魔王生徒カンピオーネ!   作:たけのこの里派

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ここ一週間は本当に疲れた……。

諸事情で執筆が出来ずにいたのですが、山場の一つが終わったので更新。
今回は閑話ということでかなり短めです。


閑話 古今東西酔っぱらいは無敵(上司に飲まされるのを除く)

 人間と化物の違いとは何ぞや。

 

 極めて中二臭い命題だが、敢えて問うてみよう。

 人間が人間足り得るものとは?

 類人猿だから? ホモサピエンスだから?

 いやいやいや、そんな簡単に答えを出しては、全世界の中二主人公、又は中二はブチキレるだろう。

 

 では人間足らしめる要素とは?

 

 偉大なる、世界一格好良いデブはこう言いました。

 

 『――――人間が人間足らしめている物は唯一つ、己の“意思”だ』

 

 カッコイイね。流石デブ。

 

 し・か・し・だ。

 

 世の中そんな意思を持ってても化物だなんだと言われている人は居るわな。

 

 例えばドクター吐瀉物が造った人造人間緑川16号。

 彼は人造人間の中で誰よりも優しく、人間味溢れた完全機械型人造人間だ。

 他の17、18号と違い、人間としての要素が皆無の、完全なロボットだ。

 ロボットと言えば、語りきれない程の『人間』に憧れ、成ろうとしたロボットは数多に存在する。

 初代ロボットキャラクターのアトムなんて正にソレだ。

 

 さて、では人間とは思えない程の“力”を持つ人間が化物や否や。

 これは正直判断しづらい。

 五世紀前なら異端確定。

 十字教なら悪魔やら魔女、日本なら妖怪やら鬼?

 現代なら超能力者やらなにやらで持て囃され、若しくはありがち研究所へゴー。

 明白(あからさま)な迫害は無くとも、よりシビアな現実がスタンバっている。

 もしソレが原因で新興宗教なんて話になったらワロエナイ。

 

 さて、人間の定義について語ったが、次は化物の定義について話してみよう。

 18世紀のフランスのとある博物学者さんが、『怪物の定義』を述べたことがある。

 

 一つ、過剰によるモノ。

 一つ、欠如によるモノ。

 一つ、部分の転倒、又は誤った配置によるモノ。

 

 だそうで。

 

 例えば日本の妖怪。

 身体中に眼が付いていれば『百目(サウザンドアイズサクリファイス)』という妖怪にされ、しかし反対に一つしかないと『一つ目小僧』になってしまう。

 更に、碇ゲンドウの様に掌に目玉が付いてしまえば、『手の目』なんて妖怪にもなる。

 

 これはギリシャ神話の怪物にもかなり当てはまる。

 海神ポセイドンの息子のキュクロープス、世に言うサイクロプスの原型も単眼の巨人であり、インド神話の破壊神シヴァの嫁の、ステップダンスで世界を滅ぼしかけた最終形態も阿修羅の様に三面六手である。

 キマイラや雷獣鵺なんて目も当てられないカオスな惨状だ。

 

 以上から考えられる化物の定義とは、人間と比例し何らかのモノが逸脱していた存在が化物と言われがちと考えよう。

 

 

 

 

 

 「で、そこんとこどうよ? 世間的に化物筆頭のエヴァ姉」

 「お前が最初中二中二言うから答えにくいだろうが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話 古今東西酔っぱらいは無敵(上司に飲まされるのを除く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――桜咲刹那、彼女は化物であると自認している。

 

 信仰や畏れによって生まれた妖怪の住まう、別位相に存在する異界から召喚される妖魔達の中、鴉天狗を起源とした妖怪の末裔――――通称『烏族』と結ばれた人間との間に生まれた半妖が刹那である。

 

 本来ソレだけでも疎まれるというのに、彼女は烏族の中でも禁忌とされる白い翼を持つ忌み子であった。

 

 知性と社会性を持つ生き物は、自身や周囲と違うものを妬み、疎み、嫌悪するモノである。

 白い髪に真紅の瞳。そんな容姿を持つ彼女を排斥する心理は、白人が黒人を排斥しようとするソレと同じであった。

 

