三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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こういう定期的な催しがあってもおかしくないと思って書きました。


強化合宿のススメ

「三雲くん、前に誰かと組んでたりしたんじゃないかしら?」

「へっ?」

 

ランク戦ブースからすぐそこにある、自動販売機にて。

たまたま相席した那須玲の言葉に、修はなんとも言えない表情を浮かべる。

修は「団体戦だと弱い」ということが露呈してしまい、木虎と嵐山准の二人…嵐山は善意100%、木虎は嫉妬100%の動機で勝負を挑んだ…にボロ負けした直後だった。

修は、時枝充と組むも惨敗。

というのも、修の出す指示は、時枝にはあまり合っていなかったのと、通じ合えるほど親睦がなかったのが大きな要因である。

 

その様子を見ていた那須が下した判断が、「元は誰かと組んで戦っていたのではないか?」という、鋭い意見だった。

 

病弱であるが故に、ストイックさや積極性も兼ね備えた隊長である那須。

その性格は、引きこもりの少女を自身の隊のオペレーターにしてしまうほどである。

彼女が本人に質問するのに、躊躇いはかけらも無かった。

それに対し、修は誤魔化す必要もないか、と頷いた。

 

「ええ、まぁ…。もう会えないですけど…」

「あっ…。ご、ごめんなさい…。その、そうとは知らず…」

「あ、いや、死んだわけじゃなくて。

会えないほど遠くにいるってだけで…」

 

修はたしかにアンサートーカーという強大な力を持っている。

アンサートーカーの真価は、団体戦で発揮されると言っても過言ではない。

だというのに、修が団体戦において雑魚と認識されているのは何故か。

 

その答えは、修が「トリガーを使っての団体戦をそこまで経験したことがない」のと、「魔物との戦いに慣れすぎた」ということにある。

 

魔物との戦いにおいては、団体戦が当たり前の状況下にいた。

なにせ、修はパートナーと共にガンガン前に出て、相手の本を取り上げるスタイルで勝ち抜いてきた。

クリアの本も、ユーをシン・クリア・セウノウスから庇わなければ、奪えた可能性だってあった。

 

しかし、トリガーの戦いと、魔物との戦いでは、かなりの違いが生まれてくる。

変幻自在の攻撃、自身より圧倒的に多いトリオン量から放たれる殲滅弾幕、何より「本」という明確な弱点と強さの有無。

更には、パートナーとの深い親密度による完璧な連携も取れない。

 

いくらアンサートーカーとはいえど、その染み付いた慣れが取れるわけもなく。

結果、修はトリガーを使った団体戦において、比類なき弱者となった。

…素の実力も、棒のようなもの殺人術がトリガーを使った戦闘において投擲以外は役に立たないため、妥当な結果ではあるのだが。

 

「ボーダーじゃなくて、ケンカの相棒っていうか…。小学校の頃、すごくヤンチャして」

「そうなの?…あまりそうは見えないけど」

 

ヤンチャはしていました。

校舎は二度ほど壊したし、二桁近い台数の車を木っ端微塵にした。

平原を更地にしたこともあった。

最終的には、ロッキー山脈にでかい風穴を開けた。

ロッキー山脈の穴は、シン・クリア・セウノウス・ザレフェドーラの弾の軌道を逸らしたことによるものだが。

今は無き魔物との戦いによる傷痕のことを思いながら、修は半笑いで誤魔化す。

 

「その、僕が言うのもなんですけど。

彼とは…魂を分けたような…、いや、互いの半身とも言える…そんな関係でした」

 

おそらく、それはガッシュの友人たる魔物のどのパートナーにも言えることだろう。

互いが互いを支えてきた、魔物との戦い。

その中で強い絆が育まれ、別れの時になって互いに泣きじゃくる。

修も、ユーとの別れを思い出し、目尻に浮かぶ涙を拭いた。

 

「成る程。だから団体戦の指示が最低限以下だったのか」

「あ、嵐山先輩…」

 

どさっ、と音を立てて、修の隣のベンチに座り込んだのは、先程戦った嵐山だった。

嵐山が修に戦いを挑んだのは他でもない、迅に「団体戦を教えてあげて」と頼まれたからである。

修ほどではないものの、面倒見は良い方の彼は、修の癖などを簡易的にプリントにまとめ、彼に渡した。

 

