エ・ランテルに到着したモモンガ達は視線を集めていた。既に日は落ち、夜の帳が降りている中でも住民だけではなく街中を行く旅人や商人の視線を賞賛と驚愕に染め上げながら集め続けていた。どよめきの中心部に立っているホワイトパール色の毛色に大魔獣に腰掛けるようにしている漆黒の鎧を纏った剣士モモン、その周囲にはそれらの視線に満足するようなルギナ、魔獣の毛に触れて嬉しそうにするマリー、兜の下で複雑そうな表情を浮かべるアーサーがいる。
『ううぅぅぅっ……とんだ羞恥プレイだぁ……』
『が、頑張れモモンガさん。周囲の視線は取り敢えず完全に称賛とかだから……』
『だったら代わって下さいよぉ……』
トブの大森林、そこに君臨している大魔獣たる森の賢王。その正体は20メートル近い尻尾を持つ3mを超える巨大ジャンガリアンハムスターだった。当初の予定では切り伏せてて尻尾やらを確保する予定だったが……思っていた以上に知能があるので森の賢王を配下にしたとすれば名声も高まるとの事で力の差を見せ付け、従属させる事にした。まあ信じられないかもしれないと思ったのだが―――
『凄い、なんて立派な魔獣なんだ!!?』
『強大な力と叡智を感じるのである!!』
『これだけの魔獣を従えるとは、ルギナちゃんとマリーちゃんを連れまわる事はあるなぁ!!』
『私達だけでは間違いなく皆殺しだったでしょう……流石はモモンさんとアーサーさんです!!』
モモンガとアルトリウスからすればこれは唯のデカいジャンガリアンハムスターにしか見えない、確かに大きいが何方かと言えば可愛らしいという感想が真っ先に出るのだが……矢張り異世界故に感覚も異なるという事なのだろうか……。そんな賢王を従えたのでいざ凱旋した……のだが気分的にはもう羞恥プレイのそれである。
『……アルトさんのアドバイス通りに胡坐で座って正解でした……流石にでかいハムスターに大股開いて座りたくは……ないです……』
『それでもこの世界的にはドラゴンに跨る竜騎士とかペガサスに乗る聖騎士みてぇな目で見られてるんだろうな……やっぱ異世界だわ此処』
もう絶えずアルトリウスとの念話代わりの〈伝言/メッセージ〉をやって居なければやってられない。
「それではモモンさん達はこれから森の賢王の登録ですね。私たちはンフィーレアさんを手伝って荷降ろしをしてきます、またあとで合流しましょう」
「ええっではまた後で」
一旦ンフィーレアと漆黒の剣と離れて自分達は組合へと向かう、そんな中でモモンとアーサー達は森の賢王の名前を考えていた。
『ハムスケとかダイフクも良いですかね』
『ハムスターが相手だと思うとまともなネーミングで安心したよ』
『何か信用無いですね』
『異形種動物園』
『う"っ』
生憎モモンガのネーミングセンスは良くない事はアルトリウスは勿論、ギルドメンバー内では周知の事実だった。アインズ・ウール・ゴウンの名前になる前に彼が出した名前の案は「異形種動物園」だった。その時はギャグという扱いになって済まされたが……その対象を考えれば今回はまともな事に安心感を覚えるのであった。そして組合に到着した時に登録した際に彼が決めた名前はハムスケとなった。これで雌だったらどうするのだろうかと思ったが某などと言っていたし多分大丈夫だろう……尚、ハムスケが雌だった事が後日無事に判明した。
「しかし大森林の伝説の大魔獣がこれ程に精強だったとは……長生きはするもんじゃな」
「そう言われると照れるでござる~」
無事に登録も終了しンフィーレアが待つ店へと向かっている途中で彼の祖母であるリィジー・バレアレと遭遇する。丁度店に戻るという事なので道すがら話をしながら向かって行く。そして到着し店の中には行った時、思わずハムスケが呟いた。
「殿、何やら血の匂いがするでござる」
「血……モモン」
「ああ、リィジー殿我らが先に」
