国王の増税を止める任務を無事に完遂できたおかげで、俺と暴風には休暇を与えられた。
でもたぶん、暴風の目がゆで卵みたいに腫れて、歩いている途中に柱に頭をぶつけたところを教皇に見られて、つい心苦しく思ったからなのか…それとも、また柱の被害が出てほしくないだけからか。神殿の柱一本一本が彫刻で練り上げた芸術品で値が張るんだ。
休みの指示をもらった次第、暴風が直ちに光明殿を出て、俺たち騎士の拠点、聖殿へ駆け付けた。
なぜかというと、光明殿の祭祀には女の人がいるが、聖殿の騎士にはいないからだ。
目がゆで卵みたいに腫れた人にとっては、光明殿の女祭祀がどんなに女神並みに美しいとしても、流し目を送るのが辛いということに変わりはない。
さて、暴風が風みたいに逃げだした。俺も休みを一刻も早く過ごしたい気持ちは山々だが、優雅でゆっくりで歩くしかない。
太陽騎士は騎士の中でもっとも気品にあふれる騎士で、何事もその優雅な立ち居振る舞いを崩し得ないと、全大陸誰もが知っているのだ。
あの頃、俺はどれだけ先生のことに感心していたことか。立っても座ってもしゃがんでも走っても、馬に乗っても馬から降りても、逃亡に至っては優雅極まりなかった。
そしてある日トイレに行くとき、ノックせずにうっかりとドアをパッと開けると、ちょうど先生が用を足している途中だった。ある黒い物体が肝心なところに引っかかっていた…
すると、先生が太陽騎士専属の笑顔を浮かべて、優雅極まりなくことを済ませて、そして優雅極まりなくおしりを拭いて、それから優雅極まりなくズボンを履いて服を整えて、次に優雅極まりなく俺を捕まえて、最後に優雅極まりなく俺を完膚なきまでボコった…
『弟子よ、いいか?太陽騎士は転んでも優雅極まりなく転ばなければならないんだぞ!』
と、常に先生が言っていた。
優雅極まりなくトイレをさせたお返しなのか、俺はいつでもどこでも、どれだけいきなりでもどれだけ不本意でも、優雅極まりなく転べるまで一か月間ひたすら転ばせられた。
そのあと、ある国の女王が俺の転ぶ恰好に驚嘆し、その場で俺の「傷病手当金」として光明神殿に一万ゴールドを恵んだエピソードすらあった。
だがそれ以降、俺は神殿の金庫に近づきたくなくなった。こっそりと俺を階段に突き落とそうとする誰かが必ずいる。
しかし、転ぶという点と、トイレに行く時しっかりと戸締りをしないといけない点においては確かにちょっとめんどくさいけど、優雅に歩くこと自体はそれなりのメリットがあるんだ。
特に光明殿の廊下を歩くとき、優雅が俺のゆっくりすぎた動きを合理化してくれる。動きが緩慢なほど、俺は堂々ときれいな女祭祀を目の隅で記録できる。
間違ってない。見るでもなく、盗み見でもなく、「
太陽騎士は終身光明神に身を捧げる、絶対の忠誠を誓った騎士だということを、全大陸誰もが知っているからだ!
というわけで、女なんてちっとも眼中にないのは当たり前のことだ!
女神の容姿を兼ねて、くびれる所とふくらむ所がはっきりしてて、さらに布一枚纏わず素裸の女性が間近にいても、太陽騎士は微塵も気を取られず、同じくド前を直視する。
さて、お前が男だとしたら、そんなことあり得ると思う?
ありえる!前を直視するのが間違いない。
『弟子よ、お前はもう十四歳になったんだ。そろそろ女の見かたを伝授するころだ』
『先生、先生が自分を光明神に身を捧げたから女に興味がないのじゃなかったんですか?』
『俺は騎士として光明神に身を捧げているが、光明神は女として俺に身を捧げてないぞ。だから、『
『…』
『弟子よ、いいか?太陽騎士たるものは、すぐそばに全裸の絶世美女がいたとしても、お前はド前から目を逸らしてはいけないのだ。それができるように、目を前に向けたまま、その美女を目の隅で捉えて頭の中に記録することを学んでおきなさい。そうすれば、自分の部屋に戻って思う存分まで見られる!』
おお…左を通り過ぎた子がなかなかだ、記録!
