——この飛行機にミサイルが『2発』、いやッ! 『3発』飛んできてやがるッ!?
『親友』の本気で焦った声。それはソラを駆り立てるのに十分であった。
いつでも鞘から抜くことができるように刀を腰に備えて、標的との間合いを確かめる。
——
後方で激しい二つの爆発音が聞こえてくる。
それらはおそらく先に飛んでいった二つのミサイルが飛行機に衝突したからであろう。
ソラはキンジとアリアの無事を祈りながらも目の前のモノを
——人間がミサイルに立ち向かう。
普通であれば馬鹿げた話であり、その人間を狂っていると評するだろう。しかし、彼は普通ではないのだ。
彼は——Sランク武偵天草空。
市民たちの英雄として彼は人々を脅かす脅威を取り除かなければいけない。
例え——それが地獄の業火を撒き散らすミサイルであっても。
刀を構えて、脅威に立ち向かわなければならない。全ては仲間を救うために……
——天草空は全てを断ち切るのだ。
——スパンッッ!!
金属の物質が真っ二つに切れるような音が空中に鳴り響いた。
神速の居合斬り。
天草空はミサイルとの間合いが近づいたとき、一瞬で刀を抜きミサイルを縦に真っ二つにしたのだ。
ソラは刀を鞘に納めてそのまま空中に落下していく。
——まだだ。
——まだ標的は全部潰せていない。
*
ダキュラ・クラウディは小さめのパラシュートを広げて空中を浮遊していた。
(今回の事件は実に興味深いモノでした)
——それに良いモノも発見できた。
(天草空……彼の『幸運』の資質は
ダキュラは笑みを浮かべる
今、現在ダキュラが所属する『組織』ではとある実験が行なわれている。
——『異能』持ちの遺伝子を媒介とした『異能』のコピー。
この実験はまだ成功していないが、もし成功すれば『運命』など有って無いような物となり、『運命の一族』は最強の一族となれる。
さらに天草空の『幸運』は他の『異能』よりも数段強い。ダキュラの『悪運』よりも強いのだ。
それならば、もし、天草空の遺伝子を付与して『幸運』の力を手にすることができたら——もし、『悪運』の力を持っている私が『幸運』の力も手に入れることができたら……?
(これは笑いが止まりませんねぇ……!)
ダキュラは自分の茶色のスーツを掴む。そこには大量の血液——天草空の遺伝子が付着していた。
(これで『お嬢様』もさらに強くなれることでしょう)
自分と比べて年端もいかない少女の姿を思い浮かべる。
『
『運命の一族』はボスと決まった者に対して無条件に忠誠を誓うように
それは先祖から代々伝わる『運命』の遺伝子からなのか……それはわからないが、ダキュラはそれでもいいと思っていた。それほど一人の少女を愛していた。
(——それにしても天草空には驚かされました)
彼には飛行機での全ての計画を台無しにされてしまった。
(全ては彼の類稀なる思考力のせいか……)
天草空はダキュラと肩をぶつけた後、彼を追いかけたように見えた——が、天草空はダキュラを追わず、一度飛行機の中を見渡していった。
(お陰で、私が飛行機の中に仕込んでいた爆弾の全てが解除されましたよ)
爆弾の総量は優に飛行機を破壊できるほどの威力を持っていた。つまり、天草空が爆弾を解除しなければ、今頃、ヤツらを皆殺しにできていたハズなのだ。
(しかし、まぁ…今はそんなことはどうでもいいでしょう。天草空の遺伝子は手に入れた、それだけで十分。後は『イ・ウー』に戻り、天草空の異能の研究を——)
