オーバーロード・元ナザリックの騎士王   作:魔女っ子アルト姫

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第14話

エ・ランテル。三重の城壁に囲まれている城壁都市。正しく都市その物が壁といった印象を受ける。その城壁を二つ潜ったところのエリアは市民の為のエリアで様々な立場の住民が日々の営みがある。商いに勤しむ商人が声を張り上げて盛んに客を呼び込んでいた。しかしある一団が歩いている姿を見ると思わず目が留まり、声が静まり返る。先頭を歩く漆黒に輝きつつも金と紫の文様の入っている全身鎧は様々な羨望の視線を集める。だがその隣を歩く男の赤と金が織り交ざった鎧も素晴らしい物だった。

 

そんな二人に続く二人の美女。一方は健康的に焼けた小麦色の肌がスリットの入った修道女は何処か淫靡な印象を与える、燃えるような赤い髪も酷く魅力的。そしてもう一方は幼い印象こそ受けるが確りとした瞳を作っている淡い紫色の髪をしている可憐な少女、だが彼女は確りと鎧を身に纏っておりその上から簡易的なマントを羽織っている―――がそれ以上に目を引くのは彼女の身の丈程もある巨大な盾。華奢な少女が持てるようなものではない筈なのに……と様々な目で見られているが彼ら気にせずに歩き続けて行く。

 

「しかしエ・ランテルに来て早々絡まれるとはな」

「何、何れ彼らも私達に噛みついた事に後悔する」

 

そう言葉を作るのは黒い鎧の騎士、名をモモン……と言ってもその正体は当然ナザリックのモモンガである。そして隣の騎士はアルトリウス、いやアーサーである。話し合いを重ねた結果として遂に冒険者業を行う事になった二人は条件であった僕を連れてエ・ランテルへと乗り込んだ。それに因んで偽名も用意した上で装備も変えてきた。モモンの鎧はモモンガの魔法、アーサーの鎧はキャメロットの鍛冶スキルを持つNPC達が腕を振るってくれたものを使用している。

 

「しっかしその鎧……カッコいいですよね!!」

「それは良いんだけどなんか悪目立ちしないかこれ」

「いやいやイケてますって!!」

 

アルトリウスとしては流石にこれは目立つのではないかと心配しているが、モモンガはそれを気にせずに気に入っている。元々の鎧にセイバー・ラーマの要素と色を組み込んだような物になっている。因みにラーマに決まるまでNPCの皆が大いに言い争ったのでじゃんけんで決めろ!!と言った所、ラーマが勝ち上がったからこうなった。

 

「ルギナ、マリー行くぞ」

「はいっす!!」

「はいっ!!マシュ・キリエライト……じゃありませんでした、マリー確りと任務を遂行してみせます!!」

 

ルプスレギナはルギナという偽名、そして大きな盾を持つのはシールダー・マシュ・キリエライト。当初はアサシンにすべきかと思ったのだがアサシンはアサシンで情報収集などに専念して貰う為に未知の世界に対する備えとして圧倒的な防御力と魔法の扱いにも長けるマシュが選出された。そして彼女の偽名はマリーである。

 

 

「アーサー、如何する」

「フムッ……さてどうしようか」

 

酒場兼宿屋でのもめ事を乗り越え、問題も無く冒険者への登録も済ませる事は出来たのだがある事を失念していた、文字が読めない。異世界なのだから文字などが違っても当然なのだがうっかりしていた。流石に此処まで来て受付でお願いするのはカッコ悪いのでは、と思ったが登録の際に代筆をお願いしたのでもう気にするべき物ではないのかもしれないが……。どんな依頼にすべきか迷っている時、後ろから声を掛けられる―――どうやらかなり目を引いてしまったらしく興味を持たれたらしい。

 

「あのご依頼が決まってないのであれば私達と一緒に仕事をしませんか」

「仕事、ですか。その内容をお聞きしても?」

 

一度アーサーへと視線を移すモモンに頷く、このまま停滞し続けるよりはいいだろうと話を受ける事にした。そして話す場として冒険者たちの打ち合わせ場所として使われる中二階へと通された。

 

「改めまして……本当に申し訳ありません。私たちは『漆黒の剣』というチームを組んでおります、私がリーダーをしているペテル・モークです。こちらがチームの目であり耳であるレンジャーのルクルット・ボルブ、ドルイドのダイン・ウッドワンダーです」

「宜しく☆」

「宜しくするのである」

 

爽やかそうな青年、ペテルが挨拶をしつつメンバーの紹介へと移っていく。隣のレンジャーのルクルットは随分とにこやかにしつつルギナとマリーへと笑いかけている。そんなルクルットの隣で他のメンバーと比べるやや歳が言っているようだが丁寧な言葉遣いをするダイン。