おおお、右側の子が新入りか?見たことない気がする、記録!
「太陽!」
俺は足を止めて、優雅に俺を呼んだ人のほうに視線を向けた。こんちくしょうなに止めてんだ?新入りの子はまだ記録してないのに!と叫びたいところだが。
「寒氷兄、仁慈なる光明神がその冷冷たる表情を溶かしますように」
寒氷騎士、十二聖騎の中で、俺の側じゃない人。
どういうことだと?
全大陸誰もが知っているように、十二聖騎士は派閥をやっているんだ。一つは太陽騎士をリーダーとした温厚篤実派で、もう一つは審判騎士をリーダーとした冷酷無情派なんだ。見てわかる通り、温厚篤実と冷酷無情とは仲がいいわけがないから、暇を持て余してたら喧嘩をし合うのが定番だ。
「太陽、おまえこそ光明神の厳正を見習って、あの無能な国王を簡単に見逃さないでほしい」
寒氷は無表情のままだが、別に俺のことが嫌いなわけじゃない。よく知られているように、寒氷騎士の顔は一年中氷結してて、天上の太陽が落ちてきて彼の顔に直撃しても、その凍り付いた表情を溶かすことはできない。
「光明神の仁慈なお教えで、罪人でも生まれ変わる可能性があると心得ました。更生させる機会をどれ一つ決して手放しません」
俺は退屈だと思いながら情け深い表情を出した。寒氷騎士が無口なので、「
「罪人は処罰を課されるべきだ。改心させる機会などまったく勿体ない話だ!」
寒氷は反論する隙間も与えずその場を去った。
寒氷のここが気に入るんだよ!
寒氷騎士は俺より喧嘩が嫌いだ。ただ、全大陸誰もが知っている状況では、見せかけとしてかろうじて口論を交わすだけ。
そして全大陸誰もが知っているように、寒氷騎士の性格は氷みたいに冷たくて、無愛想だし世間話が嫌いだ。だから、このまま離れるのが非常に正常な反応なんだ。
出会う度に揉めるが、俺らは実のところかなり仲がいい。氷属性魔法に長けた彼が暑いときにいつもかき氷を作ってくれる。
まあ、立場が対立していることを表すために、彼が先に喧嘩を売ってきて、俺が心の準備をしてからボウルをぶん投げてくる。そして二行ぐらい言い争って、また彼の手作りブルーベリージャムを投げてくる。最後に、氷魔法で俺に攻撃を仕掛けて、砕けた氷を俺の頭、顔、体、そして手に持っているボウルに放つ。あ~冷たくて気持ちいい!
そうして俺がブルーベリーかき氷を食べられるし、俺たち「
だから寒氷のやつが大好きだ。けれど、俺が温厚篤実で、彼が冷酷無情で、とても友達にはなれないと全大陸誰もが知っているから、俺たちは「友達じゃない友達」にしかなれないんだ。
友達といえば、休暇を取る前に俺の「親友」、大地騎士に顔を合わせないと。
全大陸の常識として、大地騎士が誠実温厚で、背が高くてたくましくて、しゃべるときはシャイボーイで、舌を噛んでどもりがち…
「ご、ごめんなさい、おれは女の子としゃ、しゃべるのがあまり慣れなくて…」
大地騎士が照れながら頭を下げた。
ちょうどそのとき、俺は大地騎士の部屋のドアを開けて、彼が第三十一回か三十二回か部屋で三十一か三十二人目か別の女の子にこのセリフを言ったのを耳にした。
そして、彼が第三十一回か三十二回かひそかに俺を睨みつけて、目つきが険しいのに、間抜けな笑顔で俺に挨拶をした。
「太陽、かえ、帰ってきたか」
「そうです、幸いながら光明神の祝福と支持のおかげで、太陽は教皇様が伝えたかった光明神の希望を遂行できました」
「そうか!あはは、おめでとう!なんか用?」
大地がアホらしくカラカラ笑った。そのうんざりした眼差しは見逃さない。
「光明神が垂れ給うた善意の啓示で、私は親友の大地、あなたに挨拶をしに来ました。任務はもはやこれ以上私に光明神の仁慈を体感させることはできまいと教皇様が察知したゆえに、私は広々とした大空の下で光明神のお諭しを会得することになりました」
ズバリ、太陽騎士俺はこれから休みだ!
