ややスランプというか、結構難航していましたが何とか書けました。
感想も頂いたりして、返信できなかった方々には頭が下がる一方です。
今年中に更新できて良かったですわ。
「─────もう! 判断に困る戦いは止めてね!!」
目の前で俺に喚き散らしてる、幼さと妖美さを兼ね備えた美少女が鼻を突き合わせるほど顔を近付ける。
カグツチに爆撃をくれてやった直後、片腕が炭化した激痛で気絶した俺は、爆心地の様な場所で何故か美少女に押し倒されていた。
しかも義理の母親の様な立ち位置の人に。年上美女の外見に変えてから出直してこいや。
「ってなんだ、パンドラ義母さんか」
「むぅ。義母さんって呼んでくれるのは嬉しいけど、だからって説教を止めるつもりはありませんからね!」
「あぁ、此処幽世だっけか」
「貴方が此方に来てくれたから、制限なしで貴方と話せるのだけど─────って、話はまだ終わってません!」
パンドラ。
カンピオーネの最大の支援者にして元締め。
何より全てのカンピオーネを生み出した母でもある。
そして彼女は、カンピオーネに成った後も魔王達にとって不可欠な存在である。
カンピオーネが権能を簒奪するためには、ただ神を殺すだけでは不十分。
何故なら彼女を楽しませる様な戦いを演じなければならない。
故に今回のまつろわぬカグツチとの戦いは非常に判別の難しいモノだった。
前半はカグツチが優勢。俺の片腕とアグニの『浄火』と『太陽』を封じ、反則的アドバンテージによって圧倒していた。
問題は、俺が他の魔王では決して容易く突破出来ない防御をゴリ押しでブチ抜き、更にはそのままチートレベルのカグツチの耐久力をガン無視して殺してしまったことだ。
あまりに呆気なかった為、こうしてパンドラは俺に文句を言いに来たのだ。
ていうか逆ギレかよ。
「そんなん言われてもね、コッチも必死なんよ」
「うー! 貴方が後十年早く生まれてくれてれば、こんなに悩む必要無かったのにィ!」
何でも、俺の年齢での神殺しは初らしい。まぁ普通八歳児が神殺しする機会とかホイホイあったら世界終わってるが。
「今回だけ特別よ! 良い?」
「オーライ、感謝しますよ」
ていうか、封じられたアグニの権能って戻るよね?
第十四話
俺が右腕を炭化、全身に火傷を負った状態で幽世から帰還した後の、所謂事後処理を語ろう。
上半身のみで脳髄まで冷凍保存されていた雪広夫人はこのかが完全再生魔法で復元した。
ていうか、このかの治療魔法の技量がおかしい気がする。アーティファクトも原作より規格外になってるし。
一先ずカグツチ関連は一段落し、アスナ達の要望もあって俺は休養を取り、そのまま眠りに就いた。
残された問題は雪広嬢、あやかの心の問題。
あれほど楽しみにしていた弟の誕生が無くなったのだ。
必然、落ち込みもする。
「何だ、まだ魔法の事をバラしてないのか?」
「親の意向ってヤツだよ。せめてもうちょい感情を理性が押さえられるぐらいには成長してからだってよ。まぁ、俺への配慮かもな」
どの様な形でどんな理由があろうと、弟を殺そうとしたのは俺だ。
エヴァ姉と
リビングを見渡しても、以前はあったぬいぐるみ群が無くなっている。
本人いわく、これまでのファンシー趣味は肉体年齢に引っ張られていたかららしい。
今は大人の雰囲気溢れる部屋となっていた。
「どうやらカグツチの権能封じは部位欠損の回復と共に戻った様だな」
「かなりヒヤヒヤしたけどなぁ」
「カグツチから簒奪した権能はどうだ?」
「まだ掌握には至ってないけど、まぁそれなりに使える。例によって炎系なんで此処じゃ使えないけども」
もうちょっと別のベクトルの権能が欲しい─────と考えるも、回復系と神速はアグニが有るし、鋼は毘沙門天がある。神獣系はフェンリが居るし、権能封じ系は
意外にレパートリーが揃ってるではないか。
尤も、悉く戦闘系の権能ばかりだが。
「……それで、お前はあの娘を慰めにいかんのか?」
「ハッ!」
珈琲を一気に飲み干してビールジョッキの様に叩き付ける。
「……いやいや、塞ぎ込んでる理由の弟を殺した奴が慰めるとか、流石に俺もそこまで鬼畜じゃねぇよ。マッチポンプ甚だしいわ」