 

「そしてチームの頭脳、ニニャ―――術者(スペルキャスター)

「宜しくお願いします。しかしその二つ名やめません、恥ずかしいです」

「いいじゃないですか」

 

漆黒の剣の中で最も若く寧ろ幼いという印象を受ける少年ニニャ。如何やら彼は生まれ持った異能(タレント)持ちらしく、それが二つ名に影響しているらしい。タレントとはこの世界における固有の物、偶に人間が生まれ持った力でその種類は千差万別。ニニャの物は『魔法適正』。魔法の習熟が通常の倍近く早いらしく8年かかる魔法を4年で習得可能になるという物らしい。同じく魔法詠唱者のモモンガは素直に羨ましいと思った。

 

だがこのエ・ランテルにはより強力なタレント持ちがいるという話を聞く事が出来た。ンフィーレア・バレアレ。あらゆるマジックアイテムを使用可能という物、それを聞いて思わず緊張が走ってしまった。恐ろしいと思うと同時に是非ともその力を押さえておきたいと思いながらも此方の話をしておく。

 

「改めまして私はモモンと申します、一応このパーティのリーダーを務めております」

「アーサー、好きなように呼んでくれて構わない」

「そしてルギナとマリーです」

「宜しくっすよ」

「宜しくお願いします」

 

気軽な挨拶とキッチリとした挨拶の対照的な美女のそれらに漆黒の剣の面々も頭を下げる。それらを受けて即座にルクルットが動いた。

 

「所で一つお聞きしたい、レギナさんとマリーちゃんとお二人はどんな関係なのでしょうか!?」

 

それにペテルらはまた始まった……と言いたげな態度を作る、恐らく何時もの事なのだろう。それらを考慮しなくてもルギナとマリーは絶世の美女、惹かれるのは当然だろうし男としては気持ちは非常に分かる。

 

「仲間だが……」

「惚れました付き合ってください!!!」

「普通に嫌っす、凄い軽薄だしタイプじゃないっす」

「ガハッ!!!」

 

ど真ん中を突き抜けた遠慮を一切込めない本音に思わず膝をつくように崩れ落ちる、下手に言い回すよりこう言った方がダメージが大きいという事を心得て敢えてそんな言い方をしたのだろう。事実、僅かにルギナの口元が持ち上がっており愉悦を感じているように見える。そこへまるで縋るようにマリーへと視線を移す、天使のような笑みで笑いかけてくるので一縷の望みをかけるのだが―――

 

「ごめんなさい、あの見ないでもらえますか―――気持ち悪いです」

「―――……」

「ル、ルクルットが崩れ落ちたのである!!?」

 

まるで砂になるように崩れ落ちる姿に慌ててダインが抱き起すが、口からは魂のような物が漏れており真っ白になっている。何の遠慮もない直球の拒否、そこに追い打ちを掛けるかのように飛んできた心を抉る拒絶。流石に精神的なダメージがキャパシティを超えたのだろう……哀れだが同情はしないでおく。

 

「すいません仲間がご迷惑を……」

「い、いえ此方こそ……(よ、容赦ねぇ……)」

 

そんな所へ受付嬢がやってくる、何やら自分達を名指しした依頼が舞い込んだとの事。思わず顔を見合わせるが自分達は既にペテルたちと仕事をすると約束をしてしまっている。断るべきかと思案するとペテルは嫌な顔一つせずに言う。

 

「是非其方を優先してくださいモモンさん、折角の名指しの依頼ですし」

「いえしかし……ではこうしましょう、お話を聞いてから決めます。その時に内容にもよりますが合同で受けられるかどうかを確認して共に受けるというのは」

「そんな気を遣って頂かなくてもいいのに……いえ、これ以上は無粋ですね。そうさせて頂きます」

 

とまずは依頼人を確認し、依頼を決める事になったのだが……その依頼を持ってきたのは件のタレント持ち、ンフィーレア・バレアレであった。接点も何もない筈なのに……と思っていたが如何やら酒場で一悶着を起きた事を聞いたからとの事。しかも捻じ伏せたのはモモンらよりも上位の冒険者、格上の冒険者を倒せる最下級冒険者、だから雇いたいとの事だった。何処か引っかかるが兎も角それを漆黒の剣のメンバーそれに巻き込みつつ受ける事にしたのであった。

 

「後さ、何でモモンガさんたっさんリスペクトな鎧なの。それじゃあ魔法とか全然でしょ」

「まあそうなんですけど、この世界でどのぐらい通用するかのテストです。後純粋に前衛にも興味あったので」

「成程ね……まあマシュもいるから大丈夫だとは思うけど」


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