大地の目から「クソ野郎、休みならさっさと身を失せろ!」と言いたいのは十分に伝わった。隣の女性がぽかんと俺を見ている。絶対俺の言葉が全然わからなかったからだと保証する。三年以上の付き合いがないと俺の言葉の裏を理解するのはまず無理だ。
これも俺が彼女ができない主な理由だ。毎回心惹かれた女の子にナンパをすると、布教活動だとみんなに勘違いされて、慌てて献金を渡されて逃げられてしまう。
「いいなー、休み」
大地はまだアホらしく笑っている。そのアホらしい顔はもう女の子何人を陥れたことか。
目の筋肉がつるまで一日中秋波を送っていても、実は童貞の可能性が大ありの暴風に比べて、大地こそ女をもてあそんでもスケベの悪名を残さないやり手である。大地騎士が誠実温厚で素朴な人であることを全大陸誰もが知っているから、スケベだったなんて信じられる話とでも?
ありえない!太陽騎士がヘビードリンカーだったと同じぐらい、ありえない!
こいつの部屋に三十一か三十二人か違う女を目撃したことがあるにもかかわらず、こいつは「理想な旦那さんグランプリ」をずっと連覇してきやがった。
俺のほうがルックスがいいし、地位も高いし、給料も多くもらえるのに、「理想な旦那さんグランプリ」を登ったことは一度もない。全大陸の女誰もが、太陽騎士が神しか眼中になく女をほったらかしにすると知っているからだ。
ちくしょう!
だから、こいつが気に入らない。
あいにく、彼が女を騙そうとする度に俺がドアを開けてくるから、彼も俺のことが嫌いだ。
ただ、全大陸誰もが、太陽騎士と大地騎士が一番の親友だと認識している…やむを得ず、お互いが大嫌いな親友ごっこをしている。
俺は十年間骨身を削って訓練してきた明るい笑顔を放った。すると、あの女の人は顔がパッと赤くなって、恥ずかしそうに頭を下げようとしたが、俺の顔から目を逸らすのを惜しんでいるようだった。
「理想な旦那さんグランプリ」に登ることはできなかったが、せめて「陽気美男子グランプリ」を連勝してきたものだ!女の人に一時的に自分が望んでいた夫を忘れさせることは大したもんじゃない!
「太陽、休みじゃなかったの?」
大地の目つきは鋭いのに話し声は変わらず穏やかだ。偽装の実力は俺の笑顔と伯仲する。
「やりたいことを早く考えないと、休みがシュッと終わっちゃうよ」
俺はため息をついた。
「嗚呼、これはきっと光明神が大地の口を介して私に与えてくださったご啓示なんでしょう。広大な天地に光明神のさらなるお諭しを体得しにいかねばならぬ。心苦しい限りですが、ここでお別れを告げましょう」
失、せ、ろ!
大地の両目からはその言葉がじんじんと伝わってきたが、表情はいい感じに待ち遠しいように見えた。
「また会えるのを楽しみにしているぜ、我が友」
うふふ!俺は笑顔で頷いて、上機嫌で部屋のドアを閉めた。あの女が俺に惚れた様子からして、大地が女を誘拐するのがまた失敗に終わるのは言うまでもない。ククク!
他人が女を口説くするのを邪魔するのは愉快なものだ。よいよい、素敵な休みになりそうだ。
いや、ストップ!休みはまだだった。
寒氷騎士とはかなり仲がいいと言ったが、十二聖騎の中で俺と一番仲がいいやつは彼ではない。休みに行く前にはやはり実際一番の親友に会いに行かなければ、女を見て友を忘れると文句言われる…ほかの人の
最近、審判に任せられた裁きが特に多いと聞いた。審判所の「トイレ」で待ち構えておけばたぶん来る。
きれいな水が入った洗面器とスツール二つをトイレに持ち込んで、小便器のそばで優雅に着席して三分も経たないうちに、案の定、黒い髪で黒い瞳をして、黒い騎士服を着た一人の騎士がドアをガタンと開けて、ダッシュで便器に向かってゲロを吐きはじめた。
優雅に座ったまま吐き終わるのを待つ間、ついでに紹介しておこう。この三黒のやつ――黒目黒髪黒服は俺の「友達じゃない一番の親友」、そして冷酷無情派のボス、審判騎士なのである。
俺は温厚篤実派のリーダーである一方、彼は冷酷無情派のボスなので、俺たちは犬猿の仲のはずだ。
俺はいつも、仁慈なる光明神はあなたの罪を許すことでしょう、と言っている。
彼はいつも、厳酷なる光明神は君の罪を罰するであろう、と言っている。
よって、光明神が絶対に多重人…多重神格だとわかる!
