ラインハルト様が皇女殿下二人とイチャイチャする話 作:川崎忍ノ介
これが間違って、某YJコミックスを見てしまうと大変なことになります。
……エリたんとサビたんが!!
―――だれか、誰か私の記憶を消してくれ……!
ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフは全ての目標を達成した高揚感に身を包みながら、元帥府一階ロビーを通り抜けて帰途に就こうとしていた。
そこで、息を切らせて駆け込んでくる二人の少女を目撃したのである。
耳に飛び込む断片的な単語を結びつけると、どうやらローエングラム帝国元帥への面会を望んでいるらしい。
「まあ、あんなに息を切らせて、必死な顔で。服も少し乱れているし……淑女としての慎みに欠けるのではないかしら」
つい一時間ほど前の自分の姿は思い至らないらしいのがヒルデガルドという女性であった。
「こちらに時間はあるし……場合によっては口添えしてあげた方がいいかしら……」
なんだかんだで、面倒見は良いのだ。
「ああもう、この分からず屋! 初めて無礼討ちにしてやりたいと思ったわ!」
「落ち着いて、エリザベート! あのお方の元帥府でそんなことしたら私たちの方が首にされてしまうわ!」
「いえあの、ですから……アポなしの横紙破りは小官は本日一度やらかしておりまして……もう一度、ということになりますとさすがに立場が危ういというかですね……」
ヒルダの面会受付を担当したテオドール・フォン・リュッケ中尉であった。
ちなみに、リュッケ中尉が二人の身分と正体に気付かなかったのは理由がある。
銀河帝国は旧態依然とした慣習が根強く残っており、その中には『婦女子はみだりに公の場に顔を晒すべからず』というものもある。であるから、晩餐会に招かれるような高位でない限り、門閥貴族の息女の顔など知らないのである。
―――運命神の気まぐれか、はたまた大神のお導きか。救いの神はエレベーターより現れた。
ローエングラム帝国元帥府の主、ラインハルトその人である。
『ラインハルト様!!』
二人の反応は、素早かった。訓練を積んだ軍人連中が止める暇もなくラインハルトに突進し、そのまま二人同時に抱き付いたのである。
二人がもし刺客であったならば、ラインハルトは即死であっただろう。つまり、この場に居合わせた軍人諸氏はリストラものである。もっとも、その場に居合わせた彼らにとってはそれどころではなかったのだが。
―――身持ちの堅い元帥閣下に、まさかの女の影。しかも未だ十代半ばの少女―――元帥府を震撼させた、一大スクープの爆誕であった。
カール・グスタフ・ケンプ中将から『貴族連合動く』との報告を受けたラインハルトは大いに焦っていた。本来ならば待ち望んでいた筈のその報告を喜べなかったのは、二人の少女の存在だった。
つまり、奴らが動く前にエリザベートとサビーネの二人をどうにかして父親たちから引き離せないかと方策を練っていたのである。
ラインハルトはこの時に至ってようやく、神速をもってブラウンシュヴァイク・リッテンハイム両家へと強襲し、彼らがオーディンを発つ前に逮捕拘禁の名目でもって娘二人を確保する覚悟を決めたのであった。
本来の計画であれば貴族連合は結集させて後、戦力を集めさせてから一網打尽にするはずだった。だが、事ここに至っては計画の大幅な変更もやむ無し、反乱の芽は残るが致し方なし―――と一階に降りてきたのだ。
「ああ、フロイライン・ブラウンシュヴァイクにフロイライン・リッテンハイム……!今まさに、あなた方を救うために出撃するところだったのだ……まさかここで出会えるとは、これに勝る喜びはない!」
『な、なんだって―――!!!』
敵の首魁の名を主たるラインハルトより告げられた、元帥府の面々の驚愕の叫び。
「敵の旗印である令嬢二人が逃げ込んできた」
「まさかの、裏切り?」
「誰が、誰を裏切ったと?」
「この場合、裏切りと言えるのか?」
「いや違う、誑し込んだのだ」
「ローエングラム元帥が二人の令嬢を?」
『我らが主は、そちらの道でも超一流であらせられたか……!!!』
尊敬の念が、崇拝へと変わった瞬間だった。
抱擁、そして頭を撫で、頬擦りし……甘い言葉を囁くラインハルト。顔を胸に埋め、しがみ付く二人の少女。完全に三人の世界へと旅立っていた彼らはようやく周りから向けられる視線に気付いた。
襟を正し、乱れた服装を軽く整えるラインハルト。
「……ふっ、旗印を失った賊軍どもがこれからどう踊るのか……実に見ものだな。―――卿ら、くれぐれも彼女たちに対して礼を失するなよ―――あと、選りすぐりの擲弾兵を元帥府の警備に回せ」
取って付けたような言い回し。だが、部下たちの畏敬の念をますます強める不可思議な効果を発揮したらしかった。
元帥府十階の執務室。つい先ほど退出したばかりのその部屋に、ヒルダは再び戻って来ていた。
大きく、上質のソファの中央に腰掛け、対面にはラインハルトが鎮座している。その両隣には二人の皇女がベッタリと寄り添っている。あまりに甘ったるい空気に、胸焼けを堪える羽目になったヒルダだった。
「あの、閣下……何故私までこちらに呼ばれたのでしょうか」
言外に『私がいると思う存分にイチャつけないでしょう?』という意味を込めて、幾分冷気混じりの視線をむける。
「わたくしがお願いしました」
そう答えたのは、ラインハルトの左側に侍るエリザベートだった。顔はヒルダの方に向けながら身体をベッタリとラインハルトに押し付けている。さらに、左手はラインハルトの太腿に乗せられ、右手は頬に添わせていた。時折サワサワと撫でるように動く様が何とも淫靡で、ヒルダは思わず赤面した。
よくよく見ると、反対側ではサビーネも同じ事をしている。
ちなみに、彼女達は見せ付ける目的で意図してやっているのではなかった。完全に無意識だ。
後日彼女達は、『愛しの殿方にようやく会えた嬉しさに、身体が暴走してしまったのでしょう』と弁解している。
「……えぇ?淫靡?」
自分で下した評価に驚いたヒルダは、改めて対面に座る三人に目を向けた。
―――美青年に纏わりつく、二人の少女の図。
「……うん、ないわー。どうかしていたわね、我ながら」
どう見ても飼い主にじゃれつく猫。贔屓目に見ても兄におねだりする妹。
そうなると、この激甘空間も途端に微笑ましいものに思えてくるから不思議だ。
「ねぇ、エリザベート。あの顔、何だかとっても失礼な事を考えているような気がするの」
「とんでもこざいません」
「嘘よ!今言ってたじゃないの!『ないわー』とか!」
「さぁ……?空耳では?」
『むぅうぅ……!』
頬を膨らませて威嚇するエリザベートとサビーネ。澄まし顔で受け流すヒルダ。
後世、『獅子の泉を守護するケルベロス』と評される三名の女傑。これが、その初めての邂逅だった。
ヒルダ「味方すると伝えに行っただけなのに気付いたら後宮入りしていた。何を言っているかわからねーと思うが、私にも良く分からな(ry」
エリ・サビ「ククク……計算通り」
ライ「天使がここを訪ねてきたと思ったら嫁が三人になっていた。何を(ry」
ジーク「通報した」