ラインハルト様が皇女殿下二人とイチャイチャする話   作:川崎忍ノ介

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第十四話~とあるバカップルの一日~

 まずは水着。際どさやセクシーさではなくかわいらしさを追求したのであろう、フリルのついたセパレートタイプ。それぞれ自分の髪の色に合わせたのであろうか、エリザベートは黄色、サビーネは黒の水着を着ていた。

 

 もう一人の婚約者、ヒルダはこちらはワンピースタイプだ。乗馬なども嗜む活動的な娘であるから泳ぎやすさを優先したのであろう。だが、彼女自身の魅力によるものか、十分に似合っている。

 

 「ふむ……並、小、微小といったところか。大や極大がいないのはまあ、今後に期待といったところだな」

 

 婚約者たちをひとしきり褒めちぎり、彼女たちの機嫌を最大限まで高め、落ち着いたところでラインハルトは彼女たちの体のとある一部分に視線をやりながらぼそりと呟いた。

 

 誰の、どこが『そう』なのかは言わぬが花。

 

 「あ、あのあの……ごめんなさい、まな板で……頑張って体操とかしてるんですけどなかなか思うように育ってくれなくて……もっと大きくして見せますから嫌いにならないでください、ラインハルト様!」

 

 涙目で懇願するサビーネは可愛いなぁ―――とラインハルトが思ったかどうかは後世の歴史家の意見も分かれるところである。

 

 「そう嘆くな、サビーネ。『そこ』を揉むのではなく撫でたり摘まんだりするのもまた一興というものよ。無ければ無いなりの楽しみ方もあるというものだ……」

 

 「ドヤ顔で決めているところを恐縮ですけれど、言っていることは最低ですからね」

 

 ラインハルトを見るヒルダの視線は、完全に『ろ』のつく変態を見るそれと同じであった。

 

 「古典文学で見ました! こういう時は『お巡りさん、この人です』って言うらしいです!」

 

 無邪気な笑顔で無慈悲なことを言うエリザベートの発言にも、だがしかしラインハルトは挫けなかった。

 

 「同盟はどうだか知らぬが、こと帝国においては俺が法律だ。取り締まれるものならば取り締まってみるがいい」

 

 そう宣言するラインハルトの態度は、帝国数百万将兵の先頭に立つ大元帥として相応しい堂々たるものであった。

 

 「では、アンネローゼ様に通報、と……」

 

 「それはやめてくれ、ヒルダ。姉上に沈痛な表情で『かわいそうなラインハルト……』とか言われてみろ。あれは本当に心を抉られるのだ」

 

 それまでの態度をかなぐり捨ててヒルダに縋りつくラインハルトであった。

 

 

 

 

 

 クルーザーもあるらしいと聞いたラインハルトは海上にあり、舵を握っていた。トイレ、シャワーは当然完備。広いキャビンは十数名が楽に入ってパーティーなど楽しめ、ベッドなども備えられている。

 

 「クルーザーというものも、これはこれでなかなかいいな」

 

 ラインハルトはご満悦であった。宇宙船と異なり三次元的な機動こそできないものの、障害物の何もない大海原を縦横無尽に駆け巡るのは何物にも代えがたい楽しさがあった。何よりも、宇宙船とは異なり一人で動かせるのが素晴らしい。

 

 純白の機体は、心なしかブリュンヒルトに似ているような気がした。

 

 「オーディンに帰ったら一艘作らせてみるか……」

 

 諸提督の旗艦それぞれをモチーフにしたクルーザーを作ってみるのも悪くない。出来上がったそれらを提督たちに下賜するのだ。マスコミを集めてクルーザー十数艇の進水式というのもなかなか面白いのではないか。

 

 新たな雇用を生み出す景気刺激策として理論武装も完璧。

 

 「ふふ……そうだ、戦争なんてやってる場合じゃない。これからの帝国はレジャーだ。臣民一人一人の所得を上げ、誰もが余暇を楽しめる国を作るのだ!」

 

 満面の笑みを浮かべて舵を操るラインハルトであった。

 

 

 

 

 

 「―――ねえ、見てサビーネ」

 

 楽しそうにクルーザーを操るラインハルトを見つつ、エリザベートが呟いた。

 

 「うん、ラインハルト様とっても楽しそう」

 

