オーバーロード・元ナザリックの騎士王   作:魔女っ子アルト姫

7 / 26
第7話

姿を現したる騎士たちの王は神々しい鎧、そして勇ましく兜を身に纏いながらも自らの力を誇示するかのような剣を腰へと佩く。数多の騎士、戦士たちを引き連れながらも王座の間へと足を踏み入れ、一歩また一歩と歩みを進めるために耳を刺激するような涼やか且つ重厚な鎧の音はナザリックの階層守護者たちに歓喜を与えつつも深い畏敬の念を抱かせながらも自らの身体を退けながら彼の王への道を開けた。

 

自然とキャメロットの騎士、戦士たちは待機する姿勢へと移りながら騎士王とその伴侶たる獅子王は共にナザリックの最高支配者へと向かって行き、向かい合うと自然と手を取り合った。

 

「この時を待ちわびたぞ、余り待たせてくれるな友よ」

「此方も色々あってな。それはそちらとて承知している筈、その言葉は些か意地が悪いぞ」

「ハハハッすまんな」

 

強い握手をしながらもナザリック、キャメロット双方のNPC達はその光景を神々が成す神話の一ページのような目で見つめ続ける。―――が実際は言葉では荘厳さを出しているが内心ではアルトリウスが〈伝言/メッセージ〉でモモンガへと文句を言っていた。

 

『あだだだだだっちょっとモモンガさんアンタなんかスキル切り忘れてません!?ふっつうに痛てぇんですけど!?』

『えっあっしまった〈負の接触/ネガティブ・タッチ〉か!?すいません忘れました!?』

『アンタアルベドの胸揉んでからなんかポン骨化してない!?』

『ちょっとその事はもう言わないでくださいよ!?』

 

内心をひた隠しにしながら互いに色々とぶつけ合いながらも握手を終えながらモモンガはアルトリアへと目を向ける。

 

「こうして此処で会うのは初めてだな、私の伴侶のアルトリア・ペンドラゴンだ。まあ説明は不要だろうがな」

「まあそれなりに私もキャメロットに行っていたから知らぬ間柄ではない。久しいなアルトリア、息災か」

「お久しぶりですモモンガ殿」

 

軽い挨拶を行っているのだが、アルトリアの事がモモンガの口から出た際にアルベドたちは凄まじい驚きようであった。あのアルトリウスに既に伴侶である存在がいるという事はそれだけの衝撃を生むに等しい爆弾発言だったらしい。どうやらそれらの話はユグドラシル時代でもあまりされなかったらしい。そして挨拶を終えるとナザリックの守護者たちへと目を向けた。

 

「シャルティア、コキュートス、アウラ、マーレ、デミウルゴス、そしてアルベド。ナザリックの階層守護者諸君、再びこうして会えることを私は嬉しく思う―――嗚呼っ矢張り此処も私にとっては魂の場所なのだな。酷く落ち着くよ」

 

その言葉は守護者たちに喜び、安心感、感謝、様々な思いを抱かせる物だった。矢張りこの方もナザリックを心から愛しておられるのだと分かりきっていた事だがその事を改めて言葉にされるとあり得ない程の嬉しさを感じずにはいられない……。そしてモモンガとアルトリウスは更なる言葉を口にする。

 

「我が守護者各位、アルトリウスさんは我がギルドの一員であると同時にギルドの長でもある。そんな彼と私は全く同じ権限を有する、そしてこの時を以てアインズ・ウール・ゴウンと神聖領域巨城は更なる連携を取る必要が生まれる」

「それらは我らだけではなく、アインズ・ウール・ゴウン並びに神聖領域巨城を守る事に通ずる。故に我らが命ずる」

「「我らが守護者たち。我らへと向ける忠義、忠誠を我らに捧げよ!!そして我らと共に歩むのだ!!」」

 

その命令に双方のギルドのNPC達、全員が頷き言葉を発し了解した。互いにバレない様にひっそりと通じ合いながら合わせて放った言葉が完璧に決まった事を確認しつつも安心し、NPC同士の交流の時間を取ると同時に自分達はこれからの方針を協議するという名目でその場を離れる事にした。互いにギルドの指輪を用いてモモンガの執務室へと転移して、誰もいない事を確認すると互いに深い深いため息を吐き出すのであった。

 

「お、終わったぁぁぁぁぁっっ~……」

「お疲れさんです……やっべぇよキャメロットで慣れたつもりだけど全然だ……」

「俺もですよ……というかアルトさんあの人数相手によくも今まで……俺なんてアルベド達だけでもいっぱいいっぱいなのに……」

 

多人数での協議用のソファに互いに崩れ落ちるように座りながら支配者との仮面をかなぐり捨て、お互いに素を出して話し合う。もう出来る事ならば堅苦しい事なんて御免だがそうもいかない、なので此処で存分に素を出して英気を養うしかない。

 

「というか本当に美人ですねアルトリア、しかもあれで王としても完璧なんでしょ?そりゃアルトさんも疎外感に恐れますよね」

「モモンガさんだってアルベドとデミウルゴスまでいるんだからもう丸投げしてりゃいいでしょは一緒だよっつうかマジで童貞なのに子持ち嫁持ちになって如何しようって感じだよ」

「リア充死ねって奴ですね、嫉妬マスク使いますよ」

「アルベドの胸揉んだ奴が何をほざくか、というかアルベドのビッチ設定がそのままなんだからそのうち純潔奪い来るだろうから大丈夫大丈夫お前だってすぐにこっちの仲間入りになるから気にすんな」

「いや気にしますよそれはそれで!?」

 

