オーバーロード・元ナザリックの騎士王   作:魔女っ子アルト姫

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第22話

自らの城へと戻ったアルトリウスは一先ず自分の席に着きながらも唸り声を上げ息を吐き出しながら、これからの事を思案するように高い天井を見上げてしまった。予想していた事が当たった事が嬉しいような出来る事ならばあたって欲しくなかったような気分になっている、複雑に絡み合ったそれを解す事を諦めて取り敢えずこれからの事を考える。

 

「法国か……WIを抑えられた事は大きいが、これで向こうも脅威を認識した筈……どう動くだろうな」

 

最強とされる漆黒聖典の全滅とWIの喪失。法国からしたら最強の戦力と最上位の装備を失った事になるがそれによってどう動くだろうか、取り戻そうとするかそれとも迂闊に手を出そうとはしなくなるか……何方にせよこの世界で自分達以外のユグドラシルプレイヤーの存在が明確化しより一層の注意を払って行動すべき事が分かる。

 

「ナザリックは良いとして、問題はこっちだな……つうか向こうにWIがありすぎんだよなぁ……」

 

WIの対策として外部へと出向く高レベル者にはWIの貸し出す事を決めたのはいい、だがそれはナザリックだからこそ取れる手段であって此方はそれは取れない。警戒網や部隊の編制や作成行動中の警戒の徹底化などをして対策していくしかないだろう。やる事が増えてきて若干頭が痛くなってきた、自分は軍師キャラではないからこういった事を考えるのは苦手だというのに……全く以て王様をやるのも楽ではないという文句は虚空へと消える。

 

「かと言ってアルトリアに任せっぱなしなんて格好がつかないし……気合入れて考えるしかないか」

 

姿勢を正しながら改めてキャメロットに存在するNPCと既に行われている編成を確認して頭をひねる。3年という時間を掛けて作り上げたキャメロット、そこには課金などで上げたNPC作成レベルで再現した者達がいる。待機している者はいるのでそれらを動員してサポート部隊を作らせるのも良いだろう、かと言ってやりすぎると城自体の守りが手薄になるので匙加減が重要になる。

 

「その点でしたら既に私の方で指示を出しておきました」

「……フッ流石だなアルトリア」

「感謝の極み」

 

小一時間頭を悩ませながら考え抜いた部隊編成、個人的にもこれは良いだろうと思っていざアルトリアの意見を聞いて見て修正やら調整をしてみようと確認しようとしたら既に行われていて自分の苦労が無駄になった。加えてその部隊編成には隙などが全くない程に完璧な物だったので余計にアルトリウスは何も言えなくなった。

 

「暫くは各国の情報収集を行いながら法国を警戒します、他の国にもプレイヤーの遺産がないとは言い切れません」

「確かにな……二十の一つが見つかったら油断は出来ないな……全員に通達してくれ、危険だと判断したら全力で撤退しろと。場合によっては全力戦闘を許可すると」

「既にそのように、スカサハの意見を元にしながらある程度の指標も構築しましたのでこれである程度の危険回避は可能になるでしょう。一部の者は難しいかもしれませんが……」

「ああ、確かにあれは無理だろうな」

 

思わず納得せざるを得ない。キャメロットにも自分に反抗的とまでは言わないが従順という訳でもない存在はいる、何方かと言えば同格という認識を示しているといった方が正しいだろうか……元ネタを考えればそれだけでも十分過ぎる位の驚愕なのだが……かと言って引き際を知らない者達でもないのでその辺りの心配はし過ぎなくていいかもしれない。

 

「ですがアルトリウスが如何してもというのであれば喜んで力を貸してやるという言葉は預かっておりますが……如何します?」

「なんというか本当にらしい言葉だ……出来ればそんな事態が来ないと願いたい」

「全くです」

 

自分を同盟相手と示す二名のNPCはキャメロットの中でも最上位に位置する力を持つ存在、あれらを出すという事はそれだけの異常か危険な立場に立たされるという事なのだから……。

 

「アルトリア、クレマンティーヌの様子は如何だ」

「このキャメロットを満喫しているようです、何やら精神的な問題もあったようですがルーラー・アストライアが保証するとの事です」

「彼女が保証するならまあ大丈夫だろうが……別の意味で大丈夫か」

「ケルトキャンプを受けるよりは大丈夫ですよ」

 

そこを引き合いに出されると何も言えなくなるアルトリウス、取り敢えず彼女の無事を祈っておく事にしたのであった。

 

「武技についての研究は進んでいるか?」

「まだ始めたばかりですから何とも……ですが矢張り皆興味を持っておりますので研究自体は進んでいくと思います」

「そうか……覚えられたら覚えたいからな」

 

戦士としての血が騒ぐのだろうか、主にケルトを中心とした戦士の皆は武技というこの世界特有の技術に強い興味を示し、これを体得もしくはオリジナルの技を生み出したいと研究への意欲的な姿勢を示している。それにNPCが覚えられるのならばプレイヤーである自分も覚えられる可能性がグッと高まるので成功を期待している。

 

「それでアルトリウス、また直ぐに冒険者業に戻るのですか」

「んっ……?」

 

急にそんな事を尋ねてくるアルトリアの表情はどこか寂し気にする子供のようで何処か庇護欲が掻き立てられる。愛する夫が城を離れている事に対して寂しさを感じてしまっているのだろうか、出来る事ならば時間が許す限り一緒に居たいのだろう。それを感じ取ったのか笑みを浮かべる。

 

「いやある程度時間は置く予定さ。次までは―――そうだね、夫婦としての時間を取るとするよ」

「―――っそ、そうですか!」

 

と一瞬で煌びやかな笑みを浮かべるのだが直ぐに軽い咳払いをしながらきりっとした顔になりながら、キャメロットの主なのだから城を長く開け続ける事はいけないと言葉で顔の赤みと恥ずかしさを誤魔化す姿は酷く可愛らしい。

 

「では―――折角ですので私と共に夜空のランデブーと行きませんか。ドゥン・スタリオンに供に跨って夜空を駆ける、ロマンチックだと思いますよ」

「おや、護衛を付けなくてもいいのかい」

「ロマンチックに欠けてしまいますが……貴方の安全の為ですから、夜空をバックにキスの一つでもしてくださいましたら満足出来るのですがね」

「……せめて二人っきりの限定にしてくれ」

「では今此処でお願いしてもいいのですね?」

「君には勝てそうにないな本当に……」




そろそろNPC視点を入れようかな……。

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