オーバーロード・元ナザリックの騎士王   作:魔女っ子アルト姫

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第10話

村へと到着した時、そこでは既に死の騎士によって村を襲っていた集団は壊滅的な被害を被っておりほぼ全員が死に絶えていた。数人は残っていたがそれらに対しては警告を発しそれらを上へと通達させるメッセンジャーとして追い払うという形を取った。その際にモモンガは本名を名乗らずに我々はという言い方をして集団の名としてアインズ・ウール・ゴウンの名を名乗った。そしてその後によそ行きの名前としてアインズ・ウール・ゴウンを名乗っていいかとアルトリウスに尋ねるのであった。

 

『モモンガがこの世界にいるかは分からないですけど、小動物と同じって言うのは何かあれかなぁって』

『別にいいと思うよ、というかギルド長なんだしそれを使うのは悪くないんじゃね?後他にもプレイヤーが居たら警告にもなるし一石二鳥って奴だよ』

 

好意的な反応を返して貰った事に安心しながら外ではそう名乗ることを決めたモモンガ。村に恩を売りつつも周辺地理の詳しい情報を求めた、キャメロットのアサシンの情報はあるが現地で得られるものもあれば更に明確な事が分かると踏んだ上の行動だった。この村、カルネ村が属するリ・エスティーゼ王国、王国との対立を続けるバハルス帝国、人類の護り手を謳うスレイン法国などの周辺国家や一番近くの大きな都市のエ・ランテルなどの情報を取得できたのでまずまずの収穫だと素直にモモンガは満足気であった。

 

「さて色々と情報が出てきましたね、俺としては冒険者なんかが気になります」

「同じく。だが聞いた限りだと対モンスターへの傭兵というイメージだな」

「近々エ・ランテルと言う所にアサシンの派遣をお願い出来ます?」

「請け負った」

 

葬儀の為に村長夫妻が出て行ったのに合わせて自分達も情報の整理などを行う為に話をすることにする。今回の一件は結果的に動いて正解だった、それに安心しつつも思考を巡らせるが視界の端で葬儀が見えたのだが……そこでジャンヌがシスター的な役割をしているのが見えた。流石聖女なだけあって様になっているのだが何故彼女が此処にいるのだろうか。

 

「アルトさん、ジャンヌ呼んでたんですか?」

「いや俺じゃない。アルトリアの指示を受けてキャメロットから来たらしい、せめてもう一人連れて行ってくださいって言付け預かりながら」

「予知スキルでもあるんですかアルトリアって」

「ある種直感がそれに該当するのかも」

 

確かにこれは疎外感を感じるなと納得しながらもアルベドやデミウルゴスとは別の意味で高次元な優秀さを見せ付けるアルトリアに苦労を察する。そしてジャンヌが死者を悼み冥福を祈る言葉を捧げている時に泣き崩れている少女らを見た、それは自分達が助けた少女たち……姉のエンリ・エモットとネム・エモットが映り込んだ。死の騎士が村に足を踏み入れた段階で既に両親は死んでいた、致し方ないとはいえあんな姿を見ると胸が締め付けられるような気分になる。それを察したようにアルトリウスが肩を叩く。

 

「そう思うならこの村の再建に手を貸そう、折角友好的な関係を築けたんだ。たっさんもそう言うさ」

「です、よね……せめて未来が充実するように手を貸してあげましょう。きっと、たっちさんもそう言いますよね」

 

そう言われて僅かばかり胸が軽くなった気がした。過去は変えられないが未来ならば変えられる、そう思いながら出来る限りの支援はしようと決意しながらも村の中を見て回る事にした。リアルでは見られない自然がいっぱいの中にある村、それだけで様々な刺激が得られて楽しさがあった。幸いな事に村を助けたことで村長や村人たちは酷く協力的、それに支援を重ねれば自分達の立場は強固になるだろう。そんな中で兜の中から人間を見つめているアルベドの視線に侮蔑がある事に気付く。

 

「アルベドよ、人間が嫌いか?」

「脆弱な生き物。下等生物。虫のように踏みつぶしたらどれほど綺麗になることでしょうか、いえ例外はおりますが」

 

異形種らしいと言えばらしい、だが折角協力関係を築けたのにこれは頂けない。

 

「その考えを捨てろとは言わん、だがこの村では冷静に優しく振る舞え。演技というのも重要だぞ」

「アルベドよ、確かに人間は脆弱だ。だがそれだけで判断するのはナザリックに不利益を齎す、そこは気を付けておけ。驕りは死を招くぞ」

「承知致しました」

 

