三雲修はアンサートーカー   作:鳩胸な鴨

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草壁さんのオペレーターを早く見たい、と思いながら書きました。
まぁ、県外スカウト行ってるから出せないんですけど。


グラスホッパーはトラップ向けトリガー

「駿んん……!!なんなのあのグラスホッパーの使い方ぁあ!!」

「く、黒江……、三雲先輩に、言ってぇえ…!

締まってる、締まってるからぁあ……!!」

 

とんでもない首の構造になっている緑川に、修たちは合掌する。

その首を絞めているのは、加古隊の炒飯処理係、黒江双葉である。

試作トリガーである加速オプション、「韋駄天」を使った戦法が得意で、誰が呼んだか「忍者ガール」。

そんな彼女が、緑川にキレているのには、理由があった。

 

「なんで韋駄天の移動先に、木の葉も乗せてバレないように置いてんの!?

草壁さんの性格の悪さ移ったの!?!?」

「だ、だから…、それ、三雲先輩の、指示だって……!!」

 

そう。彼女は修考案、緑川実行のグラスホッパーの罠に見事に引っかかったのだ。

放物線を描きながら吹っ飛んだ彼女を、来馬の地上からの弾丸、出穂の狙撃で容赦なく刈り取った。

修が落下地点まで計算したがために、黒江は早々に蜂の巣になって脱落。

それは二日目の第一試合が開始して、実に2分後のことだった。

 

「まぁまぁ、黒江ちゃん。勉強になったって思えば…」

「熊谷先輩もムカつかないんですか!?

踏み込み旋空孤月!!

アレ使う時に、踏み込む足にグラスホッパー出されたんですよ!?」

「いや、腹立つけど。でも、自分の未熟が招いたことだし」

 

那須隊の攻撃手、熊谷友子が宥めるも、黒江の暴走は止まらない。

グラスホッパートラップ。

修がアンサートーカーで導き出した「騙し討ち」の一つである。

このグループに突破力は、緑川以外に存在しない。

これはもう仕方がない。

であれば、いの1番に狙われるエースである緑川をどう活かすか。

 

修が導き出した答えは、「囮役」と「仕掛け人」だった。

 

結果、緑川らしかぬ、非常にいやらしいグラスホッパートラップが完成したのだ。

これで迫り来るエースアタッカーをポンポン飛ばし、予想外のことに身動きが取れない瞬間を滅多撃ちにする。

これにより、黒江と熊谷はあっさりとやられ、残った二宮がC級3バカの一人を連れて奮闘する羽目になった。

無論、その時点で修のタイマンでの強さが発揮され、二宮は敢えなく敗退。

残ったC級も、出穂と鉢合わせて攻撃する前に拘束され、ゼロ距離射撃で刈り取られた。

こうして、みくる派は合宿で初めての勝利を飾った。

 

「でも、罠に嵌めるって結構面白いね。

草壁さんの指示以外でやったことなかったから、癖になりそう」

「点を取るだけが攻撃手じゃねーかんな。

カゲは罠とかぜってーやんねーけど!」

 

アレは性格的に細かいことはやらん、と、豪快に笑う光。

彼女の所属する隊…影浦隊は、真正面から叩き潰すとでも言いたげな、攻撃特化の部隊である。

小細工なしでもA級6位まで上り詰めた功績もあり、囮役はもっぱら北添が担当していた。

 

「まー、アタシもオペの端くれだかんな。

こーゆースマートな作戦?っての、一回やってみたかった!」

「普段のアホ全開な言動はとにかく、姉御先輩、オペとしては優秀っすよね」

「歯に衣着せないよね、出穂ちゃん」

「嘘つくのは性に合わんし」

「おーう、口だけは達者だなネコ目ェ…!」

 

光にニーブラをかまされながら、平然と緑川と言葉を交わす出穂。

狙撃の腕は、修がアンサートーカーで「大体の感覚」を教えたことにより、飛躍的にアップした。

攻撃手ならもう少しスムーズに行ったのでは、と来馬が問うと、「ゴルゴに憧れて狙撃手目指したっす」と白状。

思春期ということもあり、昔の漫画に影響されやすいタイプなのかもしれない。

 

「来馬先輩も、前に出る回数とか、生き残る確率が上がってきましたね」

「そ、そうかな…?昨日、諏訪さんとか、いろんな人に落とされたけど…」

「お前が強くなるだけで、鈴鳴はアホみたいに強くなんだから、自信持て!

