ラインハルト様が皇女殿下二人とイチャイチャする話 作:川崎忍ノ介
ラインハルトたちの率いる艦隊がガイエスブルク要塞に迫りつつあることを知った貴族たちは、大広間に集まり『諸悪の根源たる金髪の孺子を討つべし』との気勢を上げていた。
ただし、声は大きいが今一つ迫力に欠けていた。応える声にも、どこか空々しさが漂っている。
貴族たちを眺める連合軍の盟主二人も、目に精彩を欠いていた。
かつてラインハルト等に『戦意過多、戦略過少』と評された彼ら貴族たちではあるが、唯一のとりえであったその戦意すら、もはや失われようとしていた。
エリザベートとサビーネという彼らの娘がいなくなった後、ブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯は失望した。なにせ、これまで『女帝の婿』という立場を餌に多くの貴族たちを味方に引き入れてきたのである。それが、一瞬にして瓦解したのである。
とはいえ、仮にも盟主ともなれば失望しているばかりというわけにもいかない。
どうにか自失から立ち直った彼らは様々な手段を使って味方の貴族たちの懐柔に努めたが、最高の『ご褒美』がもはや望めぬとあっては、日に日に味方の貴族たちの士気が下がっていくのも無理のないことだった。
状況に変化があったのは、そんな退廃した雰囲気が要塞を覆いつくしたある日の事であった。
「ブラウンシュヴァイク公、ローエングラム侯より通信が入りました」
要塞のオペレーターを務める一人の士官が、ブラウンシュヴァイク公の下に駆け寄り伝えた。
「あのような下賤の輩を『侯』などと呼ぶとは何事だ!」
激昂したブラウンシュヴァイク公が報告に来た士官を殴り飛ばした。
その目は濁り、吐く息からは酒精が漂っていた。脱落者が続出する現状を直視できなくなった彼は、酒によって気を紛らわせるようになっていた。
だから、意識の混濁した彼は気付かない。報告に来た士官が殴られた瞬間、それを見詰める他の兵士たちの顔に、殺気にも似た怒気が混じったのを。
もはや、限界まで下がった士気が叛意に転化するのも時間の問題だった。
通信を開くと、豪奢なキングチェアに腰掛けたラインハルトがスクリーンに映し出された。ラインハルトは、軍服は身に着けておらず、素肌の上にガウンを身に纏っていた。
それは良い。貴族たちからすると何様のつもりだ、と罵声を浴びせたくなるような姿だったが、『所詮は下賤の輩がすること』と思えば気の紛らわせようもある。
だが。
何よりも彼らの目を引いたのは、その傍に寄り添う三人の娘だった。
ゆったりと、深く腰掛け足を組むラインハルト。手にはウイスキーグラスを持ち氷を鳴らしている。その右側に、薄く、露出の多いドレスを身に着けたエリザベートがしなだれかかっている。右手は彼の胸元に差し入れられ、ゆっくりと撫でている。左手は太腿に。
左側にはサビーネだ。色違いの同様の衣装を身に着け、両手を彼の腰に回して、頬は彼の胸元に当てられている。
そしてラインハルトの後ろにはヒルダが。両手を彼の背後から胸に回し頬ずりをしていた。
「―――蒙昧にして卑劣な賊ども。陛下に叛き乱を起こした貴様たちの罪は許し難く、万死に値する。だが、畏れ多くも慈悲深き皇帝陛下は、愚劣なお前たちのような輩であっても寛大な処置をとの仰せだ。今すぐに財も領地も、全てを差し出して頭を垂れ、許しを請うならば命だけは助けてやろうではないか」
ゆったりと、落ち着いた声でそう告げると、ラインハルトは両脇でしなだれかかるエリザベートとサビーネを抱き寄せた。
「おのれ金髪の孺子!全てを差し出して許しを請うのは貴様の方だ!そのお方は下賤な貴様ごときが手を触れてよいお方ではないぞ!」