 だからこそ彼女の両親は殺され、彼女自身も殺されかけた。

 

 彼女が退魔覆滅にして、人間に対して『不殺』を信念としている青山鶴子に助けられたのは、紛れもない奇跡だろう。

 そして鶴子を通じ、刹那は光を見付けた。

 

 自分が助けられた組織の総帥の娘。

 それは本来自分の様な者と比べ物にならないほどの立場の違いがある。

 あるというのに、『彼女』は太陽の様な笑みで刹那を友と呼んでくれた。

 

 そこから数年間は幸せだった。

 神鳴流の稽古を交えながら、ただの少女の様に遊んでいる時間は自身の異端性を忘れられる程のモノだった。

 

 しかしそんな太陽の様な笑みは、苦痛に歪んだ。

 川に溺れた『彼女』を前に、刹那は大人達が来るまで何もすることが出来なかった。

 

 刹那は無力な自分を呪った。

 何より烏族の力を使えば助けれたにも拘わらず、『彼女』にその姿を見られるのを恐怖して使うことが出来なかった。

 何と醜いことか。何と浅ましいことか。

 

 刹那はそれから『彼女』と遊ぶことをやめた。

 烏族の力を使うのが恐怖ならば、使わずとも良いように強くなれば良い。

 

 来る日も来る日も鍛練に明け暮れた。

 慕う彼女がやって来ても、身を捩る様な苦痛に襲われながら彼女を避け続けた。

 そもそも自分の様な者が『彼女』の側にいる資格など無い。そう刹那は思っていたからだ。

 

 そしてみるみる内に、刹那の腕は上達していき、それに伴い他の門下生から妬まれる様になった。

 

 混血の忌み子の分際で。化物。どうして化物が神鳴流を。そもそも何故――――

 

 その程度の陰口、かつて受けた迫害に比べれば微風に等しい。

 中には直接的な行動を起こした者も居たが、そのような輩は家柄しか取り柄がなく、箔を付けるためだけに道場に通ってる名家の御曹司程度でしかなかった。

 そんな輩に負けるほど刹那は鍛練を怠ってはいない。

 

 周囲の事などどうでもよかった。

 刹那はただ、自分を救ってくれた方々に恩を返せれば良かった。

 

 しかし刹那は知らなかった。

 『彼女』――――近衛このかにはもう一人親友が存在し、その親友の少年の辞書の『自重』という文字が、最近パンドラという編集者によって削除されたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 『こちらスネェークゥ、捕縛対象コード「せったん」を視認。これより作戦行動に入る。オーヴァー?』

 『おーばーっ!』

 『おーばー』

 

 

 

 

 

 

 ――――近衛このかは不満だった。

 親友の刹那に避けられ、満足な話も出来ない。

 新しく出来た友達と一緒に遊びたい。もっと話がしたいというのに。

 

 このかは不安だった。

 嫌われたのだろうか、何か自分が悪いことをしたのだろうか。

 

 一人で考えても一向に答えは出ず、刹那自身に聞きに行こうにも、道場に正面から行けば門下生、それも箔付けしか興味の無いお坊ちゃんが寄ってき、刹那の場所を聞けば返ってきたのは刹那への罵倒。

 ソレ以来このかは正面から道場へ行かなくなり、鶴子のツテで裏口から入り、漸く会えても緊張で何を話せばいいかわからなくなってしまう。

 

 そしてそんなこのかがその事を、同世代に於いて刹那と同等に信頼しているもう一人の親友―――皐月に相談するのは、当然の帰結だった。

 そして返ってきた返答は、

 

 「―――――――取り敢えず、酒飲んでテンション上げちまえよ」

 

 一応述べておこう。

 小学生が飲んでも問題の無い程度の甘酒しか、飲まなかったと。

 

 準備は万端。仕込みも十二分。

 神鳴流道場の前に、彼らは訪れた。

 

 「―――――小細工など要らん。テンション上げ上げで正面突破だ。殺れ」

 

