三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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アンサートーカー効果で展開が結構変わってます。取り敢えず茶野隊の誤解はカット。ラービット君も出勤して真っ先に修たち襲います。


大規模侵攻 その1

大規模侵攻が始まってしまった。「あと十日のうち」と言った矢先に始まった破壊の波に、あっという間に町は戦場となる。

修と空閑は千佳をC級によって行われている市民の避難誘導の方へと送り、市街地へと出ようとしたトリオン兵の弱点を突く。

 

「オサム、最近速度が上がってきたな!」

「昔の感覚をちょっと取り戻してきたってとこ…かなっ!!」

 

レイガストのスラスターはトリオンを放出する関係上、トリオン量が壊滅的な修ではそこまで多用できない。

ならば、何故修は軽やかにアスファルトを駆け、高く飛び上がれるのか。それは、過去の魔物たちとの戦いによって培われた感覚が、ここ最近の激闘の数々によって再び研ぎ澄まされていたことにある。

魔物たちとの戦いにおいて、本の持ち主が作戦を立てることはあっても、最前線に出ることはほぼない。傍で本を読み上げ、燃やされないように立ち回るようにするのが関の山である。

しかし、シェリー・ベルモンドと三雲修は違う。多少なりとも嵩張る本を片手に、武器を振るっていたのは、彼女らだけだった。

特に修に至っては、十歳という若さで、鉄パイプを軽々片手に振ることができるように、母親に半殺しにされながら鍛えたのだ。クリア・ノート、ファウード、ゼオン・ベルのように、余程デタラメな存在でもない限りは、バムスターやモールモッド相手の弱点を斬るのに消耗は無い。

 

「アステロイドは使わないのか?」

「僕のトリオンは限られてるからな。ポンポン撃てば、まずトリオン切れでトリオン兵を倒しただけで終わる。

この後に来る奴らを倒さないといけないんだ。少しでも長く頑張るさ」

 

現在の修は、アンサートーカーをフルに発揮している。アンサートーカーを使った実力は、その要因がバレていないとは言え、認知はされているのだ。

多少なりとも敵を削るために暴れた方が、得策ではあるだろう。

 

「戦いはいつだって、数のある方が有利だ…なーんて、オサムは分かってるよな」

「ああ。嫌ってほど思い知ってる。…空閑。五秒後、左横に1メートル、地面と並行に飛んで壁に着地、直後に前方上18度に2メートル飛んで斬撃。

レプリカ。状況は教えなくていい。『答えは出て』いる」

『了解』

「あいよ」

 

空閑は修の細かな指示を完璧にこなし、壁に着地する。瞬間、見たこともないトリオン兵が空閑たちのいた場所へと拳を振り下ろす。

空閑は特に慌てることもなく、指示通りに前方上18度へと飛び、訓練用のスコーピオンで弱点を貫いた。

 

『アフトクラトルで開発されていた新型トリオン兵…「ラービット」…。本来、ここまであっさり撃破できる相手ではないが…』

「そんな名前なのか、コイツ。…背中部分、腕、頭は結構硬い。腹は空洞…、肋骨部分に妙なオプションが付いてるな。

……答えが出た。『トリガー使い捕獲用』だろう?」

『……アンサートーカーを発揮してる君は、末恐ろしいな。

しかし、これではっきりした。今回、攻めてきているのはアフトクラトルだ』

 

情報ゼロから、動きや内部構造、更にはトリオン兵に関する情報など、断片的な要素から答えを導き出す。

いくら高嶺清麿、デュフォーよりも練度が低いとは言え、対峙した相手の特徴を見破ることはわけなかった。

 

「僕たちだと、この装甲を削ぎ落とすのは難しいな。A級でも食われる性能がある。

ボーダーも、コイツの撃破に戦力を割く。その優先度は…『避難が済んでない場所』だ。

このまま行くと、千佳やC級隊員たちどころじゃなく、市街地の方にもかなりの被害が及ぶことになる」

『……その通りだ、オサム。ラービットは各個撃破に集中するらしい。答えがわかっても、どうしようもないことはあるみたいだな、オサム』

「知ってるよ」

 

市街地の方へトリオン兵がなだれ込む恐れはあるが、ラービットを下手に自由にさせてしまっては、こちら側の戦力が一方的に減るばかりだ。

それに、千佳のいる地区は避難誘導がスムーズに進んでいる。千佳たちに被害が行くのは、確実と言えるだろう。

 

「…空閑、今のうちに黒トリガーに切り替えろ。千佳の危険云々を度外視しても、数分後、切り替える暇もなくなる相手が来る」

「いいのか?ボーダーが混乱するぞ?」

「大丈夫。答えは出てるさ」

 

修は速やかに上層部の集まる司令室に、空閑の黒トリガーの使用についての事後承諾を求めようとする。

が。空に映る光景に、基地もそんな場合ではないことに気づくと、修は進行方向を変えた。

 

「イルガー…」

 