「お前が殺したのはまつろわぬ神だ。子供では無い。子供を殺したのはまつろわぬ神だろう? ならば寧ろ仇を討ったと考えるべきだ」
俺がやったことは救済措置だと。
本来医者が行うべき事と何ら変わらない事をやったのだと、エヴァ姉は言う。
「解っちゃいるが、ソレで切り捨てるのは寂しいだろ。何か」
「……」
「そんな、神の生け贄にされた名前も無い胎児A……なんて、くだらないエトセトラ認識しかされないだなんてよ。せめて俺だけは覚えておこうかなって」
「あの夫妻や娘は覚えてるだろう」
「それ言うなよ」
台無しじゃねぇか。
「それなりに堪えてんの。確かに敵ならブチ殺してなんぼだし、実際北欧でそれなりの人数灰にした。けど感傷に浸るなんて無かったんだからな」
「魔王になっても情は忘れないのか」
「ハナから頭逝ってる奴は知らんけど、少なくとも俺はねー」
尤も、戦場で必要あらば赤子でも殺せる。
偏に神を殺すため。勝利を掴むために。
「カンピオーネ。魔王に成れる、神を殺せる人間なんざ唯の一人の例外もなくキチガイだろうよ。勿論、俺も含めてな」
そもそもアレに立ち向かおうと考える時点で頭がおかしい。
むしゃくしゃして殺った俺はもっとおかしい。
「ふん。感傷に浸るなとは言わんが、そうグズグズしている暇など無いぞ?」
「は?」
そう聞き返そうとする前に、車が近付いてくる音に気が付く。正確には権能で気が付いていたが、この家に向かっているのはわからなかった。
その音はログハウスの目の前で停まり、直ぐ様蹴り飛ばしたように扉が開いた。
ポカンと呆けている俺の置き去りに、扉からゾロゾロと四人の幼女が現れた。
一番驚いたのが、落ち込んでいると聞いていた雪広あやかがいたということ。
「――――――ありがとうございます!」
「…………はッ?」
彼女は俺の目の前に堂々と立ち、頭を下げた。
「ど、どしたん委員長。どっかで頭を打ったか?」
「皐月さんが、お母様を助けてくれたのでしょう? アスナさん達から聞きましたわ」
「……」
あぁ。
つまりは、そういうこと。
無表情でドヤ顔かましている幼女と、天真爛漫な笑顔を魅せる幼女に、不器用ながらに優しく見守る幼女。
そしてそんな幼女四人組に慰められるショタが俺。
なんだこの構図は。
「……落ち込んでたんじゃないの?」
「お母様に教わっております。雪広の娘足るもの、受けた恩は何より大切にし倍にして返すのが礼儀だと! ならば皐月さんにお礼をするのが先ですわ!!」
「……」
目の下に涙の跡を残しながら、胸を張った雪広に圧倒される。
「は、ははははは」
悲しいだろうに、苦しいだろうに。
「─────ホンッと、小学生の台詞じゃねぇよなぁ」
おまいう。
そんなエヴァンジェリンが溜め息を付けながら、その光景に微笑んだ。
◆◆◆
まつろわぬ迦具土神の顕現から数ヵ月経った。
別荘の使用が原因で、小学生の中でも外見の成長が著しい刹那とアスナが、それぞれのアーティファクトを用いて模擬戦をしていた。
最近別荘の使用を以前より控えさせられている二人にとって、周りの被害を無視して戦闘できる機会は貴重である。
アスナのアーティファクト、『ハマノツルギ』は皐月の『
「フンッ!!」
アスナが大剣を振るえば、空気の爆発が発生する。
改造した皐月は、こう述べていた。
『─────
禍払いの能力強度は人間としては世界最強だろうアスナは、しかし精密にその能力を操ることがほとんど出来ていない。
最大出力で魔法事象を触れるだけで消滅させる事は出来ても、禍払いの力そのものの運用は斬撃として放つ『
無効化能力に特化しているが故に、攻撃力が刹那と比較して低いアスナの火力を底上げした。
威力としてはアスナの意思一つで上下するが、基本的に一振りで
更に爆炎を利用して推進力を増加することも出来る。
鍔迫り合いが出来ない故に、アスナの攻撃は避けることしか出来ないのだ。
「はッ!」
対する刹那の剣は、正確にはアーティファクトではなく『
天下三名槍の名を取っているが、勿論刀であるため関係がない。
では何故皐月は蜻蛉切と名付けたのか?
