今日は日曜日。朝日が部屋の中を照らしていて、良い感じに明るくなっている。
日曜日とは、仕事も学校も休みで一日グータラ生活。気づけば、夜6時半になって、昭和44年から続いているアニメを見て、休みもう終わりなのぉ……と憂鬱になる。そんな日だ。
——で、俺もその通りだったんだ……今までは。
「——なんで俺の部屋いるの? レキ」
「はい。貴方の隣が、私のいるところです」
「……あ、うん。そうだよね。愚問だった」
——お前本当なんでいるんだよぉおおお!?
と内心では絶叫しているが、言っても無駄なのはわかっているので言わない。
「いや、でもさ。年頃の女の子がさ、男の家に安易に来るもんじゃねえよ。襲われちゃうよ? R-15じゃ表現できないようなことに遭っちゃうよ?」
「大丈夫です。近接格闘はできますので」
「いや、そういう問題じゃ——あ、銃剣使えるから大丈夫って言いたいわけね」
「はい。ソラさんのおかげで上手く扱えるようになりました」
そうかそうか、それはよかった——ってなるわけないだろッ!? なに俺で鍛えてんのお前!? しかもそれを真面目な顔して言ってんじゃねえよバカやろう!!
「最近では、投擲技術も身につきました」
「俺によく銃剣を投げつけてくるもんねぇ——ってお前いい加減にしろよこらっ!? さっきから、俺で鍛えた技術を俺に自慢してくんじゃねえよ!?」
「? 自慢はしていませんよ」
「あ、本気で言ってたんだねぇ——って、よぉく、わかった! お前がさっきから俺に喧嘩売ってるってことがなぁ!」
——実践してみせましょうか? じゃねえよバカやろう!
……流石にそれは怖いので勘弁してください!
「それで、お前がここにいるのはわかったが、いつまでこの部屋にいるつもりなんだよ?」
「…………?」
「いや、なぜそこで首を傾げる」
できれば早く帰れよお前。俺はこれからエロビデオ鑑賞するつもりなんだからよ。
「これからは、ここに住むつもりです」
「——よし。今すぐ帰れ二度とくんなバカ」
……こいつ何言ってんの? 男の部屋に女が住みますぅ? そんなの絶対R-18展開になりますよ! 俺のムスコの出番はまだまだ先なんだが。
「……迷惑でしょうか」
「ああ迷惑だ。主に俺がエロビデオを見れないという点で」
「見ても構いませんよ?」
「あ、そうなんだ。じゃあおっけいだねえ——ってなると思うか? 俺が構うに決まってんだろ!?」
女の子と一緒にAV鑑賞とか恥ずかしくてできるかっ!?
はぁ……レキの気持ちを尊重したいとは思うけど、さすがに今回の要求ばっかりはダメだろ。
「さすがに俺の部屋に住み込むのはやめてくれ。けど、いつでも来てくれていいからさ。ほらよっ」
ポイっと、俺はレキに俺の部屋の合鍵を投げ渡す。
「これでいつでも入って来てもいいから」
うん。これでレキも納得するだろう。
——あっ、ちょっと待って。もし、レキが俺の部屋に入ってきて俺がそのときナニをしていたら……流石にまずいよな。
「すまん。やっぱ返してく——」
「——嫌です」
いや、ちょっと、嫌って言われても俺が困る。
「いや、返し——」
「——嫌です」
「い——」
「——嫌です。返しません」
レキは頑に俺の部屋の鍵を返そうとしない。
それどころか、鍵を大事そうに両手で胸元に抱えている。
「——どうしても返せというのであれば、強硬手段に出ます」
そう言って防弾制服から銃剣を取り出すレキ。それ絶対俺の脳天に突き刺すつもりですよね……レキさん怖すぎなんだけど……
どうしよう、俺の相棒がめちゃくちゃ怖い。俺、絶対レキの押しちゃいけないスイッチ的なヤツを押しちゃったよぉ……!
「わかったわかった……はぁ……でもこれで、住むなんてことは言わないよな?」
「はい」
短く返事をするレキ。
うん、それならいいんだよ。当初の目的は達成した。
——さて、これから俺はエロビデオ鑑賞に……おい。
「なんでまだいるの? レキ」
早く帰ってくれよ。最近は事件やら入院やらで色々と忙しかったんだからよ。俺を一人にしてくれよぉ!
