三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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ミラさんとハイレインさん、雷が走ったせいで早期に戦場に駆り出される事になってます。近界民は雷が怖い。


大規模侵攻 その3

「な、なんだ、今の…?」

 

エネドラは、頬を掠めた雷の感触に慄きながら、それが飛んできた方向を見やる。

そこには、自分と同じくらいの歳の青年と、掌から紫電を走らせる銀色の少年が、自分を見下ろしているのが見えた。

 

「トリガー…じゃ無さそうだな。生身の猿が、どんなマジックを使いやがった?」

 

紫の相貌に込められた威圧は、小柄な体に反比例するように、エネドラを萎縮させるほどに膨大だった。

魔物の王を決める戦いにおいて、優勝候補とまで言われ、鎧袖一触に相対した魔物を打ち倒してきた『雷帝』。ガッシュと相対した時、ガッシュの過去やバオウの真実を知ったことをキッカケに、この5年で欠けていた善性を取り戻した彼は、エネドラの所業を許そうなどとは思わなかった。

そして、彼が何よりも気に食わなかったのは。

 

「猿だと…?」

 

侮辱された事である。

ゼオン・ベルの沸点は、非常に低い。王族という生まれと、愛情のかけらもなかった家庭環境で育った彼。現在では改善したものの、約一名の老婆により、そのストレスが潜在的に渦巻いており、それは常に空気がパンパンに入った風船のような状態にある。

「ガッシュに何かしたらゼオンに殺される」と慄く魔物がいるように、ゼオンのストレス耐性はほぼ無い。

特に、相手が粗相をしても対外的に許されるような存在では。

 

「聞いたか、デュフォー?このゴミ、こともあろうに、俺たちを『猿』と宣ったぞ?」

「…楽しそうに言うな。向こうでもストレスから解放はされなかったのか」

「ああ…!この期に及んで、ガッシュに擦り寄るクソババアのお陰でなァ…!!」

 

ゼオンの掌から走る紫電が、威圧をより際立たせる。

デュフォーはそれに軽く呆れたため息を吐き、光放つ本に力を込めて告げた。

 

「『ザケルガ』」

 

ザケルガ。ただ電撃を放つ『ザケル』とは違い、貫通力を持つ呪文。初級呪文という分類に入るものの、ゼオン程の実力者になれば、ギガノの名を冠する呪文すらこれで掻き消すことも出来る。

エネドラは直感的に危険を察知し、慌てて天高く飛び上がった。

ゼオンはそれに目掛けて掌を向けるも、デュフォーは呪文を読まなかった。

 

「デュフォー、何をして…」

「コレはお前の『遊び』で、俺の『デモンストレーション』なんだ。あっさり終わらせては、意味がない。頭の悪さは5年経っても変わらないな」

「………わ、分かっていたぞ、うん。分かっていた」

 

ダラダラと冷や汗を流しながら、しきりに頷くゼオン。

そんな微笑ましい光景を前にして、エネドラはこめかみに青筋を浮かべながら、液状の体を広げた。

 

「余裕だから呑気にお喋りってかぁ?ナメてんじゃねェぞ、クソ猿がァ!!」

「お前、頭悪いな。ナメるもなにも、お前にそこまでの脅威性がないと言っているんだ」

 

ゼオンは言うと、デュフォーと共に飛び上がり、掌を真下に向ける。

黒の濁流が元いた場所を覆い尽くす中で、デュフォーは特に驚くことも無く、淡々と告げた。

 

「『ラージア・ザケル』」

「がぁあああっ!?」

 

広範囲に放たれた雷が、エネドラを苛む。心の力はそこまで込められていない。

今回の戦いは、あくまで『デモンストレーション』。低級呪文だけで終わらせるつもりは毛頭ない。

それに加えて、エネドラは昔の自分達を想起させるような真似をしでかそうとした。自分の全てをぶつけなければ、気が収まらない。

 

「……ソ、猿が…!!なんだ、テメェ…!!消えたバオウの生まれ変わりか、ああん!?」

「貴様に答える必要が何処にある?」

 

