オーバーロード・元ナザリックの騎士王   作:魔女っ子アルト姫

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第13話

「全く君も酔狂だな、食事ならば此方から執務室へと持って行くというのに……」

「済まないな、だがアルトリアの事を考えると此方に来て正解だとは思っているがね」

「それについては同感だな」

 

視線を横にズラせばそこでは満面の笑みを作りながら食事を行っているアルトリアの姿がある……のだが、問題はその食事スピードである。原典、聖剣の彼女はかなりの健啖家であったが聖槍の彼女である所謂ランサーアルトリアは如何なのか分からなかった。が実際は身長も伸びているためか、同じかそれ以上によく食べる。マナーは非常に正しいのでその辺りの心配はする必要はないのだが……何処にあれだけの量が入っていくのかと思える勢い。

 

「だが意外だったな、我らが王が家庭的な味付けが好みだとは」

 

アルトリアの隣で食事をしているアルトリウス、彼が今食べているのは鶏の照り焼き。付け合わせとして茹で野菜に味噌汁、そして白米があるキャメロットの大食堂では定番的な定食のセット。今まで執務室などに料理を運んでいたエミヤとしては王に相応しい豪華な物を準備していたのだが家庭的な料理を美味しそうに食べる姿は酷く新鮮。そもそも騎士王が此処で食事をする事自体が新鮮だが。

 

「王であるこそ、かもしれないな。王とは民がいてこそだ、民がいて王がいる。そんな王が家庭の味を知らないのは可笑しいだろう?」

「成程、我らが王は非常に柔軟な思考且つ視野が広い事が分かった。私としては非常に好感が持てる」

「有難う。それじゃあ米のお代わりを頼めるか」

「ああ、任せておくといい。それと追加の照り焼きの準備もしておこう」

 

器を受け取りながら厨房へと入っていくエミヤの背中は心なしかウキウキしているように映った。

 

「おっマスターじゃねえか、なんだよ今日はここで食ってんのか」

「随伴しても宜しいかなマスター」

「嗚呼っ好きにして構わないぞ」

 

ドカリっと乱雑な音を立てながら目の前に席に着いたのはクー・フーリンとスカサハ。如何やら二人も食事の時間だったらしい、基本的に大食堂では何時でも食事を取る事は出来る。階層によっては鍛錬や巡回などをしている関係でバラバラだったり一緒だったりする。

 

「珍しいじゃねえか、何時もは自分の部屋だろ?」

「偶には夫婦らしい事をしようと言う事になってな、共に食事をな」

「なる程の、それでアルトリアの顔が普段以上に綻んでいる訳じゃな」

「顔だけじゃなくて喰う量も増えてねぇかこれ」

 

焼肉定食の肉に手を出しつつも凄い量を食べ続けているマスターの伴侶を若干白い目で見る、食べ方自体は非常に清楚且つ礼儀正しい物だがそれもこの量が前では台無しという物だ。アルトリアも基本的にここで食べるが、此処までは食べない。

 

「フフフッアルトリウスが隣にいてくれるだけでご飯が美味しく感じます♪」

「そりゃ結構な事だが……何処に入ってんだよ」

「言うだけ無駄だ、奴は普段からこうじゃ」

 

これだけの食事を見せ付けられたら百年の恋も冷めそうなものだが、この程度で思いを変える程にアルトリウスが彼女に抱く思いは安くも軽くはない。幸せな横顔を見ながら自らの幸せを感じる、嫉妬心さえ覚えるいい夫婦関係だと言わざる言えない。

 

「んでわざわざここで飯食ってんのは本当にそれだけか?」

「ああそれだけだ―――そうだスカサハ、要望の仕合の許可は下りた」

「おおっ……それは、我らにとっての朗報……」

 

妖艶で凛々しい女としての顔が一変、戦士としての表情へと変わる。思わず箸を置きながらもその手に槍を握りながら滾る闘争心を鎮めようと試みている。階層守護者である前に彼女は戦士、強い相手と手合わせをする事で感じる感情は非常に大きい。

 

「腕が鳴るねぇ……!!当然俺も言っていいんだろうなマスター」

「無論。コキュートスも武人として楽しみにしているとの事だ」

「いかんな、マスターの前だというのに気が昂って致し方ない……んっすまない、恥ずかしい所を見せたな」

 

口元に指をやりつつ僅かに恥じらいを浮かべながら流し目で此方を見てくるスカサハ、その姿は非常に妖艶で美しいのに可憐さを纏っている。本来あり得ないような姿に思わずグッとくる。エロさもあるのに清楚的でもあり、美しいというのは非常にずるいのではないだろうかと思える。

 

「戦士としては当然の反応だ、恥ずかしがる事など無いさ」

「我らがマスターは本当に心の掴み方を心得ておる、ついらしくもない姿を見せてしもうた」

「カマトトぶるのも大概にしろってんだ……似合ってねぇんだよ」

「―――ほう、如何やらもう一度死の国へと招いた方が良いようだな……」

 

クー・フーリンとスカサハの言い合いは遂に互いのぶつかり合いまで発展、二人は大急ぎで食事を済ませると自分達の階層へと向かって行く。そこでぶつかり合うつもりなのだろう……クー・フーリンも上等だと言っていたがきっとスカサハも本気になって叩き潰すつもりなのだろう。ランサーが死んだ!!という事にならなければいいのだが……。

 

「やれやれ相変わらずですね……ご馳走様でした」

「食べ終わったか」

「ええっ今日も非常に美味でした」

 