 そう答えるサビーネもまた、微笑を浮かべていた。

 

 「そうだけど、そうじゃなくて……もっと下を見て」

 

 サビーネとヒルダは、そう言われて視線をラインハルトの体に向ける。

 

 当然水着姿だ。ただし、いわゆるビキニパンツ。上半身には何も身に付けずサングラスのみを着用。下半身はビキニパンツにビーチサンダル。

 

 「ラインハルト様って、案外着やせするタイプなんだ……」

 

 「うん、見て。胸筋とか腹筋とかすっごい。太腿とかも筋肉でぱっつんぱっつんだし」

 

 180㎝を超える長身に、軍人らしく鍛え上げられた肉体。おまけに超のつくイケメン。

 

 「……あ、ヤバ。鼻血出そう……」

 

 そう言ったのが果たして誰だったのか。そしてそう言ったのがラインハルトの顔を見てか上半身の筋肉を見てか、はたまたビキニによって強調された股間を見てのものか、後世の歴史家たちの間でも以下略。

 

 

 

 

 

 ―――ラインハルトたちがクルーザーを駆って海の上にいた頃。

 キルヒアイスとアンネローゼは海中にいた。いわゆる、スキューバダイビングと呼ばれるマリンレジャーの一つ。

 

 アンネローゼが掌の上に魚用の餌を乗せ、そこに色とりどりの小魚が集まってくる。その様子を、キルヒアイスが微笑を浮かべて見守っていた。

 

 落ち着いた、ゆったりとした時間が流れる。

 

 これがラインハルトも一緒ならば、『どちらが多くの魚を捕えるか競争だ』などということになり慌ただしい時を過ごすことになるのだろう。アンネローゼと二人きりならばそのようなこともない。かつて夢想するだけだった光景を、今の自分はこうして手中に収めている。そのことがなんとも不思議な感覚だった。

 

 ―――かつて、どれほど手を伸ばそうとも決して届かなかった夢のようなひと時を、自分たちは手に入れたのだ。ならば、『宇宙を手に入れる』というかつての誓いにどれほどの意味があるというのか―――

 

 キルヒアイスは、ふと己を見つめるアンネローゼの視線に気づいた。

 

 しばし、無言で見詰めあう。

 

 水の中のことであるから言葉は交わせない。だが、物言わずとも気持ちが通じ合ったような気がした。

 

 ―――そうだ、オーディンに帰還したらラインハルトさまに進言してみよう。自由惑星同盟とは対話をもって武力の代わりとし、貴族から接収した有り余る富は国内産業の育成にこそ注ぐべし、と―――

 

 ことによると、この決意はラインハルトと自分との間に決定的な亀裂を生み出すことになるのかもしれない。だが、成し遂げてみせる。

 

 キルヒアイスは、小魚たちと戯れるアンネローゼを見守りながら決意を固めるのであった。

 

 

 

 

 無論、キルヒアイスは気づかない。海の上でクルーザーの舵を握るラインハルトが『これからはレジャーだ!戦争なんてやってる場合じゃねぇ!』などと気炎を上げていたことを―――




~おまけという名の後書き~

 「も、もう我慢できない……」

 荒い息を吐き、エリザベートが言った。口にこそ出さなかったがそれはサビーネとても同じ。

 二人は顔を見合わせ、強く頷いた。

 『ラインハルトさまぁ~~!』

 あろうことか、ラインハルトめがけて『ルパンダイブ』をぶちかます少女二人。いろいろと台無しだ。

 「待ってください、二人とも! 水着でそんなことやっちゃったら……!」

 空しく響くヒルダの絶叫。

 そう、相手めがけてジャンプしながら着ているものを脱ぎ捨てる某怪盗の必殺技。水着姿でやらかせば……。

 大神の御加護か、肝心な部分は光によって遮られ見えなかったのがせめてもの救いであろうか。





 「―――海には潮流というものがあり、固定しない船はそれによってどこまでも流される。だから、いいか二人とも。拒否しているわけではないのだから、今後はせめて、錨を下すくらいの間はきちんと待つように」

 『はい……』

 数時間後、全裸で説教するラインハルトと、同じく全裸正座で説教を受けるエリザベート、サビーネであった。

 傍らのベッドでは、やはり全裸のヒルダがシーツに包まって寝息を立てていた―――





 これはひどい(汗
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