爆撃用トリオン兵、イルガー。以前のイレギュラーな『門』の騒ぎの際、三門市の一角を爆破して回ったトリオン兵。

その時は木虎が手こずりながら対処したものの、イルガーが自爆モードに移行しかけた際、修が持っていた訓練用のレイガストを投擲して急所を貫き、川の上に墜落させたのだ。

しかし、そんなことが出来たのも、あの時現れたイルガーが一体のみであったから。

基地に向かって落ちていくイルガーは四体。木虎ですら手こずった手前、一見すると、対処はかなり難しいように思えることだろう。

 

「修。アレを落とした実績のあるお前は、手は出さないのか?」

「一体はボーダーが撃ち落とすし、一体は太刀川さんが斬る。二発だったら耐えられるくらいの強度はあるから、心配いらない。

第一、使う国が珍しいってことは、そこまで量産できるトリオン兵でも無いんだろ?」

 

修の言葉に舌を巻き、目を丸くする空閑。アンサートーカーの強大さは知っていたつもりだったが、まさかここまでだとは思わなかった。

アンサートーカーが真価を発揮するのは、ただの闘争だけでは無い。相手の戦術を、事前に把握できることも、これ以上ない利点だろう。

しかし、修が言っても、彼の扇動力はハッキリ言って皆無のため、レプリカの発言として上層部に報告してもらっている。

 

『二人とも。城戸司令から黒トリガーの使用が許可された。ただし、市街地には出ないようにとのことだ』

「答え通りだな」

 

空閑という強大な戦力は、千佳や市民の護衛に使えない。

いくらアンサートーカーとは言え、修はトリオン貧者という大きすぎる欠点を抱えている。魔物との戦いで得た体力と根性はあるが、それを差し引いても弱いことには変わりない。

簡単に詰みの状況を作られやすいという欠点を補うために、突破力のある空閑と同行していたのだ。が、それが無くなるとなると、修にとっては苦しい状況となる。

しかし、修個人の大きなワガママを通す暇もないのは事実。修は空閑に最低限の注意を促す。

 

「…空閑。お前と戦う奴がどんな相手かまでは、答えが出ないが…。

僕が死ぬ未来が濃いという情報がある以上、お前よりも手練れな可能性は高い」

「そうか。…レプリカは?」

「お前の判断に任せたらいいと、答えが出てる」

「りょーかい」

 

修は上層部にどう言い訳しようか、と自分に問いかけながら、千佳たちの元へと向かった。

 

「……手出しの必要、無かったね」

「…………」

「木虎、そう拗ねるな。しかし、三雲くん、相当キレるな…。性格的には合わないが、オペレーターは最適職なんじゃないか?」

 

一連の様子を、民家の屋根から嵐山隊が見ていたことに、何の反応も示さず。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

その頃。近界にてこの世界の周りを漂う惑星国家の中でも最大級の国力を誇る大国…神の国「アフトクラトル」の精鋭たちが、卓上に浮かぶ映像を見て、難色を示す。

 

「……なかなかに頭のキレる男がいるな、兄者」

「ラービットの襲撃を予測しただけでなく、一眼見ただけで機能さえも見破るか…。

それに、攻撃どころか『我々の手そのもの』を事前に読んでいる節がある。コイツは早々に排除しておくべきだ」

 

ガタイのいい男に兄と呼ばれた男が、眉間に皺を寄せて淡々と告げる。目前に映るは、戦況を完全に読み、空閑にラービットを数秒足らずで撃破させた三雲修。

この男の予測も、恐ろしいほどに的中している。修が数秒おきに己に問いかけている問題は、「敵はどんな手を使ってくるか」。結果的にそれが相手の戦術を事前に見抜き、レプリカや迅を仲介して上層部に通達することで、被害を最小限に抑えている。

そのため、彼らが思うような大規模な戦力の混乱は起きず、分散はしているものの、あまりに手が出しづらい状況下にあった。

 

「ケッ。なんだか知らねーが、そんなザコ猿、オレの『泥の王』がありゃあイチコロだろ。オレにやらせろ」

「ダメだ。やられた敵が基地へと戻っていくところを見るあたり、トリオン体を破壊しても頭は生きている。お前がヤツを落としたとて、戦況は大して好転せず、お前は手の内を見破られて死ぬのがオチだ」

 

その言葉に淡々と答えると、長髪の男は「ああん!?」と声を荒げながら、卓上に足を乗り上げる。

しかし、男は毅然とした態度で長髪の男を睨め付けた。流石にこの男を相手取る気は無かったのか、長髪の男は舌打ちをして、どかっ、と席へと座り込んだ。

 

「チッ!!『バオウ』と『シン』に2000年もの間、ビクビク怯えてただけのお家に生まれた指揮官サマは、随分と机上でモノ考えるのが好きみたいだな?えぇ!?」

「『バオウ』と『シン』の脅威も知らず、兄者どころか我が家を侮辱するか…!!」

「よせ、二人とも。敵は『玄界』だ」

 