プレイヤーとしての会話っというよりも完全にギルドメンバー同士、友人同士の会話。会話だけなら今までもしてきたがモモンガは目の前に相手が確りいるという事に深い安心感を覚えながらナザリックでは出来ない軽口を叩きながら友人の言葉にツッコミをいれたりふざけ合ったりする。それを行う度にストレスが激減していくのを感じながら。

 

「それで俺の評価が高すぎて本当に俺の事を言ってるんだよな!?の連続で……もう気が休まる時間がなくて、まあ感情の起伏が大きくなったら勝手に精神の安定化が起きるんですけど……そのせいで大喜びもし難くて」

「あ~そりゃ辛いな、そうだモモンガさんあれは如何した。異形種プレイヤー必須の指輪」

「〈人化の指輪〉ですか、ソロ時代が短かったから俺持ってないんですよ」

「んじゃ俺の一個いる?昔にガチャ引いたらはずれの奴が出てきたから、これあれば多分モモンガさんでも飯食えるだろ。リアルと違って飯が最高に美味いんだから食わなきゃ損だぜ」

「―――マジですかそれ」

「エミヤと紅閻魔の料理食って暫く思考が停止した俺が言うんだ間違いない」

「是非ください」

 

同じ異形種ではあるが、スケルトン系のモモンガとドラゴン系のアルトリウスでは大きな差もあり認識にも違いは出てくる。その辺りを確認するだけでも情報としては非常に大きいし足並みを揃える意味でもこの話し合いは価値がある。そんな話の途中にモモンガは神妙な声色で問いかけてきた。

 

「あ、あのアルトさん……アルトさんはその戻りたい、ですか……そのリアルに」

「!」

 

その言葉に含まれていた感情からして非常に勇気を出した言葉なのだろう。モモンガは自分の骨の手を見ながらもリアルを思い出しながら語りだす。

 

「俺はユグドラシルが全て、でした。家族もいないし友人もギルドの皆以外には居ませんでした……だから今の俺にとってはナザリックが全て……でもアルトさんは如何ですか、もしもリアルに戻りたいなら俺は……それを全力で支援したいです」

「―――何を言いだすかと思えば、何を言ってるんだよギルマス」

 

呆れたような声に顔を上げるとそこには兜を小脇に抱えながらジト目で此方を見つめているアルトリウスがいる。

 

「俺にとってもキャメロットは全てだ。3年をかけて自分の手で作り上げた理想郷だ、それをサービス終了だからと言って捨てられるほど俺は冷たい男じゃない。それに今リアルに戻っても結局俺に待っているのは天涯孤独なままで寂しくて機械的に仕事をこなす日々なんだよ、生き甲斐だったキャメロットもユグドラシルもない世界に戻るのは俺は嫌だね」

「アルトさん……!」

 

輝く瞳で見つめてくるモモンガ、彼へと述べた言葉に偽りなど無く本心だ。キャメロットには苦労と失敗の数々があり、その度に重なる修正作業があったがその末に生まれたがあの城だ。その城には自分の全てが含まれている、それを否定する事などしたくないしもう二度と手放したくはない。今度は自分があの城を守り続けたいと心から思う。

 

「折角出来た嫁と子供を捨てる程俺は落ちぶれちゃいねぇよ」

「ですよね、すいません分かってたはずなのに野暮な事聞いちゃって」

「しょうがあるまいよ、これはもしもたっさんとかと一緒だったら確実に聞くだろうし」

「あ~……たっちさんはリアルに奥さんもお子さんもいますからね」

 

そんな友人同士のやり取りを復活させつつもモモンガは内心で歓喜していた。あれほどキャメロットに愛情を注いでいたアルトリウスならばきっと、と思っていたがユグドラシルでは話さなかったリアルの事情などもあれば話も変わってくるだろうと不安もあった、だがそれが完璧に払拭された事で心の中にあった重しが完全に取れたと言ってもいい。これで漸く身軽になって前に進めるような気がする。

 

「ナザリックにはある程度滞在しますか?みんな喜びますよ」

「あ~如何すっかなぁ……ありだけど今回は挨拶で来てるから一旦帰るよ。それで個人的に遊びに来る事にする、そうした方が対応しやすいだろ。何時までも俺のNPC達を連れまわす訳にも行かないし、その代わりにコキュートス辺りにうちのNPCが試合したいって伝えてくれない?」

「勿論いいですよ、きっとコキュートスも喜びますよ。俺が相手をしてあげられればいいんですけど流石に厳しいですから」

「それでも普通に勝つだろうけどな、モモンガさんは」

 

改めて握手をしながらも互いに助け合ってこの世界で頑張っていこうと誓い合う。未知の世界だが手を取り合って出来る事をこなしていけばきっとやっていけると確信を持ちながら、二人は王座の間へと戻ってみた。そこではNPC達が思った以上に楽しそうにしていたので胸を撫で下ろしこれからの事への期待を高めながら未来への希望を募らせていくのであった。

 

「その、アルベドから是非にと夫婦の円満のコツを聞かれたのですが……どう答えれば良いでしょうか」

「そ、そうだな……まずは小さな事から互いの事を知り合う事を経て行くというのは如何だ?いきなり大きなことをするのはあれだし、まあゆっくりとする事だな!!」

「流石アルトリウス・ペンドラゴン様!!」

 

『モモンガさん、アンタを見るアルベドの目がやべぇよ。完全に獲物を定めた肉食獣の目になってんぞ……ついでにシャルティアも』

『ひぃぃぃぃっっっ!!?アルトさん助けてくださいよぉ!?』

『……非常時はキャメロットに逃げてきていい位の事しか出来ないと思うぞ』

『十分です!!』


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。