この時、ダキュラは完全に油断していた。
それは別に咎められることではない。当然だ。ここは誰からも干渉されることのない空中なのだから。そして、彼は自分の『異能』が作用していると思い、完璧に逃げ切ったと思っていた。
しかし、それでもやはりダキュラは油断していたのだ。
「おい——」
——だから、聞き覚えのある男の声を聞いたときダキュラの意識は完全に停止していた。
『悪運』の強いダキュラは完全に油断していた。
「天草、空……!?」
彼が呼んだ名前の男は既に鞘に収められた刀を振り上げていた。
「——悪運が強いお前の悪運が尽きたな」
ダキュラは何もできなかった。両手はパラシュートを掴んでいるため一切抵抗できない。
まさしくダキュラの悪運は尽きていた。
「——これは『幸運』の神様からの贈り物だ。『悪運』の神様によろしくな」
「ぐぅううう!! キサァマァアアアアアアアア——」
天草空の刀がパラシュートごとダキュラの頭に振り下ろされた——
*
峰・理子・リュパン4世は逃走を図っていた。といっても既に飛行機からは脱出しているのだが。
——ソラとバーで別れた後、結局はキンジとアリアとは戦わなかった。
ただ単に気分が乗らなかった。
一応、キンジとアリアの所まで行って、『イ・ウー』への勧誘はしたが、やはり断られてしまった。。
その後は飛行機の壁を爆破して脱出。少し予定よりも脱出が遅れてしまったが、ミサイルが着弾するよりもギリギリ間に合ったので理子は安堵した。
(——けど、ミサイルって『二発』じゃなくて『三発』も放つって話だったっけ?)
本来の予定ならばミサイルは『二発』だったはずだ。『三発』も放ってしまったら『
と、色々考えたが。
——そんなことは今はどうでもよかった。
(ソーくんが理子のこと大事だって言ってくれた! ソーくんが理子のこと一番大事だって言ってくれた!)
自分がフライアテンダントに変装していた時のことを鮮明に思い出す。
彼が自分に告げた一言一句が理子の身体を熱くたぎらせる。
だから、ソラが『今の俺にとって』と言っていたのは聞いていたが、恋する女の子にそんなことは関係ないのだ。
(——それに、理子のこと、本当に
彼は電話で話したことをしっかりと貫いてくれた。理子を信じ続けた。
そのことが理子の心の幸福感を満たしていく。
(もし——理子が武偵高に戻ったら、笑顔で迎えてくれるかな? 理子がソーくんにお胸を触らせてあげたら喜んでくれるかなっ?)
頭の中が彼一色になる。それほどまでに彼が愛おしかった。ずっと前から好きだった。Eランクに一度落ちて、Sランクを再び目指していた時にもっと好きになってしまった。
絶望してムリをして死にかけて疲弊しきっていた彼を癒そうと、慣れていないマッサージを真剣に学んだ。
彼が少しでもSランクに近づけるように自分が『組織』で学んだ戦闘術を教えたこともあった。
それだけソラのことが好きだった——愛していた。
「——あっ! パラシュート、開かないとまずいかな」
ソラのことが頭に釘付けになって、ついつい忘れてしまっていた。このままじゃ落下して死んでしまう。
こんなことで死んでいたら怪盗一族の名に泥を塗るなんてものじゃない。
改造制服の背中のリボンを解くとスカートとブラウスが擬似パラシュートになるのだ。
だがら彼のことを一回忘れようと……
「——へぇ、いいもん持ってんな。俺にも少し貸してくれないか?」
へっ——!?
