でそう思うだけ、なのだが……そう思えるほどには、私はアイツを知っているつもりである。

 

 この『鬼ごっこ』の範囲は、真ん中がくり貫かれている円形の中で追い掛ける仕組みになっている。

 穴が開いた円形の範囲での追い掛けっこ。入れない部分の半径と全体の半径を差し引きした距離は結構なものだが、速度にはそれなりの自信がある私と、天狗の彼女ならばその距離を封鎖する事は出来るだろう。

 

「……挟み撃ち、ですか?」

「そうだな……それが一番かも知れん」

 

 私が追って、射命丸が前方を封鎖する。案外これが最も適当かも知れない。

 母親殿も『協力しろ』と言っていた事だし、言われた通りにしてやろう。

 

 

 問題は……。

 

「……この会話が聴かれているかも知れない。って事だな」

「敵対すると、ここまで厄介な能力とは……」

「攻撃防御移動……何でもござれだからな」

 

 

 

 ……まぁ、

 

「いっちょ、やってみるか!」

「そうですね。一泡噴かせてやりましょう」

 

 捕まえるとしますか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 協力して私を捕まえてくれ! 頼む!!

 と、藁にもすがる気持ちで自宅に戻ってみるわたくし詩菜でありんす。

 

 

 

 遂に朝日が近付いてきた。東の方が明るくなりつつある。恐らくはもうすぐ五時になる、という所であろう。勘だけど。

 ああ、どうしよう……。

 

 もうヤダよ居心地の悪い空間って……。

 ……妹紅とかのである意味トラウマなんだって……。

 

 

 

 ……いっその事、私から近付いて協力せざるを得ない状況に……!

 ていうか……それが一番初めの考えじゃなかったっけ?

 

 ……あれぇ~? なにか……なにかおかしいな?

 

 

 

 閑話休題。

 変な『子供探偵』を真似している暇は無いのである。うむ。

 

 さぁて、近付くという方針(?)も出来た事だし。

 行動を再開しよう。

 ……いや、違うな。『任務を開始する』だな。

 

 イッツ・スニーキングミッション!!

 ……こんな感じでいつもおちゃらけているから私は怒られているのである。

 

 

 

 とりあえずは一番私を発見しやすいであろう、天狗の彼女の位置を探る。

 文は……ん? 旋回中?

 ……いや、領域を上空から見回ってるのかな? 風の動きと彼女の姿を捉えてそれを確認。

 結構遅く動いているから、慎重に確実に見付けようとしているのが分かる。

 

 ……まぁ、文の進行方向と私の進行方向は逆方向なんだけどね。

 あのスピードだと再び私達が出逢うのは、相当時間が経ってからじゃないか?

 根本的に、山の裾だけだって言ってもその山自体がとても大きいしねぇ。

 

 そんなスピードで大丈夫か?

 ……ツッコミが居ないって悲しい……『古い』とか『色々と違う』とか、そういうツッコミが欲しい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな感じ、つまりおちゃらけた感じで動いていると、彩目を発見。

 こっちが気付いているだけで、向こうは気付いていない。

 罠を仕掛け終えたのか、普通にガサガサと草木を掻き分けて私を探している。

 

 ……おーい? そんな所に私が居る筈ないでしょー……?

 どんな考えを経て、私が松の茨の中に居るっていう考えになるんだ。

 

 

 

 ふむ、このまま時間切れでゲーム終了かな……?

 あ~あ……今日の朝御飯はどうしよう? ……いや、献立の話じゃねぇよ。

 

 嫌な雰囲気で旅を続けるのはもう嫌でごじゃりまする……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……と、暢気に考えながら彩目を追っていたのが悪かった。

 

「……ん!?」

 

 今、何かが……プッツン、と切れた音が……?

 

「ッッ!? 既に真後ろに居たのか!?」

「……うっそぉん」

 

 どうやら彩目は、

 私を捜しながら、しかも私が気付かないように隠しながら、罠を仕掛けていて、私は簡単に引っ掛かってしまった。と……。

 いや~……攻撃目的じゃなくて、発見専用のアラームか……それは盲点だったわ……反省反省。

 

 ま! 反省を活かす為にも逃げないとね!!

 

「今度こそ逃がすかッ!!」

「ヤバッ!?」

 

 すぐさま反転して逃走。

 刃物がもう、ブンブン飛んでくるが、忍者跳びで回避する。

 樹木の弾幕なんぞやってる隙などありゃしない。

 だがまぁ、彩目の移動速度では私に追い付く事が出来ない筈。

 

 

 

 と、思って後ろを振り向いてみたら。

 飛んでくる刃物の上に乗っている彩目が、

 

 

 

「何処のタオ○イ○イ!?」

「誰だその変な名前は!?」

 

 確かにそれなら乗り継ぎを繰り返せば行けるかも知れないけど……。

 知れないけど、さぁ!?

 どうなのよそれ!?

 

 そんな風にツッコミながら、次々と跳びはねて逃走していく。

 足場にしようとしていた樹木が、私が到達する前に彩目の刃物で切断されていく。

 それでもその刃物の切れない部分を足場にしたり、倒れてくる樹木を蹴って行ったりしてなんとか逃走を続ける。

 

 くそっ! 罠はあんまり無いけど、刃物がどんどん足場や樹木を削ってく!!