「これ、トリガーを使った団体戦のコツだ。

参考にするといいよ」

「あ、ありがとうございます。わざわざこんなことしていただいて…」

「いいよいいよ。後輩を育てるのも、A級の使命だからね」

 

笑顔が眩しい。これが象徴パワーか。

柄にもなくそんなふざけたことを思いながら、パラパラと数枚のプリントをめくり、流し読みする。

非常にわかりやすくまとまっている。

太刀川の「ダーってやって、バーってやれば勝てるだろ!!」という大雑把過ぎる説明よりも遥かにわかりやすい。

 

「三雲くんは、突破力がない。

多対一になると、詰みの状況に陥りやすいって言うあからさまな弱点がある。

トリオン量から、カメレオンとかのトリガーが選択肢に入れられないなら、まずは誰か一人だけ…それも支柱となる人間を落とすことに集中するといい。

その後は、指示を出す練習として、通信で味方に指示を出したらいいよ」

「そんなことまで…。何から何まで、本当にありがとうございます」

 

嵐山に頭を下げると、彼は「じゃ、そろそろ行くよ」と席を立つ。

修がそちらの方を見ると、修に勝てて上機嫌なのか、少しにやけた表情の木虎が見えた。

 

「……この癖、治さないと」

 

修が本を握るように拳を握ると、那須が「そうだ!」と手を合わせた。

 

「三雲くん、今度の連休、暇?」

「へ?」

 

♦︎♦︎♦︎♦

 

「えー只今より、太刀川隊主催でボーダー強化合宿を開始しまーす」

「「「おー!!」」」

「…………………何これ?」

 

翌週。ボーダー本部にて。

一部のA級、B級、C級の人間たちが盛り上がる中、ノリについていけず、残された修は、心中にある言葉を口にする。

強化合宿とは名ばかりで、要は「数日かけて強くなろうぜ!」とスポ根ものの合宿を開催しているようなものだ。

主催を務める太刀川がマイクを口前に持ってきて、声を張り上げる。

 

「この合宿は俺のストレス発散八割、上層部の『戦力強化してくれ』って命令一割、残りの一割はお前らのノリで開催されてまーす」

「ほぼ私情じゃねェか!!」

「お前のストレスはお前が原因だろ!!」

「上層部の命令をついで感覚で言うな!!」

 

怒涛のツッコミに太刀川は「はっはっはっ。かゆいかゆい」と笑ってみせる。

一通り騒ぎ終わると、太刀川は咳払いをして続けた。

 

「そんな冗談は置いといて。

初開催となるこの合宿では、上層部が決めた4人1組、プラスでオペレーター付きのチームを組んでもらう。

なるべく戦力が均等になるよう、忍田さん、東さん、林藤さんが計らってくれた」

 

言うと、太刀川は同じ隊のコネ入隊、唯我尊にアイコンタクトをする。

彼は「なんで僕が…」と文句を言いながら、渋々最前列の皆にプリントを配った。

修も前に座る帯島ユカリから回されたプリントを一枚抜き、後ろに回す。

自身のチームを確認する時間を与えているのだろう、太刀川が暫し沈黙する。

修はそれに甘え、自身のチームを確認する。

 

「ランクは混合。A級が入ってるチームには、必ずC級の希望者も参加している。

まぁ、細かいルールはここまでだ。

決まったチームで闘いまくれ!!…ってカンジだな。諸君の健闘を…お…、いの、祈る……で、あってたっけ?」

「「「肝心なところでアホ晒してんじゃねーよ太刀川ァ!!」」」

 

太刀川と同い年か年上の皆が、声を張り上げてツッコミを入れる。

皆がどっと噴き出すも、即座に太刀川の隣に控えていた東が手を叩いて鎮静する。

 

「じゃあ、決まったチームに別れてくれ。

予め、立て札を用意しておいた。

ここであまり時間をかけるなよー」

 

東の言葉の通り、皆がそれぞれ自身のチームが書かれた立て札へと向かう。

修もまたその立て札へと向かうと、見覚えのある顔がこちらを向いた。

 

「メガネ先輩、ウチと同じ班っすね」

「夏目さん、早いな」

「ま、こー見えて真面目なんすよ。実家、空手道場だから作法に厳しくて」

 