これなら大丈夫だろうと思い、日も落ち始めているのでそろそろ帰ろうかと思っている時の事。周辺警戒から戻って来たと思われるモードレッドが集まっていた村長たちに情報を伝えているのだが何やら戸惑いと混乱が起きているらしい。モードレッドはやれやれっと言った風な反応をしているが自分達に気付くと手を振ってくる。そちらへと向かいながら話を聞いて見る。

 

「如何されました、村長殿」

「おおっアインズ様にアルトリウス様。実は先程モードレッド殿からお話を聞いたのですが、村に騎士風の格好をした馬に乗った一団が近づいて来ているそうでして……先程の仲間ではないかと思いまして……」

 

話しながらも僅かな期待がある事に二人は気付いている。だが失礼に当たるのではないだろうかと不安に思いながら伏せている。まあ断るつもりはないのだが。

 

「如何する父上に……アインズ様?」

「では私達が何とかしましょう、村長殿は私達と共に。他の皆さんは集会所へ」

「モードレッド、ジャンヌと共に彼らを守れ。そしてアルベドは我らと共に」

「畏まりしました」

「あいよ父上。んじゃ皆を集めて集会所に急げ~」

 

軽いノリだがそれが村人たちには接しやすい所があるのかモードレッドの指示に素直に従いながら急いで移動していく。村長も酷く安心したようにその場に残る、流石に緊張しているようだが自分達を信頼してくれているのか逃げ出そうなどはせずに立っている。ジャンヌの誘導などもあって速やかに村人の移動が終了し、村長と共にその馬に乗った一団を迎え撃つことにするモモンガ一行。暫しすると二十人ほどの騎兵たちが隊列を組み、広場へと進入してきた。その装備に統一性はなく、まとまりの無い傭兵集団を連想させるが何処か連帯感と規則正しい隊列に傭兵では無い事を理解する。そして先頭である屈強な男が声を出す。

 

「私はリ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士たちを討伐する為に王のご命令を受け、村々を回っているものである」

「王国戦士長……もしや、あの……王直属の超精鋭……」

 

かつて王国の御前試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭兵士たちを指揮しているという話を以前商人から聞いたらしい。流石に本人かの判別は出来ないがカルネ村は辺境の村に当たるのでその辺りは致し方ないだろう。

 

「あなたが村長か、隣にいる者は何者だ?」

「この方々は……」

「いえそれには及びません、初めまして王国戦士長殿。私はアインズ・ウール・ゴウン、旅をしながら研究を続ける魔法詠唱者です」

「アルトリウス・ペンドラゴンと申します、我らは丁度この村を訪ねた際に襲撃に遭われていたので助けたのです」

「っ……!!この村を救って頂き感謝の言葉もありません」

 

それを聞いて馬上に居た戦士長は馬を降りると迷う事もなく頭を下げながら村を助けてくれた事への感謝を述べた。王国の戦士長がどの程度の立場なのかいまいち分からないが戦士らを纏める者が何も分からない相手に頭を下げるのは凄い事だろう。そして同時に戦士長、ガゼフの人格の良さが滲み出ている。非常に好感が持てる男だ。

 

「いえ此方も旅をしている身、この辺りの情報を頂く為に助けたので無償ではありません故」

「報酬、では冒険者という事で宜しいのですかな」

「それに近い物、ではあるかもしれませんね。各地を転々としながら研究をしておりますので」

 

それを聞きながらもガゼフは何やら探るような素振りをしながらも自国の民を救ってくれた恩人へ余り失礼な事は出来ないと言葉をそこで止めつつも見事な鎧に身を包むアルトリウスへと目を移すのであった。

 

「ペンドラゴン殿はもしや貴族なのでしょうか、お名前もそうですが纏われる鎧も見た事がない程に素晴らしい……」

「そのような物です。大昔に没落していますので平民と変わりません」

「それは、申し訳ない事をお聞きしてしまいました」

 

気にしなくていいと返す。ある意味で自分よりも騎士らしい、一般的に騎士といえば礼儀正しい真面目な人格者といったイメージがあるのだがこの戦士長はそれにピッタリと当て嵌まっている。そんな思いを抱いている時ガゼフの配下であるひとりの騎兵が村に駆け込んできた。そして、大声で緊急事態の発令を告げる。

 

「戦士長!大変です、村の周囲に複数の人影を確認しました。村を包囲しながら接近中です!!」

「何っ!?」

 

『やれやれ、まだまだイベントは続きそうだな』

『みたいですね……』




実はジャンヌかゲオル先生かで悩んでました。

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