オーバーロード・元ナザリックの騎士王   作:魔女っ子アルト姫

4 / 26
第4話

忠誠が捧げられると直ぐにアルトリアからの報告が始まり、アルトリウスは言葉を詰まらせる事になってしまった。

 

「草原だと、キャメロットが草原に?」

「はい。嘗て我らが城が存在したのは他者を寄せ付けぬ程の絶壁を誇り天を貫かんばかりの大山脈に背後を備えながらも見通しの良い砂漠、しかし見渡す限りの草原。周囲にモンスターなどは存在せず、居たのは小動物のみ。空は晴れ渡った星空のみ、天空城などの物も存在しません」

「そうか、手間を掛けさせたなアルトリア」

 

矢張り転移している、モモンガからの話を総合しても此処は明確にユグドラシルではない事は確実だろう。恐らくだが自分は騎士王としての力を振るう事も出来るのだろう、自分の中に意識を向けてみればスキルなどが一気に脳内を駆け巡っていき使用後のクールタイムまでが確認出来る。明確にユグドラシルというゲームのシステムがこの世界の法則の一つとして機能している、謎だらけだが今やれることを一つ一つ行って行くしかない。まずはキャメロットの隠蔽、内部に異空間が広がる城とはいえそれでもキャメロットは相当に巨大な城。それが草原に出現したならば余計なやっかみを受ける可能性がある。

 

「マーリン、お前の力でキャメロットの隠蔽は出来るか」

 

言葉を向けたのは第七階層守護者、花の魔術師マーリン。酷く浮世離れした絶世の美女だがその実は人と夢魔との混血、綺麗なお姉さんを自称するが何処か童顔な印象がある為か少女のように見えてしょうがない。そして彼女は原典(Fate)で言う所のプロトマーリン、本来は男性であるのだがアルトリウスの趣味で此方側を採用した経緯がある。そんなマーリンは愉快そうにしながらも涼やかな声で応える。

 

「雑作もないよ、私の力をもってすれば一瞬だね。これでもやる時はやるんだからもっと信用してくれて、君は王らしくやれで良いんだからさ」

 

ウィンクを飛ばしながらマイペースに笑いながら応える、周囲からお前はもっと確りとしろと言いたげな視線が飛んでくるのだが構う事もなくマーリンは続ける。

 

「私達は君によって創造された存在だ、その力は君が一番知っている。だからやれで良いんだよ、例え難しい事でもきっと成し遂げて見せるから」

 

酷いマイペースに見えてその中心には創造主であるアルトリウスへの忠義に満ち溢れている、此処の場にいる者は自分に不向きで難しい命令が下されたとしてもそれを達成する為の全力を尽くす。それは当然の事なのだから、君は王様らしく唯命令を下すだけで良いんだから、自分達は配下としてそれを実行するまでだ。そう告げる、それにはその場の全員が頷いた。それはこの場にいる全員の本意だと言わんばかり。

 

「(確かに知ってるけど確認したかっただけなんだけど……それに命令って言うのも何かなぁ……)」

 

アルトリウスは自分に向けられてくる敬意と忠誠に戸惑いすら感じている、確かに彼らにとって自分は創造主。それだけ自分の存在が重いのだろうか……清姫では解りにくかったがあのスカサハが他の面々と向けてくる物が同じ、という事はそういう事なのかもしれない……。

 

「そうか、ではマーリン、幻術の件は任せる」

「お姉さんに任せなさい♪」

 

ウィンクでそれに返しながら命令を貰えた事が酷く嬉しそうに声を弾ませている、他の守護者たちもマーリンに対する視線は大役である守護者としてもっと確りしろという物だったのに心なしか羨ましそうにしている。特にアステリオスはそれが顕著なのか口元に指をやっている、可愛い。

 

「スカサハ、ケイローン」

「「はっ」」

 

同時に上げられた瞳に驚きと共に違和感を覚える、だがそれをぐっと堪えながらも指示を出す。

 

「優れた武芸者であり戦士、そして指導者としても優れている両名にはキャメロット防衛のためのシステムの構築を行ってくれ。各自の判断の元、様々な状況に対応する者を選抜し対応出来ぬ事などはないと言える程のチームを作り上げてくれ」

「お任せを、寧ろその命令を待って居た程。漸く我らが戦士として王の役に立てる、これ程の喜びはない……感謝するぞアルトリウス」

「ご期待に添えるよう、死力を尽くす所存」

 

所々にスカサハらしさこそ感じられるが矢張り自分が設定したそれらよりも何か根幹に自分への敬意があるらしい、少々コレジャナイ感がするがこれはこれで凄いアリだなとポジティブに考えておく。

 

「ジークフリート、マンドリカルド、酒呑童子、アステリオス、お前達も必要であれば手を貸しこのキャメロットを護る為に尽力してくれ」

「「「「はっ!!」」」」

 

一先ずはこんな所かなぁ……と内心で溜息混じりにそろそろモモンガさんに連絡してキャメロットの皆と共に居る事やらなんか草原にいる事も伝えるべきだろうなと思っている時の事だった、アルトリアが声を上げる。

 

「アルトリウス、周辺地理の確認のために動かしていたアサシンより連絡が。此処よりそれほど遠くない地点にナザリック地下大墳墓を発見したとの事です」

 

