三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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三雲修にアンサートーカー(後天的)と、魔物の王を決める戦いの経験を持たせました。
ガッシュは原作後なので、既読推奨です。


三人目のアンサートーカー

「……何、今の?」

 

目の前の光景に、木虎藍は目を丸くする。

ボーダーという組織の本部。

近界民という存在が街を脅かす中、唯一の防衛手段を持つ彼らが切磋琢磨する訓練室にて、無謀とも呼べる戦いが繰り広げられていた。

いや。戦いとも呼べるかわからない。

それは先刻まで、虐殺と言っても過言ではなかった。

 

が。今は違う。

 

ボーダーの中で、トップスリーに君臨する実力者が1人、風間蒼也。

そして、ボーダーの中で散々「弱い」と告げられてきた、三雲修。

その勝敗はもはや見るまでもない。

二十四戦もやって、三雲修が風間蒼也に傷をつけることは、叶わなかった。

 

だというのに。この光景は何だろうか。

 

『と…、トリオン供給器官…、破損…。

風間、ダウン…』

 

ラッキーヒットだろうか。

いや。そんな奇跡を許すほど、風間蒼也という男に油断は無い。

だというのに、この光景は一体なんだ。

 

木虎の目に映るのは、風間蒼也の胸を貫く、レイガストと呼ばれる重剣。

スラスターという加速機能も無しに、三雲修は、風間蒼也を倒してみせた。

 

その瞳は、全てを見透かすかのように、透明化した風間蒼也を捉えていた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「あんさーとーかー?何だそれ?」

 

時は遡り。近界民と呼ばれる存在の空閑遊真が、ボーダーに入る少し前。

修の家に泊まりに来た空閑が、彼の打ち明けた秘密について、鸚鵡返しに問うた。

少しばかり気まずそうに、修は「誰にも言うな」と付け足し、彼に耳打ちする。

 

「単純に言えば、『どんな状況においても最適な答えが出せる能力』だ。

トリオン云々は関係ない。本人の素養次第で習得できる」

『そんな能力があるなど、私に内蔵されているデータの記録にはない』

 

空閑のお目付役として、彼の父が与えた自立型のトリオン兵…レプリカが、修に告げる。

修はと言うと、冷や汗をかきながら、「データにも保存しないでくれ」とレプリカに頭を下げ、懇願した。

レプリカがそれを快諾すると、修は話を続ける。

 

「こっちでは、ネットの噂話程度の認知だけど、持ってる人は実在してるんだ。

僕の他には、空閑もこの間あった高嶺先輩。

もう1人は…所在はわからないけど、多分放浪してるデュフォーさん」

 

言うと、修は写真立を手に取り、白髪の男とツーショットで映っている写真を、空閑に見せる。

写真越しではあるが、全てを見透かすような瞳に、空閑は何とも言えない感覚に陥った。

 

「デュフォーさんが先天的で、僕と高嶺先輩が後天的に目覚めてる。

この能力は、自分の知識量と経験がモノを言うから、強さの順で言うとデュフォーさん、高嶺先輩、僕になる」

「ほうほう。つまり、バカだと使えないと」

 

答えを出す者…アンサートーカー。

この能力を持ち、尚且つそれを活かせるということは、尋常ではない知識量と経験が必要となってくる。

先程名前が出た「高嶺清麿」は、それに加えて爆発的な成長力があった。

もう1人のデュフォーは、生まれつきの能力のため、段違いの経験が強さを盤石なものにしている。

 

では、三雲修はどうなのか。

三雲修の強さは、「目的達成への貪欲さ」と「現実を受け入れる早さ」にある。

例え真正面から叩き潰されようとも、次に繋ぐことを諦めない姿勢。

常に自分が弱いと言うことを自覚しているがために、策を破られたからといって狼狽することもない。

それにより、彼は五年前にあった戦いで、かつての相棒と、何度も何度も苦難を乗り越えてきた。

 

最終的に、強大すぎる敵の前に敗れ去ろうとも、彼はその希望を、清麿に託した。

 

相棒との日々を懐かしむのも束の間、修は気を取り直し、こほん、と咳払いをした。

 

