遅れましたが、ようやく投稿。
「どうよ? この髪型?」
「……なにか、斬新ね……」
「あ、やっぱり?」
何とはなしに髪型をポニーテールに。
え? 後ろ髪も肩までしか無い奴が出来るのかって?
いやいやぁ、妖怪に転生して神様をも勤めている(?)私に、容姿の事で不可能な事はほとんどない! 筈!!
まぁ、神力妖力を使って髪の毛を背骨の中心位まで伸ばして、馬の尻尾のように束ねて縛る。
あんまり長いと手入れが大変だけど……まぁ、そこは追々慣れてかないとねぇ。
「……なんで……急に?」
「んー。記録の話で大昔の事を思い出してね。やってみよっかなって?」
「ふぅん……?」
まぁ、どうでもいい事である。
さて……。
牡丹の体調もほぼ全快に戻り、今後の方針も大体思い付いた。
「で、牡丹はまだ皆が自分を理解してくれる世界を望んでいるの?」
「……」
「ああ、別に前みたいに責めるつもりはないよ。単なる確認」
「……望んでるよ……」
「ん、了解」
ふむ。
一応、というかそういう思想に『近い考え』を持つ人物は、私の知り合いにも何人か居る。
あくまでも、近い、だけどね。
一人目、私の主人にして、人と妖怪の共存が出来る世界を目指す大妖怪。八雲紫。
二人目、私の仕事相手で、妖怪を助けた僧の想いに感化された、心優しい人格者の寅の妖怪。寅丸星。
牡丹の強烈な能力を抑える事が出来る人物となると、これに西行寺幽々子が入ってくるかな?
あのヒトなら多分、考え云々をとやかく言わないだろうし。いやまぁ、死に誘うっていうのなら無理だろうけど。
後はまぁ、私が責任を取って連れ回すか。
……連れ回すって表現はヤバいけど。
「……で、その牡丹の思想を理解してくれそうな相手が何人かいる」
「……え……?」
「私としてはそのヒトの下で能力の扱い方とかを学んで、いっその事人外の身になって今後の私達の為に手伝って欲しいなぁ。って思ってる」
「……」
……ま、無茶振りなのは分かってるけどね。
「……でもまぁ、能力の研鑽位はしておいたら? 今の感じじゃあ、敵が複数居たら死ぬよ?」
「うん……」
具現化しないと勝てない相手が複数居たら、
具現化したけど全滅出来ずに気絶したら、
喰われてお仕舞い。御身隠しである。
「……とりあえず……その人達に、逢ってみたい……」
「うん、まぁそうだろうね」
紫、寅丸、幽々子……一番手っ取り早いのは紫かな?
あ……ん?
「逢ってみるとしても、そのほとんどが妖怪なんだけど……?」
「……喰われない……?」
……まず寅丸はない。
紫も……まぁ、食べない……かな? 私も食べているのを見た事はないし。
幽々子は食べないだろうけど……やっぱり能力がなぁ……。
……早速選択肢が一つ潰れた。
「……まぁ、食べようとしたら守るよ」
「……なんで……?」
「気に入ったから。そして私が気に入らないから」
「……気に入ったって……私を?」
「他に誰が居るのさ」
気に入らないのは、見知った人間を喰うってのがね。
まったく! この鈍感ガールめ!!
さーて、呼びますかね。紫を。
それにしても、今は何をしてるんだろうかね?
紫も頑張ってるみたいだし、色々と駆け回っているのかな?
ま、スキマで繋げば分かるか。
スキマオープン♪
「……なに、それ……?」
「あ、これ? スキマって言うの」
「……能力……なにか、気持ち悪い……」
「私のご主人の能力ね。まぁ、気持ち悪いって言うのは否定しないけど」
「……(……まだ上に何か凄いのがいるんだ……)」
ま、そんな彼女の呟きもスルーしつつ、紫の居るスキマに、私のスキマを繋ぐ。どんなに小さく呟いても聴こえるっていうのにねぇ。
さてさて、私の展開したスキマには無かった意味不明な眼や手がいきなり生えてくる。
「……ッ……!?」
「まぁ、我慢してね」
これは、慣れるしか、ない。うん。
私が開くスキマの状態で気持ち悪いなんて言っていたら、能力の保持者である紫のスキマなんて耐えられないだろうし。
……?
あれ? 紫しゃまが居ない。
あれぇ?
「……ちょっと待っててね」
「……? ……うん」
返事を聞いてから、スキマに入ってみる。
……そう言えば紫が住んでいるスキマに入るのは初めてかな?
式神になる前は移動の為に通った事しか無かったし、式神になった後は独立したスキマになってるし。
良く良く観察してみれば、卓袱台やら猫の置物やらが散乱している。
……何をどうしたらここまで散らかるのよ……?
まぁ、そんな事は置いといて……さてさて、どこに居るのやら……。
お、紫発見。
あられもない服装で、どうしようもない寝相の悪さだ。
……首、痛くない? その格好。
ま、式神らしく、起こして差し上げましょうかね。
……とりあえず胸元をキチンと閉めて……下半身も直して……。
「紫様~(正午だけど)、朝ですよ~。お客様がスキマの前で待ってますよ~♪」
「……んんぅ……」
……いかん、可愛い。
「紫様~?」
「……あと、三」
「三分待ってぇ、それでも起きなかったら……断罪ですね?」
「秒! 秒よ!! ……あれ?」
「オハヨーゴザイマース♪」
やれやれ、漸く起きてくださいましたか。
寝相の悪いご主人を起こすのは大変ですね─と棒読みで思ってみる。棒読みで『思う』だから意味ないけど。
「詩菜……よね?」
「はい? ……まだ寝惚けてる? 衝撃で叩こうか?」
「気絶させる気? ……髪型、変えたのかしら?」
「あ、それか。うん、変えてみたんだけど……どうかな?」
「ふぅん……良いんじゃないかしら? 活発な印象を与えるわ」
「お、やっぱり?」
いやはや、ポニーテールは女子運動部の象徴だよね!!