「ソ、ソソソソソソソソソ、ソークゥ———ン!?」
「おう、ソーくんだよ」
なんで!? どうして!? と頭の中がとんでもない速度で展開していくのがわかる。
彼の姿を視界に収める。いつも通りの緩んだ顔で、いつも通り武偵高の制服を着て、いつも通り制服の至るところから血が滲み出てて……
「——って、身体中怪我してるじゃん!?」
「ああ、少しね。って今はそんなことどうでもいいだろ?」
——さっさと助けてくれ。と言う天草空。
色々と戸惑いもあるが理子は、とりあえず擬似パラシュートを作り出す。
「ソーくん、理子の体に捕まって!」
一瞬、ソラが「え、いいの?」の顔になるがすぐに理子の体に抱きついた。
「ちょ——ソーくんどこ触ってんの!? この変態ッ!?」
「ばっ!? お前が捕まれって言ったんだろ!?」
そう、理子は着ている改造制服をパラシュート変わりにしているため——下着一丁だった。
しかも、理子はアリアと同じくらい小柄なため、理子よりも圧倒的に体格がでかいソラは理子の体に抱きつくとなると触る面積が大きくなり、抱きついている箇所は体の大部分を占めていた。
「おいっ! 揺らすなバカっ!」
「離してぇー! 理子の体から手を離してぇ!」
離したらその瞬間、天草空の死は間違い無いだろう。だから、ソラは絶対に離さない。むしろ力を強めていく。
「あっ——そんなにだきしめないでぇ! もうお嫁にいけなくなっちゃあああああああう!!」
「お、俺が貰ってやっから! 頼むから俺を助けてくれえええええ!!」
——————
「え、ほんと?」
「急に真面目な顔する——」
「ねぇ。本当に理子のことお嫁に貰ってくれるの?」
「はぁ!? そんなことべつに——」
「いいから答えろっオイッ!!」
「ハイッ! いただきますっ!」
天草空……彼は女性の怒鳴り声が苦手であった。
「えへへ……ソーくんのお嫁さん。ソーくんのお嫁さん。えへへへへ」
「おっ、おい!? とんでもなく笑顔になってるのはいいが、パラシュート持ってる手の力緩めてんじゃねえよ!?」
*
ようやく理子が落ち着いて安定した飛行をやっていた。
「ソーくんって理子のこと知ってたんだよね?」
「あ? 武偵殺しのことか?」
「ううん。理子のお家の名前……とか」
「うんにゃ。全然知らん」
「そっか。知らないのか……知らない知らない——知らないッ!?」
「うおっ!? なんだよ急に大声出して」
理子は目を見開いてソラを見る。
「知らないってどういうこと!? 理子のこと全部わかってるから『俺に助けを求めろよ』的なこと言ってたんじゃないの!?」
「いや、理子がなんとなくだけど困っていることは察してたから助けようと思ったんだけどな——ところでお家の名前って何よ?」
あーもぅ! この大バカはぁ! と理子は虚空に叫んで。
「峰・理子・リュパン4世! それが理子の本当の名前っ!」
栄誉ある家の名前。大怪盗リュパンの子孫。誇らしく思う反面、憎むほど忌み嫌っている名前。
一生付きまとってくる4世の名前。もしかしたら、彼も自分のことを4世としてか見てくれないのかも——
「ふーん、リュパンね。そう」
「——あれっ?」
何もなかったかのように平然としている男。
普通であればこの家の名前を伝えたら驚いたりするものなのに、一切それがこの男から見られない。だから、理子は拍子抜けをした。
「えっ、驚かないの? リュパンだよ。あの大怪盗リュパン」
「うん知ってるよ。でも俺にとってはリュパンよりも峰の方が気になるんだが」
——ずっと前から思ってたけど峰ってあれだろ? エッロくてキッレいな女の人だろ? リュパンの子孫ってことはマジもんだったとは……と全くリュパンに関心を示さないソラに、理子は——ついつい笑っていた。
「理子の名前を聞いてソーくんは理子のことどう思った?」
自分の存在についてという『理子』にとっての核心を突いた質問。でも、彼ならば、彼であるならばきっと自分の望んだ通りに応えてくれるハズ……
「どう思ったって……どう思うもこう思うも理子は理子じゃないの? 『峰理子』だろ? ロリなのにおっぱいが大きい『ロリ巨乳』という特別なポジションを確立し——」
