晶葉に「生きたままバラバラ死体になれる装置」を作ってもらった小梅。喜び勇んで首だけになりはしゃぐが、立ち会わされた幸子はたまったものではない。しかしパニックを起こした幸子が装置にぶつかった弾みでバラバラになってしまう。

 初同人誌『グラインドハウス』に収録した作品。pixivに投稿したもの(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12316673)と同一内容です。
 こんなタイトルですがホラー要素もミステリ要素もないです。絵面にするとアレだけど。

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SSでもノベマスでも思うのですが幸子と杏と荒木先生とウサミンの動かしやすさは異常。


小さな恋の密室バラバラ殺人事件

「あ、晶葉ちゃんに『生きたまま死体になれる装置』を、作ってもらったよ……」

 

 見せたいものがあると言われて事務所に呼びつけられるや、嬉々とした表情で小梅さんはそんなことを言いました。

 その脇には、ボクや小梅さんの背丈よりも大きな機械……怪獣映画に出てきそうなレーザー砲、のような何かがそびえています。十中八九、これが小梅さんの言うその装置に違いないでしょう。

 

 ……生きたまま、死体になれる装置。

 

「あ、違った……『生きたままバラバラ死体になれる装置』、かな……?」

「言い直したところでもっと惨いことになってるじゃないですか!」

 

 小梅さんのホラー・スプラッター好きは今に始まったことじゃありませんけど、それにしても悪趣味が過ぎると言わざるを得ないでしょう!?

 

「そ、そういうわけだから……幸子ちゃんも一緒に……バラバラ死体に、なろ?」

「なるわけないじゃないですか何言ってんですか! というかそんな危ないことさせませんよ!?」

「で、でも、安全性は……晶葉ちゃんが、実験と改良を重ねたらしいから……きっと、大丈夫……」

 

 その実験と改良の段階で犠牲になった命がないことを祈るしかありません。

 

「そ、それじゃあ早速……私、やってみるね……」

 

 言うが早いか、装置の前に立って何やらボタンを操作し始める小梅さん。

 ボクはこれから繰り広げられるだろう光景を想像します。一面血の海、転がる小梅さんの手、足、頭etc……。

 

「す、ストップ! やっぱりダメです! 危ないとか以前にショッキングすぎますから!」

 

 とそれもやめさせようとしましたが、すでに小梅さんは機械を作動させてしまったらしく、巻き添えを食ってバラバラにされたくなかったボクはもはや近づくことすらままならないのでした。

 間もなく装置に設けられた傘のような部分、そこに伸びるアンテナの先端から光線が出、小梅さんの首をなぞるのが見えました。

 

 ぼとり。

 

 光線になぞられた部分から上、小梅さんの首が胴から離れ、床に転がります。転がって、転がって、顔はボクの方を向いて止まります。

 その表情は何を思うでもなく、きょとんとしたまま、あるいは自分の身に何が起こったのかもわからないまま分離してしまったかのように、虚ろで……。

 

 脳天からつま先まで、全身を恐怖という恐怖が駆け巡ります。たまらず感情を爆発させ、叫び声を上げそうになった瞬間。

 

「さ、幸子ちゃん……み、見て見て……! わ、私、な、生首にな、なってる……!」

 

 生気を失っていたかのように見えた小梅さんの瞳は爛々として輝き出し、その白い肌は興奮のあまり紅潮して、自身の置かれた現状への余りある歓喜を表現していました。

 

 生首で。

 

 ついでにその隣では、首のない体が小躍りしてはしゃいでもいて。

 

 やっぱりボクは叫び声を上げるのでした。

 

「ううううわあああああああああああああああ!」

「幸子ちゃん、大丈夫だよ……。わ、私、痛くもなんともないから……」

「そうであっても何なんですかこれはぁ! あ、頭がどうにかなりそうですので早く元に戻ってくださいぃ!」

 

 実際小梅さんはこれほども痛みを感じている素振りもなければ、首と胴との断面から流血しているといったこともありません。

 

 でもそれとこの状況を許容できるかは別問題でしょう!?