その言葉にマリーとルギナがリィジーの守りを固めさせながら先へと行く。匂いがする方向へ……店の奥、薬草の保管庫、其方へと足を向けていった先にあったのは……変わり果てた姿となった漆黒の剣、殺され、貶められ、ゾンビへと変えられた哀れな姿にカリバーンを取り出して抜刀、ゾンビを沈めると―――アルトリウスは迷う事も無くアイテムボックスから魔法が込められた指輪を取り出す。
「アルトさんそれは……」
「レアガチャで引いた指輪、こいつには第九位階魔法〈真なる蘇生/トゥルー・リザレクション〉が込められてる。回数制限はないがその代わりに消費魔力は数倍になる、使わせてくれないか」
取り出した意味は何かは分からなかった、だが騎士としての本能が何かを叫んでいるのかもしれない。純粋に助けたいという思いか、それとも……旅の間の礼か。分からないがモモンガもそれを許可し〈真なる蘇生/トゥルー・リザレクション〉が発動されると、聖なる光が彼らの魂を現世へと呼び戻し蘇生が成された。
「モモン、さん……ンフィーレ、アさんがっ……攫われ、ました……!!」
最後の一言を告げるとペテルは意識をまた失った、リィジーらを呼びルギナに治癒を任せながらある事を決める。
「リイジー殿、彼らはお孫さんを守ろうとしてくれたようだ。私としては彼らの代わりにお孫さんを救出に行く。その代わりに彼らを見ていてもらっても良いだろうか」
「その程度の事ならばお安い御用じゃ、宜しく頼みたい……!!」
漆黒の剣を彼女に任せつつもモモンガはアルトリウスの身勝手を咎めずに寧ろ同意見を浮かべていた。指輪にて人化しているからだろうが、彼らには本当に世話になった。何より……まるで嘗てのギルドメンバーのように仲良く連携も取れていた彼らを気に入っていた、だからこそ決めた。このような事を仕出かした輩を討ち取ってやると。部屋を一つ借りながらエ・ランテルの地図を広げながら作戦会議を行う。
「アーサーさん如何されますか」
「先程ペテル達を別室に運んだ時に荷物を見たが、金目の物はそのまま。だが彼らの冒険者プレートのみが奪われていた」
「プレート、をですか。でも何の為にそんな物を奪うんすかね?」
「ハンティングトロフィー代わり、だろうな。記念品のつもりか……それを探すには―――〈物体発見/ロケート・オブジェクト〉だな」
アイテムボックスから無限の背負い袋を取り出し、そこからスクロールを取り出して地図の上に置く。それでは早速発動させますとルギナは手を伸ばすがそれを止めながら追加のスクロールを出していく。
「情報収集系の魔法使用時には様々な下準備を行う、対抗魔法へのカウンターや偽報を与える魔法も同時に発動させる。これが基本だ」
「胸に刻むっす!!」
とにかく相手の情報を収集し一気に叩く。これこそアインズ・ウール・ゴウンの諸葛孔明、ぷにっと萌え考案の誰でも楽々PK術。今回もそれに則って動く、全てのスクロールを発動し終えて場所を特定するとルギナは地図でそれを示す。そこはエ・ランテルの墓地、同時に映像を映し出す魔法を使って情報を収集するとそこには無数のアンデッドの軍勢の中に佇むンフィーレアの姿がある。
「確定か……だが様子が可笑しいな、洗脳でもされているのか」
「彼のタレントはどんなマジックアイテムでも使える、それを利用されたか」
「……あり得るな。どんな企てかは知らんが真正面から叩き潰してやろうじゃないか、そうされた方が相手も憤るだろうし我々の名声の為にもなる」
相手を上回る戦略で蹂躙するのも良いが長い時間を掛けた戦略をシンプルな真っ向手段で叩き潰すのも相手の心を粉砕するには有効、ぷにっと萌えもそう言っていた。
「うっひゃあそれは心が躍るっす~!!」
「マリー、全力を尽くします!」
「行こう」
「ああ」
漆黒の剣は生存させる事にしました。
ある種アルトリウスのキャラ付けの一環というか方向性、みたいなものですかね。
ゾンビ化しているの蘇生できるのかとも思いましたが……高位の第九位階の蘇生魔法によるものだからOKという事にします。