希望者のC級は、A級一人につきに一人。

無論、空閑や千佳も参加している。

修のチームでは、千佳の友人である夏目出穂が選ばれていた。

チームの編成は、ランクだけで言うとA級1、B級2、C級1が平均的である。

修のチームも、そのセオリーに入っていた。

ちなみに、C級の中でこの中に入ろうと希望する人は、そこまで居なかったようで、ちょっとバランスが崩れても問題ない程度しか参加していないらしい。

そのことを思い出していると、修たちの立て札へと一人の青年が歩いてくる。

 

「ごめん。人すごくって、ちょっと迷っちゃった」

「あ、仏先輩」

「来馬先輩、まだそんなに経ってないので、大丈夫ですよ」

 

B級の二人目は、通称「仏」、確率論の神に愛された男である来馬辰也であった。

村上が属する鈴鳴第一…来馬隊を率いる、人望あふれる青年である。

加古にとばっちりで処刑された修を、村上が同情して外食に連れ出した時に知り合い、親睦を深めた経緯がある。

夏目とは、究極のドジ…「真の悪」、別役太一という隊員を仲介して知り合った。

太一の数々のやらかしに、仏の顔で赦す姿から、「仏先輩」というあだ名をつけられた。

 

戦力として頼りになるかと問われれば、微妙なところというのが来馬の評価である。

B級中位にいるだけあって、人を率いる才能はあるのだが、単体で見ると他の人間と比べて見劣りしてしまう。

 

C級で経験がない夏目、団体戦において最弱…というより、居座られると厄介なので、速攻で落とすべく相手が全力で襲いかかってくる修、弱くはないが強くもない来馬。

最後の一人、A級は…。

 

「おっす、三雲先輩。…って、過半数中学生じゃん」

 

緑川駿である。

A級4位に座す草壁隊に属しており、迅バカと揶揄される少年である。

実力は折り紙付きで、グラスホッパーというトリガーを巧みに操る。

 

あとはオペレーターのみ。

四人してきょろきょろと周りを見渡していると、ボサボサ髪の少女がこちらに来た。

 

「よーっす!元気か三雲ー!」

「ぁだっ!?」

 

修の腰あたりを勢いよく叩いた少女…仁礼光は、からからと笑った。

 

彼女と修の接点は、修が彼女に清麿を紹介したことから始まった。

というのも、光はたまたま、ボーダー内での学業成績表を見たらしく、自身が最下位にいたことが不満だったとのこと。

そのため、家庭教師を求めた彼女に、以前ランク戦で知り合った北添尋経由で、修が清麿を紹介したのだ。

清麿曰く、「学ぶ気が微塵もない太刀川よりはるかにマシ」だという。

 

一通り見ると、彼女は頷き、口を開いた。

 

「弱めのチームだな!

頭になれるヤツが、癖とやらのせいで最低限の指示も出せん割に、一対一じゃ強ぇから全力で落としにかかられる三雲と、二人のお守りがない来馬!B級二人が特に!!」

「「……はい、ごめんなさい…」」

 

容赦のない意見である。

しかし、その意見はもっともであった。

司令塔となりうるアンサートーカーを持つものの、長きに渡り最低限の指示のみで戦ってきた弊害のある修。

隊長を務め、皆を引っ張る才能はあれど、他のB級に比べ、尖った部分のない来馬。

この二人しか頭を張れない時点で、このチームは「弱い」というレッテルを貼られる。

そのことを修たちが再認識していると、光は笑顔のまま続ける。

 

「リーダーは三雲と来馬のローテな!

この際だから、一皮剥けてこいってんだ!」

 

こうして、前途多難なチーム「みくる派」…命名は光…の戦いがスタートした。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

一日目が終わり、夕食時。

結果から言おう。みくる派は案の定、戦績だけ見ればほぼ全敗という有様だった。

とは言っても、試合を重ねるにつれ、修の癖は矯正されつつあり、来馬も積極性が生まれ始めた。

 

最後の太刀川、生駒、那須、千佳のチームとの対戦は、引き分けに終わった。

まず緑川が修のサポートありで太刀川と相討ち、修もまた生駒をなんとか落とし、脱落。

来馬が脱落した修の指示を実行し、千佳を落とした。

そして出穂が那須を撃ち抜くも、那須の置き土産により二人とも脱落。

 

このように、明らかに格上の相手にも、なんとか相討ちまで持っていくことが出来た。

各チーム親睦を深めるため、合宿モノ恒例のカレーを作りながら、戦闘の反省を語る。

 

「…で、来馬先輩は、牽制と攻撃の見分けを付けるところから始めた方がいいかと。

そこは村上先輩が上手いので、合宿が終わったら聞いてみてください」

「ありがとう。三雲くんは…そうだなぁ。

相手を誘き出すのはいいけど、せっかく誘き出すんだから、罠を仕掛けるとかどうかな?

