ラインハルト様が皇女殿下二人とイチャイチャする話   作:川崎忍ノ介

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第十話~休息②~

 銀河帝国宰相たるこの俺が、たかが旅行へ行く程度の事に何故こそこそと隠れるような真似をせねばならぬのか。敵国ならまだしも自国で―――とのラインハルトの開き直りによって、今回のエル・ファシル旅行計画は御前会議の場にて公表されるに至った。

 

 この御前会議には軍部代表として四人が出席している。

 

 まず、軍務尚書・オーベルシュタイン上級大将。統帥本部総長・ロイエンタール上級大将。宇宙艦隊司令長官・ミッターマイヤー上級大将である。キルヒアイスは元帥となり、帝国軍最高司令官代理兼、銀河帝国宰相顧問の地位を得てこの会議に参加している。

 

 ラインハルトは元帥として、帝国軍最高司令官及び銀河帝国宰相としてこの会議の最も上座に座った。

 

 そして、国務尚書・マリーンドルフ伯、工部尚書・シルヴァーベルヒを始めとする文官が並んでいた。

 

 

 

 

 

 「もう一度、伺ってもよろしいですかな?」

 

 ラインハルトがフェザーンからエル・ファシルにかけて一月ほどの旅行へ行く旨を伝えると、一同は沈黙に包まれた。

 

 誰もが口火を切るのを躊躇う中、感情を窺わせない声でそう問いただしたのは、やはりオーベルシュタインだった。

 義眼が怪しく点滅し、心なしか眉をひそめているような気がする。

 

 「聞こえなかったのか?―――フェザーンからエル・ファシルまで約一月の旅行に行く、と言ったのだ。詳しくは手元の資料を読め。あとこの際だ、黒狐―――ルビンスキーと会談してみるのもこの際よかろう。関係機関と連携して調整しろ。ああ、同盟には伝える必要はないぞ。私が興味があるのはあくまでヤン・ウェンリーのみだからな。イゼルローン要塞にのみ、身分を偽って入り込む。」

 

 「フェザーンの、拝金主義者共を信じる事は出来ませんな」

 

 「その通り、この機会を好機とみて、御身を害そうとするやもしれません」

 

 そう言ったのは、ロイエンタールとミッターマイヤーだ。

 

 「卿等はそう言うがな、名目上フェザーンは帝国の『自治領』なのだぞ。正規のルートで会談を申し込んできた相手を謀殺する愚を犯すとも思えんが」

 

 ラインハルトはそう反論する。

 

 「私は、宰相閣下の意見に賛同します。―――そも、かの自治領はこれまであまり交流が活発ではなく、意図が不明瞭でありました。新政権となったこの機会に、パイプを太くしておくことは今後の役に立つでしょう」

 

 そう言ったのは工部尚書シルヴァーベルヒだった。彼の発言に触発されて、幾人かの文官が賛意を示した。

 

 こうなると軍部を代表する三名が危惧を表明しても大勢が変わることはない。結局護衛を厳重に付ける、という条件を辛うじて通し、会議は終了するのだった。

 

 

 

 

 

 「うまくいったぞ、エリザベート、サビーネ」

 

 帰宅するなり、抱き着いて来た二人にラインハルトは告げた。

 

 「嬉しいっ!ラインハルト様、大好きです!」

 

 そう言って、より強い力で二人がしがみ付いてくる。それを見るアンネローザとヒルダも、微笑んでいた。

 

 「まあ、ルビンスキー自治領主との会談も入ってしまったから多少調整が必要だ。おそらくは一月程度、といったところかな」

 

 苦笑しながら付け加えるラインハルトであった。

 

 「ルビンスキー、ですか?」

 

 しがみ付いていたエリザベートが顔を上げて、ラインハルトを見る。

 

 「ああ。銀河帝国宰相が正規のルートで訪問の旨を伝えるのだ。会わぬわけにはいくまい。お楽しみの前だと思って堪えるしかないだろうな」

 

 「ルビンスキー……というよりもフェザーンに関しては、少し気になる情報を入手しましたので、お伝えしておいた方がいいかもしれません」

 

 そう伝えた顔は、今までの少女のものではなかった。

 

 

 

 

 

 社会秩序維持局は、名を『内国安全保障局』と改められた。そして、情報収集局と情報分析局の二つの部門が設けられ、それぞれの局長にエリザベートとサビーネが就任した。

 

 更に、それらの下には実動部門の長としてアンスバッハが就任した。二人の下には日々国内外の情報が集められており、彼女たちは嬉々としてそれらの情報を処理しているのだった。

 

 「ルビンスキーと地球教に密接な関係あり―――か」

 

 コーヒーの香りを胸に吸い込みながらラインハルトが呟いた。

 

 「そもそも、フェザーンの初代領主は地球出身です。地球教という存在が浮かび上がってきた時、歴代の領主が教団から、あらゆる面で支援を受けていたことを突き止めるのは、そう難しくはありませんでした」

 

 胸を張って主張するエリザベート。

 

 「地球教は、人類社会のあらゆる面に深く根を張っています。それこそ、帝国はもちろん同盟にも。教団が人を集め、フェザーンが資金・物資で支援する。そんなことがもう何百年も続いているようなのです」

 

 同じく、胸を張って主張するサビーネであった。

 

 「そうか……良く調べてくれたな。偉いぞ、二人とも」

 

 そう言って二人を抱き寄せ、頭を撫でてやるラインハルトであった。ついで、とばかりに喉元をくすぐってやると笑い声をあげて頭を摺り寄せてくる。懐きっぷりは犬であるのに仕草は猫のよう。

 

 「……一粒で、二度おいしいとはこのことか……」

 

 感無量のラインハルトだった。

 

 

 

 

 

 「それでラインハルト様、どうなさいますか?」

 

 キルヒアイスが問いかけてきた。

 

 「どうもこうも、知らぬふりをして会ってみるほかあるまい。―――いや待て、サビーネ、ルビンスキーの為人(ひととなり)はどうだ?」

 

 「スキンヘッドの、大柄な男性で、大層な野心家で策謀家だとか。……あと、見事なまでに禿げ上がってます」

 

 「サビーネ様、何故二回言ったんですか……」

 

 「『大事なことは二回言う』ものだって古典文学で学びました」

 

 ヒルダの突っ込みにドヤ顔で宣うサビーネだった。

 

 ―――ドヤ顔で胸を張るサビーネは可愛いなぁ―――とラインハルトが思ったかどうかは定かではない。が、彼は柔らかい笑みをサビーネに向けて言った。

 

 「そのような性格ならば……地球教からの離反は期待できないか?こちらからは地球討伐に際し武力とマンパワーを提供する、という条件で。あと、髪の話は止めてやってくれ。―――男は皆、細く、かつ薄くなる毛根と日々戦う戦士なのだ……」

 

 ふさふさの金髪を、これ見よがしにかき上げた。

 

 ルビンスキーがここにいたら、交渉は間違いなく決裂だっただろうな、とヒルダは考えた。

 

 「ラインハルト……あなたのおじいさまは、それはそれは見事に頭を光らせていらしたわ……」

 

 アンネローゼの爆弾投下に、絶叫を上げるラインハルトであった―――




いい加減、連日更新が厳しくなってきました。
今後、もしかすると二日に一回、もしくは三日に一回程度になるかもしれません。

気長にお待ちいただけると幸いです。
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