口元を優雅に拭いてから手を合わせる、手の凝った料理も良いがこう言った簡単に出来る家庭的な味わいも良い物だと実感する。時折此処で食べる事を決めつつ執務室へと戻る。

 

「何時もながらエミヤと紅閻魔の料理は最高です」

「全くだな」

 

酷く満足そうにしている妻に笑みを浮かべながら自らの席に付く、腹も心も満ちて非常に気分が良い。その気分のまま妻にある事を聞こうと思ったのだが折角いい気分なんだからほかの事にして置こうと話題を変えておく。

 

「アルトリア、君は何か私としたい事はないか」

「そうですね……ベッドで私を抱いてくださったら限りなく嬉しいですよ」

「何か、随分とそれ推すね。なんかあった」

 

聞いて見るとナザリックにNPCを伴って行った際、アルトリウスとモモンガが話している間のNPC同士の交友時間中に様々な話をしたときに至高の御方のお世継ぎの爺やポジションをコキュートスが目指しているという話を聞いた。

 

『その辺りはアルトリアに聞いた方が良いのではないかい、既にモードレッドという御息女がいる訳だしね』

『そこで私に振るのですかデミウルゴス、まあ確かに私とアルトリウスの子ですけど……ま、まあ彼が望むであれば次の子を産む事だって私は……』

『ォォォッ!!デハソノ時、是非私ニ剣ノ指導ヲサセテ貰イタイ!!……ォォォッ流石ニ御座イマス坊チャマ、コレデハコノ爺ヲ追イ抜クノモ早イ事……』

 

「という事がありまして」

「コキュートスにそんな一面があったのか……」

 

武人という設定のコキュートスが爺やに憧れているというは意外だった。息を荒くしながらも妄想に耽るなんて予想外過ぎる、そんな事もあってアルトリアとしては自分が望むならばそのつもりだと言いたいのだろう。まあ確かにモモンガはアンデッドな上にスケルトン、子供を望む事は難しいだろうしある意味正しいかもしれない。〈人化の指輪〉がそこまで出来るのかは分からないが……希望はあるかもしれないとコキュートスに教えてあげよう、ついでにアルベドとシャルティアにも言ってやろうと決意する。

 

「ま、まあその時が来たらという事にしよう」

「フフフッそう言ってくださるだけで嬉しいですね、では……」

 

そう言いながら自分の手の中に鍵を渡す、一体何の鍵かと思ったがそれは彼女の私室の鍵だった。ギルドの指輪でキャメロット内は自由に転移可能なので意味はないのだが、そういう意味ではなく……これは違う意味を示しているのだと直ぐに分かり、そしてそっと耳元で囁かれる。

 

「何時でも、待っていますから……お好きな時に私を求めてください」

「っ~……!!!!ズ、ズルくないか……!?」

「これでもスカサハとのやり取りで嫉妬しているんですからこの位は許してくださいね」

 

彼女なりの仕返しだと分かると何も言えなくなる。確かに妻帯者である自分が他の女性とあんなやり取りをするのは余り良い事とは言えないかもしれない……

 

「ああでも側室は容認しますからね、その時にはちゃんと私に言ってくださいね」

「そこは認めていいのか!?」

「貴方の一番、そこだけを譲れないだけです」

 

という訳ではないらしい。単純に明確化させる事が目的、自分以外の女性を求めても何も言わないが自分が正妻である事は忘れないでねっという彼女なりの嫉妬を込めたメッセージ。だとしても如何したらいいのだろうか……交際経験なしの童貞には辛い宣言であった……。

 

「そうですね、折角ですから私とあなたでゲームに興じるというのは如何でしょうか」

「ゲーム、構わないが何を」

「そうですね―――」

 

ポンと手を叩きながらも指で文字を描くようにしながら一回転。すると彼女を周囲を光が包み込んでいく、いや回転に合わさるように光が彼女に纏われていく。先程まで纏われていた鎧が変化し、柔らかな純白の装いへと変貌していく。そして頭からは長い兎の耳が飛び出している、その姿は正しくバニーガール。唐突な変貌に目が点になる。

 

「カードで勝負は如何でしょうか、私自信がありますよ」

「っ―――」

「ああこの格好ですか、折角ですから着替えてみました。似合いますか?」

「眩しくて直視できない……」

「フフフッ如何やらこの姿も気に入って下さったのですね、嬉しいです」

 

嬉しそうにしている彼女に眩しさを覚えつつもアルトリウスはある事を思い出した。聖剣の彼女もそうだが聖槍の彼女にはバリエーションとも言える姿が存在している。それらをフレーバーテキストとして書き込んだ記憶がある、確かにあった、そうなるともしかして……と若干嫌な予感を感じてしまうのだが直後に抱き着きながら耳元で囁く彼女に思考が飛ぶ。

 

「ねぇっ……貴方、一勝負如何でしょうか……賭けはせず、あくまで遊びという事で……」

「っ―――分かった……やろうか」

「ええっ嬉しいです貴方♡」

「(分かってやってる、絶対分かってやってる!!?)」

「(フフフッあと少し行けばという感じですね、初心な人♪でもそこも愛おしい)」

 

この後、カードで戦うが一々アルトリアの動作が艶めかしくエロかったからか惨敗した。その様子を見てアルトリアは優雅そうに笑うのであった。




獅子王様とのイチャイチャ、書きたかったから書いた、反省も後悔もしていない。

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