上がだめだと下もだめだ。だから光明神配下の騎士はみんなどこか抜けているんだ。
最も恐れられる最も残忍なはずの審判騎士が初めての裁判実習が終わった矢先、トイレに吐き戻しに来てた。
十三歳の子にとっては本来ならおかしい話でもない。あの乱暴な拷問に耐えきれないのはごく正常なのだ。
彼が初めての審判実習に回った頃、俺も未来の審判騎士との初めてのけなし合いの実習で先生に連れてこられた。
あの十字架に縛られて、人の形も認識できないぐらいお仕置きされた連続強姦犯を見たとき、俺は気分がすっきりと晴れた。
このくそったれ!
太陽騎士がこの一生、神だけを愛し女を愛せないと知っているか?太陽騎士の回りくどい喋り方でこの一生、女をベッドに誘拐することはできないかもしれないと知っているか?
き、貴様はよくもまあこんな卑劣な方法で女を手に入れたんだと?!うらやま…憎たらしくてたまらない!貴様のようなゴミ人間は死んでも屍に鞭打つべきだ!
屍をどのように鞭打つべきかと考えている間に、先生に背中を押された。そうだった、俺は未来の審判騎士と罵り合うための実習で来てたんだ。
俺はさっそく太陽式情け深い表情で驚いたふりをした。
「これはこれは残酷なものです!光明神の民に対してなんてことをしたのですか!罪人だとしても、反省する機会があるのです!仁慈なる光明神はこの暴行を許容するはずがあるまい!」
よし!喧嘩売ったぞ、次はお前の番だ。
振り返って先生の顔を窺ってみた。肯定的な笑顔だった。初めての非難ワードチョイスにしてはよかったみたい。
ところが、あの黒髪黒目黒服の審判小騎士はなかなか口を開かなかった。俺に散々責められたとき、彼の目の奥から間違いなく自責と後悔を汲み取れた。キラキラとだんだん潤ってくる涙も。
やがて涙があふれだしそうになったとき、彼は彼の先生の身辺を抜け出して、俺にぶつかって、口元を押さえながらどこかに走り去った。
「弟子よ、光明神の仁慈を教えに早くついて行かないか?」
先生が俺の背中を叩きながら言った。
えっ、まだ続くの?もう泣かせちゃったし、やめたほうがいいんじゃ…
「ハンカチと水、スツール二つを忘れず持っていきなさい」
先生がわけわからんの謎指示を出したら、犬猿の仲の審判大騎士と仁慈と厳正をめぐってお互いくさし始めた。
疑惑しか持たなかったが、先生の命令は抗えないものだ。ハンカチは元々持っていた。俺は急いで洗面器とスツールを用意して、未来の宿敵を探しに行った。
なんとか審判所のトイレで見つけた。胃液すら出なくなったのにまだ苦しそうに嘔吐を催していた。
足が棒になるまでしばらく傍らで呆然と突っ立ってたら、スツールの存在を思い出した。俺は宿敵に一つ渡して、もう一つに腰を掛けた。
またしばらくぼーっと座ってたら、えずきがようやく収まってきたようだ。
小汚くなった格好を見て、俺は自然の流れで水とハンカチを彼に渡した。彼はそれをぼんやりと受け取って、身なりを整頓した。
ハンカチ、スツール、水、全部使えたじゃないか…急に悟った。もしかしたら先生も昔このトイレでライバルがゲロを吐くのを見てたんじゃないか?
未来の審判騎士が黙々とハンカチをきれいに洗って、俺に返した。ありがとうの一言はなかった。彼がそれを言えないんだ。太陽騎士と審判騎士は永遠に犬猿の仲だからだ。光明神のそれぞれの面を代表した俺たちは、相手と仲良くすることはありえない!