 

 というかどうやって首と胴とが分離したまま動いているのか。まあ知りたくも、考えたくもないですが。

 

「だ、大丈夫……この装置でちゃんと、元に戻れるみたいだから……だから、幸子ちゃんも、怖がらずに……ね?」

 

 床に転がっていた自身の首を、自身の首のない体に拾わせ、脇に抱えさせながら、ボクを誘う小梅さん。

 

 ボクにも生首になれと。

 

 誰が頷きますか!?

 

「い、嫌に決まってるでしょう!? いいから早く元に戻ってください! 正直直視できませんこれ!」

「で、でも……せっかく作ってもらったんだから……ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから……」

 

 言って、首のない体に抱かれた小梅さんの首がこちらへ歩み寄って、いやこの場合小梅さんの首を抱いた首なしの体が歩み寄ってくると表現した方がいいでしょうか。もう何が何やら。

 いっそのこと気絶してしまえれば楽だったのに、こういう時に限ってボクの意識ははっきりと自我を保っていたのです。現実逃避すらままならないこの理不尽。

 

「こ、来ないで――ッ!」

 

 となれば、ボクにできるのはこの場から逃げ去ることだけ。異様な状態の彼女から一歩でも遠くへ逃れようと、そう広くない室内だというのに全霊をかけて床を蹴ってしまいます。

 何かにぶつかった衝撃と痛み、そして光が全身を千切りにするようになぞっていることに気づいたのは、そのすぐ後のことです。

 

「あ、さ、幸子ちゃん……大丈夫……?」

 

 手にした自身の首を、倒れ込んだボクに差し出すような形で問いかけてくる小梅さん。その姿にまた慌てたボクは、何かにぶつかった痛みも忘れてすぐ距離を取ろうと身を起こします。起こそうとしました。

 

 ですが、動けません。

 ボクの視界は床に横たわったまま、目前に迫る小梅さんの生首から逃れることができないままでいます。

 

「さ、幸子ちゃん……!? あ、あぁ……!」

 

 不意に、小梅さんがボクを見て驚愕の表情を作ります。ですがそれは一瞬のことで、すぐにその面持ちはまるで何かに感嘆するような色へと変貌しました。

 

 何か、というか、目の前のボクを見据えて。

 恍惚とすら言ってもいい表情で。

 

 ふと、目の端になにかが映りました。よく見えないので首を動かそうとすると、ごろんとボクの視界が揺れ動きます。

 

 そこに広がっていたのは、一面の手足と、細切れになった胴体の肉片。

 

 そしてようやく気が付きます。ボクがぶつかったのは、先ほど小梅さんが使った例の装置だったこと。ぶつかった弾みで、光線を浴びたボクの体はバラバラにされてしまったらしいこと。

 

 この地を這っているような視界の理由は、ほかでもなくボク自身が生首になっていたからでした。

 

 転がるボクの指。どれが親指なのか、人差し指なのか。ぱっと見では区別がつきません。ふとすれば、ウインナーか何かがぶちまけられているかのようにも映ります。

 ……カワイイ、ボクの、指。

 

 散らばる胴体の肉片。ところどころ肌色に紛れて覗いている赤やピンクは、もしかしなくても今までボクの中に詰め込まれていた内臓でしょうか。

 ……カワイイ、ボクの、内臓。

 

 こみ上げてきた理不尽と不可解と不条理の極限にある感情を、ひとまずボクは絶叫へと換えることで、この凄惨な現実に対する抗議とするほかありませんでした。

 

 せーの。

 

「ふぎゃあああああああああああああああああああああああああああッ!」

 

 

   *

 

 

 自分のバラバラの体に囲まれて、生首の幸子ちゃんはすごい大声を上げたきり、動かなくなってしまった。

 

 白目を剥いて、あんぐりと口を開けて。

 

 後は血糊さえ持ってくれば、見事なまでのバラバラ死体の出来上がり。

 

 芸術とさえ評していい。

 

 私の見たかった景色がそこにある。

 

