三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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ビッグ・ボイン、前回に引き続き大活躍です。


ビッグ・ボインは小南がお気に入り

「ナゾナゾ博士…と言ったかな?」

「ああ。なんでも知ってる不思議な博士。

それが私、ナゾナゾ博士さ。

君たちボーダー本部の敷地内に入ることも、造作もないほどにね」

 

ボーダー本部の会議室にて。

目の前のふざけた格好の老父と幼児に、三輪秀次と城戸正宗は鋭い目を向ける。

それを見た幼児は、これまた悪どい笑みを浮かべながら、おやつの市販品バームクーヘンを頬張った。

 

「このジジイがなんでも知ってるっつーのは、あながち、まちがいでもねーぜ?

お前らのうしろめた〜いヒミツとか、その他もろもろいろ〜んなことを知ってるのさ」

 

幼児、ヴィノーが揶揄うように言うと、ナゾナゾ博士は笑みを浮かべながら続ける。

 

「そう。『近界民が我々と同じような人間である』ということも、『トリオン』、『トリオン器官』という君たちの秘密も…。

無論、『近界への遠征』や『君たちと繋がっている、あるいは繋がっていた国』の存在さえも、私は知っているのさ」

 

その言葉に、城戸だけでなく、室内にいた全員に緊張が走る。

三上歌歩が連れてきた、この怪しさ満点の老父と幼児。

ボーダーにとって、危険分子となってしまうことは、もはや確定だろう。

そうなる前に、記憶を消すべきだ。

記憶処理を行うため、城戸は三輪にアイコンタクトで指示を出す。

が。その前にナゾナゾ博士が口を開いた。

 

「先程、三上くんにも言ったが、もう一度言っておくとしよう。

私の記憶を消そうとしても無駄だよ。

私は『独学でここまでの結論を出した』。

あらゆる記録媒体に、私の出した結論は記録されている。

一週間の暇つぶしには、丁度良かったよ」

 

その言葉に、城戸は内心、舌打ちする。

しかし、組織の長たる者として、ポーカーフェイスくらいは身につけている。

何事にも動じていないかのように、城戸は傷跡に指を当て、口を開いた。

 

「そちらの要求はなんだ?

『ボーダーのトップに会いたい』と言ったからには、それ相応の理由があるのではないかね?」

「ああ。君たちにとって、とても有益な情報を持ってきたのだよ」

 

言って、不敵な笑みを浮かべるナゾナゾ博士。

そのまま用意された茶を一口飲み、彼はとある物を机に置いた。

 

「『君たちの知りたいこと』を教えてあげよう。対価は、『君たちのことを教えること』だ」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

その頃、修はと言うと。

近くのホテルを予約したという、ビッグ・ボイン以外のマジョスティック・トゥエルブを見送り、玉狛のリビングへと戻る。

そこには、一足遅れてやってきたがために、唯一ホテルが取れなかったビッグ・ボインが居た。

 

「……なぁ、修。あのボ…、いや、女性は何なんだ?」

「マジョスティック・トゥエルブの一人、ビッグ・ボインです。

特殊能力は、名前通りの体です」

「それ、特殊能力って言わないぞ、絶対…」

 

思春期真っ只中の烏丸京介は、若干頬を赤らめながら、思春期を過ぎたレイジも流石に気になるのか、チラチラとビッグ・ボインの胸を見やる。

まごうことなきビッグ・ボインである。

お子様の陽太郎は、長身のビッグ・ボインの肩車が楽しいのか、きゃっきゃっと笑っていた。

 

「おぉ〜!!オサム、ちょーのーりょくって、すごいな!!!」

「…………ただボインがビッグなだけよね?」

「まぁ…、そうですね」

 

小南が羨ましそうにビッグ・ボインのボインに視線を向ける。

それに気づいてか、ビッグ・ボインは陽太郎を肩に乗せながらも、安全が保証された悩殺ポーズを取る。

揺れるボインに、小南は思わず目を見開いた。

 

「外国人って、やっぱ違うわね……」

「アメリカでも珍しい方だと思います」

「アメリカ人なんだな…」

「ええ。アメリカ生まれの十二人組です」

「出生地にこだわりあるのか…?」

 

レイジの問いに、修は肩をすくめる。

マジョスティック・トゥエルブ。

修の友人のしもべという妙ちくりんな集団に、小南は烏丸に耳打ちする。

 

「………ちょっと、修の師匠!アンタ、もうちょい修の交友関係調べときなさいよ…!!」

「無理言わないでくださいよ…。

オレだって、あんな集団と仲がいいなんて、これっぽっちも思ってなかったんすから…」

 