無言のままでお互いを見つめ合った。俺は光明神の仁慈で責めたくないし、彼も光明神の厳酷で口答えしたがらない。
あれから、俺たちはよくトイレで光明神の仁慈と厳正をめぐって交流をした。俺はよく水とスツール、ハンカチを持ってトイレで待ち構えるし、彼は裁判の前にお茶とお菓子をあらかじめ用意して、終わったとたんそれを抱えながらトイレに駆け込んでくる。
まあ、吐き終わるとお腹が空くからね。
だが、用意してたお菓子はいつも彼の好みじゃなく俺の大好きな、まるで砂糖100%で作られたような激甘スイーツだった。
審判騎士がちょうどいま吐き終わった。いつも通り俺が渡した水とハンカチで身だしなみを整えながら、俺に声をかけた。
「太陽は近ごろ罪人どもの審判に関わらなくなったから、ようやく光明神の厳酷こそ罪業を止められると悟ってくれたかと思ったが」
なんでずっと来なかったの?という文句だ。
「光明神の仁慈は神殿の中に限らず、王宮にも仁慈の照らしを必要としていました。特に国王陛下が光明神のお諭しを渇望していらっしゃいました」
あのデブ豚国王の「教育」に派遣された。
「きっと国王陛下に相手にされなかったであろう。彼に警戒心を叩き込めるのは光明神の厳酷でほかならない」
さぞ手を焼いただろう?
「暴風騎士の努力で、国王陛下は光明神のご仁慈に悟りをお開きになりました」
暴風がいなければ、デブ豚は減税に妥協しなかった。
「暴風騎士は光明神の厳酷を王宮の人間に思い知らせなかったことをさぞ悔しんでいるであろう。彼の目には王宮中の罪悪が映らなかったのか?」
あんな女だらけの王宮に…目大丈夫なのか?
「彼は王宮中の罪悪を両目で見識を深めました。苦痛満々でしたが、それでも光明神の仁慈を徹し彼らを包容することにしました」
やつはあと少しで失明するところだった。
「罪悪を見つつ罪人を処罰しない彼が光明神に懲らしめられないように」
気の毒に…早く治るといいね。
「教皇様はすでに光明神の支持を伝えました。外の暖かき陽光でその包容の両目を三日間浴びさせることをお許しになりました。太陽も光明神の仁慈を一緒に会得できることを幸いに存じます」
休みを三日もらえた、俺も。
「正午の日差しが君たちに光明神の厳酷を分からせることを願う。光明神の厳酷はどこに行っても跡を絶たない」
休みを満喫してきてな!どこに遊びに行くの?
「大陸の隅々までが光明神のご仁慈に照射されます、たとえ卑しい太陽騎士の陋室でも」
部屋に引きこもって寝る。
審判はやっと我慢できず、厳粛な顔に口角を上げた。彼は笑いながら頭を横に振って、俺にお菓子を一枚渡してきた。
「君がいつしか光明神の厳酷を受け入れるように」
「こちらこそ、早く光明神の仁慈を受け入れますように」
お菓子を受け取って一口噛んだ。うん、ブルーベリー味だ。うまい。
***
三日もの休みだが、部屋で寝ると言った…ん?なんだその目?本当に部屋で寝るのが信じられないのか?
え?ナンパ?
バカ言え、神殿なんかに儲からせてたまるか!俺の口説き文句を布教だと勘違いして献金を残して逃げることはちっともされたくない。
は?ヘビードリンカーじゃなかった?酒屋に行けと?
正気か?
俺様が何者か忘れた?
太陽騎士だぞ!三杯で潰れる太陽騎士がどうやって酒屋で飲むか教えて?