着地したゼオンが淡々と答えると、エネドラは激情のままに体を膨張させ、手当たり次第に建造物を破壊する刃の濁流を巻き起こす。

ゼオンは迫るソレに薄く笑うと、ソレに突っ込もうとした。が、それはデュフォーが首根っこを掴んだことによって止められる。

 

「ぐぇえっ!?何をする、デュフォー!!」

「馬鹿正直に突っ込むな。あの黒トリガーは気化すると散々言ったろ。今も無闇矢鱈と撒き散らしていることがわからないのか。

頭の悪さがここまで変わらないとは、呆れてものも言えない」

「むがーっ!!」

 

二人のそんなやり取りを前に、エネドラは舌打ちした。

 

「チッ…!一回派手に殺されてーみてーだな、クソガキどもがぁ!!」

「……いいな。そうで無くては、こちらも遊びがいがない!!」

「ガキ同士の遊びに付き合うこちらの身にもなれ。…『ザケルガ』」

 

雷と黒の刃が激突する。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「あの雷…。……まさか…」

 

一角に駆け巡る紫電に、あり得ないと目を丸くする修。

あの時、宿敵だった雷。そして、相棒たちの友となった魔物の雷。なんとも言えない懐かしさに、トリオン体だというのに涙がこぼれ落ちる。

もし、想像通りであるならば、カッコ悪い所は見せられない。

修は乱暴にその涙を拭うと、レイガストを構えて迫り来るチャクラムを逸らす。

 

「『マシルバ』!!」

「甘いな」

 

付着した黒のカケラに磁力が走り、レイガストが引っ張られる。

本来であれば、手に持った武器が引っ張られると、それなりに隙ができる。事実、ヒュースが幾度もこの手で敵に隙を作ってきた。

しかし、相手は修。ソレすらも織り込み済みで、磁力が働いた時点でレイガストを既に破棄していた。

そのレイガストを踏み台にして、飛び上がった小南の斬撃がヒュースの防壁の一部を削り取る。そこに、修のアステロイドが叩き込まれるも、ヒュースが体表にカケラを纏わせることでソレを防いだ。

 

「チッ、なかなか切り崩せない…って、何泣いてんのよ、アンタ!?」

「気にしないでください。

烏丸先輩、レイジさん、そっちの方は上手くいってますか?」

 

修が通信で確認を取ると、レイジの苦々しい声が響く。

どうやら、あまり状況は芳しくないらしい。相手が悪過ぎるというのは分かっているが、ボーダーの最強部隊と呼ばれる二人を相手に苦戦させるとは、黒トリガー云々を抜きにしても、かなりの実力者のようだ。

 

『いや、キツイな。国宝ってだけはある。当たらないようにするので精一杯だ』

『こちら側の誘導に気づいている。ソレでも乗っかってくるあたり、かなりの強敵だぞ』

「倒そうとか、傷をつけようとか考えなくていいです。まずは空閑との合流を優先してください」

 

円状の軌道を描く、幾つもの剣で形成された結界を張る黒トリガー…「星の杖」。

ヴィザがレイジのヒット&アウェイを防ごうと建物を破壊したのが幸いし、修のアンサートーカーでその特性が割れたのが大きい。多少の傷は負っても、緊急脱出するまでには至っていない。

狙いであったC級たちには、なりふり構わず本部に全力で逃げろと通達し、彼らは一般市民の避難の時間を稼ぐために、ヒュースと対峙していた。

近場に本部の入り口もあるだろうし、アンサートーカーの答えにより、襲撃されていないのは分かっている。直接本部に向かわねばならない、と言う事態にはならないはずだ。

 

「……っ!?」

 

と。ここで最悪の『答え』が出た。

修が動揺すると共に、ヒュースがその隙を突いて黒の奔流で刈り取りにかかる。

が、そこはクリアとの決戦まで生き残った歴戦の戦士。修は即座に持ち直すと、雪崩れ込む黒を次々と避け、叫んだ。

 

「小南先輩!!足止め、頼みます!!」

「理由は!?」

「黒トリガー…それも、相当厄介なのがC級に向かってます!!」

「………っ!!」

 

緊迫した状況は、まだ終わらない。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…どうやら誘導されてたのは、こっちみたいだったな」

 