烏丸は、師匠というわりに、全くもって修の交友関係を把握していない。

今回呼んだという友人も、70代前半の老父と、その血の繋がらない孫のことしか聞いていないのだ。

そのため、マジョスティック・トゥエルブが支部を訪れたときは、レイジが珍しく腰を抜かした。

それも無理はない。

玄関を開けたら、圧の強い「俺たちゃ変質者!」とでも言いたげな格好をした集団がいたのだから。

もし、修の知り合いでなければ、即座に通報していたところだ。

 

「イェーイ!!イェイ、イェーイ!!」

「『日本の子供、元気でイイね』と言ってますね」

「アタシの知ってる英語と違う」

「アメリカ要素、今のところボインとイェーイしかないのはどういうことだ」

 

そうは言われても、と修は困惑した様子を見せる。

その反応はどちらかというと、小南たちのものなのだが。

修は、ビッグ・ボインは「意味不明。そういう存在である」と認識してるため、彼女が何をしようとも受け入れる。

理解はしないが。

アンサートーカーを持ってしても理解不能。

それがビッグ・ボインなのだ。

 

「イェイ、イェイイェイ、イェーイ」

「『あなたは…ぱっと見クールで、大人っぽい性格してそう』ですって」

「え?ホント?」

「イェーイ」

「『ウ・ソ』」

 

ナゾナゾ博士がパートナーによく仕掛けていた「罪のない嘘」を真似たビッグ・ボイン。

それにより、小南のこめかみに青筋が走る。

彼女は即座に修の首を締め、咆哮した。

 

「むぎぎぎぎぎぃぃぃいいいいっっ!!!」

「ぐぇぇえええっっ!!!

ぼ、僕、じゃない、ですって……!!!」

 

爆笑するビッグ・ボインを傍目に、首がとんでもない構造になる程の力で締める小南。

修はパンパン、と彼女の手を叩きながら、青い顔をして声を張り上げた。

最近、小南が怒った際の折檻が、「首がとんでもない構造になるくらいキツく締める」になりつつある。

元よりバイオレンスな先輩だったが、最近はそれに磨きがかかっているように感じた。

 

「…笑ってる時も揺れてるな、ボイン」

「揺れてますね、ボイン」

 

なんて最低な会話だ。

そう思っていると、修の首から手を離した小南が呟く。

 

「…………ノーブラよね、あれ?」

「「!!!!」」

 

そう。揺れている。何度でも言おう、揺れているのだ。

揺れているということは、『圧迫するものが存在しない』ということ。

ボインを圧迫するのは、小南含む女性が普段身に付けているブラジャーと呼ばれる下着。

それがないということを、人は「ノーブラ」と呼ぶ。

その結論を弾き出したレイジ、烏丸の両名は、彫りの深い表情になる。

そんなこととはつゆ知らず。

ビッグボインは、肩に乗せた陽太郎に語りかける。

 

「イェイイェイ、イェーイ」

「『元気な子供にプレゼント!私の必殺技を披露しましょう!』…ですって」

「おぉ〜!!」

「必殺技…!?」

「ボインが大きいだけじゃないのね…!」

 

きゃっきゃっ、と陽太郎が喜ぶ傍で、玉狛第一のメンバーが戦慄する。

マジョスティック・トゥエルブという、超能力者集団の中の一人。

超能力がなくとも、それに匹敵する力を有しているのだろうか。

三人のその緊迫感は……。

 

「イェーーーーーーーーーイ!!!!!」

 

ビシバシというボインを激しくチョップする音に粉砕された。

三人が無表情になる中で、陽太郎はその光景が面白いのか、爆笑する。

修はこっそりと三人に寄り、説明を始めた。

 

「ビッグ・ボインの『ボイン・チョップ』。

その場の注目を掻っ攫います」

「…………え?その……、え?」

「修。本当に交友関係、見直した方がいいと思うぞ」

 

烏丸がいつもの真顔ではなく、心底不安そうな顔で修の肩に手を置く。

と、その時。しわがれた声が響いた。

 

「おやおや、失礼だなぁ。

玉狛第一隊員、トリオン体のトリオンバランスを崩し、一時的なパワーアップを施すガイストの使い手、烏丸京介くん」

 

全員が一斉にそちらを向くと、肩に幼児を乗せた老父が、わざわざ設置したのだろう、送風機でマントを靡かせながら、佇んでいた。

しかし、それが気にならないほどに、三人は驚愕に目を見開く。

先ほどまで、全く気が付かなかった。

まさか、ビッグ・ボインにも「注目を掻っ攫う」という超能力があったのだろうか。

と、ここまで考えて、「ただ単にすごく目立ってたから気づかなかった」という結論に至り、表情をなくした。

 

「ナゾナゾ博士。三上先輩はどうでした?」

「ああ、バッチリだとも。

話が弾んだせいか、少しばかり長居してしまってね。此方に寄るのが遅くなった」

 