その言葉に守護者全員に驚きが走った。ナザリック地下大墳墓、嘗てアルトリウスが所属していたアインズ・ウール・ゴウンの拠点。それが同じように近くに存在している事は非常に喜ばしい事、アインズ・ウール・ゴウンは完全な味方、というよりも何方かと言ったら神聖領域巨城(キャメロット)は対等な関係として同盟を結んでいる。それを改めて聞いたアルトリウスは思わず腰を浮かべながらも声を上げる、アルベドの名前を聞いていたからきっとそうだろうと思っていたが、改めて聞くと嬉しさがこみあげてくる。

 

「おおっ本当か!?そうか、ではモモンガさんもいるという事だな……そうか良くやってくれた、では近々正式な使者を出して」

「いえ既に私の方で家令セバス・チャンと接触させ、此方の事をお伝えしております。彼方も此方の存在を確認出来て安堵の息を漏らしていたとの事です」

「―――えっ」

 

思わず驚きに満ちた声が出た、自分がやろうとしていたずっと上の事を既にアルトリアは行っていた。今もアサシンはセバスたちと情報交換を行いながらも共に周辺地理の調査を行い続けているとの事、向こう側としてもアルトリウスはモモンガと同じく至高の御方々の一人として扱われているらしく直ぐに行動を共にしたとの事。

 

「そ、そうか流石アルトリア……素晴らしいぞ」

「いえ貴方の妻として当然のことをしたまで……」

 

僅かながらに頬を赤らめながら何か、他の面々を牽制するかのように呟いた。それに何やら一瞬女性陣が反応したような気がしたのだが、もう気にしない事にして置こう。というか嫁が有能過ぎて自分がやる事が冗談抜きでなくなってきている、この後もアルトリウスは指示を出そうとするが外に出るまでにすべて指示を出されていたのがやる事がなくなっていた。自虐的にお飾りの王とはこういう事かと思う。

 

「では皆、今後の活躍を期待する」

 

そう言い残して、というかもう耐えきれなくなったのかアルトリウスは装備していたギルドの指輪(リング・オブ・キャメロット)の転移機能を使って王座の間から自分の部屋に逃げるように転移した。一応周囲に誰もいない事を確認しながらもキングサイズのベットに腰掛けながら深い深いため息を吐いた。

 

「もう、アルトリアだけで良いんじゃねぇかな……」

 

確かにランサーアルトリアは王として理想的な存在、そこにちょっと手を加えて出来ぬことなど存在せぬ完璧な女騎士と書き加えた。確かに書いたけど思った以上に完璧すぎてもう自分のお飾り感が半端なかった。NPC達の自分への忠義云々はもうそういう物として受け取るしかないだろう、だが一応自分はこの城の王なのである。それなのに……と凹んでいるとフレンドメッセージが飛んでくる。

 

『あっ通じた!アルトさんって凄いんですね俺がなんか混乱してる間にセバスとコンタクト取りながらも既に協力体制が出来上がりつつあるんです!!こっちなんて魔法のテストしてて、その間にアルトさんはもっと前に進んでたんですね、超手際良いですね!!』

『……うわぁぁぁぁぁ!!!!モモンガさんまでそんな事言うんだぁぁぁぁ!!!』

『えっ!?ええええっっっ!!?どういう事ですか!!?』

『うわぁぁぁぁん童貞拗らせたポン骨が虐めてくるよぉぉぉぉ!!!!』

『ちょっ何ですかそれぇ!!!?というかアンタだって童貞でしょうが!!』

 

 

10分後

 

 

『いやホントすいません……』

『ああいやそういう事だったんですね……まあ気持ちは分かりますよ』

 

漸く落ち着いたので話を聞いて見るとモモンガは酷く納得した。確かにアルトリウスはキャメロットの王として相応しい振る舞いを見せなければならなかった、だがそれを全てアルトリアに取られてしまって事になる。同じようにナザリック地下大墳墓の王として守護者たちが望む支配者を演じなければいけないんだと思っていたモモンガはその気持ちが酷く理解出来た。

 

『取り敢えず近々直接会いませんか、こっちの皆もアルトさんに会いたがってますし』

『えっマジですか?』

『なんか超評価高かったですよ』

 

アルトリウス・ペンドラゴンは至高の御方々の一人にして自らの力の限界を見定める為に遠征を行い自らの城を勝ち取った。そしてそれはアインズ・ウール・ゴウンからの独立を以て立証され、自らのギルドを立ち上げ同盟を結んだ事でその力はモモンガと同格の物である。

 

『ええっ……単純に男なら一国一城の主でありたいってロマン目的で独立しただけなんですけど……』

『多分これ、俺達がアルトさんを名誉ギルドメンバーにしたからこういう扱いになったと思うんです』

『マジかぁ……』

 

つまりナザリックでもキャメロットと同じような扱いを受けるという事になるのだろうか、いやナザリックは他のギルドメンバーたちが作り上げたNPC達がいるのである意味では此処よりも凄い事になりかねないのだろうか……。ちょっと怖くなってきた。

 

『こっちはこっちでなんか凄いっすよ、俺が設定した原典のキャラではあるんですがそれ以上に俺に対する敬意とか忠誠心がやばいっす』

『ああやっぱり……こっちもです。何それ高評価、えっお前マジでそれ言ってんの、というか本当に俺の事?って思いましたもん』

『……今度二人っきりで会って語り明かしません?』

『ああ、良いですねそれ……』




ルーラー辺りのエクストラクラスもちゃんといますのでご安心を。領域守護者的な立ち位置だったりするのでいなかっただけです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。