「あ~……気軽に寝そべる事が出来てウダウダできるって最高の贅沢だ~」
「全くですね~……」
キャメロットの騎士王、アルトリウスは久しぶりにナザリックを訪れていた。目的地はナザリックに設定してあったアルトリウスの自室、キャメロットを立ち上げた際に脱退したのでもう無くなったと思ったら自分が持ち出した物が無くなっているだけでそのまま残っていた。モモンガ曰く無くしてしまうのもなんだか勿体ない気がしたので残したとの事。
「いやぁそれにしてもこれ美味しいですね、なんて言いましたっけ?」
「バウムクーヘンだよ、ドイツのお菓子なのに知らなかったのか」
「いや軍服とかその辺りしか調べませんでしたので」
そこにあるのは最高支配者の二人ではなく、唯のモモンガとアルトリウスの姿であった。互いにアイテムを使う事で人化を行ってお土産として持ってきたエミヤ製のバウムクーヘンを食べて適当に駄弁っている。
「んであいつは動かさないのか?能力的にもモモンガさんの影武者としては適役だろ」
「いやそうなんですけど……」
口籠るモモンガ、いやという訳ではないのだが気が進まないというのが殆どだろう。まあ気持ちは分かる、キャメロットの皆と違ってモモンガのNPCは完全なオリジナル……そしてモモンガのカッコイイが詰め込まれた物。自分が愛したFateのキャラ再現などとは違うのだから。それが意志を持って動くのだから悶絶物なのだろう。
「アルトさんは良いですよね~……俺のパンドラみたいなことはあり得ない訳なんですから……」
「そこは自分で作ったんだから受け入れなさいよ……というか俺の場合はテーマとしてオリジナルを入れる事があり得ないだけだよ」
「ムゥッ……俺もそういう方向にすべきだったか……」
ブー垂れながらもバウムクーヘンを頬張る死の支配者。それを見ながら紅茶を啜る騎士王、何とも妙な絵だなと内心で呟くアルトリウスであった。
「そう言えばさモモンガさん知ってるか、コキュートスが俺かモモンガさんの子供の爺やになりたいって思ってるの」
「えっ何ですかそれ全然知りませんよ、あいつそんなキャラでしたか!?」
「いや俺も聞いてびっくりしたけどさ」
そんな会話にモモンガは寝込んだまま興味津々と言った表情で友人の方を向く。最近は支配者として頑張っていたんだから偶には羽目を外しても怒られる事はないだろう。
「いや俺骸骨だから世継ぎとか絶対無理……」
「ああその辺りは大丈夫、俺がアルベドとシャルティアに〈人化の指輪〉で行為出来るって言っといたわ。ついでにアドバイスもしといた」
「何してくれてんだテメェェェェ!!!!道理で二人の視線が妙に熱いと思ったわ!!!い、いやアルベドは兎も角シャルティアは無理だからそれで断れる!!」
「まだ余ってた指輪上げといたぞ、俺に抜かりはない」
「騎士王この野郎ォォォオオオオオ!!!!!」
執務室ではアルトリアが夫の代わりにキャメロットの業務の代行を行っていた。本来はアルトリウスが行うべき事柄なのだが、自分で片づけられる事ならば彼にさせる訳には行かないという思い故に率先して仕事を行っているアルトリア。そんな彼女へと報告に来たのはスカサハ、新しくキャメロットの一員となったクレマンティーヌに関する報告を持って来ていた。
「フムッ……成程、つまり我々が武技を習得するという事は十分に可能だと思う訳ですね」
「恐らくな。まだまだ途上故に何とも言えんが儂は可能だと思う」
今現在キャメロットで行われているのはこの世界特有の技術、即ち武技の研究と修得。クレマンティーヌには武技の指導教官として活動をして貰いながら様々な指導を行って貰っている。最初こそキャメロットに委縮、気絶の嵐だったが次第に慣れていったのか今では普通に過ごす事が出来ている。
「可能だと思う、ですか」
「ああ。曰く精神力を消費するという話だがその辺りはいまいち掴めなくてな。一先ずは手合わせを繰り返し武技という存在を肌で感じ、矛を交える事でラーニングしていくしかないだろうな」