休みだからといって太陽騎士じゃなくなったのではない。
一日太陽騎士として名乗ったら、棺桶に永眠しても油断せずほほ笑む、と先生はいつも言っていた。
休暇中だって、俺は太陽騎士である。あくまでも休暇中の太陽騎士になっただけだ。
休暇中だって、俺の笑顔は太陽みたいに明るくしなければならない。
休暇中だって、人に出くわしたら世間話でも光明神を言及しなければならない。
休暇中だって、きれいなお姉さんに遭遇しても目の隅で記録するしかない。
だから、部屋に引きこもって寝たほうがましだ。不機嫌を好きなだけ露骨に顔に出していいし、「デブ豚国王死ね」と気が済むまで叫んでいいし、頭の中に記録していた美人とあれこれ妄想できる…
そして、色々妄想しながら、ベッドの下の隠し扉を開けて、酒蔵に「元、元・元、元・元・元…」太陽騎士がひそかに造っていたお酒を取りに行ける。そのあと、太陽騎士だった皆さんのご恩に報いるために、後世の太陽騎士に幸せをもたらすために、俺はキッチンにリンゴを取ってこなければならない。
『弟子よ、お前の剣術はひどくてもいい。剣術はひどくても最悪早死にするだけだ』
と、常に先生が言っていた。
『お前の光明神術もひどくていい。ひどくても最悪けが人を治せないだけだ。早く光明神のもとへ訪れられるようにと、二行ぐらい祝福をしてあげれば済むことだ』
『だがしかし!酒造りはなんとしても習得しなければならん!そうじゃないと、光明神を見に行った身になったとしても、美味しい酒が飲めなくなることで後世の太陽騎士に生生世世呪われるぞ!』
先生はブドウ酒が得意だったので、俺は酒蔵一個分のブドウ酒が飲める。俺はリンゴ酒が得意なので、俺の生徒もきっと酒蔵一個分のリンゴ酒が飲める。
ただ、リンゴを取りすぎた結果は、キッチンのおばさんが俺の食後フルーツにリンゴしか出さなくなったことだ。
だから、リンゴに対する気持ちは大地騎士とは同じレベルにある。俺はリンゴが大嫌いなリンゴ好きの太陽騎士だ!
***
微笑まないために!
「光明神の仁慈」を言わないために!
リンゴにさよならのために!
俺は部屋にこもって寝る。ついでに肌のお手入れをする。
なに?男はなにスキンケアやってるんだ、だと?
教えてあげる…太陽騎士が金髪、碧眼、かつ色白美肌の美男子だという全大陸に共通する常識を!
色白美肌の美男子になるために、太陽騎士みんな最終的に美白パックのプロに成り果てるが、俺はその中でも並はずれのプロだという自信がある。
太陽騎士だが、日差しに当たるのが一番嫌いだ。俺はものすごく日焼けしやすいタイプだからだ。日差しに当たってしまった日は一晩中パックをしないと俺の白肌は救われない。
同時に、極度に日焼けしやすい俺は「猛烈な日光浴で一日中敵と戦っても、翌日は依然として透き通った肌で現れる」ことを実現するために、様々な美白パックを研究してきた。
ただいま一番有効なパックは、腐った牛乳にレモン汁十滴、花びらから搾った汁ローズ三十本分、ラベンダー十本分を垂らし、仕上げに小麦粉を少し混ぜたものだ。そしてパックを全身に満遍なく塗ったら、お湯を沸かして、その蒸気を利用した簡易蒸し風呂に一時間入る。
太陽騎士俺は練習してたからできるんだ。騎士じゃない人はぜひおやめください!
日光浴を一日中やってしまったとしても、翌日は腐った牛乳みたいに色白で、乳白色の中でほんのわずかの淡い黄色を帯びたような肌を保証する。
でも、一代目太陽騎士はアルビノだったんじゃないかと、どうしても疑ってしまう!
そうじゃないと説明がつかない。日光を浴びながら稽古、戦闘、国王の教訓を受けるなどしたのに、色白美男子という忌々しい印象を全大陸の人間に残すなんてどう考えてもおかしい!
一代目太陽騎士がアルビノだったかどうかはさておき、俺には服を全部脱いで体を蒸しとおすのを週一でやる以外選択肢はない。
だが、リンゴと日光浴よりさらに苛立たしいものがある。裸ん坊になってパックを塗って蒸し始めようとした段階まで進むと、いつもほぼ間違いなくだれかがドアをノックしてくる…
コンコンコン!
ほらよ。ちくしょう!呪いだ、絶対に!
もう慣れちゃったというか。
「親愛なる兄弟のどちら様が光明神の温かき囁きで、太陽に光明神の仁慈を交流しに来られたのかを伺っても?」
こんにゃろ、どうでもいいことだったら今このパック全部剥がして貴様の口にぶち込むぞ!
「緑葉だ。よかった、いたんだね。早く出ておいで、アンデッドが街中に現れたって」
緑葉騎士か。温厚篤実派の中で珍しく心底から好きなやつだ。
なぜなら、マジで温厚そのものだ。
「緑葉兄、しばしお待ちください。光明神の仁慈なるご啓示で、太陽は清潔な身なりでこの世に向き会わなければならぬと警戒しています」
急いでてもパックを洗い流す時間をくれ。
じゃないと俺が現場に行くとき、みんなアンデッドを攻撃するか俺を攻撃するかは言いがたい…今の姿はせいぜい溶けている途中のアンデッドにしか見えない!