 流石親子ってか!! 行動の先を読まれやすい!

 

「なら……もう一発緋色玉を喰らえッッ!!」

「……」

 

 発射!!

 

 

 

 親指からパチンコ玉のように弾かれた緋色玉は、真っ直ぐ彩目に飛んでいき、

 突如として現れた『竜巻』に巻き上げられ、上空で破裂した。

 

 それはまるで時代を先取りし過ぎた花火のようで……ってそれどころじゃない!!

 

「くっ! 文か!?」

「協力してみましたよ? 詩菜さん!」

 

 後ろを向きながら進んでいた私の、その向かう先から文の声がする。

 つまり向かっている先に、射命丸文が待ち構えている。挟み撃ちされた。

 

「マジかよッッ!?」

 

 急遽方向転換。

 いきなり左に方向を変えて、文を回避する。

 

 

 

 が、

 

「そこには先程の罠がズラリと並んでいるぞ?」

「くッ!? しかも改良型かい!?」

 

 私の速度を読んで、ある程度ばらついて刃物が飛んでくる。既に私の速度も掴まれてしまったようで、的確に私が通過する場所・時間に刃物が飛んでくる。

 すり抜けたり爪で打ち返しながら移動するのは可能だ。けれどそんな事をしたら完璧に文に捕まる。

 

 どうする……!?

 

 

 

「ッッ! ……んなら《ゼロシフト》!!」

 

 最後の緋色玉を使って、強引に罠を突き破る。

 圧縮空間の反動で瞬間移動。

 前の文との競走みたいな失敗はしない。威力もちゃんと抑えてある。

 

 ……まぁ、その所為で木々と何回も衝突、撥ね飛ばしたが為に速度があまり出ず、中途半端な距離で瞬間移動が終わってしまった。

 それでもこのまま逃げ切れば良い!!

 木々が照らされ明るくなってきた!! あと10分もない筈!!

 

「このまま逃げ切ってみせる!!」

「させるかッ!!」

 

 後ろから文の声が聞こえ、彩目は返事の代わりに刃物が飛んでくる。

 はは、面白いじゃないの。

 

 もう緋色玉は無い。

 足場となるような樹木は殆んどが斬り倒されたか、斬り倒されていく。

 

 こうなると、後は私の『衝撃』で逃げるしかない。

 地面へ向かってガッと下駄を蹴り出し、それによって与える衝撃と返ってくる衝撃を同じ方向へと反射。一気に加速していく。

 

 上空から今度は彩目が私に向かって、大量の刃物で串刺しにしようとする。

 文は地上スレスレから高速で私に追い付いてくる。

 

「くそっ……衝撃波!!」

 

 速度が落ちる事も承知の上で刃物を弾き、空中へと浮かんだ刃物で文の障害物を作ろうとしても、彩目がそれを許さず刃物を消していく。能力で作ったものは自由自在に消せる、か。

 直接文に衝撃波を飛ばしても、今度は彼女が起こす風で相殺される。

 

 だんだんと、距離が縮まっていく。

 それは、一体何の距離なのやら。

 

「『緋色玉』!!」

「させませんッ!!」

 

 衝撃で『緋色玉』を造ろうとしても、今度は文が失速を覚悟で竜巻を飛ばして邪魔をする。

 それを乗り越えて造ろうとすると、次は彩目が全力で刃物を飛ばしてくる。

 

 やっぱりお前ら私を殺す気だろ、と思わなくもない。

 それよりも、この全力の追い掛けっこが楽しいと思えてしまうのだけれど、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ~あ……。

 

「「捕まえた!!」わよ!!」

「……捕まっちゃったか」

 

 弾き飛ばしそこねた刃物が私の進行方向へと刺さり、それを避けようと方向を変えた所で最後に文が私の左手首を掴んだ。

 掴まれ、踏み出して衝撃を操ろうとしたすんでの所で能力を解除。

 逃走を止めて座り込み、彩目が降りてきた所で私達に日光が当たる。

 

 フゥ……何気に疲れたな。楽しかったけれどね。

 

「……もうちょっとだったのになぁ」

「そうですねぇ。もう少しで時間切れでしたね」

「……私は既に日光に当たっていたがな」

 

 そう彩目が告げる。まぁ、彼女は高く飛んでいたから、考えてみれば当たり前ではある。

 チッ……私も飛べたらなぁ……私の勝ちで終わらせれたものを。

 

 

 

 ま、なんか二人とも仲良く出来てるみたいだし!!

 

「朝御飯にしよっか」

「はい!」

「ふふ、やれやれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、山を荒らした責任はどうとってくれるのじゃ?」

 

 知らないよ天魔君。

 文句は私の娘と弟子にどうぞ。

 

「そうか……で、あの二人は何処じゃ?」

「あ! 天魔天魔!! 『後ろを見ろ』!!」

「なに!? 後ろに居るのか!?」

 

 居る訳ないでしょ? 残念でした!

 先に二人ともスキマで避難してるもんね。

 

 スキマオープン!!

 スキマツアーにご案内、つってね!

 

「んじゃあねぇ~♪」

「な!? オイ!? 逃げるのか!?」

「もっちろん!!」

「まてぇぇぇぇ……」

 

 

 

 でわでわ、天魔様。

 お邪魔致しました♪

 

 


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