スパイダーなら、そんなにトリオン使わないし、いいと思うよ?」

 

修と来馬は互いの反省点や改善策を挙げ、じゃがいもの皮を剥く。

普段、皆が甘やかすため、料理をしたくともできない来馬は、ピーラーを使っている。

修はアンサートーカーで「美味しいカレーの作り方」を導き出し、それに沿ってスパイスを用意していた。

修にとっては、アンサートーカーの正しい使い方である。

 

尚、材料は東と小南が用意したものである。

ルーでしかカレーが作れない人間のためのルー、本格的なカレーを作りたい人向けのカレー粉、更に本格的なカレーが好みの人は各種スパイスという本気ぶり。

修が選んだのは、スパイス数種であった。

 

元々、母がいない時は自炊もする修は、慣れた手つきで野菜や肉の下拵えをする。

その傍でも、戦闘の反省は忘れない。

 

「夏目さんは、近距離でも戦える狙撃手を目指してみたらどうかな?

ほら、那須さんと鉢合わせて、蜂の巣になる前に格闘術で素早く倒して、イーグレットでズドン!…って。

スコーピオンとかすごく向いてそうな動きしてたよね?」

 

来馬の言葉に、修は先程の戦闘を想起する。

太刀川、生駒を落とした直後、夏目が那須と鉢合わせてしまったのである。

那須が弾を生成する前に、彼女は即座に距離を詰め、足を払った。

そのあと起き上がらないように上半身の中心を踏み、頭を撃ち抜く。

狙撃手とはなんだったのだろうか。

しかし、その直後に那須が放ったバイパーに残った二人が刈り取られ、引き分けとなったが、出穂はその結果を手繰り寄せるのに、大きな役割を果たしてくれたと言える。

 

「アタシ、年齢の関係で昇格受けられてないだけで、師範代ブチのめしてるんすよね」

「「「「え?」」」」

 

まさかのカミングアウトに、チームの全員が呆然とする。

彼女曰く、過去に中国に住む親戚から紹介された「ウォンレイ」という青年に、しばらくの間扱かれたらしい。

所々似通った動きが散見されたので、恐らくは修の記憶にある魔物と同じ人物だろう。

 

「そっちで食ってくのも魅力的だったんすけど、やっぱボーダーでA級目指す方が安泰かなぁって思って…」

「………引く手数多だと思うよ」

 

あまり積極的にランク戦をしないだけで、ポイントが溜まれば、どのチームも勧誘に動くことだろう。

来馬がそんなことを思っていると、彼を押しのけて光が出穂の手を取った。

 

「ウチ来るか!?」

「や、いーっす。もーちっとじっくり見てから決めようかなと。

アタシがノリで入ったら、そのチームのリズム崩れるっしょ」

「かーっ!三雲と言い、最近の中学生、アタシよりしっかりしてんなー!」

 

光は言うと、「もちろん緑川以外な!」と付け足し、彼を揶揄う。

しっかりしていると認識されていない緑川は、それなりにショックだったのか、がっくりと肩を落とした。

 

「俺、この中で唯一のA級だよ…?

なんでよりにもよってヒカリちゃんに『しっかりしてない』って言われんの…?」

「じゃ、きちんと勉強すれば?

迅バカくん、ランク戦にかまけて、全くやってねーっしょ?」

「うぐぅうっ!!??やめてっ!!

こないだのテストで過半数赤点だったの思い出すから!!」

 

正論で殴られた。

頭が悪い理由がこうも明白なのに、どうして改善しようとしないのだろう。

修はそんなことを思いながら、煮込んだカレーを小皿によそい、味見した。

 

「………」

 

騒がしい調理の時間。

ユーとの思い出が頭をよぎり、修は少しばかりの寂しさに襲われた。




私はハルヒは小学校卒業前、友人から借りて読んだくらいで、ほぼ知識抜けてます。
空手に関してコメントがあったのですが、実家が道場というのは公式ですが、実力に関してはウォンレイによるものです。
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