(やっぱり? ……誰かの真似? 見た事無いわよ、そんな髪型……)
まぁ、髪型の話なんてしている場合ではない。
閑話休題である。
「ちょっと珍しい能力者を捕まえたんだけどさ。そいつの身寄りを捜してるんだけど……さ?」
「あら、妖怪で?」
「いや、人間。幽々子みたいなの」
「……話を聞いてから、それからね」
「了解。とりあえず私のスキマの前で待たせてるからさ」
「分かったわ。行きましょう」
……まぁ。
「……服、先に直すべきじゃない?」
「……」
おぉおぉ、真っ赤な顔だ事。
紫が着替え終わるのを待って、スキマから二人揃って出てきた。
……よし、牡丹も逃げたりしてないね。
もしかしたら逃げたりするかなぁ、って思ってたんだけど、案外信用されてるのかね?
それは嬉しい事実。
「……彼女が?」
「うん」
「……『
「私は八雲、『
……なんだろう。
身長のせいか、見事に『大中小』みたいな感じになってる。
これに天魔か彩目が混ざったらどんな面白い図になるやら……ふむ。
身長順にすると、
極大・ 天魔、彩目。
大 ・ 紫、幽香、幽々子。
中 ・ 文、志鳴徒、寅丸。
小 ・ 詩菜、ナズーリン、諏訪子。
極小・ チルノ達、牡丹。
……みたいな?
わぁい、すっごいどうでもいー。
……そんな事を考えている間に、紫と牡丹の話し合いは終わった。
何してんの私。働けよ。と考えるも時既に遅し。
「……詩菜。残念だけど、私は引き取れないわ」
「あ~……理由を聴いても?」
「私は忙しいのよ。貴女みたいな力になるだけの実力があるならまだしも、能力の研鑽になんて付き合ってられないわ」
「……そっかぁ、参ったなぁ……」
こうなると寅丸か幽々子か、はたまた私か……。
「……けど。そうねぇ」
「ん?」
「私にも当てがあるわ……そこなら能力の相性も合っているかも知れない」
能力の相性……?
「……それって……?」
「地獄、彼岸よ」
……死神か。
いや、寧ろ人生の末路を司るレベルの十王かな?
「その気になれば閻魔クラスの実力者にもなれるわ。相手の歴史も知る事が出来るのよ?」
「『浄瑠璃の鏡』要らず……ってか」
そうなれば、地獄で立身出世まちがいなしだろう。
……でも、それは……。
「そう。人間で居られはしない。人間のまま行けるような、場所でもない」
「……こりゃあ、私達が決める事じゃあないね。牡丹が決める事だ」
「……私は……」
のんびり過ごすんだったら、やっぱり一人旅が一番自由だなぁ……。
てな感じで、今回の話の後日談。
牡丹は紫に連れられて、地獄に行く事になった。
無論、本人の意志を尊重した結果の話だ。無理強いした訳でもないし、そもそも私達は可能性を提示しただけである。選んだのは本人『神代 牡丹』だ。
紫が地獄のとある知り合いの閻魔に頼んで、牡丹の就職先(?)をどうにかするそうだ。
……知り合いの閻魔って。どんな交友関係だよ。
と、ツッコミたい処ではあるが、私が言える立場ではない。
私も神様やら不老不死と知り合いだしね。
その時に、幽々子の後日談とやらも聴いた。
彼女の能力や、亡霊となってから変化した性格のせいもあってか、冥界に住む幽霊の管理を任されたそうだ。
最近の幽々子は、とてもよく気持ち良く笑うようになった。との紫の話。
まぁ、それは良い事なんだろう。うむ。
牡丹は何やかんやで私に懐いていたらしく、私が見た限り紫と触れ合ったシーンは一度もなかった。手を結ぶ事すらなかった。
私がおんぶしてあげたり、風邪をひかないようにしたりしたからかね?
ま、最後に別れの挨拶をして、新たな死神の話は終わったのである。
「……」
「ま、向こうに行ったら私に勝てるぐらいに強くなって来なさいな」
牡丹と紫が並んで立っていて、私は牡丹と別れの挨拶。
「……貴女に勝つって……」
「弾幕出来たら私に勝てるよ? ねぇ、紫?」
「弾幕出来ない貴女が弱すぎるのよ……」
「むぅ」
そうなんだよねぇ……なんで出来ないんだろ?
まぁ、そんな事はどうでもいい。努力しても出来ない事があると妖怪の身でも再確認出来たのである。良き事だ、多分。
「……ね……」
「ん?」
「……神様の、名前は……?」
「ありゃ……自己紹介してなかったか。いや~、ごめんごめん」
「……ふふ……」
んじゃまぁ、今更ながらにしてようやくの自己紹介をば。
「私は『
「……じゃあ、改めて……私は『
「……私と友達に、なってくれる?」
何を今更言ってるんだかねぇ……ふふん。
「もちろん♪」