朱音さん誕生日SSです。
afterstoryになってますのでネタバレ注意。

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朱音さんSSです!
アフターなので少々変なことになってますがぜひ読んでいってください。


千里朱音誕生日SS~今度は隣で~

~瑚太朗side~

 

 人々が生きる街から遠く離れた、森の中。

 この場所にきて、もうずいぶんと経つ。

 ガイアにいたとき、一時困窮した生活を送っていたが、今度のはそれとはまた違い、最初の方は頓挫に頓挫を繰り返した。

 

 何せ、自給だ。自ら畑を起こして、作物を育てて、収穫して、明日へ生きる。

 頼るべきものが無くなって初めて、俺たちは生きる難しさを、喜びを知った。

 

 そんな生活も、二、三年とすれば慣れてくるもので、俺と朱音はもう、生活に困ることは無くなっていた。

 

 そして今も、ここでこうして生きている。

 いつか迎える終わりをひっそりと待つように。

 

 

---

 

 

「朱音、そっちの方は獲れたか?」

 

「ええ、問題なくってよ。籠に入れて家へ持って入るわ」

 

「頼む」

 

 今日も今日とて農作業。機械なんてものはなく、当然手作業だ。

 大変だとは思うが、身分に縛られて、何かに追われて生きていたあの頃を思うと、今が幸せに思えてくる。

 生き急いでいたんだろう。俺も、人類も。

 

「・・・でもなぁ」

 

 そんなことを思うとブルーになってしまう事が時々ある。

 

 二人になって自由を得て。

 変わりに、どこと知れない孤独が湧き出てくるのだ。

 

「瑚太朗、どうかしたのかしら?」

 

「あぁ、いや、何でもない」

 

 不自然に手が止まっているのを見て、朱音は心配そうにこちらをうかがってくる。何でもないと嘘をついて、慣れてしまった作り笑いを届けた。

 

 朱音もずいぶんと落ち着いた。こちらの世界に来た頃の拒絶反応を思うと、だいぶ安定期に入っているのだろう。

 

 本人の言うところによると、聖女としての転写がかなり進んでいるようだ。

 朱音が抱え込んでしまった毒が抜けている、ということを考えると少し嬉しくなって、それがしま子にわたっていると考えると、胸を痛めてしまう。

 

 俺は朱音に大丈夫であることを伝えるために、作業に戻る。この世界では、言葉よりも行動だ。

 鍬をもって耕して、次の種をまく。

 

 

 

『選んだこの道が、間違いではなかったのか』

 

 そんなことを、頭の隅に思いながら。

 

 

 

---

 

 

 

~朱音side~

 

 

 街からの追放を受けて、もう三年ほどたった。

 今、私は瑚太朗に手を引かれるように生きている。

 

 一度は生きる希望を、意味を失った私。

 その絶望の淵から救い出してくれたのは瑚太朗だった。

 

 どれだけ投げ出しそうになっても、生きることを諦めそうになっても、そばで手を引いて、前を向いて歩いてくれた。

 そらした瞳を前に向けることが出来るようになったのは、最近。

 

 そして前を向けるようになって、私は初めて気づく。

 瑚太朗の、心の底にある思いに。

 

 

 繋がれた手が、熱を失い始めている。

 

 傷つく瑚太朗は、もう見たくない。

 瑚太朗が私にしてくれた全てに報いるために、私が出来ることは・・・。

 

 ・・・一体、何だろうか。

 

 

 

 

---

 

 

 この世界に明かりなんてものはない。

 森が暗くなるころには、私たちは眠る。時計なんてものはないけど、多分九時にはなっていない。

 

 二人身を寄せあい、肌と肌がふれあう。そんな距離。

 異性としての意識は当然ある。けれどそれは、きっと今ではないから。

 

 だってまだ、私は瑚太朗を知らない。

 

 私の弱いところを瑚太朗は暴いてくれた。そして、それを認めさせてくれた。だから私は今ここにいる。その事実には変わりない。

 その間、瑚太朗はずっと、強い人間であってくれた。その背中を追いかけて、手を引っ張られて、私が歩いている。

 

 だから私は、弱い瑚太朗を知らない。瑚太朗の隣に、私はいない。

 

 

 ・・・全く、ずるい男だわ。

 

 瑚太朗は、涙の一つも見せてくれない。鼻をすする音の一つも聞かせてくれない。

 私は・・・そんな瑚太朗も、知りたいというのに。

 

 

 

---

 

 

~瑚太朗side~

 

 寝付けない。

 こっそりと布団から抜け出して、俺は家の外に出た。

 季節なんて概念はこの世界にはないが、夜が少々肌寒いのは変わりない。

 

「・・・」

 

 こうして、一人になると、全てが溢れてくる。

 ため込んだ感情が、ふたを外されたように勢いよく溢れ出てくる。

 

 そうすれば、感傷的になるのはすぐだった。

 

「・・・くそっ」

 

 朱音を立ち直らせるために生きていたころは、何とも思わなかった。でも今はこうして、昔を思ってしまう。

 

 オカ研のみんな。

 悪い奴なんて一人もいなかった。何気ないと思っていたあの日々が、生きてきた中で一番楽しかった。衝突もあったかもしれない。うまくいってなかったかもしれない。

 でも、今でも思い出してしまう。小鳥の事、ちはやの事、ルチアの事、静流の事。

 

 俺たちだけが生きてしまって、今もこうして生きている。

 

 俺たち・・・だけが。

 

 

「うっ・・・ひぐっ・・・」

 

 涙が止まらない。これまで同じように感傷に浸ることがあったが、涙が止まらないのは初めてだった。

 膝から崩れ落ちる。呼吸が乱れる。

 記憶が溢れてくる。過去の幸せが詰まった記憶が。

 