「……?」
だからなぜそこで首を傾げる。お前の目的は達成しただろ? 俺の鍵を手に入れたじゃねえか。
「俺の鍵、持ってるだろ? それでいつでも来てくれていいから」
「はい。だから、今ここにいます」
……あぁ、うん。そうだよね。俺が悪かったね。言葉足らずだったね。
はぁ……俺の負けだよ。
「いてもいいけど、ちゃんと帰れよ? ここに泊まろうとすんなよ?」
「はい……それでは今からソラさんは何を……?」
「あ? 俺? そうだなぁ……掃除。うん、今から掃除するわ。だから——」
——帰れ。と言おうとした瞬間。レキが高速で俺の言葉を遮った。
「——私も手伝います」
「かえぇ……えぇ……?」
マジですかレキさん……うわっ、やる気の目してますね。これは止められませんよ。
諦めて俺はレキと一緒に掃除することにした。
——この選択を後ほど深く後悔することになるとは、今の俺は全く考えていなかった……
*
「うわぁ、結構、埃溜まってたんだなぁ」
部屋の外に出て、掃除機の中のゴミを見る。
いや、本当に掃除をして正解だった。今回のことは、いいきっかけになったな。レキたんありがとう。
さて、レキを待たせるのもなんだし、中に入ろ——
「——ソラさん。これはなんですか」
部屋の中に入った瞬間、目の前にCDケース的なものを持っているレキがいたんですけど……流石に心臓がビクッとなりました。
「なにって、ちょっと渡してみせ————あ、うん」
——表紙を見て察した俺は素早く背中にそのCDケースを隠そうとする。
しかし! レキが俺よりも素早く、高速で奪い取ってしまった!
「『デカパイウハウハフェスティバル』ですか……それで、これは何ですか」
「えっ…と、はい……あのですね、はい……」
タイトルと表紙見ればわかるじゃん。エロビデオですよハイ。
本棚の裏に隠していたハズなのになぜ、見つかっているのか……
「——それで、これはなんですか?」
「うぇ——痛い痛い! 俺の頬にグイグイ押し付けないでぇ!」
CDケースを俺の頬に押し付けながら聞いてくるレキ。
レキさんめちゃくちゃ怒ってるようです。それよりもなぜ俺は、浮気がバレた男みたいな扱いをされているのか。
「エ、エロビデオです……ハイ」
「そうですか」
そう短く言うと、レキは銃剣で『デカパイウハウハフェスティバル』をCDケースごと貫いてしまった。
……ぐすんっ! 結構それ好きだったのにぃ!
エロビデオをぶっ壊しておそらく満足したであろうレキが俺から後ろに一歩離れて、部屋の中を指差した。
「——ソラさん。中に入ってください」
「……え、あ、はい。お邪魔します」
え? ここって俺の家だよね? なぜにレキさんが部屋主のように振る舞っているの? いつの間に俺の家乗っ取られたの?
なんて思いながら部屋の中に入った俺は——思考が停止した。
机の上には——47本のエロビデオが陳列していた。
「——続きです。これらは一体、なんですか?」
レキがエロビデオたちを指差して言う。
先ほどの『デカパイウハウハフェスティバル』を加えたこれら48本のビデオは俺が大好きなモノがいっぱい詰まっているのである。
つまり俺が選抜した
「答えてください。さもなければ——斬ります」
「——いやっ!? 何をッ!?」
ナニをだろ? ってか——うるせえわっ!?
お前も白雪と一緒か!? なんでこいつらは俺の股間を切断しようとしてんだよッ!? 俺まだ童貞だぞ!?
「……こ、これはその、ハイ。エロビデオです……」
俺はチラッと元々隠していた本棚の方を見る。
……あぁ、やっぱり開けられてるよぉ……!
「そうですか……では、壊してください」
「——え? 『壊す』じゃなくて『壊せ』なの?」
「はい。壊してください」
お前は悪魔かァアアアアアアアア!?
俺の大好きなエロビデオたちを自分の手で壊せと!?
「そんなことできるわけ——ハイ、ヤリマス」
あ、危ねえ……レキさんが銃剣を10本くらい取り出してたわ。あんなに刺されたら軽く死んじゃうよ。流石に命には変えられん……でも、俺はッ!
と内心でレキへ反抗しようと思っていると——レキが俺に携帯を見せて来た。
そこにはメールで、宛先は『白雪』、内容が『今から、ソラさんの部屋で彼を一緒に去勢しませんか?』とあり、それを今にも送ろうとしているレキ。それを見た瞬間俺は。
——ガゴーンッ! ガコーンガコーンガコーンッッ!!
47個のエロビデオを全部破壊した。
うん。ムスコには変えられないよね! エロビデオがあってもムスコがなかったら意味ないもんね! これは変えられないよな……ぐすっ!
「ぐすっ! ちゃんと壊したからなぁ! もう勘弁してくださいッ!」
ガチ泣きする俺。
だって仕方ないじゃん! 男の一人暮らしの必需品を壊されたんだよ!? 泣きたくなるじゃん!?
そして、流石にそんな俺を見ていられなくなったのか、レキが泣き崩れている俺の側に寄ってきた。
「落ち着いてくださいソラさん。これを差し上げますので」
「ぐすっ! なにこれ……?」
俺はレキから受け取った物を見る。
それは1枚のCD——エロビデオだった。
タイトルは『無口貧乳ガールと深夜教室』。内容は、まぁタイトル通りのものだ。これは昔、俺が買ったものだ。
当時の俺は何を血迷ったのか、こんな貧乳もののエロビデオを衝動買いをしていた。理由は確か……レキに似ているとかなんとかだった気がする……
最近では全く見ないし、どこにあるか正直皆目見当がつかなかったんだが、よく見つけたなレキのやつ。
「——これなら見てもいいです」
そう言って照れるようにそっぽを向くレキ。
これなら見ていいって……なんだよレキのやつ。見て欲しくないなら見て欲しくないってハッキリ言えばいいだろ?
