フラウに人生を狂わされる話 作:フラウすき
フラウの過去については、フェイトエピソードを見てもらった方が早いと思います。
女にとって、普通に生きることは何よりも難しいことだった。
まるで太陽のように輝く才能を女は持っていた。
動けば誰よりも速く、力強く。
話せば誰よりも聡明で、親しく。
故に、その強すぎる光に当てられれた人間には、濃い影が生じる。
「見て!また一番に――」
「どうして目立つの!?どうして"普通"にできないの!?」
腕っぷしも、知恵も、才能も、両親は愛さなかった。
「女のくせに……」
「あいつがいるから私は……」
いつからかその過ぎた力は嫉妬を集め、女は孤独になっていた。
暴力も、下卑た視線も、嫉妬も、負の感情のすべてが女に向けられていた。
それでも、女は人間を愛していた。
心が軋んでも、その光は曇ることがなかった。
――すべてが反転する日までは。
★
周囲の全ての人間から疎まれ、憎まれ、下卑た視線を向けられた日。
女は悪魔と契約した。
アーカルムシリーズが一柱、星晶獣ザ・デビル。
悪魔は女にさらなる力を齎した。
向かうもの全てを焼き尽くす力。
その力をもって、女は自らを害そうとした人間全てを燃やした。
「これでもう、私は――」
誰にも傷付けられない。
ただ、生まれ持った才があるだけで疎まれる日々は終わり、悪魔との契約に従って旅をする日々が始まった。
この敵だらけの世界を滅ぼすための旅だった。
人に対する期待を失ってから、女は驚くほど簡単に人を操れるようになった。
天性の容姿を悪意でもって武器とすれば、思い通りにならない男はいなかった。
話術と知識で甘い言葉を吐けば、味方にできない女はいなかった。
金品は貢がれ、真っ当に生きていた日々が馬鹿馬鹿しいほどの財を得た。
襲われても、悪魔の力を用いて
痛めつけ、二度と悪事をすることがないように燃やした。
そんな日々は孤独だったが、元より世界への希望は尽きていた。
自棄になって旅を続けていたとき、悪魔が囁いた。
「「「あの少年を育ててシミュレートに使え。サブプランになるだろう」」」
「あの子がサブプランに?わかった。」
目を付けたのは、一人旅をしている少年だった。
★
少年は純粋だった。
女が顔を見せれば赤面し、手を握れば挙動不審になって、女の悪戯心を刺激した。
少し話して目を合わせれば、得体の知れない女の旅の同行を許すほどに篭絡されていた。
それから、腕試し且つ、この島を発たせるためにマフィアの下っ端に襲わせた。
マフィアの下っ端に「男に付き纏われているから助けてほしい」と頼めば、簡単に襲わせることができた。
欲望を向けるばかりの人間の扱いを、女は嫌と言うほど知っていた。
「逃げましょう、次の島に」
何も知らない少年は、女の手を取って走る。
不思議と通りには人がおらず、二人きりで街を駆けた。
この街を出れば、まだ貯金の少ない少年は女の金に頼らざるを得なくなる。
金に余裕はなく、島毎に稼いでいるような少年だ。
そして次の島での人脈は、女がその気になればいくらでも獲得できるだろう。
そうすれば少年に逃げ場はなく、女に従うことになる。
ぞくぞくと腹の底から悦びが湧いて出て、歯の裏を舌でなぞった。