「わかった、僕が先にあのアンデッドを止めておくからゆっくりでいいよ。とどめを刺すのは任せるから安心して!」
緑葉騎士が話し終わったら、スタスタと急いで離れていく足音が聞こえた。
ほら、優しいやつだろ?俺が女だったら、絶対世界一柔らかい声で、あなたは優しい人ですわ!と彼に言うわ。
死ぬべきなのに死なないアンデッドは太陽騎士にこの上なく憎悪されていると、全大陸誰もが知っている。この暗黒な生物は光明神の意向に完全に背け、光明を崇拝する太陽騎士とは背馳する。だから、太陽騎士はアンデッドを見かけたら気が狂うという。
気が狂うだろうな。太陽騎士が唯一許さなくていいものは、アンデッドしかないからな!
つまり、怒鳴りながら、あやつを小刻みにして、毎日微笑まなければならない、一言一句に光明神の仁慈に触れなければならない、正々堂々美女を見ることができない、毎週パックをしなければならない、すべてすべての恨みをあやつの身に八つ当たりできるんだ!
『弟子よ、くれぐれもアンデッドを見つけにいきなさい』
と、常に先生が言っていた。
『太陽騎士がすべてのアンデッドをせん滅すると誓ったからですか?』
『いな、ストレス発散だ』
『え?』
『考えてもみろ。毎日微笑むわ、クズどもを許すわ、一言一句この一生会うはずがない光明神を賛美するわ、八つ当たりの道がないと、うつになれば太陽騎士の責務を全うことができない。全うことができなければ、失業する。失業すれば、うつが悪化して最後光明神に会いに行く。こんな惨めな結末になりたくないだろう?』
『…なりたくありません』
『だからいいか?少なくとも月に一回アンデッドをボコってストレスを解消するんだぞ』
『見つからなかったらどうすればいいですか?』
『心配するな。ほら、教会特約のネクロマンサーの名刺だ。アンデッドの種類を指定できるし、経費で教会に払わせることができる』
『…』
鬱にならないように、失業にならないように、この年で光明神に会いに行かないように、俺はすいすいとパックを削り取った。うっぷん晴らしが俺を待っている。
まだ体を蒸してなくてよかった。
ヌルヌルのパックの取りやすさは絶対乾いたパックに比べて十倍以上しやすい。信じないのなら、今度のりを体全身に塗って、左側はヌルヌルのままで、右側は火干しにして、その区別を見くらべてみべよう。
だが前にも言ったとおり、太陽騎士俺は練習してたからできるんだ。騎士じゃない人が真似をしてなにか問題出たら俺は知らない。
そういえば、昔先生に基本の美白パックレシピを教えてもらったとき、先生が一番大事なところを言い落した。それを思い出して補足をしに戻ってきたら、俺はもうパックを乾かして取り除いている途中だった…
『そうだ、パックはアソコに塗るなよ。塗っちゃうと…』
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!』
それ以降、俺のアソコから毛が生えなくなった。
先生はそれでずっと俺に申し訳なく思っていた。それ以降、俺の教育にはすんごく用心深くなって、何一つも言い洩らさなくなった。
話がそれた。とりあえず、ヌルヌルのパックを水でザザザと流したらきれいに落とせた。俺が二時間かけてじっくりと調合してできたものも水の泡…この胸の痛み!ローズとラベンダーにかかるお金は神殿の経費から出ないんだぞ!
給料の一部分がそのまま水に流されていくのを涙目で見送った…クッソ!この恨みをすべてあの死に損ないアンデッドめに発散するんだ!憎い!
騎士服を着て、適当に鉄剣を手に持って、突っ込め!
部屋の扉を蹴り開けて飛び出してきたら、どの方向に突っ込めばいいか迷った。幸いにも、緑葉のやつは優しいやつだけじゃなくて、気が利く優しいやつだった。俺のためにアンデッドの足止めに駆け付けてくれた上に、道案内として見習い聖騎士を一人呼んでくれた。
緑葉!ストレス解消が終わったら、俺は必ず優しい騎士賞をお前に配るようにと神殿に薦めてあげる。
間違えて削除しちゃった
バックアップあってよかったー