魔王生徒カンピオーネ!   作:たけのこの里派

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二か月近くぶりの更新。

母親の手術が成功し一段落ついたかと思いきや、母の居なくなった状態の父親の介護が忙しいのなんのって感じで、母のありがたみが解りながらちょくちょく書いてたのが出来たので投稿。



結構前に調べたヤツだけど、某少年探偵は一年間に約800人以上の死体と遭遇していたのが判明。
一日に最低二回以上殺しに遭遇する探偵ェ……


第十一話 ミステリー物の主人公は端から見れば死神

 善悪の基準は、常識という大多数の意見で如何様にも変化する。

 

 時代や国、人種や外見、果てや宗教に思想まで千差万別。

 それは人の社会性の発達の弊害と言えよう。

 故に一人がどれだけ善性を説いても、仮に本来の常識を説いたとしても、一つの社会の常識が歪められていれば、その正さや善性は悪性と見なされる。

 

 差別や迫害を防ぐ為の宗教が、政治を混ぜただけで差別を率先に行う狂宗へと堕ちるのと同じ様に、様々な神はその宗教によって悪魔に落とされた。

 

 そして歪みは弊害を生む。

 

 ────『魔法使いの街』という裏側の世界を保つために表側の世界を歪めて生まれた弊害を受け、正しさを説いたが故に異端とされ、周囲から孤立した少女が、麻帆良学園に一人。

 

 長谷川千雨。

 

 麻帆良の様々な異常を隠すための認識阻害を、生まれ持った魔法抵抗力により受けなかった少女だ。

 彼女の魔法抵抗力──禍払いの力は、余りに中途半端だった。

 攻性の魔術や呪術、魔法を掻き消せるほど強力な訳ではない。

 

 しかし人払いや認識阻害などの、一般人に対する類いは全て弾いていた。

 その絶妙さは、それを知る者なら悪意すら感じる程の絶妙さだった。

 

 そして異常な現状に彼女は当然の様に疑問を口にし、そして常識を歪められた大多数は彼女の言葉に耳を貸さなかった。

 幼い子供は彼女を苛め、まるで彼女自身が異常と見なされる日常(異常)

 彼女は徐々に追い込まれていった。

 

 

 『テンプレ過ぎるわぁ……。もうちょい展開変えてみんしゃいて』

 

 

 その数ヵ月後に、世界で両手で数えられるレベルの異常で異端になる少年に、そんな言葉を漏らされながら救われたのだが────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十一話 ミステリー物の主人公は端から見れば死神

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やっほー、ちうたん。お土産の八ツ橋だぞーい」

 「ちょっと待てぇッ!!?」

 

 黒髪に整った顔立ちに年不相応な目付きの悪さの、一ヶ月間ほど北欧で行方不明になっていた少年に、同様に『友達なら渾名の一つはあたぼう。このかのコミュ力を見習おうと思います』と、知るものなら明らかに狙ってる名で呼ばれた千雨は待ったを掛けた。

 

 「何ーよ?」

 「おまっ、北欧で行方不明になったんじゃねぇのかよ!? 何ヒョロっと現れてんだ! そして北欧から帰ってなんで八ツ橋だ!!?」

 「あぁ、ゴールデンウィーク前に帰ってきてね。そのまま諸事情で京都に行ってたんよ」

 「なんで帰ったって教えねぇんだ!? しッ、心配しただろうが!」

 「なんと、天然物のツンデレたる千雨が素直とは珍しい」

 「うっせぇボケェ!!」

 

 目の前のアホみたいな反応をする少年の顔を殴りたくなる衝動に襲われるも、しかしへたり込みたくなる程の安堵に止められる。

 

 一ヶ月前、春休みで北欧に赴いた皐月が行方不明になったと知り目の前が真っ暗になったのは、アスナやこのかだけではない。

 寧ろ千雨は二人より重症で、引きこもりもした。

 

 千雨にとって皐月は唯一の理解者であり、麻帆良学園における唯一の安らぎでもあった。

 いくら千雨が早熟とはいえ、依存しない訳がなかった。

 

 「チクショウ、良かった。ホント良かったッ……!」

 「お、おぅ」

 

 皐月の弱点その一。周囲にとっての自身の価値を低く見てしまう事である。

 

 当然なのだが、良くも悪くも皐月は精神年齢が高い。

 故に子供では出来ず、大人の精神性故に出来ることをやってのけてしまう。

 苛められている少女(千雨)が居れば助けるのは大人として当然と考え、助けることに特別性を感じないのだ。

 