「そこまで言わなくてもいいかな」
ゴフッ。と彼の顔面にパンチをくれてやる。
理子は、どうして彼は期待には応えてくれるのに予想は軽々と超えていくのだろう、と頭を悩ませた。
「おいおい俺の顔まで壊してくれるなよ。俺の銃も壊れちゃったのによ」
「えっ? コルト・パイソン壊れちゃったの?」
「ああ、俺を庇って壊れた」
事情はよくわからないが、そっか……と理子は呟いた。
理子はソラがコルト・パイソンに対して強い思い入れがあることを知っていたのだ。今回のハイジャック事件は自分が起こしたことであるのでソラに罪悪感を抱いた。
しかし、本人は理子に対して何も怒る様子はないのか平然としている。
「——おい、ところでこれどこ向かってるんだ?」
「——へっ?」
ソラに聞かれて、そういえばどこに向かってるんだっけ、と思い返す理子。そして、徐々に顔が青くなっていく理子。最後に大きく叫ぶ理子。
「し、し、ししししまったあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「お、なんだ? ついにキャラ崩壊か?」
「呑気なこと言ってる場合じゃねえんだよバカ!!」
「ハイ、スイマセン」
天草空……彼は女性の怒鳴り声が極度の弱点の男。
「マズイマズイマズイマズイマズイッ!?」
「だから何がマズイんだって——ん? なんか真下に見えてきたぞ」
ソラの言葉を聞き、理子は下を見た。
「あぁあああ……やっちゃった……」
理子は絶望感のあるような声を上げる。しかし、一方の男はそんな理子の気持ちを考えず、ただただそれが何かを理解しようとしていた。
今、ソラたちは空中で飛行中であり、真下は夜であるため真っ暗な海が広がっている。
その暗闇の海の海面に何かポツンと光を放っているモノがある。
「なんだ……あれ? 船……なのか……?」
「ううん。アレは原子力潜水艦——ボストーク号。理子たちの組織、『イ・ウー』の本拠地だよ」
徐々に実態が見えてくるソレ。長さが300mほどあるようだった。
「あぁ……なるほど潜水艦ね……」
——潜水艦にしちゃ大きすぎるだろっ! とツッコミを入れるソラ。
「——ッ! 危ねえ理子ッ!」
「えっ——」
突然、ソラは理子を横に押しやるようにして離れる。理子は何が起きているのか全くわからなかったが、その後すぐ理解できた。
——弾丸。
弾丸が元いた理子とソラの所を通り過ぎて行く。
二人は銃弾には当たらなかったが——ソラはパラシュートを持っている理子から離れてしまった。
「ソ、ソーくんッ!」
「理子ッ!」
理子は手を必死に伸ばし、ソラもなんとか理子の手を掴もうとするが——二人の手は届かなかった。
よってソラはそのままボストーク号へ落下していく。
——このままでは間違いなく死んでしまう!
しかし、ソラにはなす術がなかった。空中では人間は無力なのである。もう間も無くソラは潜水艦に身体を叩きつけられて死んでしまう。
——だが、ソラが死ぬことはなかった。
ガゴンッ! という音が聞こえた後に、暗闇の中であるためよく見えないが、マットのような何か柔らかいモノがソラの落下の衝撃を吸収してくれていた。
「な、なにが……!? あ、あれ——動けない!?」
体を動かそうとするが全く動かせない。
俺は自分が何かにハマっていることに気づいた。
「——そ、ソーくん大丈夫!?」
理子が少し遅れて潜水艦の甲板に着陸したようだ。
「お、おう理子。なんか動けないんだが助けてくれ」
「動けない……? 何言ってるのソーく——何やってるのソーくん……」
理子の心配している声が突然、何故か呆れたような声になっていた。
「何って、俺もわかんねえよ。今どうなってんの俺?」
そんな声を出されても自分がどうなっているのかわからないままである。腰から上は動かせるが……それ以下の部分は全く動かせない。完全にスッポリと何かにハマっている感じだ。
「——ソーくんは今、『砲台』にハマっているよ」
「……はい?」
意味がわからない。砲台ってミサイルとかを放つあの砲台……? えっ、なんで俺そんなところに落ちちゃったの? なんでそんなところにマットみたいな柔らかいものが引いてあるの?
