三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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ガッシュキャラが本格的に出るの、清麿以外で初めてかも。

早く書けたので投下します。


参上!マジョスティック・トゥエルブ!!

「………その、何でしょうか、この光景」

 

ボーダー本部のロビーにて。

人の往来がある中で、修は原初的な磔に処された一人の人間を見上げる。

その下には、女性陣が屯しており、それぞれ手に持ったものを投げつけていた。

時折聞こえる罵声に耳を塞ぎつつ、修は遠巻きに見ていた光に声をかける。

 

「あの、光先輩。アレ、なんですかね?」

「迅の処刑」

「え?」

「迅の処刑」

 

聞き間違いじゃなかった。

トリオン体ではあるものの、手と足にスコーピオンが突き刺さり、十字架に磔にされているその姿。

何処かで見たような光景である。

修は冷や汗をかきながら、ことの経緯を光に聞いた。

 

「その、何でこんなことに?」

「朝からケツを触りまくってたから、とっ捕まえて処刑することにした」

「……………自業自得すぎて何も言えない」

 

聞けば、忍田本部長までもが、迅捕獲に乗り出したという。

普段は暗躍が趣味と言って、裏で動いてることが多いから完全に頭から抜けていたが、迅は超が付くほどのセクハラ魔である。

ありとあらゆる安全なお尻に手を出し、これまでのらりくらりと追跡を躱してきた。

 

しかし、今日でその不満が爆発する出来事が起きた。

 

「三上に『お尻の方が肉あるね!』って言ったんだと」

「どうしてそんな見え透いた地雷を踏んだんだ、あの人……」

 

そう。風間隊のオペレーター、三上歌歩が怒髪天を突く一言を放ったのだ。

修羅となった三上は止まらず、あらゆる人脈を使い、迅を確保。

風間たちを若干脅すような形で、磔にしてもらったという。

 

「嗚呼憎い…!!憎い憎い憎い憎いィ!!

このエロバカが憎いィイイイッッッ!!!!

ジュララララララララララララララララララララァアァアアアアアアッッッッ!!!!

殺す!!絶対に殺ォオすッッッッ!!!!」

「……あの奇声あげてる鬼が?」

「三上だな。かつてないほどキレてる」

 

いつぞやのティオみたいだ。

あまり思い出したくない記憶と、目の前の修羅を見比べる。

今の彼女がチャージル・サイフォドンを使えば、あの時の惨劇を再現できるだろう。

何にせよ、迅の自業自得には変わりないので、修は黙祷を捧げる。

 

「菊地原先輩が珍しく泣いてますけど」

「三上がアレだけキレた一因だからな。

『良かったじゃん。尻は女だよ』って揶揄ったらしい。2秒でギッタギタにされた」

「心の底から湧き上がるこの殺意…!!!

貴様どうしてくれよォオかァアアアアアアァァァァァァァアアッッッ!!!!」

「……怖っ」

 

ボブカットの髪の毛って逆立つんだ。

そんなことを思いながら、怒り狂う三上に目を向ける修。

その側では、カタカタと震える風間隊の面々がおり、誰が反応するでもない助けを求める瞳を送っていた。

 

「うぉァアアアアアアァアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァアッッッ!!!」

「……人って、あんな怒れるんだな」

「ええ…。怒れますよ…」

 

最早、同じ人とは思えない形相で咆哮をあげる三上に、修と光が震え上がる。

迅に怒りを抱く人間は確かにいるが、ここまで怒り狂う人間は初めてなのではないだろうか。

因果応報。天誅。セクハラの報いは、迅にかつてない恐怖を与えていた。

 

「迅さん、未来視あるなら避けられたと思いますけど」

「『三上なら大丈夫か』って思って触ったんだと。ただ触っただけなら戯れ合いで終わったんだろうが、次の一言が最悪だったな」

「………肝心なところでアホなのは何なんだ」

 

恐るべし、尻の魔力。

磔にされた迅はと言うと、めざとく修を見つけ、声を張り上げる。

 

「メガネくゥん!!助けてェッッッ!!!」

「無理です」

「見捨てるの早ァっ!!??」

 

間髪入れずに修が言うと、迅の前に修羅の三上が歩み寄る。

一挙一動で騒めきが起こる最中、三上は迅の首を絞めた。

 

「ぐぇぇぇえええっっ!!!???」

「ねェ、言ってみてくださいよ、ねェ?