 その一言に、二人の子獣と一匹のオッサンは解き放たれた。

 

 瞬間、神鳴流道場の扉が蹴破られる様に開いた。

 現れるのは凄まじい酒の臭いを撒き散らしている、三人の子供。

 道場内の空気が停止したのは言うまでもない。

 内二人は確実に正気を失っている。

 

 そして、頭に小さな子どもの銀狼を乗せて一人ゲス顔を晒している、唯一まるで酔った様子の無い少年を見て、門下生の思考は一致した。

 

 ――――どんだけしこたま飲ましたのコイツ。

 

 「せったんはおるかぁッ!!?」

 「おるかー!」

 「おるかー!」

 「わふっ!」

 

 その問いに、刹那に対しソレほど悪感情を持っていない善良な門下生が、道場の更に奥の庭の隅で剣を持って呆然としている刹那に目を向けた。

 

 「えっ、あぅ…………」

 

 普段悪意以外の視線を受け慣れていない刹那が、一斉に向けられた無色の視線に戸惑い、思わず後ずさった。

 しかしそれが悪かった。

 獣達の飼い主のバカは、それを逃亡と取ったのだ。

 

 「―――せったん捕縛開始ィ!!」

 「やー!」

 「やー!!」

 「わふっ!!」

 「ぴぃやあああああああああ!?」

 「「だはははははははははは!!」」

 

 前方からトタトタと走ってくるこのかと、片や無表情の顔に酒特有の赤みが浮かぶツインテールが、究極技法(咸卦法)を使用して跳んでくる。

 

 刹那も遂に礼も外聞も捨てて逃げようとするも、権能を用いて雷と化したバカに神速で回り込まれた。

 心眼持ちでないのなら、まつろわぬ神すら対応不可能な速度で。

 オーバーキル極まりない。

 刹那は即座に囲まれた。

 

 その際発せられた莫大過ぎる呪力に震える門下生達も、その後の連中の行動によってドン引きに変わる。

 

 「「「せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん! せったん!」」」

 

 かごめかごめ。

 刹那を取り囲む様に、彼女の周囲を回り続ける酔っぱらい共。

 イジメの構図である。

 

 「おっ、お嬢様ッ!? な、何をッ―――――」

 「もう! せやからぶるぅぶるぶぁぶいぅやいうてるやろ!?」

 「このちゃんんんんんん―――――――!!??」

 「カカカカカカッ」

 「げらげらげらげらげら」

 

 ダメだ。奴等は言葉が通じない。

 十分以上ソレが続き、刹那は極度のストレスから意識を失った。

 

 「捕縛完了! このまま詠春さんトコまで護送する!! 続けシャーオラー!」

 「しゃーおらー!」

 「しゃーおらー!!」

 「わふっ!」

 

 哀れ。

 嫉妬し陰口も叩いたこともある。しかし門下生達は、こう思わざる得なかった。

 

 ―――――次に会ったら、優しくしてやろう。

 

 こうして刹那は少年達に甘酒を飲まされ、しかし数年ぶりに親友と、そして新しく友人となった少年達と遊ぶことが出来た。

 蟠りなど、一晩で無くなっていた。

 

 

 

 

 

 




ということでせっちゃん和解回でした。
長々とわだかまりを無くすなんてやりませんw
最初はかませでも出そうかな? と考えましたが、雑魚相手に俺tueeeしてもむなしいだけでしたので没にしました。

そして魔族や妖怪の設定を開示。
彼らは神と人の子ども達が迫害され、そして一つに集まり幻想郷ヨロシク的に異界へ引きこもった者達の末裔ということにした見ました。
召喚されても本体が異界に存在するので、一部の魔法や魔術、神や魔王を除いて召喚された彼らを殺すことは出来ません。
刹那は烏族達の居る異界から逃げてきた感じです。


さて、今後のですが詳しくはこのあと書く活動報告で。
アンケートとかあるので、覗いていただけると有難いです。

修正点は随時修正しています。
感想待ってます!(*´∀`)




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