ま、それでもウチの方が強いけどな!」

 

このような会話すらも、経験として蓄積されていく。

修たちは知らぬことだが、今回の合宿の狙いは、「チーム戦に慣れさせる」だけが目的ではない。

普段は関わりのない人間と、互いの欠点について話し合う機会を作ることも兼ねている。

 

この合宿が計画された経緯を語ろう。

清麿に物理的にも精神的にもボコボコにされた太刀川が、「ストレス発散に合宿みたいなのやりてーっす」と忍田にこぼしたことがことの発端だった。

忍田は城戸から命じられた「ボーダーの戦力強化」に行き詰まっており、連日連夜、悶々と唸っていた。

予算の関係などもあり、期日までに実行できるような計画がないかと寝不足の頭で思案していた矢先に、太刀川のこの言葉。

 

忍田真史はそれを天啓だと確信した。

人生初、戦闘以外のことで弟子に感謝しながら、城戸にこの計画を立案。

特に予算がかかるわけでもなく、全体的な戦力の向上が予見できるこの計画に、城戸は珍しくご満悦だったという。

 

尚、これにより太刀川はゴキブリ以下からゴミ以下の好感度にランクアップしたという。

 

「でも、目立って強くなってきたのは僕たちだけじゃないよ。

堤くんとか、半崎くんとか…、C級、B級中心に実力がメキメキ伸びてる。

普段関わらない人と組むから、各々に足りないものがきちんとわかるし、方針で我儘が通らないから、チームワークや親睦の大切さにも気づける。

定期的にやれば、今度くる大規模侵攻も、きっと防げるよ!」

 

現に僕も得点率上がったし、と付け足し、来馬が笑みを浮かべる。

ただ、一つだけ懸念があるとすれば…。

 

「太刀川くんとか太一とか、成績が残念な子がさらに残念なことになりそうだけど…」

「………知り合いに、聞いてみます」

 

上層部の苦悩は終わらない。

 

合宿後の話になるが。

修から連絡を受けた、暇を持て余していた清麿が、ボーダーの赤点常習犯の面倒を見る羽目になった。

アンサートーカーのおかげで負担はないに等しいが、太刀川の不真面目さが如何に常軌を逸していたかを知り、涙をこぼしたという。

取り敢えず太刀川はボコボコにされることが確定した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

二日目のみくる派の戦績は、勝ちが三割、負けが四割、引き分けが三割であった。

確実に実力は上がっているものの、やはり突破力不足が足を引っ張り、出水などの「詰み」を作ることを得意とする人間がいる班には勝てなかった。

しかし、太刀川率いるチームに僅差で勝てたのは、大金星だろう。

…無論、何故か参加していたレイジや迅、若手を育てることが生き甲斐になりつつある25歳の東春秋が率いるチームには、それはそれはもうこっ酷く負けたが。

 

「いやぁ、今日も負けた負けた!

強くなってるけど、やっぱお前ら弱いことにゃ変わりねーな!」

「「す、すみません…」」

 

光の辛辣な言葉…早々に慣れた…に、二人してがっくりと肩を落とす。

それに対し、出穂が反論した。

 

「や、足引っ張ってんのはウチもっすよ。

即落とされた時もありましたし」

「俺もそれなりに落ちたなぁ」

 

やはり、成長したとはいえ、全体的に見れば「弱い」部類のチーム。

そう思えば、かつて困難に立ち向かったパートナーたちで組んだチームも、全体的に見れば弱かった。

 

何せ決め手になる攻撃手段が、ガッシュとユー以外に存在しなかったのだ。

 