 ……まあ、本当は幸子ちゃんが怖がっているのはわかっていたので、無理やり付き合わせてしまったことに少し悪い気もしてはいるのだけど。後で目を覚ましたら謝っておこう。

 

 さておき。部屋中にぶちまけられた幸子ちゃんのバラバラの肉片というこの絶景。

 そこにもう一人ぶんの肉片を混ぜ込めたのなら、どれだけ素晴らしい世界が広がることだろう。

 どれが誰の手なのか、足なのか、もはや本人たちにもわからないくらいの、ぐちゃぐちゃ。

 

 想像だけでは飽き足らない。

 この目で、見たい。

 

「誰でもいいからバラバラにしたい……」

 

 血が出て汚れるわけではないし、生きているのだから、それほど問題はない、はず。

 

 とはいえ誰かを無理やり連れてきて装置にかける、なんてことができる行動力というか、勇気みたいのは私には少し足りなかったので、この場で幸子ちゃんと一緒にバラバラになるのはやはり私のほかにいなかった。

 もっとも、それはそれでなお素晴らしい。まさに自分が凄惨を体現できることの喜び。しかもそれと混ぜこぜになってくれるのは、幸子ちゃんの体。

 

 夢にまで見た光景を今こそ実現しようと、私は勇んで装置の前に立つ。ふと私もバラバラになったら幸子ちゃん共々どうやって元に戻ろうかと考えたけれど、それよりも早く散り散りの肉片になりたい気持ちの方が勝って、私はスイッチを押した。

 

 ……けれども、装置は光線を出す気配がない。

 

「あ、あれ……どうしたのかな……」

 

 何度かスイッチを押すもののやはり反応はない。よく見ると光線を発射するアンテナが曲がっていた。さっき幸子ちゃんがぶつかった衝撃で壊れてしまったらしい。

 装置が動かないとなると、このままではバラバラになるどころか幸子ちゃんを元に戻すこともできない。もったいない気もするけれど、さすがにずっとこのままというわけにはいかないだろうから、何とかしなければならない。

 

「あ、晶葉ちゃんに……直してもらわなきゃ……」

 

 装置は事務所に設けられた晶葉ちゃんの研究室で受け取ったもの。そこまでこれを運んでいくとしよう。

 私は一度首を床に置いて、それから装置を研究室から持ってくる時にも使った台車の上に乗せた。私の背より大きい機械だけれど、一応持ち上げられるくらいの重さなのは幸いだった。

 けれど困った。やはり機械が大きいため、台車を押すとなると前が見えないのだ。これでは通路でほかの誰かにぶつかりかねない。

 

「……そうだ」

 

 台車に乗る装置上に首を乗せた。これなら安全に視界を確保して進むことができる。生首も存外便利だと思った。

 

 さて晶葉ちゃんの研究室へ、と体を台車の後ろに立たせたところで、ふと部屋に散乱したままとなる幸子ちゃんの体が気にかかった。

 戻ってくるまでどれくらい時間がかかるかわからないので、その間幸子ちゃんを放置してしまうと、後で事情を知らずに部屋に来た人が驚いてしまう。

 できれば幸子ちゃんの体もまとめて持っていきたかったけれど、全部を抱えることもできなければ、手近に肉片を収められそうな入れ物も見当たらない。どうしようかと考えて、とりあえず幸子ちゃんの首だけ私の体の小脇に抱えさせて持っていくことにした。

 バラバラの体を見つけてしまった人も、それが幸子ちゃんのものとわからなければ、いくらか驚きは減るんじゃないかな。たぶん。

 

 

   *

 

 

 十分くらいかして、晶葉ちゃんの研究室に着いた。

 

「あ、晶葉ちゃん……いる……?」

 

 部屋に入ると、何だかよくわからない機械やら、コードやらで視界が埋め尽くされる。どこかに晶葉ちゃんが埋もれていやしないかと不安にすらなった。

 

「……む、小梅か。おお、早速私の開発した『メーサーバラバラ殺人光線』を……って、まさかその姿のままここまで来たのか!? た、タネはわかっていても心臓に悪い絵面なのだから少しは憚ってくれ」

 