 助けた本人が、その行為に相手が何れ程救われ、自分を特別視しているのか気づけない。

 皐月本人も難聴型鈍感系主人公のように、決して鈍感ではないのがまた質が悪かった。

 

 少なくともいじめッ子に苛められている時、皐月に助けられた千雨は彼が紛れもなくヒーローに見えていたのだ。

 そんなヒーローが居なくなった時、再び孤独に墜ちた時の彼女の心境は絶望の一言であった。

 理不尽な世界を憎悪すらした。

 

 そんな中、ヒョロっと帰ってきた少年に怒りも湧くし自分だけ空回りしてる事に自己嫌悪も沸いてくるものの、目の前に皐月(ヒーロー)が居ることが何より安心できた。

 

 「あー、大丈夫。俺は此処に居るからなー千雨ー」

 「何があったか全部話してもらうからな! 絶対だぞ!!」

 「えー、マジで?」

 「なんか文句あるかァ!」

 

 涙目で胸ぐらを掴む千雨に、飄々とケラケラ笑う皐月。

 

 (うーむ、まぁまだネタバレは早いよなぁ)

 

 流石に皐月といえど、学校の異常が可愛く見える程の異常を千雨に晒すのは躊躇われた。

 

 (つーか、某魔砲少女並に早熟だな)

 

 そんな風に思案していると、いつの間にか皐月の足に頭を擦り付けている子狼に気付いた。

 

 「な、何だソイツ」

 「ウチの子。かーいいでしょ? よーしよしよしフェンリどーした」

 「わふっ」

 

 仮にこの場に魔法使いか魔術師が居れば、魔王(皐月)程ではないにしろその莫大な呪力を全く漏らさず纏う銀狼を見て、間違いなく腰を抜かすだろう。

 

 「ふむふむなーる、そろそろ時間か。教えにきてくれてありがとーな、フェンリ」

 「わふっ!」

 「……言葉分かるのかよ」

 「オイちゃんを舐めるでない。というわけで千雨ちゃんや」

 「あん?」

 「ウチ来る?」

 「何がという訳!?」

 

 素晴らしきツッコミ要員。

 皐月は千雨にエヴァンジェリンと似た感覚を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

  

 

 

 

 

 

 

 「神鳴流奥義、雷光剣!!」

 

 刹那が雷光を纏った斬撃で、滝を切り裂く。

 しかし雷光は滝を斬るものの、滝そのものを吹き飛ばせてはいない。

 失敗である。

 

 己の失敗に、しかし次なる向上へと気概を剣に乗せる刹那が、指導役の茶々丸へ言葉を向ける。

 

 「ちゃ、茶々丸さん」

 「何でしょう刹那様」

 「その、様付けを止めて頂けませんか? 自分はその様に呼ばれる者ではありませんし、何より剣を教わる方からというのも……」

 

 元々迫害される立場しか知らず、忠犬根性が根底にある刹那に、茶々丸の態度は厳しかった。

 

 「なら、姉さんの様にと?」

 「いやぁ……、そちらもそのー……」

 

 チラリ、と刹那は離れた宮で暴れてる人形へと視線を投げる。

 

 『オラオラァドォシタ! モット斬ラセロォ!!』

 「チィ! チャチャゼロに勝ったら皐月からご褒美!!」

 「オレハ酒ダガナァッ!」

 

 このやり取りがもう数時間続いている。

 チャチャゼロは唯でさえエヴァンジェリンの長年の従者。技術や経験だけなら、アスナなど足元にも及ばないし格が違う。

 アスナも天性の勘や戦闘センスで食らい付いているものの、やはり及ばない。

 

 そして何よりアレは手合わせではなく死合だ。

 二人の回りに散らばっているアスナの血や手足が、その苛烈さを物語っていた。

 

 「そろそろ30分。インターバルやで二人ともー」

 『チィッ!!』

 『キャハハハハ』

 

 それでもそんな死合が数時間も続いて、周りに手足が転がっているにも拘わらずアスナが五体満足なのも、偏にこのかのお蔭である。

 即死以外でなら治せるなら好きに殺れ、というエヴァンジェリンの有難い判断だ。

 

 このかも最初は涙や苦痛で歪んでいた顔も、今やレイプ目携えて笑顔でアスナの手足を生やしている。

 