「だから、そんな弱いトリガーとトリオン量で、モールモッドとイルガーを倒せたのか」

「似たようなのと前に戦ったことがあった。

トリオン兵では、無かったけど」

 

あの時は大変だった、とため息を吐き、修は一つの写真に目を移す。

そこに映るのは、幼き頃の自分と同じくらいの背の少年。

「弱い」とバカにされながらも、その弱さすら武器にして戦った頃のことを思い返し、笑みを浮かべる。

 

「…戦いについては、今度教えるよ。

…それよりも、明日はテストだからな。

空閑、まずは昼までに読み書きをマスターするぞ」

「うぐっ…。おてやわらかに頼む…」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「はァア!?!?なにそれ最強じゃないの!!!!」

「でも、知識をしっかり蓄えないと、全く意味ない能力ですから…」

 

少し時は進み、玉狛支部にて。

修が「本部には内密に」と言う条件で告白した事実に、小南桐絵が絶叫する。

経緯としては、修が京介との勝負に思わず能力を使ってしまったことにある。

引用する知識や、基本的な学力が無ければ意味がないことを懇切丁寧に説明しようとも、小南は興奮のままに修に噛み付いた。

 

「うぎぃいいいーーーーーっっ!!

お嬢様校だから無駄にテスト難しくてちょぉおおお〜…必っっっっ…死に!!!身を粉にして勉強してるアタシの身にもなりなさいよぉおおおっっ!!!」

「いや、僕も望んで手に入れたわけじゃないと言うか…」

 

この能力が目覚めたのは、本当に偶然としか言いようがない。

存在ごと消されそうになった時、あまりの極限状態に脳が進化を促した…とデュフォーは結論を出してくれたのを思い出し、修は深いため息をつく。

確かに、黒光りする虫の駆除法等を探すのにはもってこいだが、話せばこのように曲解する人間も出てくる。

こう言う人間には、そこまで良いものでもない、と言っても、あまり効果がないことも分かっていた。

 

「…なるほど、な。

先ほどまで手も足も出なかった京介相手に勝てたのも、ガイストを解禁した京介にも勝てたのも、その能力の恩恵か」

「それもありますけど、単純に似たようなのと戦ったことがあっただけで…」

 

今思い出しても、あの戦いは苛烈だった。

ファウードと呼ばれる巨人の中での戦い。

ただでさえ未知の敵であるのに、それがさらに強化されて襲いかかってくるあの状況。

いくら心強い仲間が居たとはいえ、もう二度とあんな目に遭いたくない、と心の底から思えた。

 

と、ここで修は一つ、ミスをやらかした。

いくらあらゆる問いの答えがわかると言えど、三雲修は普通の中学生。

迂闊すぎる発言に気を配る、ということは、残念ながら出来なかった。

 

「ガイストは玉狛の…果ては京介専用のトリガーだが、似たやつがいたか…?」

 

その言葉に、玉狛第一の人間が一斉に修へと視線を向ける。

修はと言うと、なんとかこの状況を切り抜けることができないか、と問いを出し、出た答えを口に出す。

 

「…実は、小学校の頃、荒れてまして…。

倍以上ある背丈の相手と、何度も喧嘩していて、それで慣れていたと言うか…」

 

冒頭は嘘であるが、ほとんどは真実である。

ちらり、と空閑の方を見ると、暴いてはいけない嘘ということを理解してくれたのか、皆に見えないようにサムズアップを向ける。

その証拠にと、戦いの傷跡である痣を見せると、皆が「もういい」と止めた。

 

「荒れてたのは、何故だ?」

「その、嫉妬でいじめられてまして…」

 

これも真実だ。

流石に高嶺清麿ほどではなかったが、三雲修は頭の出来がよかった。

そのため、嫉妬に駆られた数人が、程度の低いいじめを修に行ったのだ。

無論、修はそれを気にすることなく…というよりは、「嫌われてるな」程度の認識で済ませていたため、あまり問題にならなかった。

いじめと知ったのは、担任の教師がその現場を目撃し、修たちを呼び出した時だった。

 