「——やぁ。理子くんお帰り。天草空君もよく来たね」
「——ッ!」
俺でも理子でもない別の一人の男の声。
その声はハッキリ聞こえているのにノイズがかかっているようで、どこか不透明で実態が掴めなかった。
「プ、『
理子の震えた声が聞こえてくる。
「『教授』……?」
「その通り。僕は『教授』だ。もっとも、わかると思うが、ただの呼び名だよ」
またしても不透明な男の声が聞こえる。
「——それにしても良いハマりっぷりをしているね天草君」
「うるせえわいっ!」
ハハハと聞こえる『教授』の笑い声が聞こえてくる。
「さて、キミをその砲台に詰め込んだのは、キミに選択肢を与えるためでね」
……今の言葉、色々とおかしいだろ。
「——おい待て、俺が初めからここにハマるのがわかっていたようじゃねえか?」
「ああ、まさしくその通りさ。私の推理によると一発の銃弾によってキミはここにハマるということになっていたよ」
そうかいそうかい。つまり俺は初めっからここにハマるというギャグを見せる手筈だったと……
「ふざけんなァ! 俺は芸人になった覚えはねえぞォ!!」
「うん。そう言うことも推理済みさ」
うぜえうぜえ……! かなりうぜえ……!
「さて、君に与える選択肢だけど、それは2つ——1つ目は『イ・ウーに所属すること』。2つ目は『その砲台からぶっ放されること』。どっちがいい?」
「いやいや、2つ目おかしいだろっ!?」
これ結局、選択肢①しか選ばせるつもりないよね。
「
…………あぁ、クソ。やりづれえ。
「キミが仮に、武偵高に戻ったとしてもキミが『武偵殺し』の情報を隠匿していたという事実は隠せないよ」
全部お見通しってわけかよ。この男は……
「そ、ソーくん……理子の——」
「違う。『理子のせい』じゃない。俺が自分で選んだことだ」
そうだ。これは俺が自分で選んで、自分でやってきたことだ。
——自分のツケを自分で払うのも道理だろう。
「それではキミは一つ目の選択肢を——」
「——勘違いすんなや先走り童貞。俺はお前らの組織に入らねえよ」
『教授』と呼ばれる男は、「さ、先走り童貞……」と妙に狼狽えていたが、すぐに平静を取り戻す。
「それじゃあキミは2つ目の選択肢を選ぶと?」
「ああ——」
そういうことだ。
「『
………………そうかもな。
「そうであったとしても、俺はお前らの組織に入らない」
「ハハハ。まるで子供っぽく毛嫌いでもされているかのようだ——それじゃあ早速人間花火をしようか」
男は懐から何かのスイッチを取り出す。ミサイル発射装置の起動ボタンだろう。
「そ、ソーくん!? ダメだよ! すぐに取り消して、じゃないと死んじゃうよ!」
理子が俺に訴えかけるような声を出してくる。
「心配すんな理子。俺は絶対に死なねえよ。なぁ——『教授』」
わかってんだよ俺が死なないってことは。俺の推理ではコイツは俺を殺さない。
「ほう——」
『教授』は興味深そうに反応する。
それを見た俺はやはり自分の推理が間違っていないと確信した。
「——それでは良い旅を天草くん」
「ああ——俺もお前の『声』覚えたからなクソ童貞」
——天草空は砲台から打ち出された。
*
武偵殺しのハイジャック事件から2日が経った。あれから俺こと遠山キンジは、アリアと正式にパートナーを組むようになった。
後に聞いた話だが、神崎・H・アリアの『H』はホームズのHらしい(フランス語ではオルメスと呼ぶ)。つまりアリアは、偉大なるシャーロック・ホームズ卿の子孫だったというわけだ。
武亭殺しに事件を解決し、アリアの母親——かなえさんの裁判も延長し、アリアにとっては年半のパートナーができた。
全てが完璧なハッピーエンドのようだ。
——しかし、天草空が帰って来ていなかった。