私のどこに肉がついてないんですか?」

「お、お胸…ぎぇぇぇええぇぇぇぇぇええええぇぇえっっっ!!!!????」

 

三上が首を絞めたことにより、迅の首の構造がとんでもないことになる。

その光景を見て、修は他人事のように言った。

 

「………トリオン体でも、窒息死ってあるんですかね?」

「あるんじゃね?」

 

♦︎♦︎♦︎♦

 

「ってことで。メガネくん、いい豊胸術知らないかい?」

「僕に聞くんですか……?」

 

三日後。

生身でもボコボコにされた迅が、未だに腫れた顔で笑みを浮かべながら、修に問うた。

というのも、三上の気は済んだものの、それ以来、迅のことをゴミムシでも見るかの如き冷たい目で見るようになったのだ。

話しかけるたびに、最後に小さく「ゴミが」と罵るようになり、メンタル的にもやられているらしい。

 

「いや、迅さんが悪いですよ。

アレだけで済んでよかったですね。

もっとひどい目に遭っていた可能性だってありましたし」

「え?アレより酷い目にあったやつって存在するの?」

 

モモンにチャージル・サイフォドンが直撃した時のことを思い出す。

幼いながらも魔王のような威圧感を纏い、烈火の如く怒っていたティオ。

チャージル・サイフォドンは、その怒りを威力に変換したがために、空が真っ白になる威力の術と化した。

三上がそのような力を持っていなかっただけ、まだマシだと言える。

 

「兎に角、三上先輩の機嫌を取っても、好感度はあまり変わらないかと」

「…太刀川さんと、どっちが好感度上?」

「同じくらいだと思います。最底辺」

「そんなに!?」

 

迅の素っ頓狂な声に、修は当然だとばかりに首を縦に振る。

自身の母も、はたまたティオもそうだが、女性の怒りは怖いのだ。

 

「…兎に角、頼むよ、メガネくん。

ゴミからは脱却したいんだ…」

「………詳しそうな知り合い呼びますね」

 

修は言うと、携帯を取り出し、ある番号を打ち込んだ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「はぁ……」

 

三上のため息が、本部の廊下に響く。

ここ数日はこんな調子だ。

同じ風間隊の皆は、隊長以外は三上を恐れて、何かと理由をつけて外に出ている。

迅の一言で怒りで我を失った際、相当やらかしたらしい。

怒りのあまり、ほとんど記憶がないが、「バケモノみたいな叫び方してた」と国近から聞いた。

 

「でも、アレは無いわよ…」

 

三上は前が軽い自身の体を軽く呪いながら、とぼとぼと本部を出る。

と。そこへシルクハットとマントのシルエットが立ちはだかった。

 

「やぁ。ボーダーのA級3位、風間隊のオペレーター…三上歌歩くんだね?」

 

肩に子供を乗せたそのシルエットは、しわがれた声で三上に問うた。

三上は軽く頷くと、シルエットが姿を表した。

 

「少し、悩んでるようだね。

私はナゾナゾ博士。何でも知っているのさ」

 

ナゾナゾ博士と名乗ったその老父は、マントを翻し、笑みを浮かべる。

その肩に乗る子供も、ヤケに悪そうな笑みを浮かべていた。

三上はそれに警戒し、カバンの中で携帯を操作する。

 

「おっと、誰かを呼ばないでおくれ。

私はただ、友人に頼まれて君を励ましにきただけなんだ」

「………っ!?」

 

携帯を操作していることに気づかれた。

三上は慌てて踵を返そうとするが、ナゾナゾ博士はソレを止める。

 

「大丈夫。君も楽しめる勝負だと思うよ。

さあ、出でよ!!我がしもべ、『マジョスティック・トゥエルブ』!!」

 

かっ、と照明がつき、十二のシルエットが浮かぶ。

ナゾナゾ博士は息を吸い、プロレスのアナウンサーのように声を張り上げる。

 

「目から光線!!