その攻撃もたかが知れており、ディオガ級の術を相手にすれば、普通に押し負けた。

それもファウードの一件までのことで、ゼオン戦を経て、格段に強くなりはした。

しかし、竜族の神童とまで呼ばれた上、研鑽を重ねに重ねたアシュロンには、ユーは兎も角、修は赤子のようにあしらわれた。

…ただ、アシュロンが放ったテオブロアが香澄のお気に入りのワンピースに直撃し、怒り狂った彼女に一方的に叩きのめされたが。

 

クリア戦も非常に厳しい戦いを強いられており、修とユーに至っては、「終始誰かを圧倒する」という状況など、ほぼ無かった。

この弱さと、どう向き合うか。

頼りになる清麿は、かつての仲間たちは、それぞれの場所で前を向いて生きている。

修は決意を新たにし、今回の反省点を導き出した。

 

「じゃあ、食事がてら反省会をしよう。

僕が思うに……」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「うーむ…。オサムに勝てたのはいいけど、結構ギリギリだったな…」

「…………そうね」

 

その頃、空閑はと言うと、同じく反省会を開いていた。

組まれたチームは、A級が木虎藍、B級が日浦茜と諏訪洸太郎、そして空閑の四人。オペレーターは、現在「新イベ周回してくるから〜」と席を外している国近柚宇である。

勝率で言えば高い方で、チームも強い部類ではあるのだが、中の上程度の実力といったところだった。

 

「木虎先輩、なんであんなに不満そうな顔してるんでしょうか?」

「三雲たちにいいように嵌められて、真っ先に落とされたのがショックなんだろ。開始1分も経ってないのに落ちてたし」

「諏訪さん?」

「悪かった。悪かったからその顔で包丁向けんな生身だぞ今」

 

そう。来馬考案の「ドンキーコングもどき」という、閉鎖空間でグラスホッパーを活用し、瓦礫や消火器などの障害物を弾きまくるという戦法に引っかかったのだ。

囮役を務めた出穂を深追いしたのが運の尽きで、修が算出した軌道に弾き飛ばされ、そこを来馬に撃ち抜かれた。

その間、なんと試合開始から40秒。

諏訪が指揮を取り、空閑、日浦とのコンビネーションを上手く決めたことにより勝利を収めはした。

が、木虎としては不満の残る結果となってしまったのである。

 

「で、でも、それだけ木虎さんを警戒してたんですよ!きっと!」

「分かりやすく『強い』って判断できるヤツほど、戦力を注がれるからな。

オサムとおんなじだ。よかったな、木虎。

オサムと同じ土俵に立ててるぞ」

「それ喧嘩売ってるの?」

「おい空閑やめろ。ナチュラルに煽るな。

木虎も乗るな。なんで三雲が絡むとそんな機嫌悪いんだお前は」

 

チームワークは出来ているが、空閑と木虎の仲は最悪だった。

というのも、木虎がプライドが高い性格に対し、同い年の…しかも、これまで散々弱さを露呈してきた修に一方的に負けたことに、空閑が「お前とオサムとじゃ勝負になんないよ」と煽ったのが原因である。

 

先日に勝ちを経験し、胸のすくような思いに浸っていたタイミングで、罠に嵌められて瞬殺されたのだ。

加えて、緑川がグラスホッパーを絡め手に使ったのは、修の指示によるものとばかり思っていた。

しかし、聞けば考案したのは来馬で、トドメをさしたのも来馬。

修は空閑の方へと向かっており、見向きすらされていないと認識した彼女の苛立ちは、最高潮に達していた。

 

「……次は、絶対に勝つ……!」

 

その苛立ちを向上心に変えるのが天才的に上手いというのが、木虎藍の長所である。

 

「すわさん、こーゆータイプは煽っといた方がやる気出すよ」

「……………はぁ。中学生は単細胞っていうか、なんていうか……」

「それ、中学生の私たちに言います?」




草壁さんは公式で「性格悪い」とか言われてたので、エグい絡め手とか普通にやると思います。
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