「ふーん…。想像できないわね」

「お、修くんが、よく怪我してたのは…、知ってます」

 

と、ここで修の恩師の妹である雨取千佳が、おずおずと声をあげる。

修が経験した戦いにおいて、無事に済む…ということは、はっきり言うと無かった。

何せ、修とその相棒は、最弱候補という蔑称で呼ばれるほどに弱かった。

そのため、修は自身でさえも戦力とし、あの手この手で戦闘に臨んでいたのだ。

…もっとも、トリガーを使っての戦闘には不慣れであり、素養もとてつもなく低いため、基本的には雑魚の部類であるが。

 

千佳はそのことについて、あまりよくは知らなかったが、修が頻繁に傷だらけになっていたことは覚えていた。

 

「…修。どんな過去があった、とかは、この際気にしない。

ただ、お前の底を見る。

俺『たち』相手にどれだけやれるか、見せてみろ」

「………………………へ?」

 

その後、修は玉狛第一の三人を1人で相手することになった。

彼は空閑に「二度とやりたくない」と、珍しく愚痴をこぼしたと言う。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

ここで時は戻り。

修は疲労を吐き出すように、ふう、と息を吐く。

修はアンサートーカーを抜きにすれば、風間に対し、手も足も出なかった。

アンサートーカーを使う気はなかった。

 

「能力云々を抜きにして、『胸を張れる素敵な大人』になる」。

それが、修がかつての相棒と、果ては両親と約束したことだからだ。

 

しかし、先程の勝負だけは別だった。

自らを買ってくれている先輩…迅悠一が、修達のためにと師の残した形見を手放した。

迅が形見を手放すだけの価値があるか、風間蒼也に示さなければならなかった。

 

アンサートーカーを発揮した彼は、風間蒼也が得意とする闇討ち…「カメレオン」というトリガーで透明化してからの攻撃を見破り、胸をレイガストで貫いた。

その鋒は寸分違わず、風間蒼也のトリオン供給器官のど真ん中を捉えていた。

 

「……何故、俺の場所が分かった?」

「動きがパターン化してるように思えたので、そこにレイガストを突き出しました」

 

半分嘘で、半分真実である。

場所に関しては、アンサートーカーで「風間はどこにいる?」という問いを出し、出た座標に攻撃しただけだ。

また、風間の動きがパターン化していた、というのも正しい。

二十戦近く、あまり強くもない人間と戦っていたのだ。

いくら油断しない性格とは言え、心のどこかで余裕を持ってしまってもおかしくはない。

 

この説明に納得してくれたのだろうか。

風間は表情を一切変えず、淡々と告げる。

 

「…もう一戦だ」

「え?」

「お前の底を見せてみろ、三雲修。

先程のは偶然でも無ければ、本気でもないのだろう?」

「…はい」

 

嘘は通じなかった。

修は殆ど諦めたように息を吐き、全神経を研ぎ澄ませる。

翡翠の瞳が、全てを見透かすような瞳へと変化する。

風間の姿が消える直前、修は小さく「スラスター、起動」と呟き、レイガストを投げる。

風間がそれをスコーピオンと呼ばれる短剣で逸らすも、レイガストをブラインドとした通常弾…「アステロイド」が襲った。

 

「っ!!」

 

風間の持つスコーピオンの片方が折れ、彼はそれを解除、新しく生成する。

これで武器はなくなった。

風間はまだまだ甘い、と思いつつ、こちらへ駆けているだろう、修の足音に向けて、スコーピオンを振りかぶる。

 

「その結果は、答えが出てる」

 

が。風間の予想に反して、スコーピオンの鋒が空を斬る。

修の姿勢は、非常に低かった。

慌てて足からスコーピオンの切先を出そうとすると、喪失感が襲う。

修が自らの手のひらを貫き、隠していたアステロイドを放ったのだ。

そのアステロイドは、風間が体勢を変えたことにより、彼の足を貫く。

膝をつくまいと、彼は踏ん張るが、アンサートーカーには及ばなかった。

 

「うしろ、注意です」

 