 「お嬢様……、随分傷や血にお慣れになりましたね……」

 「このか様に対して、そういう訓練にもなりますからね」

 

 なんという力業。

 この鍛練メニューはエヴァンジェリンが考えたのだが、あの弟子にしてあの師匠というのがよく納得できた。

 

 「────、そろそろ御時間です。それに皐月様(マスター)から御友人を連れて来られるとのことなので、私はこれにて」

 「あっ、はい。ご指導、ありがとうございます!」

 「はい。お疲れ様です」

 

 茶々丸は別荘から離脱する。

 袴姿から一瞬で侍女服に着替える。

 

 友人を連れて帰宅する主を想像し、今の充実した生活を与えてくれた少年に対して、抑えきれない感謝の念が、基本無表情に設定されている顔に笑みを浮かばせた。

 今の彼女を人形だと思える人間は、一体何人いるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長谷川千雨は早熟である。

 しかし早熟であるのと同時に、まだ小学二年生である。

 未だ色恋の類いは理解出来ず、「ウチ来る?」→「今日、親帰ってこないんだ」→「アーッ」というベタな展開を想像する事はない。

 

 故に彼女が顔を真っ赤にして震えている理由は、友達の家に遊びにいく、という事柄に一種の憧れを抱いており、それが依存している皐月相手だからこそ酷く緊張しているからであると弁護しておこう。

 

 最近PCに興味を持ち、そういう動画を目にしてしまった訳ではないのだ。決して。

 

 「今日はエヴァ姐は別荘だっけか?」

 「わふっ」

 「あぁ、学園長んトコね。最近物忘れ激しくて困るわー」

 「ジジイかお前は。って、姉が居たのか」

 「んにゃ、保護者的な感じかね。両親との仲が悪い訳じゃないないんだけど、ちと事情があってね。苗字も瑞葉ってのに変わったんよ」

 「そ、そうか……」

 

 かなり重い話で、少々気が引けた。

 

 「まぁそんで、今向かってるのがその保護者と一緒に住んでる家。まぁ内装は保護者の趣味全開だが気にしないでくれ」

 「お、おう────」

 『アラ、皐月さん?』

 

 突然後方から現れた、皐月や千雨が知る物から大きく逸脱した長大のベンツから幼い声が聞こえた。

 ベンツの窓ガラスが開いて出てきたのは、金髪の少女。

 

 「雪広か。相変わらず早いなぁ」

 「10分前行動は基本と教えられておりますから。そちらの方は?」

 「ダチの千雨。折角だから誘おうかと」

 「ど、ども。長谷川千雨、です」

 「アラ御丁寧に。雪広あやかですわ。皐月さん達も折角ですし、一緒にどうですか?」

 「わんこ連れだけども大丈夫か?」

 「構いませんわ」

 「あんがとなー」

 

 内装が別世界のベンツに乗車した二人と一匹。

 そこで千雨はあやかが皐月の家に向かっているのが理解した。

 皐月としては、あやかが何時もと違い少し浮かれているのが気になった。

 

 その事に、嫌な予感がしたのだ。

 

 「随分ご機嫌だな雪広。どしたん」

 「実はですね!」

 

 待ってましたと言わんばかりに食い付いたあやか。

 その時、皐月の霊視に反応があった。

 

 内心皐月は思う。

 物語特有の、普通なら有り得ないことにホイホイフラグが立つ現象。物語を面白くするための事件。

 

 物語の主要人物ならではの、例えばミステリーものの事件を惹き付ける能力とでも言えるソレ。

 物語を面白くするためので、作り手にしてみれば仕方の無い、そんな暗黙の了解。

 

 そんなのは、当事者にしてみれば御免だと。

 

 

 

 

 「────────私! 弟が出来るんですの!!」

 

 霊視で観えたキーワードは、蛇、鍛冶、輝く炎。

 

  




千雨登場回にして次のまつろわぬ神への導入回。
そしてハーレムで現在攻略前の刹那以外の全員が主人公に依存してるこの状況。ハーレムってなんだっけ()
つか次の神様がモロバレな気がががががg

それと茶々丸にカワカミン式自動人形の口調を、中の人的に似あわないと判断し追加するのはやめました。


修正点は随時修正します。
感想待ってます!(*´∀`)


最近投稿作品やリアルのストレスが増えてきたので、やっぱり次の投稿も遅れるかもです。
ご了承ください。

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