崩壊した瓦礫を踏み上げ、切り落とされた腕を抱えながら、レイジが呟く。比較的軽傷の烏丸も、精神的にはかなり疲弊しており、更には嵌められたとなると、精神にかかる負荷は相当なもの。

普段ならば余裕を崩さぬ二人ではあったが、ここにきての思わぬ逆転に、焦りが生じる。

 

「おや、バレてしまいましたか。そう、私すらも『囮』に過ぎなかったわけですよ」

 

最も厄介な修を振り回すことで、指示を出す暇すら与えないというのが、ハイレインの立てた策であった。デュフォー、清麿であれば、難なくコレを看破したのであろうが、この場にいるのはアンサートーカーとしての練度が低い修。敵将がいることを突き止めることは出来ても、情報が揃うまでは、その具体的な策までは答えを出せない。

それに加えて、ハイレインの持つ黒トリガーの特殊性により、C級隊員たちをある程度は確保できるというのも、アフトクラトル側の利点であった。

 

「…レプリカ、空閑は?」

『……敵軍の黒トリガーに絡まれている。門のようなものを作り出すトリガーだ』

「なりふり構わずってわけか…!!」

 

今回、ミラが空閑の対処に当たっているのは、修との連携を危惧してのことである。

現在、最も戦場に貢献しているのは、修の指示を完璧に遂行している空閑であった。訓練用のトリガーでさえ、修の指示があればラービットを瞬殺するほどの実力者。アフトクラトルがフリーにしておくわけがない。

 

「なかなか楽しかったですぞ、玄界の戦士たちよ。ですが、こちらも任務。そろそろ、ご退場願いましょうか」

 

瞬間、ヴィザが張っていた結界が、急激に広がる。どう動いても当たるような軌道を描く剣の数に、レイジたちは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

ここまでか、と思ったその時。

 

空から金色が落ちてきた。

 

「セットだ!」

「ウヌ!」

 

─────第一の術『ザケル』!!!

 

その言葉と共に口腔から放たれた雷撃が、ヴィザに襲いかかる。

ヴィザは慌てて地面を蹴り、退避する。その際に黒を引き裂こうと「星の杖」が作る刃の軌道を幾重にも重ね合わせ、手傷を負わせようとする。

しかし、それを読んでいた青年…高嶺清麿は、光を放つ赤い本を手に、右手の指をヴィザに向けて叫んだ。

 

「その手は食わんぞ!」

「『ザケルガ』!」

 

瞬間。重なった刃が霧散し、光線状の雷撃が一直線にヴィザに向かう。ヴィザは、マントを翻すようにして避けると、続け様に間合いを詰めようとした。

 

「どういうカラクリかは知りませぬが…、あまりナメないでいただこうか!!」

「俺がセットを指示するまで、全速力で後ろに下がれ!」

「分かったのだ!」

 

清麿の指示通りに、黒を纏う少年が下がる。

多少、マントが引き裂かれたものの、被害で言えば微々たるもの。数メートル程下がった地点で、清麿はヴィザに指を向け、叫んだ。

 

「『テオザケル』!!」

 

広範囲に放たれた雷撃に、ヴィザは高密度で刃を展開することによりなんとか防ぐ。

レイジたちのそばに着地した二人は、不敵な笑みを浮かべた。

 

「レポートすっぽかした太刀川のアホを締め上げるついでに来たんだが、間に合ったみたいだな」

「助っ人に来たぞ!私たちがきたからには、もう安心なのだ!」

「た、高嶺清麿…?」

「その子は……?」

 

面食らうレイジたちに、少年は笑みを浮かべ、口を開いた。

 

「我が名は『ガッシュ・ベル』!魔界の王様なのだ!!」




ガッシュ、清麿参戦。この二人はヴィザにぶつけるって決めてた。
この時点で、C級数人キューブ化されて遠征艇に積み込まれてます。ハイレインさんも早期投入されたせいで、阻止するメンバーが全然固まってません。今もランバネインに苦戦してると思う。

ゼオン様、誤解が解けて帰った後もストレスまみれだった。主にユノとかクソ性格悪い老婆とかクソババアとかのせい。
ティオやウマゴン、キャンチョメなどの主要メンバーは、パートナーの事情があって三門市に行けないので、画面越しに祈ってます。
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