ここで、修の体勢が低い理由を理解することになる。

 

なんと、投げたレイガストが、ブーメランのように戻り、風間の体を引き裂いたのだ。

 

種明かしをすると、修はレイガストの形状をブーメランのように変更していた。

ちょうど、風間が貫かれるその場所に戻ってくるように。

通常ならば、そんな芸当など出来るはずがない。

しかし、風間の目の前に居るのは、あらゆる問いに答えを示す『アンサートーカー』。

その前に、風間は力が及ばなかった。

戻ってきたレイガストの形状を戻し、修は一礼する。

 

『……………っ!おい、堤!』

『……………あっ、ああっ…。

トリオン漏出過多、風間ダウン……』

 

風間自身も、何が起きたか、さっぱり理解ができなかった。

理解できたのは、自身が負けたことのみ。

風間は狼狽が隠せない声で「終わりだ…」と告げ、訓練室を出るように促す。

修がそれに続くと、自身と同い年である木虎が詰め寄ってきた。

 

「三雲くん!!アレは狙ってやったの!?それとも偶然!?」

「いや、偶然で…」

 

と、修が言おうとした時、空閑がその肩に手を置いた。

 

「オサム。その嘘はイヤミ…であってるよな?とりまる先輩」

「ああ」

「うむ。イヤミになるぞ」

「………ああいう形状にしたら、投げたレイガストが戻ってくるのは、知ってました」

 

知っていた、というより、「今知った」と言った方が正しい。

元は鉄パイプを使っていた…母曰く「棒のような何かを使えば人は最強よ」…のだが、トリガーというのはいちいち折る必要がなくて助かる、などと思いながら、迫る木虎を宥める。

が。興奮冷めない人間は、他にもいた。

 

「………三雲。何故実力を隠していた?

お前ならば、A級でも可笑しくはない。

太刀川や出水、米屋たちもこの際呼ぶ。場所を移すぞ。ランク戦だ」

「ぇげっ…!?」

「アレなら、モールモッドを倒したことも、あのイルガーとかいうトリオン兵を落とせたのも納得…いやっ、ここでコイツを認めてどうするの…!!

とにかく三雲くん!後でランク戦ブースに来て、私と戦いなさい!!」

「いや、あの、その…」

 

この後、修は複数人に迫られ、アンサートーカーありきでの戦闘を繰り広げた。

空閑はその光景を見て、こう呟いたと言う。

 

「頭がいい男はモテるって、本当なんだな」

「あのモテ方は嬉しくないだろ」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「うぬぬぬぅ…。清麿ぉおお〜…。

勉強とはこうも辛いものだったと何故教えてくれんかったのだぁあ〜…!」

「うぅううぅ…。オサム〜…。

オサムは変態だ〜…。勉強が楽しいなんて、変態に違いない〜…」

 

その頃、人間の世界ではないどこかにて。

少年少女が机を囲む中、2人の少年が頭を抱えて悶々と唸る。

目の前には、広げられたノートと参考書。

2人はそれを目の前にして、頭を働かせるのをやめていた。

 

「どうしたんだい、ガッシュにユー?」

「宿題が終わらないだけよ。

ユーは貧富の差をなくすために大臣を目指すって言ってたじゃない!!

そっちはまだ良いけど、ガッシュは王様でしょ!ちゃんとしなさい!!」

「へへーん!ぼくはもうあとちょっとだもんねー!」

 

少年2人に、少女が声を上げて叱り、アヒルのような口をした少年が胸を張る。

2人はそれに反応し、嫌気半分、やる気半分といった調子で鉛筆を握った。

 

「メルメルメ〜!」

「ウマゴンはもう終わっておるのか…」

「ウマゴン、その、答え教え…」

「メル!!」

「…だめ、だよな。うん。頼んどいてなんだけど、予想してた…」

 

馬によく似た少年…?に、拒否され、白い髪の少年が机に突っ伏する。

そして、ふと、声を出した。

 

「………オサム、今何してんだろーな」

 

その顔は、奇しくも空閑遊真と似通っていた。

 




衝動に駆られて書きました。続けば清麿とかも出る。

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