「その通り!貴様こそ、今すぐここにお二人を連れて来い!そうすれば慈悲深い我らは貴様の命だけで許してやろう!」
ラインハルトを罵る声が次々と投げ掛けられる。だが、ラインハルトはそんな彼らを冷ややかな目で見降ろし、冷笑を浮かべていた。
『おだまりなさい!』
ついに堪えられなくなったのか、エリザベートとサビーネが立ち上がり、貴族たちを一喝した。
「ラインハルト様の寛容に付け込み先程から言いたい放題……恥を知りなさい!」
怒りに顔を上気させ、エリザベートが叫んだ。
「そもそも、やれ下賤だの、孺子と仰いますが、それは自分たちの事であると心得なさい!」
同じく、怒りを滲ませたサビーネが言った。
「五百年にもわたる特権で身を肥えさせ、自我を肥大させたあなた方は、その外見は醜く品性のかけらも見受けられません。さらに、その内面は腐り果て、腐臭を漂わせています」
「あなた方は、これまで奪い続けてきました。―――それを、返すべき時が来たのです」
「そういう私たちもまた大貴族の生まれ。罪は等しく有りましょう。……せめて、ラインハルト様の覇業を傍でお支えし、尽くすことで罪のひとかけらなりと、還す所存です」
貴族連合の面々は、皇女二人からの思いもよらぬ非難に、声もなくスクリーンを見詰めていた。あるものは俯き、ある者は憎悪を滲ませ、またある者は目を閉じて。
「孺子……貴様に、一つ聞きたい」
そう声を絞り出したのはブラウンシュヴァイク公だった。
「何なりと」
落ち着いた声でラインハルトが返す。
「娘たちを……どうするつもりだ……?」
「ここにいる三人―――エリザベート、サビーネ、そしてマリーンドルフ伯爵令嬢ヒルデガルド。この三名は私の伴侶となる。……決して粗略には扱わぬと約束しよう」
「―――そうか。ならば是非もない。言葉を交わす時は終わった。この上は武力によって貴様を打倒し、皇帝陛下の御許に赴こう」
―――そう言ったブラウンシュヴァイク公の顔からは酒精の残滓が消え去っていた。
通信は、ブラウンシュヴァイク公の側から切られた。つい先ほどまで威勢よく貴族たちを弾劾していたエリザベートとサビーネは、真っ黒なスクリーンを見詰め、それからしばらくしてぎこちなく顔を見合わせた。
「……どうしよう、サビーネ。最後のお父様の顔、見た?もしかして、覚醒させちゃったかも……」
「わたくしのお父様も、そうよ……。一言も喋らなかったけど、最後の方は笑っておられたもの……」
青くなった顔で項垂れている少女二人を、ラインハルトは苦笑して見詰めていた。
「二人が気に病むことはない。責任は、この策を実行することを決断した俺にある」
そう言ったラインハルトの顔は穏やかで、二人に対する気遣いに満ちていた。
そして、不意に不敵な笑みを浮かべて言う。
「それに、面白くなってきたではないか。このまま奴らが自然消滅してしまっては、あまりに興がないと思っていたところだ。―――奴らが戦死をこそ望む、というのであれば望み通りのものをくれてやろう」
そう宣言するラインハルトを、エリザベートとサビーネはうっとりと見蕩れていた。
―――これが『常勝の天才』が戦場で見せる顔。
―――帝国軍数百万将兵の先頭に立つお方。
「あの、浸っているところを申し訳ないのですが」
不意に、ヒルダが言った。
「もう、無粋な人ね。それで、何なんですか?」
頬を膨らませてエリザベートがヒルダに顔を向けた。
「そろそろ着替えませんか?ひらひらして、なんだか落ち着かないです。―――あと、味方にはまだ、通信繋がったままです。このまま放っておいたら、見せられないとこまでいっちゃいそうなんで」
声にならない絶叫を上げる、エリザベートとサビーネであった。
どうしてこうなった(汗
サクッと終わらせてイチャラブ書こうと思っていたらまさかの覚醒。
まあ結果は変わらないのですがwww