老父…ナゾナゾ博士に修が問うと、彼はカラカラと笑みを浮かべる。

皆が警戒する最中、ナゾナゾ博士は笑みを浮かべたまま頭を下げた。

 

「改めて、初めまして。

私はナゾナゾ博士。何でも知っている不思議な博士とは、私のことさ。

マジョスティック・トゥエルブに夕飯をご馳走してくれてありがとう」

「あ、ああ…。修の友人と言うから…」

 

本当に交友関係を見直した方がいいと思う。

三人はそう思いながら、ナゾナゾ博士が何処からか取り出した菓子折りを受け取る。

何でも知っている、と自称したが、「騙されガール」とバカにされつつある小南でも、誇張表現ではないかと疑っていた。

が。それと同時に、妙な説得力も感じていた。

その理由として、烏丸の使うトリガーの効果を寸分違わず当ててみせた。

修が情報を流したとも思えない。

警戒心を持ちつつ、レイジはナゾナゾ博士に問いかける。

 

「……今日は何故、こちらに?」

「久しぶりに、修くんの顔を見ておきたかっただけさ。

『これから忙しくなりそう』だからね」

 

含みある言い方に、修はアンサートーカーを発揮する。

「これから忙しくなりそう」の意味は、修が大規模侵攻に向けての備えをすべき期間であるということだろう。

ナゾナゾ博士の恐ろしさは、修の数倍近い年数をかけて蓄えてきた知識にある。

アンサートーカーでさえも欺いてしまうような事情も含めるのか、そうでないのか。

修にはその判断を付けられるほど、ナゾナゾ博士に匹敵する知識はなかった。

 

「それは、どう言う意味でしょうか?」

「隠さなくてもいい。

近々、ここは『近界』にある…かなり大きな国に襲われるのだろう?」

 

ナゾナゾ博士の言葉に、全員に戦慄が走る。

誰かが情報を流したのか、と三人が考察していると、幼児が口を開く。

 

「このジジイ、頭いーからな。

お前らの隠し事なんて、ぜ〜んぶお見通しなんだよ」

「この子の言うとおりだよ。私は何でも知ってるのさ」

 

この男、侮れない。

下手に会話を交わせば、それだけで情報を引き抜かれる。

つくづく思う。修はどう言う経緯で、このような男と知り合ったのか。

三人が身構えていると、ビッグ・ボインがナゾナゾ博士に駆け寄り、耳打ちする。

 

「ふむふむ…。成る程。

確かに、私のせいで少し、殺伐とした雰囲気になってしまったからね。

頼むよ、ビッグ・ボイン」

「イェーイ!」

「ミュージック、スタート〜。

曲名は、『Never Say BOIN BABY』〜」

 

幼児がやる気なさげに、何処からか取り出したラジカセのスイッチを押す。

流れてきた音楽と共に、ビッグ・ボインが踊り出し、何故か小南に迫った。

歌詞もなかなかに酷い。

外国人特有のイントネーションで放たれる強烈な歌詞とボインのコンボに、小南は困惑のあまり、無表情のまま固まっていた。

 

「「「ぶはははははははっっ!!!」」」

 

その様子を見て、ナゾナゾ博士と幼児、そして陽太郎が腹を抱えて大爆笑し、烏丸たちが笑いを堪える。

このためだけに作ったのだろうか。

修もまた、何とも言えない表情で、被害に遭う小南に黙祷を捧げた。

曲が終わり、小南が小刻みに震える。

ひー、ひー、と笑いの余韻に浸るナゾナゾ博士に迫り、彼女は口を開いた。

 

「……………………こ」

「こ?」

「これは私への当て付けかァアアアアアアァァァァァァァァアアアアッッッ!!!!!

うごあァアアアアアアァアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアッッッ!!!!!!」

「へぶぅっ!?!?」

 

あらゆる豊胸術を試して、全く効果のない小南は、胸がないことを三上ほどではないものの、それなりに気にしていた。

ナゾナゾ博士とビッグ・ボインは、その地雷を的確に踏んだのだ。

小南の怒りはかつてないほど凄まじく、修羅の拳がナゾナゾ博士の顎に拳がめり込む。

それはそれは、見事なアッパーだった。

放物線を描きながら吹っ飛ぶナゾナゾ博士に、全員が合掌した。

 

「……あのボイン…いや、あの人、普通に喋れるんだな、ボイン」

「ああ…。普通に歌ってたな、ボイン」

「先輩方…。語尾がボインになってます」

 

ちなみに、何故かビッグ・ボインと陽太郎は殴られなかった。




大規模侵攻にビッグ・ボインを連れて行ったら、ボイン・チョップで全員がフリーズすると思います。

空閑は『迅さんを慰める会』という、太刀川が迅を哀れに思って計画した会に参加して留守です。
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