ツー・ライティング・アイ!!」

 

そのセリフとともに、目から赤い光線を放つ男が姿を表す。

サイドエフェクトかとも思ったが、このような人体を超えた超然たる能力が発揮するなど、聞いたこともない。

三上が戦慄していると、続いてシルエットが姿を表す。

 

「走力は時速300キロ!!

ロケット・フット!!」

 

続くシルエットは、凄まじい速度の走りを披露し、三上を翻弄する。

韋駄天でも、あそこまで速くは無い。

彼女の驚愕を置き去りにし、次々とシルエットが姿を現す。

 

「飛行能力を持つ戦士!!

フライング・ビート!!」

 

飛行能力を保有する男。

グラスホッパーよりも厄介だ。

 

「透視能力で全てを見通す!!

セカンドサイト!!」

 

もしかして、自身の裸を見られたりしてるのだろうか。

怖気を感じながらも、三上は警戒をやめない。

 

「腕の力は恐竜並み!!

ダイナソー・アーム!!」

 

そんな力で暴れられたら、こんな街などひとたまりもない。

最も警戒すべき対象だろうか。

いや、まだ全員の能力を知らない、と三上は早計な判断を撤回する。

 

「予知能力を持つ男!!

ワンダフル・トゥ・ザ・フューチャー!!」

 

奴だ。奴が最も警戒すべき相手。

先日、風間隊を圧倒した迅と同じ、「予知」を持っている。

そんな三上の注目を掻っ攫うように、続く男が雄叫びをあげる。

 

「念動力を備えた野生児!!

サイコ・ジャングル!!」

 

今にも飛びかかってきそうな息遣いだ。

満遍なく警戒の糸を張った三上だが、その糸を燃やすかの如く、炎が揺らめく。

 

「炎を自在に操る!!

ファイアー・エルボー!!」

 

この炎を街に放たれれば、より厄介なことになってしまう。

三上の警戒心が最大級にまでなった時、ソレは姿を表した。

 

「ビッグ!」

 

一体、どんな能力を持つのだろうか。

ふざけた見た目だが、強力な存在には違いないだろう。

 

「ビッグ!!」

 

巨大化能力だろうか。であれば、尚のこと厄介だ。

 

「ビッグ!!!」

 

そんな三上の警戒心は…。

 

「ビッグ・ボイン!!!!」

 

木っ端微塵に砕け散った。

イェーイ、とポージングをする、スク水のような格好をした、グラマラスな女性。

「特殊能力は?」と思った矢先、ナゾナゾ博士が更に叫ぶ。

 

「ビッグ・ボイン!!!!!」

 

それに合わせて、ビッグ・ボインが悩殺ポーズを取る。

何故だろうか。腹が立たない。

三上が何とも言えない顔をしてると、更にナゾナゾ博士が叫ぶ。

 

「ビッグ・ボイン!!!!!!」

 

決まった、と言わんばかりにウィンクをするビッグ・ボイン。

三上が言葉を失っていると、続くシルエットが前に出る。

 

「冷凍能力を持つ若者!!

ブリザード・シング!!」

 

氷が宙に浮かんでいるが、ビッグ・ボインがその注目を掻っ攫うようにポーズを取る。

情報が頭に入ってこない。

 

「土の中をドリルで高速で移動!!

トレマー・モグラー!!」

 

巨大なドリルを持つ男性が、ドリル捌きを披露し、舞を踊る。

しかし、その注目はビッグ・ボインがポーズを取ることで掻っ攫われた。

 

「全ての能力者をまとめる司令塔!!