「いや、見ないよ俺は」
「——え?」
レキは、そう言ったらそう言ったで今度は戸惑ったような表情をする。
……いや、戸惑っているというよりかは、悲しんでいるのか……?
もしかして、レキは……
「——勘違いすんなよレキ」
「勘違い…ですか……?」
ああ、思いっきり勘違いだ。俺はそう言う。
お前が今考えてることは全部読み取れるぜ。
「俺はな、こういうエロビデオが好きじゃないから見ないんじゃない。このビデオの女の人は……お前に似ているから見たくないんだよ。別にお前のことが嫌いだからというわけじゃないぞ! むしろ、逆にお前と似ているから、こういうのを見たくないというか……とにかく俺は、お前を大事にしてるから見ないってことだ!」
「——それに、もうこんなエロビデオとかいらねえや……お前がいるしな」
うわっ! 言ってて思ったけどなんか照れくさいんだが!?
でも、俺、今カッコいいこと言ったよね!? イケメンみたいなこと言ったよね!?
ほらっ! レキも俺の顔じっと見てるし! 今もなんかモジモジしてるしっ!
あっ! レキが何かを取り出し——え……
レキが取り出したのは——エロ本だった。
「……それでは、こちらの本も処分します。許可も頂いたので、構いませんね?」
……がはぁっ!!
右ストレート避けたらアッパーが飛んできやがった!?
え、嘘だよね!? 俺のエロ本のありかもバレてたの!? しっかりとベッドの下に隠してたのに!?
「ソラさんのエッチい物の隠し場所は全て把握済みです」
「う、嘘だろッ!?」
「——ベッドの下。本棚の裏。クローゼットの右から3段目。ベランダの物置小屋。食器棚の右奥——」
「—–あ、あのっ! もう勘弁してくださいっ! 全部処分させていただきますので!!」
「……そうですか」
こ、これ以上暴露されるのは色々とマズいッ!? 主人公としてあるまじき事態に陥ってしまう!
俺がアワアワとしていると——レキが突然、俺に対して頭を下げてきた。
「すいませんでしたソラさん……私に貴方の性をどうこうする権利なんてないのに……縛るようなことをしてしまって……」
……レキは相変わらずバカなやつだなぁ。
「いいんだよレキ。男ってのはな、可愛い女の子に愛される、それだけで幸せを感じるものなんだよ。実際は俺だけかもしれないけど……でも、俺は好きだからよ、別に縛られてたって構いやしないんだよ」
——それは、愛情の裏返しだからなっ! と言う。
俺は愛するよりも愛される方が好きだから、レキの行動は正直嬉しいところがあったんだよ。
「だから、俺に遠慮なんてしなくていい。俺がバカなことしたときは銃剣を突き刺せばいいし、死ねでもなんでも言えばいいのさ。それでもちゃんと伝わってるよ……お前が俺を愛してるってことは、な」
レキが俺を愛しているから、俺のエロビデオとかエロ本とかに嫉妬して、捨てようとしているのはわかっているんだ。
それがわかってるのに、嬉しくないって思う男がいるのかよ? 可愛い子に想われるなんて絶対嬉しいに決まってるよな。
「お前は、俺を自由に思ってくれていいんだよ」
——だから、このビデオ捨てといてくれ。
と言って、『無口貧乳ガールと深夜教室』をレキに渡す。
もう、これもいらない物だ。これからの俺には……
レキはそのビデオを受け取ると、両手で抱えて胸のところまで持っていく。
そのレキの表情はどこか緩んでいるように見えて……
俺はそのレキの表情を見て————笑った。
「ププッ、エロビデオを大事そうに抱えてるレキ、なんかウケるんだけど——アアアアアアアアアア!? 頭に銃剣刺さったァアアアアア!!」
脳天に突き刺さる10本の銃剣。
もう……俺、最後はいつもこんなんばっか……
*
「おぅ……キンジじゃねえか……」
「——ん? あ、おう……って、おい、なんでそんなに頭怪我してるんだよ……?」
「レキにやられた……」
「ってことは銃剣か。いつも通りだな」
「ああ、いつも通りだけど……最近のレキ……というよりか女って怖いな」
「——えっ!? あのソラが女が怖い!? 嘘だろっ!?」
「いや…もう……女は怖いです。レキも白雪も理子もアリアも他の女もみんな怖いよ……」
「おいおい、本当に大丈夫かよ……? 相談に乗ろうか?」
「ありがとうキンジ……もう俺には、お前しかいない……」
「——バッ!? お前そんなこと言うなよなっ!? 照れんだろ…………」
「…………………キンジ、お前女装してみない?」
「おいっ! 今頭の中でなに考えやがった!?」