ガタイのいい男と長髪の男の衝突をなんとか防いだ指揮官は、まじまじと状況を見つめる。

『バオウ』が引き起こした大国の滅亡を記録し、さらには『シン』の脅威を記録した家の生まれたる彼も、その言葉に何も思わない訳ではない。しかし、この長髪の男とはこれっきりだと割り切って対処した。

しかし、このままでは、本来の目的も果たせぬまま、ただトリオン兵を注ぎ込んで相手をかき乱しただけで終わる。それだけはなんとしてでも避けなくては。

 

「ほっほっほっ…。雛鳥たちを狙おうにも、プレーン体のラービットも凄まじい速度で落とされている。加えて、我々の手の内が筒抜けになっているかのような動き…。これは、我々も急ぐ必要がありましょう」

「……ラービットのうち、カスタム型の…砲撃型を防衛ラインの方へと向かわせろ」

「了解」

 

彼らの襲撃まで、あと数分。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

時は侵攻前に遡り。

近界民が攻め込み、三門市の大半が半壊した痛ましい事件から四年。あの時と同じように、曇天が太陽を覆い隠す。

その空の下、ビルの屋上に立つ色素がないとしか表現しようのない出立ちをした青年と、銀色の髪に紫の瞳を持つ少年が、眼下に広がる警戒区域を見下ろした。

 

「……おい。オレたちが手出しするのは、まだ先なのか?」

「ああ。…そう焦るな。『清麿たち』はまだ飛行機の中だ。お前のワガママを聞いて『退屈しない相手』をあてがうのも大変なんだ」

 

その手には、銀色に輝く本が握られている。

少年は自らと彼との絆の象徴を見遣り、薄く笑みを浮かべた。

 

「…変わったな、お前」

「お前のおかげだ。…来たぞ」

 

眼下に広がる警戒区域が、黒に染まった。

 

「さてと。『我らが王』の到着を待つとするか」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「清麿ぉお…!!自家用飛行機とは…、結構苦しいモノなのだな…!!」

「そりゃあ、この機体はな…!!仕組みを説明してやりたいが…!ちょっとキツイ…!!」

 

その頃、イギリスから大西洋にかけての青空にて。凄まじい速度で雲の上を駆ける飛行機の中で、清麿とその膝に座る少年が、凄まじい顔をしながら襲いかかるGを耐える。

運転しているビッグ・ボインのボインも負荷で激しく揺れており、清麿の顔は真っ赤だった。

 

「しかし、ビッグ・ボインは5年経っても見た目が変わらぬな…!!」

「イェーイ!!」

「えぇっと…、ニュアンス的に『女だからよ』…だってさ…!!」

 

ビッグ・ボインは凄まじいGにボインがビシバシ揺れて肌を叩こうが、平気そうにジェット機の運転を続ける。

普通ならば負荷に備えて相応の格好をするのだが、この女、あろうことかいつものレオタード姿で運転している。

それは何故か。彼女がビッグ・ボインだからである。ビッグなボインというアイデンティティを飛行服の着用によって自らかなぐり捨てるような愚行はしない。

…まあ、そんな心情など、清麿たちに聴こえてるわけもないだが。

 

「楽しみだな、清麿…!!また、修たちと会えるのだぞ…!!」

「俺たちは会ってたけどな…!!」

 

Gに耐えながらも、互いに笑い合う二人。

空の凱旋を楽しむ二人の側には、赤い本が置かれていた。

 

蹂躙された三門市に、王が君臨する時は近い。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「むぅ…。おれそっくりのヤツがオサムの相棒になってるのって、なんかフクザツ…」

 

とある民家の上。翡翠の本を脇に抱え、微妙な表情を浮かべる少年。

本は今にも修へと飛ぼうと暴れているが、少年の力によってなんとか抑え込まれていた。

 

「ごめんな。まだオサムと会う時間じゃないんだ。もうちょっとだけ我慢してくれ」

 

しかし、本はその言葉を聞かず、修の元へと向かおうと光を放ちながら、さらに激しく暴れる。

少年はそれを強く押さえつけながら、内から溢れる喜びで口角をあげた。

 

「共闘するのは久々だからな。きちんと、オサムの動きを見とかないと」

 

赤の瞳が、友を見つめていた。




ラービット君、瞬殺してごめんな。ロボットみたいなモンがアンサートーカーに勝てる訳ねーだろって思いながら書いてた。
今はアンサートーカー修効果(レプリカ先生が完全に仲介役になっているので上層部がめっちゃ言うこと聞いてくれる)で優勢だけど、逆にアフトクラトルに余計な油断を与えてないから、ここからハードル上がると思う。星の杖とか卵の冠とかが本気出してくるって考えるとヤバさが伝わると思う。

そして、ガッシュ勢の影。ガッシュ2が決定したけど、アレ王になったガッシュとか人間界に戻ってくるのかな?
ビッグ・ボインはナゾナゾ博士に命じられて飛行機運転してます。このシリアスの清涼剤になってくれると思った。
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