「結べ、蜻蛉切!」
刹那を呑み込もうとしていた爆炎が突如割れ、道が出来る。
刃に映した対象の名前を結び、割断する。
それが蜻蛉切の能力である。
『─────声優ネタですが何かッ!?』
理由を訊いた刹那にはついぞ理解できなかった。
蜻蛉切はハマノツルギと鍔迫り合いが出来る武器である。
純粋な強度は勿論、ハマノツルギの発する爆炎は禍払いの能力ではないため割断可能だが、ハマノツルギは禍払いの能力そのもの。
権能の産物による魔法事象でも、同様の産物であるハマノツルギは無効化によって割断されることはない。
故に勝敗はそれ以外の要因が決定する。
「うわっ!?」
「ぐぼあー」
瞬動で後ろを取ったアスナが、刹那の白翼によって叩かれ墜ちる。
「ナニをやっているんだアスナ」
「むぐぅ、翼とは相手に叩き付けるものだった」
女子としてはあり得ない悲鳴を上げて撃墜されたアスナに、エヴァンジェリンが呆れた視線を向ける。
血筋や戦闘センスや咸卦法で基本スペックはアスナは非常に高いのだが、刹那は神鳴流に加え半妖としての能力が未だにアスナを凌駕していた。
一応アスナは、皐月から
「いえ、アスナさんも日に日に動きが鋭くなっています。寧ろ今まで動きを制限されていたような気すら……」
「昔、膝に矢を受けてしまって」
刹那の言う通り、チャチャゼロとの死合鍛練を経てアスナの能力は非常に向上していた。
心構え一つとっても戦士のそれに変わっていた。
神鳴流歴代最強16%落ちに教えをほぼ独占して受け、一部とはいえ神鳴流の奥義を修得している刹那とほぼ同等になるほどに。
だが如何せん二人とも肉体は小学生のソレ。
特に
なにせアスナは肉体と精神は百を超えているズレがあるのだから。
そして別荘の使用は、成長すればするほど制限される。
主に秘匿的な意味で。
未だに小学年少生であるアスナ達は、小学生の体面を保つ必要は不可欠だった。
「いいからさっさと別荘から出るぞ。来客だ」
「来客、とは?」
「面倒事と言っても良い」
エヴァンジェリンが鬱陶しそうに鼻を鳴らしながら答えた。
─────別荘から出て、リビングで茶々丸に出された茶を啜っているタカミチを見て。
「保護者失格、何しに来た」
「ぐぶッ! き、キツいなぁエヴァ」
「効果は抜群だー」
高畑・T・タカミチ。
NGO団体『
その過程で多くの悪の秘密組織《完全なる世界の残党》を一人で壊滅させるなど、八面六臂の活躍をしていた。
だが一方、アスナの保護者という立場から見ると、他人に面倒を丸投げしている。
金銭補助こそしてはいるものの、皐月が
まぁアスナを狙う組織を潰しに行っているなどで、アスナ本人の心象は悪くはない。
棒読みで茶々を入れる程度には、アスナも理解している。
まぁそれでもタカミチ本人、まともに保護者を遣れていないことを自覚しているためぐうの音も出ないのだが。
「えっと、そのー。頼みたいことがあるんだけど……」
「それはソコの小娘にも関係あることか?」
タカミチの隣で出された紅茶に触れもしない、アスナ達より尚幼い身の丈のローブで顔を隠した子供が座っていた。
エヴァンジェリンが少女だと判断したのは、魔力の流れ方を見て取ったからである。
陰の流れは女。陽の流れは男という陰陽道の考え方を、このか経由で知ったのだ。
「……まぁ、ね。すまないが、彼女達にも顔を見せてくれないか」
「……」
「大丈夫、彼女達は決して君を狙わない」
「というか人様の家で顔を隠すとは何事だ」
「……わかりました」
暫く悩んだ少女がフードを取った瞬間、アスナが息を呑んだ。
「紹介するね。彼女の名前は─────」
最近切り揃えた様な肩ほどの金髪をたなびかせ、その碧と蒼の眼をキツく吊り上げている。
目付きは年にしては鋭過ぎる、という表現が正しい。
問題は、エヴァンジェリンにその顔立ちがソックリであること。
そしてそれは同時に、一人の女性の顔立ちと酷似している事を示していた。
「アリカッ……!?」
アスナの、思わず口にしてしまった名前に少女は顔を盛大に顰め、タカミチはそんな少女に苦笑しながら言葉を続ける。
「─────アカリ・スプリングフィールドだよ」
地 雷 投 下
いやまぁ、何時も投下してますが。
>あやか
彼女についてはアスナ達が総出で励まして早期に復帰。断片的な話を知り皐月に感謝をば、という感じです。
彼女の魔法バレは中等部辺りにとある事件と共にバラせていければ、と思っております。
ショタコン属性は付与されるかな?お楽しみに。
>アスナと刹那、このかの現在の実力
彼女達、というかアスナと刹那の実力は現在手加減したタカミチを倒せた麻帆良祭中盤のネギ辺り。つまりネギま全体の中の上です。
魔法先生は倒せますが、それ以上は苦戦必死です。経験が足りませんし。
このかはアーティファクトが原作とは違います。具体的には制限時間と効果範囲が段違いです。
彼女自身の治癒の技量はまだまだです。原作の説明でもあったように、まだ魔力タンクを使いきれていない状態ですね。
尤も、彼女のアーティファクトがチート過ぎるので彼女自身の実力が伸びても、治療面に於いては活躍は難しいかもしれませんね。
まぁ今後の作者の勝手で何らかの変更があるかもしれませんが()
>蜻蛉切と爆発の剣。
爆発の剣は切り裂いた箇所が爆発する感じですね。要はRAVEのテンコマンドメンツ。楕円形に地面を切り裂いたりすればそれに合わせて爆発するような。
刹那の蜻蛉切は現在通常駆動のみで、彼女の実力が向上すれば皐月が任意でリミッターを解除する感じです。
爆炎の割断は『霧のような物を割断しても意味を成さない』に当たりそうですが、スルーお願いします。
>ネギ妹
次回にどうぞ。
彼女はとある理由で精神がある程度成熟しております。そこら辺も次回で描けていければ、と思っております。
修正点は随時修正します。
感想待ってます!(*´∀`)