 実際積み上げられた部品の中に埋もれていたかのように、頭にネジやら銅線やらを乗せた晶葉ちゃんがひょっこり顔を出した。

 

「ご、ごめんね……実は幸子ちゃんが装置に、ぶ、ぶつかっちゃって……壊れて元に、戻れなくなっちゃったから……」

「なるほど、それで装置もここまで持ってきたというわけか。しかしその姿のまま事務所を歩き回るのはいささか思慮に欠けるというものだ。事情を知らない人が遭遇したなら腰を抜かしかねんぞ」

「そ、それは……大丈夫、だと、思う」

 

 途中、みくちゃんと李衣菜ちゃんが大声で騒ぎながらどこかへ走っていくのが見えたり。

 かな子ちゃんと智絵里ちゃんが廊下でお昼寝し出したり。

 お酒に酔っていたのか楓さんが吐いたりしていたけど。

 

「……うん、きっと、大丈夫、たぶん」

「ならいいが。では装置の故障とやらを見てみようか」

 

 早速壊れた部分の点検に取り掛かってくれる晶葉ちゃん。すぐに直せる範囲だといいんだけど。

 

「う……うーん……カワイイ……ボクの……ボクが……ボクで……生レバー……」

 

 ふと腕の中、私の体に抱かれた幸子ちゃんの頭から弱々しい声が聞こえる。目が覚めたらしい。

 

「さ、幸子ちゃん……おはよう……?」

「ふわ、ぁ……お、おはようございます?」

 

 寝ぼけ眼をこちらへ向ける幸子ちゃん。私の首が装置の上に乗っているのを見て、目を丸くする。

 次いで自分の体の状態を確認し、それから少しの沈黙があったのは、自身の身に何が起こったのかを思い出していたからだろうか。

 

「う、うぎゃあああああああボクの体があああああああ!」

「だ、大丈夫だよ……今から晶葉ちゃんに装置、直してもらえたら……元に戻れるから……」

「え、ええ? 装置? 直す?」

「光線を発射するアンテナの破損さえ直せばまた使えるようになる。そうしたら今度は分子構造接合光線をバラバラの肉体に照射すれば元通りだ。理論的には」

「ねえ今理論的にはとか言いました!? 実験と改良を重ねたとかいうことじゃなかったんですか!?」

「心配するな、アンテナには予備がある。付け替えればすぐさ」

「いやほんとお願いしますよ……そりゃ首だけでもカワイイボクですが、でも首だけ、いやさすがに首だけだと……」

「さ、幸子ちゃんは、いつも、か、カワイイ、よ……」

「ふ、フーン! 当然です! 何せアイドル顔が命、それこそ顔だけとなったら命そのもの……じゃなくてカワイイ以前に体がないと困るんです元に戻してください!」

 

 何だかんだで、首だけになっても幸子ちゃんはいつも通りの幸子ちゃんだった。この明るさというか、騒がしさというか。

 それなら私としては、どちらの姿の幸子ちゃんのままでも不満はないというか、楽しくもあるのだけれど。

アイドルとしても首さえあれば歌は歌えるし、ビジュアル的にも、まあ……これはこれで、って気に入ってくれる人も、ひょっとしたら私のほかにいるんじゃないかな。

 

 そういうわけで私としては正直戻っても、戻らなくてもいいんじゃないかなって。

 

「ちょっと、ちょっと小梅さん、今すごくボクの幸せを無視したような自分勝手なこと考えてませんか? 顔に出てますよ」

「か、顔しかないのに、ね……」

「ジョークのつもりですかッ!?」

 

 

   *

 

 

 間もなく装置の修理は終わり、早いところ元に戻してもらうために、ボクは小梅さん・晶葉さんに伴われて先ほどの部屋に戻ることにしました。

 

「幸子の首を外に晒したまま持ち歩くわけにもいかん。部屋までこの箱に入れていこう」

「ふふ……首の塩漬けみたい……」

「縁起でもないこと言わないでください! あ待って、蓋閉めないで! 暗いの怖い!」

 