テレパシス・レーダー!!」

 

スーツ姿の男が最後に姿を出したのを皮切りに、ナゾナゾ博士が笑みを浮かべる。

その顔は、殴りたくなるほどに清々しいものだった。

 

「さて!この中で仲間外れは、だぁ〜れ?」

 

……なんだコレ。

三上は無表情ながらも、震える手を上げる。

指をさす形にすると、彼女はそれをとある人物の前に移動させ、答えた。

 

「…………………………ビッグ・ボイン」

 

沈黙。

そして、ナゾナゾ博士が笑みを浮かべたまま、言い放った。

 

「正解!!」

 

ナゾナゾ博士が言うと、皆が歓声を上げながら飛び上がる。

何故だろうか。全く嬉しくない。

三上が表情を無くしていると、ナゾナゾ博士がビッグ・ボイン以外を帰らせた。

「ありがとう〜!」と笑顔で去る皆に言っているあたり、良き関係なのだろう。

残されたのは、名前もわからない子供、ナゾナゾ博士、ビッグ・ボイン、三上。

どういうメンツだ、と思っていると、ビッグ・ボインが三上の手を取った。

 

「イェーイ」

「……………な、え?い、イェーイ…?」

「ビッグ・ボインは、『君ならボインにならなくても綺麗よ』と言っているのさ」

「絶対嘘ですよね!?」

 

イェーイの単語にそんな意味があるなど、三上は知らない。

太刀川あたりは信じそうだが、三上は声を上げてツッコミを入れた。

 

「あの人たち、あのクイズのためだけに連れてきたんですか!?」

「ああ。私の友人が、『先輩が君を落ち込ませてしまった。先輩じゃ無理だから、なんとかして慰めてくれ』と頼んできてね。

どうだい?楽しいクイズだったろう?」

「インパクトだらけで楽しいかどうか判断つきませんよ!!!」

 

なんて贅沢で無駄な来日だ。

三上はこれまたなんとも言えない顔で、ツッコミを入れる。

クイズもバカにしてるのかってくらいヤケに簡単だったし、ビッグ・ボイン以外のインパクトが薄すぎる。

息を切らす三上に、ビッグ・ボインは彼女の両肩に手を置いた。

 

「イェーイ、イェイイェイ、イェーイ」

「………あの、普通に喋れないですか?」

「彼女はイェーイと話すことが常なのさ。

私が翻訳を……」

「オレがやっていーか?」

「おお、ヴィノー。

我が孫よ、いい機会だ。やってみなさい」

 

ヴィノーと呼ばれた幼児が、ナゾナゾ博士の肩から、ビッグ・ボインの肩に飛び移る。

ビッグ・ボインがイェイイェイ、と耳打ちすると、ヴィノーは口を開いた。

 

「『アナタの可愛さは、そのままが一番可愛い形よ』…だってよ」

「………あの、本当に、そう言ってる?」

「あ?なんでこのくれーがわかんねーの?

ビッグ・ボインがかわいいって言うの、そーとー珍しいぞ」

 

…どうやら、本当らしい。

なんで分かるんだ、と思いつつ、三上は「ありがとうございます」と頭を下げる。

ビッグ・ボインはサムズアップし、ボインを揺らした。

 

「日頃、近界民が送り込む兵器相手に尽力してくれる裏方だ。

私たちから、細やかなプレゼントとして、知りたいことをなんでも答えよう」

「あ、ありが……」

 

と、ここで三上は違和感を覚えた。

その違和感の正体にたどり着くのに、そう時間はかからなかった。

 

「…………今、なんと?」

「おやおや、聞こえなかったかい?

普段くる『近界民』は、『近界民が扱う兵器』なのだろう?」

 

やはりだ。目の前のこの男は、知っている。

自身で「なんでも知っている」と自称するだけはある。

一体どこから情報が漏れたのだろうか、と考えていると、ナゾナゾ博士は先ほどとは毛色が違う笑みを浮かべた。

 

「記憶を消してもダメだよ。

私は全ての記憶を、日記等に残してある。

言っただろう?

私はなんでも知っているのさ」

 

──────次の大規模侵攻のこともね。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

去ったマジョスティック・トゥエルブはと言うと、玉狛支部で夕食を摂っていた。

 

「修…。この人たち、なんなんだ…?」

「友人の、しもべって言うのかな?

マジョスティック・トゥエルブです。

今いない一人を除いて、超能力者」

「おぉおおお〜!とりまる〜!このたかいたかい、たのし〜ぞ〜!」

「………とりまる、超能力者って、居たのね」

「居ましたね」




ビッグ・ボインのインパクトが強すぎて他思い出すのに苦労しました。
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