全く未知の技術に対して流石のスカサハも苦戦している、という風に感じられるが実際は全く異なっている事をアルトリアは見抜いている。既に基礎的な部分は掴む事は出来ている、だがそれを如何発揮するかが出来ていないだけ。何かきっかけがあればすぐにでも華が開くような段階には来ているのだろう、矢張りクレマンティーヌという
「流石はアルトリウスですね、きっとあの人は此処まで織り込み済みだったのでしょう」
「―――矢張りか?」
「ええ。あの人はこのキャメロットの事を全て熟知しています、スカサハならば直ぐに武技を習得する事が出来ると踏んだ。そしてそれは私達に圧倒的な利となる……そしてその先をも」
武技という物は興味深い、仮にスカサハがクレマンティーヌと同じ武技が使えるようになればその実力は一気に跳ね上がって行く。そしてそれはWIに対する切り札にも成り得るかもしれない、それらと自分達の全てと宝具を併せた時にどんな物になるのか楽しみで致し方ない。
「しかしそうなるとこの世界の住人での実験も必要になりますね、彼女が優れているのは分かります。レベルも上がっていることも分かりますが、逆に一般的な者だとどれ程のペースでレベルが上がるのか、そして力をつけるのかも気になります」
「ならばリザードマンを使ってみるか、アサシンからの報告では近隣に居るという話だろう」
知っていますと言いながら手元の資料の中にあるトブの大森林を中心とした調査報告書内にあったリザードマンに対する物を見る。此処から幾らか勧誘して試すのも悪くないが……好い加減に仕事を寄こせと煩い者にやらせるのもいい、文句は言う癖に得意分野が良いというのだから面倒な事この上ない。
「アルトリウスの手を患せる訳には行きませんし何とかしましょう」
「本当にお主はアルトリウスの為ならば幾らでも働くの」
「当然でしょう、王の妻というのはそういう物です」
胸を張るアルトリア、そんな彼女に対してひらひらと手を振りながら去っていくスカサハ。やる事があると言いながらもその本心は彼女の惚気話を避ける為。去っていくのを見つつムゥっと僅かに唸りながらも溜息一つでそれを飛ばしながら仕事に取り掛かる。
「アルトリウス……貴方は私達の為に身を粉にしてくれた……ならば、その愛に報いる事こそが私達が示す事が出来る愛」
彼女は知っている。このキャメロットを完成させる為に奔走し続けていた愛する夫の姿の事、時折玉座に腰を降ろしつつも眉間に指を当てながらため息を漏らす姿。唸り声と共に怒りを吐き捨てながら計画を練る姿、自分を見て微笑みながら頑張るからっと呟く姿を……全て知っている。故に彼女は奉仕する、完璧にこなす、全ては夫の為に……。
「私の想いを分かって下さるならば早くベットで抱いてくださればいいのに……私の部屋の鍵だって渡したのに……そんなに私は魅力がないのでしょうか……ならば今度、唐突にバニーになって迫りましょうか。いえいっその事……悩殺を狙うべきでは……彼は私が思う以上に初心ですからきっと行けますね、そしてベットに連れ込んで……うむそうしましょういえその位しないときっと抱いてくださりませんでしょう。そしてそれで外れてアプローチを掛けてくださるはずです、こうしてはいられませんもっと綿密な計画を練る為に早く終わらせましょう」
そう思うとさっさと仕事を片付ける為に書類に向かう事にした、何時だって自分を奮い立たせるのは夫への愛なのだから。そして自分にはもう一つ完璧な武器がある―――
「そういう訳ですから手伝ってくださいね―――二人で悩殺しますよ」
「フンッ良いだろう、だが先は私だぞ―――私」
獅子王とした何処か反対のような姿、漆黒の鎧を身に纏ったもう一人の獅子王―――アルトリア・ペンドラゴンの姿があった。
「ぶえっくしょぉい!!!」
「うおっ!?大丈夫ですか凄いデカかったですけど」
「何か急に鼻が……アルトリアが俺を襲う計画でも立ててるのか……?」
「一瞬リア充死ねって言い掛けましたけど俺も人の事言えないので言いません」
アルトリウス、とんでもない