 先に装置で首と胴をつなげ直した小梅さんに、入った箱ごと抱えられます。暗いのと外の様子が窺えないのは嫌なので、蓋に少し隙間を作ってもらいました。

 そうして部屋の前まで戻ったボクたちですが、そのドアの前を誰かが塞ぐように佇んでいて、行く手を阻まれてしまいます。

 

 ちひろさんでした。

 血の気を失って真っ青な顔をしたちひろさんでした。

 

 ああ、見られてしまったのだなと悟ります。

 

「だ、ダメですッ! 二人とも、この中に入ってはいけませんッ!」

 

 入ろうとする小梅さんと晶葉さんを決死の形相で阻むちひろさん。頭だけのボクが箱に入っていることには気づいていないようです。

 いや、数えられてないのはなんだかむず痒いところもありますが、かといってこんな姿をこれ以上人前に晒すことこそ抵抗があるというものですから、ボクは黙っているほかないんですけれど。

 

「ちひろ、そこをどいてくれないか。そこの部屋に用がある」

「いけませんッ! これから警察を呼びます! 皆さんは外に出ていてください!」

「警察沙汰とは穏やかじゃないな」

 

 そりゃ部屋中に散らばる肉片なんて見たら普通こういう反応になるでしょう。というか晶葉さんもなに他人事のように言ってるんですか。

 ともすれば部屋にあった肉片を本当の死体だと思い込んでいるだろうちひろさん。その惨状をアイドルであるボクたちには見せまいとする配慮に全霊をかけているのでしょう。

 ええまあ、ボクとしてもこれ以上ほかの人にあの姿を見られたくないというのはあるのですが、なんというか。

 というかちひろさんにしたって散乱する肉片なんて光景を目にさせられたのですから、それに覚えただろう衝撃の果てしなさたるや。

 となれば、あまりそれを刺激しないよう言葉を選び、慎重に事情を話して誤解を解きたいところですけど。

 

「ち、ちひろさん……部屋にあった、バラバラ死体の、ことなんですけど……」

 

 言葉を選べと言ったのに! いや思ったのに!

 

「ばばばばばばらばばら、ばんばらばんばんばん」

 

 白目を向きかかるちひろさん。肌が白粉を塗ったように色を失っていきます。

 

「落ち着けちひろ、これには深い事情があってだな」

「ばばんばばんばん、ばんばばん」

「実はあの体、幸子ちゃんのもの、なんですけど……」

 

 だからストレートすぎますってば!

 と小梅さんに声を荒げたいのは山々なのですが、この状況で下手にしゃべったりすればいよいよ大パニックになるのは目に見えていたので、ボクは箱の中でむず痒い思いをするしかありません。

 

「嘘、嘘嘘嘘嘘です、あれが幸子ちゃんの死体のわけがありません、昨日まであんなに元気にしていた幸子ちゃんが、あんなミンチよりひでえことになるわけがありありまありませ」

 

 事情を知らないまま凄惨極まる光景を目の当たりにして、いささか気の毒にも思えます。でもトラウマになってしまっただろうそれがボクの体だと思うと、正直どこか複雑ではあるのですが。

 いやそもそもボク自身が自分の体のあんな姿一番見たくないんですけど!

 

 とにかくこのままでは埒が明かない、と思っていたところ、不意に箱から眺める景色が上昇します。小梅さんがボクの入ったそれを、ちひろさんの目の前まで持ち上げたようでした。

 

「だ、大丈夫……幸子ちゃんはちゃんと、生きてます、から……」

 

 言って蓋が開けられると、鼻と鼻が触れ合うくらい近くにちひろさんの顔がありました。

 ぱくぱく、とその口が閉じたり、開いたりしています。

 

「ど、どうも……ちひろさん……」

「ほへ――」

 

 魂を吐き出すような声を上げて、とうとうちひろさんはその場にへたり込み、動かなくなってしまうのでした。

 

 それから元に戻った後、プロデューサーさんにそれこそ死ぬほど怒られるボクと小梅さんと晶葉さんなのでした。

 ボク、悪くないのに……。

 

 

<了>


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