 

「うぅ・・・うぁああああ・・・!!」

 

 次第に涙は慟哭に変わる。

 そして、また一滴涙が土に還った時、それとは違う音がした。

 

 慌てて振りむく。

 そこには、朱音がいた。

 

「あっ・・・、朱音・・・」

 

 一番見られたくない姿を、一番見られたくない人間に見られてしまった。

 恐る恐る朱音の表情をぼやけた視界で見つめる。

 

 

 朱音は、微笑んでいた。今まで見たこともない、慈愛の瞳で。

 

 

 

---

 

 

~朱音side~

 

 瑚太朗が泣いている。

 その姿を見たとき、私は胸が締め付けられた。

 

 私がいなかったら、今瑚太朗はどこでどうしていただろうか。幸せになっていただろうか。

 でも、過去のことを考えても意味がないと教えてくれたのは瑚太朗だった。

 

 変わらない過去を踏み台に、今ある未来を生きる。それが罪であっても、間違いであっても。

 そう教えてくれたのは瑚太朗だから。

 

 だから、瑚太朗に教えてあげたかった。

 今度こそ、瑚太朗の力になりたかった。

 

「朱音・・・これは・・・その・・・」

 

 動揺する瑚太朗を前に、そっと腕を前に差し出した。

 

「・・・泣きたかったら、泣いてもいいのよ? ・・・私は、大丈夫だから」

 

 うまく笑えているだろうか。

 それは、瑚太朗が行動で答えてくれた。

 

 開かれた私の胸に、瑚太朗は何も言わず飛び込んでくる。

 顔をうずめて、声を押し殺して瑚太朗は泣き続けた。

 

 その頭を私はそっと撫でて、私は問う。

 

 

「・・・私がこうしていることは、おこがましい事かしら」

 

「・・・そんなこと、ない」

 

「そう・・・、よかったわ」

 

 

 くぐもった声が聞こえてくる。その言葉に私は安堵した。そしてそのまま、瑚太朗が泣き止むまでそのままでいた。

 子供をあやす、母親のように。

 

 

 

 瑚太朗が泣き止んだのは、それから10分後くらいの事だった。

 目じりを赤く腫らしながらも、凛として私の向かいに立っている。

 

 そして私はようやく、心からの言葉を言うことが出来た。

 

「瑚太朗。私がこんなお願いするのもおかしいかもしれないけれど・・・泣きたいときは泣いてほしい。私だけ弱虫だなんて、嫌だもの」

 

「分かったよ・・・。ずっとこうしてて、悪かった」

 

「いいのよ。そんな瑚太朗だったから、私は今まで生きてこれたの」

 

 一歩前に足を進めて、瑚太朗の手を両手で取る。

 

「たくさん助けてもらった。たくさん励ましてもらった。汚れたままの私でいいって、瑚太朗がそう教えてくれたから。・・・だから今度はちゃんと、瑚太朗の隣を歩きたい。もう、大丈夫だから」

 

「・・・そっか」

 

 瑚太朗は少し残念そうな、嬉しそうな顔をした。そんな不器用な感情表現が、また可愛い。

 

 と、その時、遠くから小さな鐘の音が一度だけ聞こえた。

 いつの間にか時報を告げるシステムが街でできているようで、その音が微かに波を伝って私たちのもとに届いてきた。

 

 すると瑚太朗は、何かを言いたげに私の方を見た。

 

「・・・何かしら?」

 

「なあ、今日は旧暦で2月の17日なんだ」

 

「それがどうしたの・・・って。・・・まさか」

 

「誕生日おめでとう、朱音」

 

 すっかり忘れていた、誕生日という概念。

 こちらの世界に来てからは、祝われたのは初めてだろうか。

 

「何もプレゼントするものがなくて、ごめんな」

 

「・・・いいのよ」

 

 おめでとう。

 それは、私が生まれてきたことを肯定する言葉だ。

 

 自然と胸が温かくなる。生きてきた喜びを再確認する。

 そしてまた、瑚太朗を好きになる。

 

 そんな私には、プレゼントなんてものはいらない。

 

「その代わり、約束よ」

 

「? 何をだ?」

 

 いたずらっぽく私は瑚太朗にウインクする。そして、軽く頬にキスをして微笑んだ。

 

 

 

「ずっと傍にいてね、瑚太朗」

 

 

 

 

 

 

 

 ここにある愛こそが、私の永久のプレゼントだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





暮れなずむ街並み 今二人で歩くけど
手なんかつないでみて恥ずかしくてうつむいた
一人ではだめなの ほら未来が待ってるよ
何も偽らない私になれた
もしもを願うなら明日がいいでしょ
放さずにこの瞬間を噛みしめたい
私が一人で泣いたなら
君は傍にいてくれた だから
一番大好きなあなたの
傍でずっと笑えますように

子供のころに見た世界はもう滅んでる
教えてくれた未来 小さいけれど光る
おかしいねと笑い 生きていこうと泣いたけど
引かれたままの手は 変わらないまま
上手く言えないのはね 夕暮れのせいで
押し殺した気持ちだけが 言葉になる
ねえどんな 心なら紡げる?
いつも涙 見せない瞳で
ねえどんな 言葉で書き換えて
私たちは生きていくのかな

ねえどんな世界なら許せる?
答えはずっと知らないままがいい
ねえどんな 未来を紡げるの?  でもね。
汚れたままの私でいいの。
---


『偽らない私』
 偽らない君へを改変させていただきました。朱音視点から瑚太朗への思いをつづった歌詞です。


いかがでしたでしょうか。
Rewriteの中でも私がトップクラスに好きなルートがこの朱音ルートです。
ということで、全力で書かせていただきました。

評価等頂ければ幸いです。
では、今回はこの辺で。

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